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Microbe Atlas · ウイルス

Enterovirus A, B, C, D

エンテロウイルス

分類
ピコルナウイルス / Picornaviruses
性状
エンベロープなし Naked(+)ssRNA
科目
Medical Microbiology
トピック
3/30: Picornaviruses: Rhino-, Coxsackie-, echo- and enteroviruses3/29: Picornaviruses: Poliovirus
原因となる疾患
Eczema coxsackiumウイルス性脳炎ジアノッティ・クロスティ症候群ヘルパンギーナポリオ横断性脊髄炎急性出血性結膜炎急性心膜炎急性弛緩性脊髄炎手足口病心筋炎普通感冒無菌性髄膜炎

🧠 全体像:(A・B、、、EV-D68など)の臨床像は一見バラだが、「酸に強い糞口感染ウイルスがで増え、ウイルス血症でどの臓器に流れ着くか」という単一の骨格ですべて説明できる。・(Enterovirus A)、心筋炎・(Enterovirus B)、、(Enterovirus D=EV-D68)——どの種も同じ経路の出口違いにすぎない。同じでもだけは酸に弱く呼吸器限定という対照的な立ち位置を取り、も同科に属しながら肝臓だけを標的に細胞に増える別戦略をとる。

微生物学的な特徴

に共通する性状は次のとおり。

項目 内容
ゲノム (約7.5kb)——宿主リボソームで直接翻訳できる
構造 エンベロープなし、
蛋白合成 1本の長いとして翻訳され、ウイルス自身のプロテアーゼが機能単位に切断する
酸耐性 酸に安定——胃酸を通過できる(だけが例外的に酸に弱い)
複製部位 細胞質

はさらに血清型・臨床像で4種(Enterovirus A〜D)に分かれる。

種 代表的な血清型 主な標的 代表疾患
Enterovirus A A16、EV-A71 皮膚粘膜(EV-A71は稀に脳幹) 、
Enterovirus B B1〜6、 心臓・髄膜 、心筋炎・、
Enterovirus C 1〜3型、一部A 運動ニューロン ポリオ()
Enterovirus D EV-D68 下気道、一部で 重症呼吸器感染、

💡 は「腸管病原体」なのに腸炎をほとんど起こさない。 で伝播・複製こそするが、標的は心臓・髄膜・皮膚・運動ニューロンなど、で到達する遠隔臓器である。夏〜秋に流行しやすい点も共通する。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["経口摂取(汚染食物・水)"] --> B["咽頭・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut-associated lymphoid tissue'>腸管リンパ組織</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Peyer patch'>パイエル板</span>)で増殖<br>(2〜3週)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary viremia'>一次ウイルス血症</span>"]
    C --> D{"標的臓器は<br>種によって異なる"}
    D -->|"Enterovirus A"| E["皮膚粘膜<br>(手・足・口、咽頭後方)"]
    D -->|"Enterovirus B"| F["心筋・髄膜へ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary viremia'>二次ウイルス血症</span>"]
    D -->|"Enterovirus C"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventral horn'>脊髄前角</span><br>運動ニューロン"]
    D -->|"Enterovirus D<br>(EV-D68)"| H["下気道<br>(一部で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventral horn'>脊髄前角</span>)"]
    F --> I["心筋炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericarditis'>心膜炎</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='aseptic meningitis'>無菌性髄膜炎</span>"]
    G --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell lysis (cytolysis)'>細胞融解</span><br>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute flaccid paralysis'>急性弛緩性麻痺</span>"]
    H --> K["重症<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiolitis'>細気管支炎</span>・肺炎<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute flaccid myelitis'>急性弛緩性脊髄炎</span>"]

⚠️ EV-D68との関係は、ポリオ後に注目されるようになった比較的新しい知見。 EV-D68は本来この属の中でも例外的に呼吸器経由()で伝播し重症呼吸器感染を起こす。米国では2014年にが始まって以来、を侵す「ポリオ様」のの報告が隔年でピークを迎えており、典型例は夏の終わり〜秋(8〜11月)に、発熱・呼吸器症状の数日後(中央値6日)に四肢ので発症する小児である1。この流行の波がEV-D68の流行と時期的に一致することから、EV-D68が原因ウイルスの中心と考えられている——ポリオがワクチンでほぼされた地域でも、を標的にする麻痺性疾患が完全には消えていない理由である。

感染経路と疫学

  • 糞口感染が基本:汚染された食物・水、便からの直接・間接接触。の不良な環境で伝播しやすい
  • 夏〜秋にピーク(温帯地域)、主に小児に多い
  • 例外はEV-D68:他のと異なり主に飛沫感染で広がり、季節性もに近い秋の流行が中心

起こす疾患

疾患 押さえどころ
主にA16・EV-A71。手・足・口の紅色小水疱疹、小児に好発
後方・咽頭峡の有痛性水疱、強い。主にA
(Bornholm病) B。突然の発熱と片側性の
心筋炎・ Bが代表的原因。新生児で最重症——チアノーゼ・からに進みうる
無菌性(ウイルス性)髄膜炎 ・Bが原因の第1位。髄液は糖正常・蛋白軽度上昇——細菌性との鑑別点
ポリオ Enterovirus C(1〜3型)。小児の感染の約70%は無症候、約24%は軽い非特異的症状、1〜5%は非麻痺性ので、は1%未満と稀だが最重症2
EV-D68の流行と時期的に一致する「ポリオ様」の
・EV-D68などで稀に。致死的な肝不全・心筋炎を伴うこともある

⚠️ 眼にも来る。 とはを起こし、潜伏期24時間前後という極端な短さで爆発的に流行する。によると臨床像が似るが病原体も経過も別で、まれにポリオ様のを合併する。

診断

  • 検体:・便・髄液からのウイルス分離または。EV-D68は呼吸器検体()で検出する点が他のと異なる
  • の髄液所見は糖正常・蛋白軽度上昇——(糖低下・蛋白高度上昇)との鑑別に使う
  • ⚠️ は髄液からはまれにしか検出されない。 検出率が最も高いのは便ので、咽頭では低い。発症14日以内に、24時間以上あけて便を2検体採る2。髄液が陰性でもを除外できない

治療と予防

  • 特異的な抗ウイルス薬はなく、支持療法が中心
  • 予防の基本は(糞口感染対策)とワクチン——にはのIPVとのOPVがあり、詳細はポリオを参照
  • EV-A71には中国でが開発されており、乳幼児を対象にした第3相試験でEV-A71関連の・を94.8%減らし、EV-A71関連の入院とを伴うは接種群で0例だった3。A16など他の血清型は防げない
  • 重症の新生児感染にはが用いられることがある

まとめ

  • は酸に強い(+)ssRNA・エンベロープなしの小型ウイルスで、糞口感染→での増殖→ウイルス血症という共通の病態を経る(例外は酸に弱く呼吸器感染する)。
  • Enterovirus A(・)、B(心筋炎・)、C(ポリオ)、D(重症呼吸器感染・)は、同じ病態生理の「標的臓器違い」として整理する。
  • B・はの主要原因で、髄液は糖正常・蛋白軽度上昇という特徴的パターンを示す。
  • EV-D68は呼吸器伝播という例外的性質を持ち、近年はとの疫学的関連が注目されている。
  • 感染の大半は無症候で、は1%未満。検出は便が最もよく、髄液からはまれ。
  • 治療は支持療法のみ。予防の柱はと、に対するIPV/OPVワクチンで、EV-A71には中国でが開発され、第3相試験で高い有効性が示された。

出典

  1. 1.Vital Signs: Clinical Characteristics of Patients with Confirmed Acute Flaccid Myelitis, United States, 2018(Morbidity and Mortality Weekly Report (Centers for Disease Control and Prevention)・2020)抄録(PMID 32759919)で、米国で2014年にサーベイランスが始まって以来、急性弛緩性脊髄炎の報告例が隔年でピークを迎えたこと、2018年の確定例238例の年齢中央値が5.3歳で、86%が8〜11月に発症し、92%に発熱・呼吸器症状またはその両方の前駆症状が筋力低下の中央値6日前からあったこと、98%が入院し23%が気管挿管・人工呼吸管理を要したことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Chapter 18: Poliomyelitis — Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases (Pink Book)(CDC・2024)発行元ページ(2024年5月1日更新)で、小児のポリオウイルス感染の約70%が無症候、約24%が中枢神経症状を伴わない軽い非特異的症状、1〜5%が非麻痺性の無菌性髄膜炎、弛緩性麻痺は1%未満であること、ポリオウイルスの検出率は便のウイルス培養が最も高く、咽頭では低く、髄液・血液からはまれにしか分離されないこと、発症14日以内に24時間以上あけて便2検体を採取することを確認した。本日は curl がアクセス拒否を返したため、WebFetch 経由で本文を読んだ。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Efficacy, Safety, and Immunogenicity of an Enterovirus 71 Vaccine in China(The New England Journal of Medicine・2014)抄録(PMID 24571754)で、中国の6〜35か月齢の健常乳幼児10,007例を対象にした無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験(2回接種・12か月追跡)で、EV71関連の手足口病・ヘルパンギーナに対するワクチン効果が94.8%(95%信頼区間 87.2〜97.9)、EV71関連の入院(0例対24例)と神経合併症を伴う手足口病(0例対8例)に対する効果がいずれも100%であったことを確認した。閲覧 2026-09-27