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Symptoms · Published

口内炎

Stomatitis

別名
口腔粘膜炎粘膜炎アフタ性口内炎口腔内潰瘍
臓器系
耳鼻咽喉科腫瘍消化器
科目
PharmacologyENTOncologyPathologyPediatrics
トピック
薬理学 Core67:薬剤性有害反応:粘膜障害薬理学 Core72:薬剤性有害反応:歯・口腔の有害反応耳鼻咽喉科 39:口腔・咽頭の炎症性疾患腫瘍学 I-23:化学療法の副作用腫瘍学 I-26:分子標的治療の副作用病理学 C/30:口唇・口腔・咽頭の病理小児科 2-01:小児がん治療の早期・晩期合併症
関連疾患
ベーチェット病無顆粒球症
起因薬
エクサガムグロジーン オートテムセルギルテリチニブチボザニブデキサラゾキサンベチベグロジーン オートテムセルミドスタウリンロボチベグロジーン オートテムセル
スコア
CISNEスコア国際Behçet病基準

🧠 全体像:「」という患者の訴えは単一の疾患名ではなく、口腔粘膜の炎症・潰瘍という所見を指す言葉である。まず「口腔内だけで完結する問題か、・薬剤の表現型の一部か」で切り分けることが出発点になる。頻度で言えばのようにありふれた良性疾患が大半を占めるが、同じ「」というの中に、の入口になる潰瘍や、のようなの初発症状が紛れ込む。分子標的薬・によるは現代の腫瘍薬物療法でとくに高頻度の有害事象であり、・減量の判断に直結するため本ノートで厚く扱う。

定義と用語の整理

患者が「」と呼ぶ症状には、機序の異なる複数の医学的実体が混在している。

用語 内容
口腔可動部の境界明瞭な有痛性潰瘍。10〜20歳代に多く、多くは自然軽快する
薬剤性 ・放射線治療・分子標的薬による上皮障害。腫瘍治療の文脈で最も重要
感染性 ヘルペス性歯肉など病原体が同定できるもの
の粘膜病変 など、口腔病変がの部分症であるもの

薬剤性の原因薬は・分子標的薬が中心だが、β遮断薬やNSAIDsのような身近な薬剤もを起こしうる薬剤として知られており、「腫瘍治療中でなければ薬剤性を除外してよい」わけではない。

分子標的薬によるは、によると病像が異なる。 (5-FU)などは投与後数日で広範な発赤・びらんとして生じるのに対し、関連様の境界明瞭な有痛性潰瘍として、最初の投与サイクルの早期から限局性に出現する。同じ「」という言葉で報告されていても、の系統によって経過・対応が変わる点を区別しておく。

病態生理

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Stomatitis'>口内炎</span>の機序"] --> B["感染性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aphtha (aphthous ulcer)'>アフタ</span>性"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytotoxic anticancer drug'>細胞傷害性抗癌薬</span>・放射線治療"]
    A --> D["分子標的薬"]
    A --> E["増悪因子"]
    B --> B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral candidiasis'>口腔カンジダ症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='herpes simplex (HSV)'>単純ヘルペス</span>など感染<br>特発性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aphthous ulcer'>アフタ性潰瘍</span>"]
    C --> C1["上皮<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cells'>基底細胞</span>のDNA障害"]
    C1 --> C2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>による増幅"]
    C2 --> C3["上皮萎縮・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulceration'>潰瘍形成</span>"]
    C3 --> C4["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary infection'>二次感染</span>がなければ<br>数日〜数週で上皮再生・治癒"]
    D --> D1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mTOR inhibitor'>mTOR阻害薬</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratinocyte'>ケラチノサイト</span>の増殖・修復阻害"]
    D --> D2["VEGFR-TKI<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiogenesis inhibition'>血管新生阻害</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosal repair'>粘膜修復</span>遅延"]
    E --> E1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xerostomia'>口腔乾燥</span>"]
    E --> E2["好中球減少"]
    E --> E3["栄養欠乏"]

口腔粘膜は消化管の中でも上皮の再生回転が速い組織であり、この高いそのものが化学療法・放射線治療の標的になりやすい理由である。によるの古典的な経過は、①上皮のDNA障害に始まり、②の放出・増幅を経て、③臨床的に見える発赤・びらん・潰瘍に至り、④がなければ数日〜数週で上皮が再生し治癒する、という段階で捉えると理解しやすい。放射線治療でも同様の経過をたどるが、に限局し治癒までの期間がより長くなりやすい。

分子標的薬では機序が異なる。など)関連は、mTOR経路が担うの増殖・創傷治癒シグナルの阻害が主因と考えられており、細胞傷害性の直接的なDNA障害ではなく上皮の自己修復力そのものが落ちる病態である。VEGFR-TKI(など)によるは機序がなお十分に解明されていないが、によるの遅延やが想定されている。

これらに好中球減少が重なると、粘膜のの両方が落ち、が重症化・遷延化しやすくなる。⭐ 好中球減少期のは、単なるではなく感染の入口として扱う。

見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ 好中球減少下の 好中球減少が進行した患者のは、常在菌・病原体が血流に侵入する経路になり、の主要な感染門戸のひとつである。「いつもの」として様子を見ず、発熱や全身状態の変化を伴えば緊急評価に進む。
  • ⚠️ 免疫抑制下の播種性ヘルペス。 は健常者では自然軽快する口唇病変にとどまるが、後や強い免疫抑制下ではに進展しうる。潰瘍が広範囲・難治性であれば抗ウイルス薬の適応を検討する。
  • ⚠️ 治らない単発潰瘍。 数週間治癒しない孤立性のを疑う。のようなを背景に生じることもあり、としてだけで経過観察を続けない。
  • ⚠️ の反復性で皮膚病変に先行する疼痛性(SJS・TENを含む)に伴う広範なは、いずれも「よくある」との違いを見抜けるかが診断の分かれ目になる。再発パターン・皮膚病変・粘膜以外の臓器症状の有無を確認する。
  • ⚠️ 乳幼児の摂食不能による脱水。 やヘルペス性歯肉による有痛性口腔病変は、乳幼児では経口摂取そのものを妨げ、短時間で脱水に至りうる。成人と異なり摂食量の低下を自ら訴えられない点に注意する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Stomatitis'>口内炎</span>の訴え"] --> B{"単発か多発か"}
    B -->|"単発・治癒しない"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral cavity cancer'>口腔癌</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='precancerous lesion'>前癌病変</span>を疑い<br>生検を検討"]
    B -->|"多発"| D{"再発性か"}
    D -->|"反復する"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Behçet&#39;s disease'>ベーチェット病</span>など<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>の部分症を疑う"]
    D -->|"今回が初めて"| F["直近の薬剤歴・投与日数を確認"]
    F --> G{"化学療法・分子標的薬の<br>投与時期と一致するか"}
    G -->|"一致する"| H["薬剤性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral mucositis'>口腔粘膜炎</span>として<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Common Terminology Criteria for Adverse Events'>CTCAE</span> gradeを評価"]
    G -->|"一致しない"| I{"全身症状・皮膚病変を伴うか"}
    I -->|"あり"| J["感染性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>の<br>粘膜病変として精査"]
    I -->|"なし"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Aphthous Stomatitis'>アフタ性口内炎</span>として<br>対症療法・経過観察"]
    H --> L{"好中球減少・発熱を伴うか"}
    L -->|"あり"| M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='febrile neutropenia, FN'>発熱性好中球減少症</span>として<br>緊急対応"]

単発で治癒しない潰瘍を最初に分けるのは、の見落としを避けるためである。多発病変では再発パターンの有無でを、薬剤歴との時間的一致で薬剤性をそれぞれ絞り込む。薬剤性が疑われたら、好中球減少・発熱の有無を必ず確認し、感染合併への移行を見逃さない。

対症療法と予防の考え方

口腔ケアの基礎は原因を問わず共通する。・保湿・機械的刺激(硬い食物、義歯の不適合、喫煙・飲酒)の回避を土台に置き、疼痛が強ければや全身を追加する。

5-FU大量では、投与中30分間の予防として推奨される。 血管収縮により薬剤の口腔粘膜への曝露を減らす機序で、大量によるでも同様に推奨される1(化学療法併用を含む)では、(低出力レーザー療法)も予防選択肢として推奨されている1

重症度の評価と治療継続の判断にはのgradeを用いる。Grade1〜2は口腔ケアとで経過を見られることが多いが、Grade3(経口摂取を妨げる高度の疼痛)以上では・減量を検討する2。⭐ 分子標的薬によるになりうる代表的な有害事象で、たとえばのTIVO-3試験では全grade21%に発現した3

⚠️ 予防的抗真菌薬・抗菌薬を全例には投与しない。 はいずれもなどのリスクを高めるが、症例全員へのルーチン予防投与は推奨されない。好中球減少の深さ・持続や免疫抑制の程度に応じて個別に判断し、口腔衛生不良・使用などの誘因を是正することを優先する。

まとめ

  • は単一疾患ではなく所見であり、「局所の問題か、・薬剤の表現型か」で切り分けて考える。
  • は上皮のDNA障害から始まるな炎症反応、関連様の早期発症潰瘍と、病像・機序が異なる。
  • 見逃してはいけないのは好中球減少下の、免疫抑制下の播種性ヘルペス、治らない単発潰瘍()、(SJS・TEN)などの粘膜病変、乳幼児の脱水である。
  • 鑑別は単発/多発、再発性、薬剤歴との時間的一致、全身症状の有無で進める。
  • 対症療法は口腔ケアとが基本。5-FU大量ではではが予防選択肢となり、のgradeで・減量を判断する。予防的抗真菌薬・抗菌薬は全例には使わない。

出典

  1. 1.MASCC/ISOO clinical practice guidelines for the management of mucositis secondary to cancer therapy(Multinational Association of Supportive Care in Cancer / International Society of Oral Oncology (MASCC/ISOO)・2020)2019/2020年改訂版で、口腔クライオセラピー(口腔内冷却)は5-FU大量ボーラス投与中30分間および大量メルファラン前処置による自家造血幹細胞移植で口腔粘膜炎予防としてエビデンスレベルIIで推奨され、フォトバイオモジュレーション(低出力レーザー療法)は造血幹細胞移植前処置(レベルI)、頭頸部放射線治療単独(レベルII)、頭頸部放射線治療と化学療法の併用(レベルI)で推奨されることを確認した。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v6.0(National Cancer Institute (NCI), Cancer Therapy Evaluation Program・2025)CTCAEの口腔粘膜炎(Mucositis oral)はGrade1が無症状または軽度、Grade2が中等度の疼痛・潰瘍だが経口摂取は可能で食形態の変更を要する状態、Grade3が経口摂取を妨げる高度な疼痛、Grade4が生命を脅かし緊急処置を要する状態、Grade5が死亡と定義されることを確認した。閲覧 2026-08-02
  3. 3.FOTIVDA (tivozanib) capsules, for oral use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2021)TIVO-3試験でチボザニブ群における口内炎の発現率が全grade21%、Grade3/4が2%であったことを確認した。分子標的薬による口内炎が用量規定毒性になりうる高頻度の有害事象であることの具体例として引用した。閲覧 2026-08-02