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Lab values · Published

髄液検査

Cerebrospinal fluid analysis

別名
脳脊髄液検査CSF検査髄液所見cerebrospinal fluid analysis
臓器系
神経感染症
科目
PediatricsNeurology
トピック
小児科 2-04:中枢神経疾患の警告徴候・検査と腰椎穿刺神経内科 G1-20:自発性くも膜下出血の診断・治療・予後神経内科 G1-22:髄膜炎と脳炎
関連疾患
ウイルス性脳炎ギラン・バレー症候群くも膜下出血横断性脊髄炎原発性中枢神経系リンパ腫細菌性髄膜炎自己免疫性脳炎髄液漏髄膜癌腫症多発性硬化症特発性頭蓋内圧亢進症傍腫瘍性小脳変性無菌性髄膜炎

🧠 全体像は単一の値でなく、外観・・細胞数・蛋白・糖という複数の軸の組み合わせパターンが情報を持つ検査である。細胞数と蛋白が完全に正常でも、髄膜炎の急性期やの一部を除外できない。読む順序を「外観→→細胞数と分画→蛋白→糖」に固定し、糖は必ず同時採血の血糖と対にして解釈する。

何を測っているか

で得た髄液を、外観、圧、細胞成分、生化学、病原体・免疫学的検査へと段階的に評価する。

区分 主な項目 何を反映するか
物理的性状 外観、 出血・の有無、頭蓋内圧
細胞成分 細胞数、分画 炎症の種類(優位かか)
生化学 蛋白、糖、乳酸 血液脳関門の破綻、細菌の糖消費、
病原体・免疫 グラム染色・培養・、細胞診・・IgG index、 原因微生物、悪性細胞、免疫グロブリン産生、自己免疫機序

構成する系統ごとの読み方

外観:清明が正常。は細胞数の著増(多くは細菌性)を、は一定時間髄液中に存在した血液の分解産物を示す。

の影響を避けるため、必ず・下肢伸展位で測る。は体格・施設で変わるため一律の数値で断定しないが、目安として成人非肥満者で200 mmH2O程度までとされることが多い。や髄膜炎で上昇し、脱水やで低下する。

細胞数と分画:正常は数個/μL以下。(好中球)優位は細菌性を、単核球(リンパ球)優位はウイルス性・結核性・自己免疫性を示唆するが、発症早期のではになることがあり、単回の分画だけで確定しない。

蛋白:血液脳関門の破綻やの増加で上昇する。著明な蛋白上昇に対し細胞数の増加が乏しいは、それ自体が特徴的なパターンとして扱われる。

必ず同時採血の血糖と対で評価する。 髄液糖の絶対値ではなく、髄液/血漿糖比(目安0.6を下回れば低下と判断されることが多い)で判断する。細菌が糖を消費するで低下しやすい。

乳酸:好中球や細菌のを反映し、で上昇しやすい。抗菌薬投与後に細胞数・糖が改善し始めても、乳酸はなお有用なことがある。詳細は乳酸を参照。

グラム染色・培養・:グラム染色は迅速だが、感度は先行する抗菌薬投与で大きく下がる。培養は確定診断の基本だが数日を要し、これも抗菌薬先行投与で陰性化しやすい。は抗菌薬投与後も検出力が保たれやすく、迅速に原因微生物を絞り込める。を参照。

細胞診・を疑うときに提出する。1回の陰性で除外できず、複数回の採取で感度が上がる。

・IgG indexでの免疫グロブリン産生を示す指標で、の一部として使われるほか、でも陽性になりうる。血清には無い髄液特異的バンドであることが重要で、による血清由来のバンドと区別する。

など、を疑うときに血清と髄液を対で提出する。詳細はを参照。

どのパターンで切り分けるか

⭐ 髄液を読むうえで最も強い情報は、細胞数の分画、蛋白、糖の組み合わせである。

flowchart TD
    A["外観を確認"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opacity (turbidity)'>混濁</span>しているか"}
    B -->|"はい"| C["細菌性を強く疑う"]
    B -->|"いいえ"| D["細胞数と分画を確認"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymorphonuclear cells (neutrophils)'>多核球</span>優位か<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mononuclear predominance'>単核球優位</span>か"}
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymorphonuclear cells (neutrophils)'>多核球</span>優位"| F["蛋白上昇・糖低下なら細菌性"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mononuclear predominance'>単核球優位</span>"| G["蛋白・糖のパターンを見る"]
    G --> H["蛋白軽度上昇・糖正常:ウイルス性"]
    G --> I["蛋白著明上昇・細胞数軽度:結核性・癌性・GBS"]
    G --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oligoclonal bands (OCB)'>オリゴクローナルバンド</span>・IgG index上昇:MS・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoimmune encephalitis'>自己免疫性脳炎</span>"]
病態 細胞数・分画 蛋白 特徴
著増、優位 著増 著減 、乳酸上昇。グラム染色の陽性率が高い
軽度〜中等度増加、(初期は優位のことも) 正常〜軽度上昇 正常 病原体(HSVなど)で確定する。は同じ髄液パターンをとるが単独のノートは無く、炎症の有無で脳炎と区別する
結核性・真菌性 中等度増加、 著増 低下 結核など。は感度が低く繰り返し提出する
均一な 上昇 正常 の有無で穿刺と鑑別する。発症6時間以内の高性能CTが陰性ならSAHを除外できるとする報告があるため、は主にCT陰性かつ発症6時間超で疑いが続く例に行う。そのは発症6〜12時間後に行うのが目安とされる1
軽度〜中等度増加、 著増 低下 細胞診・を繰り返し提出する
正常〜軽度増加 著増 正常 。細胞数の著増があれば他疾患を疑う
正常〜軽度増加 正常〜軽度上昇 正常 髄液特異的陽性が診断を支持する
正常〜軽度の単核球増多 正常〜軽度上昇 正常 が無くても・IgG index上昇が支持所見として陽性になりうる2すべて正常でも除外できない——は髄液・MRI・の組み合わせだけでprobable seronegative AEの診断を許容している3

⚠️ 測定上の注意

  • 穿刺と真の出血の区別:3本の採取管で間のが減少すれば穿刺を示唆するが、これだけでは確定できない。より確実なのはで、出血後にヘモグロビンが分解されて生じるため穿刺では通常陰性であり、後のの色調を肉眼またはで判定する4
  • の禁忌と頭部CTの適応:意識障害、局所神経徴候、新規発作、、免疫不全、悪性腫瘍や中枢神経病変の既往、高齢では、腫瘤病変やヘルニアリスクを評価するため穿刺前に頭部CTを考慮する5。CTが正常でも頭蓋内圧亢進を完全には除外できず、画像評価のために抗菌薬投与を遅らせてはならない。
  • 赤血球混入時の補正穿刺で末梢血が混入すると、白血球・蛋白が実際より高く見える。末梢血算が正常なら、百〜千個あたり白血球1個・蛋白約1 mg/dLを差し引く目安が使われるが、確定的な補正式ではなく参考程度にとどめる。
  • 抗菌薬先行投与:グラム染色・培養の感度は抗菌薬投与後に大きく低下する。は比較的保たれるため、抗菌薬を先行させる場合でも髄液検体は必ず確保する。
  • 検体の速やかな提出:細胞は放置で壊れ、分画の判定を誤らせる。採取後は速やかに検査室へ提出する。
  • で測る:座位で測るとの影響で高く出るため、・下肢を伸展した姿勢で測定する。

次に進むべき検査

は単独で完結せず、パターンに応じて次の一手が決まっている。

まとめ

  • 髄液は外観・・細胞数と分画・蛋白・糖の組み合わせパターンで読み、単一の値では判断しない。
  • 糖は必ず同時採血の血糖との比で評価する。
  • 正常な髄液所見は炎症性疾患、特にを除外しない。
  • 穿刺と真の出血は3本法とで区別する。赤血球混入時の白血球・蛋白の補正は目安であって確定的な式ではない。
  • 抗菌薬先行投与は培養を陰性化させうるためを併用し、検体は速やかに提出する。
  • パターンに応じて培養・PCR、抗酸菌検査、細胞診、自己抗体、MRIへ進む。

出典

  1. 1.Lumbar Puncture(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf)・2023)腰椎穿刺前に頭部CTを考慮すべき所見として、意識障害、局所神経徴候、新規発作、乳頭浮腫、免疫不全、悪性腫瘍や中枢神経病変の既往、高齢が挙げられていることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.CSF Evaluation in Subarachnoid Hemorrhage(University of Cincinnati Department of Emergency Medicine・2015)外傷性穿刺と真のくも膜下出血の区別に、採取管間の赤血球数変化(3本法)とキサントクロミー(遠心後の上清の肉眼所見またはスペクトロフォトメトリー)が用いられることを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Autoimmune Encephalitis Criteria in Clinical Practice(Neurology: Clinical Practice (American Academy of Neurology)・2023)Graus基準(2016年)の適用実地コホートで、髄液細胞増多を伴わない例でもオリゴクローナルバンドやIgG index上昇が支持所見として陽性になりうることを確認した。閲覧 2026-08-03
  4. 4.Systematic Review and Meta-Analysis of the Clinical Features Associated With Seronegative Autoimmune Encephalitis(Neurology: Neuroimmunology & Neuroinflammation (Di Cosmo L, et al.)・2026)自己免疫性脳炎全体のおよそ3分の1から半数は血清・髄液とも神経抗体が検出されないまま経過すること、Graus基準では臨床像と髄液・MRI・脳波などの補助所見の組み合わせだけでprobable seronegative AEの診断が許容されることを確認した閲覧 2026-08-03
  5. 5.2023 Guideline for the Management of Patients With Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association(American Heart Association / American Stroke Association (Stroke誌)・2023)オタワSAHルールの適用対象外、またはCTが陰性でも臨床的疑いが強い患者では、キサントクロミー評価のための腰椎穿刺は発症から6〜12時間後に行われることが多く、特に発症6時間を超えて疑いが強い患者には施行すべきとされていることを確認した閲覧 2026-08-04