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Drug Atlas · B31 Antineoplastics / 抗腫瘍薬 · 必修

フルオロウラシル

fluorouracil

分類
Antineoplastics / 抗腫瘍薬
商品名(EU)
Efudix
科目
Pharmacology
トピック
B31: Drugs used in cancer treatment I (antimetabolites)
副作用
下痢胸痛手足症候群
監視検査値
血算
相互作用
ロイコボリン
解毒薬
ウリジントリアセタート
対象疾患
Buschke-Löwenstein腫瘍Darier病Krukenberg腫瘍ケロイドヒ素角化症胃癌陰嚢癌角化棘細胞腫基底細胞癌上咽頭癌食道癌声門下狭窄大腸癌頭頸部癌皮膚有棘細胞癌肛門管癌膵癌
原因となる疾患
化膿性肉芽腫輪部幹細胞疲弊症

🧠 全体像:()はの原型で、の置換体として(TS)を止め、大腸癌をはじめとする消化器癌の基幹薬になっている。この薬を理解する2本柱は、DPD(dihydropyrimidine dehydrogenase)による分解とによる効果増強である。DPDは投与されたの大半を分解するで、によるDPD欠損があると通常量でも致死的な毒性が出うる。はメトトレキサートでは毒性を「救済」する薬だったが、では逆にTSとの結合を安定化させ効果を「増強」するために使われる——同じ薬が正反対の目的で使われる好例として対比しておくと理解が定着する。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 標的 位置づけ
①阻害 メトトレキサート・ DHFR/TS・DHFR・ RA〜白血病、/と適応が対照的
②ピリミジン代謝拮抗 ・・・ TS阻害(/)/取り込み(/) は消化器癌の基幹薬。は、/は血液腫瘍・系
③拮抗 ・・・ で活性化→/取り込み 白血病維持療法・リンパ系腫瘍が中心
④RNR阻害 ・鎌状赤血球症

⭐ 同じピリミジン系の中でも「TSを止める」/と、「に直接入り込む」/はが違う。 /は消化器癌、は、は・肺癌・が主戦場になる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorouracil'>5-フルオロウラシル</span>が細胞内へ入る"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='FdUMP (fluorodeoxyuridine monophosphate)'>FdUMP</span>へ変換"]
    A --> C["FUTPへ変換"]
    A --> D["FdUTPへ変換"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thymidylate synthase'>チミジル酸合成酵素</span>(TS)+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='folate cofactor'>葉酸補酵素</span>と<br>安定な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ternary complex'>三者複合体</span>を形成し不可逆的に阻害"]
    E --> F["dUMP→dTMPの変換が止まる(thymineless death)"]
    C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>に取り込まれ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>機能を障害"]
    D --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>に取り込まれ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>損傷を起こす"]
    F --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>合成↓(S期特異的)"]
    J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leucovorin (folinic acid)'>ロイコボリン</span>併用"] -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='folate cofactor'>葉酸補酵素</span>を補い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ternary complex'>三者複合体</span>を安定化"| E
    K["DPD(dihydropyrimidine dehydrogenase)"] -.->|"投与量の大半を分解・不活化"| A

💡 はでは「増強剤」。 ・TS・のはの濃度が高いほど安定するため、を併用すると阻害が長く強く効く(・レジメンにが必ず入っている理由)。での「救済」目的とは真逆であることを意識する。

⚠️ DPD欠損は/に共通する最重要の安全性事項で、投与前検査は「できれば」ではなく文書の要求になっている。 によりDPD活性が低下・欠損していると、通常投与量でも重度の骨髄抑制・・下痢・神経毒性が急速に進行し致死的になりうる。

  • 米国:注射用の添付文書は2025年10月の改訂でを新設し、逐語で「緊急に治療を要する場合を除き、投与前にDPYD遺伝子の変異を検査する」「完全欠損となる特定の・では投与を避ける」と定める。同じ5.1が「DPYD検出用の承認検査は現時点で存在しない」とも述べ、では用量を個別化しと治療の意図に応じて調節するとしている1
  • EU:EMAが2020年4月30日付で投与前のDPD表現型(血中濃度)または遺伝子型の検査を推奨し、完全欠損者への投与を禁忌とした2。加盟国のSmPCでは実際に 4.3 の禁忌欄にDPD完全欠損が置かれ、4.4は血中 16 ng/mL以上150 ng/mL未満を、150 ng/mL以上を完全欠損の目安とする3

⚠️ 「禁忌」と「避ける」は同じではない。 米国の注射用添付文書の 4 CONTRAINDICATIONS は逐語で「None.」で、DPD完全欠損は禁忌欄ではなくと5.1に置かれている1。どちらの国の文書の話かを書かずに「禁忌」と書かない。

薬物動態

項目 値・特徴
IV(・)、外用()
経口吸収 不規則で予測できないため経口製剤は基本的に使わない(がとして代替)
代謝 肝・全身のDPDにより投与量の80〜85%が速やかに分解()
排泄 代謝物として
半減期 短い(十〜数十分)。で組織内曝露時間を確保する

適応

領域 使いどころ
消化器 大腸癌(・の基幹)、胃癌、、
肛門・皮膚 (+放射線療法との併用、)、・(外用)
(外用) (外用、への局所治療)

用法・用量

IV(/、に基づく。との併用が標準)。外用は用(表在性病変への局所塗布)。実際のレジメン・投与スケジュールは適応・併用薬・DPD活性で大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌欄の中身は国ごとに別の文書が決めており、この薬では米国とで形が大きく違う。

禁忌欄(注射剤) DPD完全欠損の扱い
米国(DailyMed、Fresenius Kabi版、2026年3月改訂) 4 CONTRAINDICATIONS は逐語で「None.」1 禁忌欄ではなくと5.1で「投与を避ける」1
加盟国(スペイン、2026年5月改訂のSmPC) 4.3 が挙げるのはDPD完全欠損、DPD、・添加剤への過敏症、重篤な感染症(帯状疱疹・水痘など)、著しい、放射線治療や他のによる骨髄抑制、非悪性腫瘍の治療、重度、ブリブジン/ソリブジンまたはそのによる治療(中止後4週間はあける)、3 4.3 の禁忌そのもの3

💡 米国の「None.」は「この薬に禁忌が無い」ではなく、読んだ1文書についての事実である。 逆にのSmPCは妊娠を4.3に置かずだけを置いており(妊娠は4.6で扱う)、「妊娠は禁忌」という覚え方も国と文書を確かめてから書く。

  • ⚠️ 妊娠・授乳:EUのSmPCはを4.3の禁忌に置き、妊娠は4.6で扱う——胎児障害を起こしうるとして妊娠可能な女性には治療中と終了後6か月まで極めて有効な避妊を指示し、男性にも治療中と終了後6か月は挙児を避けるよう求める(治療前に妊孕性温存の相談を勧めている)3
  • ⚠️ によるDPD欠損は致死的毒性のリスク因子で、米国・とも投与前の検査が求められている(上記「DPD欠損」の節)
  • ⚠️ による心毒性:投与中〜直後の胸痛(〜心筋梗塞様)が起こりうる。既往のでは特に注意。米国添付文書 5.2 は狭心症・心筋梗塞/虚血・不整脈・心不全を挙げ、危険因子として急速静注よりもと冠動脈疾患の存在を挙げ、発現時はするとしている1
  • ⚠️ 肝疾患などの原因がなくてもをきたしうる(米国添付文書 5.3)1
  • ⚠️ のはウリジントリアセタートであってではない(はむしろの効果を増強する側)。米国添付文書の 10 OVERDOSAGE は逐語で「Administer uridine triacetate within 96 hours following the end of fluorouracil infusion for management of fluorouracil overdose.」=終了後96時間以内の投与を指示する1。⚠️ これは米国の規定である——加盟国(スペイン)のSmPCの 4.9 は投与中止・支持療法と4週間以上の血液学的モニタリングを述べるだけで、ウリジントリアセタートに一言も触れていない3

副作用

頻度 内容
高頻度 下痢、・、悪心
注意 (で目立つ)、骨髄抑制(血算でモニタリング)
重篤・まれ 胸痛を伴う性心毒性、DPD欠損例での重度・神経毒性

まとめ

  • の原型。類似体として(TS)を阻害しdTMP合成を止める(S期特異的)。
  • DPDが分解の。によるDPD欠損は致死的毒性のリスク因子で、投与前の検査は米国・とも文書の要求になっている(米国は2025年10月新設ので「緊急に治療を要する場合を除き」検査し完全欠損では投与を避ける、はEMAが2020年に検査を推奨し完全欠損は禁忌)。
  • ⚠️ 禁忌欄の中身は国で違う。 米国の注射剤ラベルの4 CONTRAINDICATIONS は「None.」、加盟国のSmPCは4.3に複数項目(DPD完全欠損・など)を置く。国を書かずに「の禁忌は」と書かない。
  • のはウリジントリアセタート(米国添付文書は終了後96時間以内)。はではなく効果増強薬である。
  • 併用でTS阻害を増強する(の「救済」とは逆の使い方)。
  • 経口吸収が不安定なため経口では使わない——経口が必要なら()。
  • 大腸癌・胃癌・・などGI癌の基幹薬。外用では・表在性BCCにも使う。
  • による心毒性(胸痛)に注意。骨髄抑制・・下痢・が代表的副作用。

出典

  1. 1.Fluorouracil injection, solution — prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed/Fresenius Kabi USA, LLC)・2026)注射用フルオロウラシルの現行SPL(Fresenius Kabi USA。印字は Revised: 3/2026)を自分で開いて確認した。RECENT MAJOR CHANGES は Boxed Warning・2.1・5.1 をいずれも 10/2025 と記す。枠組み警告の逐語は「Test patients for genetic variants of DPYD prior to initiating fluorouracil unless immediate treatment is necessary. Avoid use of fluorouracil in patients with certain homozygous or compound heterozygous DPYD variants that result in complete DPD deficiency.」であり、5.1 は「An FDA-authorized test for the detection of the DPYD gene to identify patients at risk of serious adverse reactions with fluorouracil is not currently available.」、部分欠損については「individualize the dosage and modify based on tolerability and intent of treatment」とする。⚠️ 4 CONTRAINDICATIONS は逐語で「None.」で、DPD完全欠損は禁忌欄ではなく枠組み警告と5.1に置かれている。5.2 Cardiotoxicity は狭心症・心筋梗塞/虚血・不整脈・心不全を挙げ、危険因子として急速静注より持続点滴・冠動脈疾患の存在を挙げる。5.3 は肝疾患などの原因がなくても高アンモニア血症性脳症をきたしうるとする。10 OVERDOSAGE は逐語で「Administer uridine triacetate within 96 hours following the end of fluorouracil infusion for management of fluorouracil overdose.」である。12.5 は白人集団の3〜5%が部分欠損・0.2%が完全欠損で、黒人/アフリカ系集団では欠損の頻度がより高いと推定されるとする。閲覧 2026-09-17
  2. 2.EMA recommendations on DPD testing prior to treatment with fluorouracil, capecitabine, tegafur and flucytosine(European Medicines Agency・2020)2020年4月30日付の本文を取得し、逐語「Patients should be tested for the lack of the enzyme dihydropyrimidine dehydrogenase (DPD) before starting cancer treatment with fluorouracil given by injection or infusion (drip) or with the related medicines, capecitabine and tegafur.」と「Patient who completely lack DPD must not be given any fluorouracil medicines.」を確認した。すなわちEUでは投与前のDPD欠損の検査(表現型=血中ウラシル濃度、または遺伝子型)が推奨され、完全欠損者への投与は禁忌である。閲覧 2026-09-17
  3. 3.Ficha técnica FLUOROURACILO ACCORD 50 mg/ml SOLUCION INYECTABLE O PARA PERFUSION(Agencia Española de Medicamentos y Productos Sanitarios(CIMA、登録番号71868)・2026)EU加盟国(スペイン)で販売中の注射用フルオロウラシルのSmPCを取得して確認した。10項の改訂年月は Mayo 2026。4.3 の禁忌は箇条書き9項目に散文が混じる構造(数え方が原文で一意に決まらないので項目数は書かない)で、DPDに関する2つの逐語は「Fluorouracilo (5-FU) no debe administrarse a pacientes homocigotos para dihidropirimidina deshidrogenasa (DPD).」と「Tienen deficiencia completa conocida de dihidropirimidina deshidrogenasa (DPD)」である。ほかに有効成分・添加剤への過敏症、重篤な感染症(帯状疱疹・水痘など)、著しい消耗、放射線治療や他の抗腫瘍薬による骨髄抑制、非悪性腫瘍の治療、重度肝機能障害、ブリブジン/ソリブジンまたはその類縁体による治療、授乳期が挙がる。⚠️ 妊娠は4.3ではなく4.6にあり、妊娠可能な女性には治療中と終了後6か月の避妊、男性にも同6か月の避妊を求め、治療前の妊孕性温存の相談を勧めている。4.4 の Pruebas para la deficiencia de DPD は逐語で「Se recomienda un análisis fenotípico y/o genotípico antes de iniciar el tratamiento」=投与前の表現型および/または遺伝子型検査を推奨し、血中ウラシル 16 ng/mL 以上150 ng/mL 未満を部分欠損、150 ng/mL 以上を完全欠損の目安とする。⚠️ 4.9 Sobredosis は投与中止と支持療法・4週間以上の血液学的モニタリングを述べるだけで、ウリジントリアセタートには一言も触れていない(全文で uridin の語は0件)。閲覧 2026-09-17