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Disease Atlas · 小児 · 疾患

ヘルパンギーナ

Herpangina

臓器系
小児感染症耳鼻咽喉科
科目
OtorhinolaryngologyPediatricsMedical Microbiology
トピック
耳鼻咽喉科 39:口腔・咽頭の炎症性疾患小児科 3-58:口腔・咽頭疾患微生物学 3/30:ピコルナウイルス:ライノ・コクサッキー・エコー・エンテロウイルス
鑑別疾患
手足口病単純ヘルペスウイルス感染症
合併症
脱水熱性けいれん
原因微生物
エンテロウイルス
症状
発熱咽頭痛口内炎小水疱

🧠 全体像:は主に属のA群による小児のウイルス感染症で、突然の高熱と、口腔の「後方」(・・)に限局する有痛性の水疱・が核心像である。病変が後方に限局し前方の・歯肉・口唇には及ばないという分布のパターンそのものが、診断と鑑別の軸になる。⚠️ 同じウイルス群がしばしばの原因にもなるが、両者は病変分布で区別する——は手足の皮疹を伴わない。もう一つの実務上の鑑別は口腔前方に病変が強い()で、歯肉病変の有無が手掛かりになる。乳幼児では口腔の疼痛による摂食不能が脱水に直結するため、重症度の見立てはウイルス自体より水分摂取が保てているかにかかっている。

病原体と疫学

主な原因はA群(血清型A1〜A10・A16が代表的)で、他にB群・など他のも関与する12。主に10歳未満、とくに乳幼児に好発し、温帯地域では夏〜初秋にピークを迎える。糞口感染と飛沫感染の両方で伝播し、保育施設・学校での集団発生を起こしやすい。潜伏期は4〜14日で、口腔・咽頭のリンパ組織での増殖を経てウイルス血症となり、後方の粘膜病変として顕在化する1。

臨床像

突然の高熱に続き、・不機嫌・食欲低下が急速に(1〜2日で)出現する。口が利けない乳幼児は、酸味のある飲料(オレンジジュースなど)を嫌がる、哺乳瓶を拒否するといった形で発症することがある。

診察では、・・を含む後方に小水疱または浅い潰瘍を認め、前方の口腔(・口唇周囲)は通常保たれるのが特徴的な所見である1。は軽度にとどまることが多く、全身状態は発熱に伴う不機嫌以外は比較的保たれる。多くは4〜10日で自然軽快するの経過をとる2。

⚠️ 手足口病との鑑別:病変の分布で分ける

A16型・EV-A71型など、と同じウイルスがを起こすこともあり、両者は近縁の疾患である。決め手は皮膚病変の有無になる。

口腔病変の分布 後方(・・)に限局 口腔(・舌など前方にも及ぶ)に加え手掌・足底
皮膚病変 なし 手掌・足底・の紅色小水疱
原因ウイルス A群が主体 A16・EV-A71が主体(同じウイルスがを起こすこともある)

⚠️ ヘルペス性歯肉口内炎(HSV-1)との鑑別

もう一つの実務上の鑑別は、1型によるである。歯肉病変の有無が両者を分ける最大の手掛かりになる。

病変の分布 後方に限局 歯肉・口唇周囲など口腔前方が主体
歯肉病変 通常なし 歯肉の発赤・腫脹・出血を高頻度に伴う(症例集積で67.6%)3
好発年齢 主に10歳未満 中央値2歳、3歳未満が多数(症例集積で60.5%)3
間 通常4〜6日で軽快 平均5.1±2.2日、21.1%が7日を超えて持続3
flowchart TD
    A["突然の発熱+口腔粘膜の水疱・潰瘍"] --> B{"病変の分布は?"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fauces (isthmus of fauces)'>口峡</span>後方に限局、歯肉正常"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='herpangina'>ヘルパンギーナ</span>"]
    B -->|"口腔(前方含む)+手掌・足底の皮疹"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hand, foot, and mouth disease'>手足口病</span>"]
    B -->|"歯肉の発赤・腫脹・出血を伴い口腔前方が主体"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='herpetic gingivostomatitis'>ヘルペス性歯肉口内炎</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='herpes simplex virus type 1'>HSV-1</span>)"]

⚠️ 臨床像だけでの鑑別には限界がある。 の症例集積では、入院時点で32.4%が・と臨床診断されており、後にと確定していた3。歯肉病変を意識的に確認する診察手順が、このを減らす。

合併症:乳幼児の脱水が主因

⭐ 口腔病変による摂食・飲水量の低下は、乳幼児では短時間で脱水に至りうる。 成人と異なり摂食量の低下を自ら訴えられない乳幼児では、この脱水が入院を要する最大の理由になる。高熱を背景にを来すこともあり、38.5℃以上では年齢に応じた投与を検討する1。

稀ではあるが、・脳炎・心筋炎・などの重篤な合併症も報告されており、多くはEV-A71関連である。合併症の詳細な機序・疫学はの項を参照する1。

診断

診断は主に(突然の発熱、後方に限局する水疱・潰瘍、季節性)に基づき、ルーチンの血液検査は通常不要である。非典型例、重症例、集団発生時のでは、・便・水疱内容物からのでウイルスを同定する1。

治療

特異的な抗ウイルス薬はなく、支持療法が中心である。十分な水分摂取と、刺激の少ない軟らかい食事を促し、酸味・辛味の強い飲食物は避ける。(または薄い塩水)での・口腔清拭も有用である1。

⚠️ などのは推奨されない。 有効性の根拠が乏しいうえ、小児では全身への吸収による中毒リスクがあるため、口腔病変のには避ける1。には・を年齢に応じて用い、経口摂取が困難で脱水が疑われればや医療機関での補液を検討する。

まとめ

  • は主にA群による小児のウイルス感染症で、突然の高熱と後方(・・)に限局する水疱・潰瘍が典型像である。前方の口腔は通常保たれる。
  • とは同じウイルス群が原因になりうるが、皮膚病変(手掌・足底)の有無で区別する。
  • ()とは、歯肉病変の有無・好発年齢・間で鑑別する。歯肉病変を確認しないとしうる。
  • 通常4〜10日で自然軽快するだが(4〜6日とする報告もある)、乳幼児では摂食不能による脱水が入院の主因であり、稀にEV-A71関連の合併症を来す。
  • 治療は水分・栄養管理と対症療法が中心。は小児での使用が推奨されない。

出典

  1. 1.Herpangina(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)ヘルパンギーナは主にコクサッキーウイルスA群(血清型A1〜A10・A16が代表的、他にコクサッキーB群・エコーウイルスも関与)による乳幼児好発のウイルス感染症で、潜伏期4〜14日を経て軟口蓋・口蓋弓・口蓋垂を含む口峡後方に小水疱・浅い潰瘍を生じ前方の口腔は通常保たれること、夏〜初秋に流行し糞口感染・飛沫感染で伝播すること、診断は臨床的に行い確定診断が必要な場合はRT-PCRを用いること、治療は水分・栄養管理と解熱鎮痛を中心とした対症療法でリドカインなどの局所麻酔薬含嗽は小児での全身毒性リスクから推奨されないこと、通常10日前後で自然軽快するが脱水・熱性けいれんが主な合併症であり稀に無菌性髄膜炎・脳炎・心筋炎(いずれもエンテロウイルスA71関連が多い)を来しうることを確認した閲覧 2026-09-01
  2. 2.Diagnosis and treatment of herpangina: Chinese expert consensus(World Journal of Pediatrics・2020)中国の専門家コンセンサスが、ヘルパンギーナの主な病原体がコクサッキーウイルスA群・エンテロウイルスA・エコーウイルスであること、診断が疫学歴・典型症状・咽頭所見・ウイルス学的検査に基づくこと、治療は対症療法が主体であること、病悩期間が通常4〜6日で予後良好であることを確認した閲覧 2026-09-01
  3. 3.Clinical features of gingivostomatitis due to primary infection of herpes simplex virus in children(BMC Infectious Diseases・2020)台湾の1医療センターで培養確認された原発性ヘルペス性歯肉口内炎の小児入院例185例(19歳未満)の後方視的検討で、年齢中央値2歳(生後7か月〜17歳)・60.5%が3歳未満であったこと、歯肉の腫脹・出血を67.6%に認めたこと、入院時点でヘルパンギーナ・手足口病と臨床診断されていた例が32.4%に上ったこと(後にヘルペス性歯肉口内炎と確定)、脱水を84.7%(軽度91.6%・中等度8.4%)に認めたこと、発熱期間は平均5.11±2.24日で21.1%が7日を超えて持続したことを確認した閲覧 2026-09-01