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Disease Atlas · 神経 · 疾患

ウイルス性脳炎

Viral encephalitis

臓器系
神経感染症
科目
PathologyNeurologyPediatrics
トピック
病理学 C-109:中枢神経系感染症(髄膜炎・脳炎)神経内科 G1-22:髄膜炎と脳炎神経内科 G3-02:ヘルペスウイルスによる神経疾患小児科 3-08:小児中枢神経感染症:髄膜炎・脳炎・脳膿瘍
鑑別疾患
細菌性髄膜炎自己免疫性脳炎片頭痛・一次性頭痛症候群
合併症
てんかん
続発疾患
水頭症
関連疾患
進行性多巣性白質脳症無菌性髄膜炎
治療薬
(バル)アシクロビル
原因微生物
Herpes simplex virus 1Varicella zoster virusEnterovirus A, B, C, DWest Nile virusHuman herpesvirus 6bEastern equine encephalitis virusJapanese encephalitis virusTick-borne encephalitis virusVenezuelan equine encephalitis virus
症状
幻覚項部硬直発作発熱片麻痺羞明失語味覚障害嗅覚障害
検査値
髄液検査
画像所見
内側側頭葉のFLAIR高信号
元疾患
単純ヘルペスウイルス感染症
原因となる疾患
水痘・帯状疱疹

🧠 全体像そのものが炎症を起こす病態で、髄膜炎(髄膜の炎症)と対比される。臨床の要は「を疑った瞬間に、PCR結果を待たず静注アシクロビルを開始する」ことに尽きる。診断が遅れれば死亡・重篤なに直結する、数少ない「検査より治療を先行させるべき」神経救急の1つである。

病態

脳炎の原因ウイルスは、①末梢神経を上行する(HSV、)、②血行性に播種する(多くの)、③潜伏後に再活性化する(HSV、VZV、HHV-6)など複数の経路で中枢神経に到達する。組織学的には血管周囲・実質への、神経細胞の破壊像を共通してみる。

ウイルス 好発部位・特徴 主な背景
HSV-1 ・辺縁系・。壊死性・出血性の炎症 小児・成人で最多の重症性脳炎
HSV-2 成人の(再発性)、新生児の播種性脳炎
VZV 脳炎、髄膜炎、、血管症 皮疹を欠くこともある。免疫不全で重症化
髄膜炎が主だが脳炎・ 小児に多い、多くは自然軽快
(西ナイルウイルスなど) 地域・季節性の流行 蚊媒介、高齢者・免疫不全で重症化しやすい
HHV-6B 後の再活性化
flowchart TD
    A["潜伏ウイルスの再活性化・末梢神経からの上行・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hematogenous Spread'>血行性播種</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain parenchyma'>脳実質</span>への感染・炎症"]
    B --> C["血管周囲・実質の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mononuclear infiltration'>単核球浸潤</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microglial nodule'>ミクログリア結節</span>"]
    C --> D["神経<span class='jp-term jp-term-diagram' title='HLA-DR3/DR4'>細胞破壊</span>"]
    D --> E["意識・行動変化、けいれん、局在神経症状"]

臨床像

発熱を伴う意識・行動の変化、けいれん、局在神経症状(など)、精神症状が中核となる。HSV-1脳炎では・辺縁系が侵されるため、記憶障害、性格変化、など特徴的な症候を伴うことがある。)を合併するの形をとることも多い。

診断

flowchart TD
    A["発熱・意識/行動変化・けいれん・局在症状"] --> B["ABC評価、敗血症/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacterial meningitis'>細菌性髄膜炎</span>の可能性も評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='HSV encephalitis'>HSV脳炎</span>を疑う:PCR結果を待たず静注アシクロビルを直ちに開始"]
    C --> D{"安全に施行できるか(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass lesion'>占拠性病変</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain herniation'>脳ヘルニア</span>の懸念)"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lumbar puncture'>腰椎穿刺</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebrospinal fluid PCR'>髄液PCR</span>(HSV等)・細胞数・蛋白・糖"]
    D -->|"画像評価が先に必要"| F["造影MRI(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='temporal lobe'>側頭葉</span>優位の異常など)を先行"]
    E --> G["MRI・EEGで補強診断"]
    F --> E
    G --> H["初回PCR陰性でも臨床的疑いが強ければ治療継続・再検査"]
検査
、蛋白軽度〜中等度上昇、糖は多くは正常
HSV、VZV、などの核酸検出。診断の中心的検査だが、発症直後は偽陰性がありうる
MRI HSV-1ではの異常信号
EEG など。の検出にも有用

を除外できない場合は経験的抗菌薬も並行して開始する。など)は感染症を適切に検索・除外した上で、腫瘍検索や抗体検査を進め、専門科と免疫療法を検討する重要な鑑別である。

⚠️ は治療開始の遅れが死亡率・を明確に増加させる。臨床的に疑った時点でPCR結果を待たず静注アシクロビルを開始し、初回PCR陰性のみで中止しない。 症状発現から3日以内に採取したが陰性でも偽陰性の可能性があり、臨床的疑いが強ければアシクロビルを継続したまま3〜7日後に再検査する。中止を検討できるのは、免疫正常な患者でが24〜48時間あけて2回陰性かつMRIが非典型の場合、または症状発現72時間以降に採取したが1回陰性で意識清明・MRI正常・髄液細胞数5/μL未満の場合に限られる1

治療

  1. 経験的抗ウイルス薬: を疑えば直ちに(バル)アシクロビルの静注を開始する。腎機能に応じて用量を調整し、十分な補液と腎機能モニタリングを行う。新生児・免疫不全・重症例は感染症専門医と個別に管理する。
  2. 支持療法: 気道・呼吸・循環の安定化、頭蓋内圧管理、けいれんの治療を行う。意識障害が高度な例や合併症(水頭症など)を来した例は管理を要する。
  3. そのものへの副腎皮質ステロイド併用は、のように確立した標準治療ではなく、有効性を支持するエビデンスは十分でない議論の的である。使用する場合はを伴う高度な脳浮腫の症例に限り、アシクロビル投与開始から数日後(炎症反応がピークになる時期)に開始することが一部のにより提案されている1。VZV脳炎・血管症では静注アシクロビルを基本とし、血管炎への副腎皮質ステロイド併用を専門的に検討する。HHV-6Bでは静注またはを毒性・併存症に応じて選択する。脳炎など特異的抗ウイルス薬のないものは支持療法が中心となる。
  4. との重複への配慮: 臨床像だけで細菌性を除外できない間は経験的抗菌薬も併用する。

合併症と予後

治療開始が早いほど転帰は良好だが、は治療しても記憶障害、性格変化、てんかんなどのを残しうる。急性期には脳浮腫による頭蓋内圧亢進、髄液循環障害による水頭症、などの合併症に注意する。

まとめ

  • の炎症であり、HSV-1が小児・成人における重症性脳炎の代表的原因である。
  • を臨床的に疑ったら、PCR結果を待たず静注アシクロビルを直ちに開始する。
  • MRI(優位の異常)、、EEGで診断を補強するが、初回PCR陰性だけで治療を中止しない。
  • を除外できない間は経験的抗菌薬も併用し、原因ウイルスに応じて治療とモニタリングを個別化する。

出典

  1. 1.Herpes Simplex Encephalitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)症状発現から3日以内に採取した髄液HSV PCRが陰性でも臨床的疑いが強ければ偽陰性の可能性があり、2008年IDSAガイドラインはアシクロビル継続下で3〜7日後の再検査を推奨していること、免疫正常患者でアシクロビルを中止できるのは髄液PCRが24〜48時間あけて2回陰性かつMRIが非典型、または症状発現72時間以降の1回陰性かつ意識清明・MRI正常・髄液細胞数5/μL未満の場合に限られること、副腎皮質ステロイドの併用療法は依然として議論の的でエビデンスが確立しておらず、使用する場合は占拠効果を伴う高度な脳浮腫の症例に限り、アシクロビル投与開始から数日後(炎症反応がピークになる時期)に開始することが一部の専門家により提案されていることを確認した。閲覧 2026-08-04