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Drug Atlas · B3 Other / その他 · 必修

ロイコボリン

leucovorin

分類
Vitamins / ビタミン
商品名(日本)
ロイコボリン
商品名(EU)
Wellcovorin
科目
Pharmacology
トピック
B28: Immunopharmacology I (cytotoxic agents)B31: Drugs used in cancer treatment I (antimetabolites)
副作用
下痢
相互作用
スルファメトキサゾール+トリメトプリム
対象疾患
トキソプラズマ症原発性中枢神経系リンパ腫
対象薬
メトトレキサート

🧠 全体像カルシウム)は、すでに還元された活性型の葉酸そのもの——DHFR()を経由せずに細胞が直接利用できる葉酸である。この一点が、拮抗薬と組み合わせたときに正反対の2つの顔を生む。メトトレキサートの高用量療法やでは、DHFR阻害による正常細胞への毒性を「救済」する目的で使う一方、では標的酵素との複合体を安定化させて効果を「増強」する目的で使う。同じ薬が「守る」ためにも「攻める」ためにも使われる、レジメンの理解に欠かせない脇役である。

薬効群の中での位置づけ

葉酸関連の3剤は、DHFRを経由するかどうかで役割が分かれる。

薬剤 DHFRとの関係 主な役割
葉酸 DHFRで活性化されて初めて使える 生理的な葉酸補充(欠乏性貧血、予防)
すでに活性型でDHFRを経由しない 拮抗薬の毒性からの救済、または5-FUの効果増強
ビタミンB12 別経路(の補因子) の補充のうち神経障害を伴う

「葉酸はDHFR依存、はDHFR非依存」という一点が、低用量メトトレキサート療法で葉酸を、高用量メトトレキサート療法でを使い分ける理由と直結する。 低用量の関節リウマチ治療で併用するのが葉酸なのは、葉酸自体がDHFRを経由しなければ活性化されず、DHFRが阻害されている状況では抗葉酸作用を打ち消しきれないからである(低用量での抗炎症作用はアデノシン放出の増加など別経路が主体と考えられている点も合わさり、・消化器症状・肝障害だけを減らせる)。逆に高用量療法のを救済する場面では、DHFRを迂回して活性型がそのまま入るでなければ意味がない——同じ理由で、を漫然と併用すれば抗葉酸作用そのものを打ち消しうる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='folate metabolism'>葉酸代謝</span>拮抗薬<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyrimethamine'>ピリメタミン</span>・高用量メトトレキサート)がDHFRを阻害"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydrofolate (DHF)'>ジヒドロ葉酸</span>→活性型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tetrahydrofolate (THF)'>テトラヒドロ葉酸</span>)への<br>還元が止まる"]
    B --> C["宿主細胞・原虫ともに<br>活性型葉酸が枯渇し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid synthesis'>核酸合成</span>が止まる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leucovorin (folinic acid)'>ロイコボリン</span>(すでに還元された活性型葉酸)を補充"]
    D --> E{"DHFRを経由せず<br>活性型葉酸をそのまま利用できるか"}
    E -->|"宿主細胞:できる"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid synthesis'>核酸合成</span>が回復し<br>骨髄抑制などの毒性から救済される"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Toxoplasma'>トキソプラズマ</span>等の原虫:できない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='reduced folate'>還元型葉酸</span>の取込み経路を持たない"| G["恩恵を受けられず<br>抗原虫・抗<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor effect'>腫瘍効果</span>は保たれる"]
    D -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-fluorouracil'>5-フルオロウラシル</span>では<br>別の役割"| H["FdUMP・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thymidylate synthase'>チミジル酸合成酵素</span>との<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ternary complex'>三者複合体</span>を安定化"]
    H --> I["阻害が長く強く効く<br>(『救済』ではなく『増強剤』として働く)"]

💡 「救済」と「増強」は矛盾しない。 どちらも「宿主細胞・標的酵素へ活性型葉酸を直接届ける」という同じ性質から生まれる。メトトレキサート・では標的以外(正常細胞・宿主)を守るために使い、5-FUでは標的そのものの阻害複合体)を強化するために使う。

薬物動態

経口・筋注・静注いずれの経路でも投与できる(高用量では静注が主体)。吸収後は速やかに活性型に変換され、DHFRを経由せずにすぐ利用可能になる。高用量メトトレキサート療法では、投与開始から24時間以内に救済を開始し、血中メトトレキサート濃度が10⁻⁸ M未満になるまで6時間ごとに継続するのが標準的な考え方で、開始が40時間を超えて遅れると組織毒性が不可逆になりうる1を持つのはL体(レボ)のみで、(通常の)はL体の実質2倍量を投与する換算になる。

適応

領域 使いどころ
高用量メトトレキサート救済 メトトレキサートによる(MAP療法)・・中枢神経浸潤リンパ腫などの高用量療法時の骨髄・粘膜毒性軽減
増強 大腸癌(FOLFOX・FOLFIRI)、、胃癌・(FLOTレジメン)などでと併用し抗を増強
の救済 療法(・AIDS患者の脳炎・妊婦の胎児感染確定後)での骨髄抑制予防
葉酸欠乏性貧血 経口葉酸が使用・吸収できない場合の代替補充
脳葉酸輸送欠損症 α(FOLR1)の変異により髄液中5-メチルが低下する病態に対し、2026年3月に米国で経口が初の治療薬として承認された2
その他( 中毒での蟻酸代謝促進の補助(中毒で補助的に用いるのはでありではない)

用法・用量

高用量メトトレキサート療法では、後の血中メトトレキサート濃度をモニタリングしながら24時間以内に救済を開始し、濃度がに下がるまで継続する。腎機能低下や排泄遅延(貯留)があれば増量・投与延長で対応する。5-FUレジメンでは5-FU投与の前または同時に併用するのが標準。治療での用量は、投与期間中〜投与後数日にわたり継続することが多い。実際の用量・・投与期間はレジメン・年齢・腎機能で大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ Pneumocystis jirovecii肺炎(PCP)の治療でST合剤にを併用してはならない。 とは異なり、Pneumocystisはを取り込める可能性があり、AIDS患者のPCP治療でST合剤にを併用したRCT(92例)では、好中球減少はむしろ少なかった(23% vs 47%)にもかかわらず、群に比べ率が有意に高く(15% vs 0%、P=0.01)、死亡も多かった(11% vs 0%。生存解析では P=0.02)3を懸念してPCP治療にを安易に追加しない。
  • B12欠乏を除外せずにを投与しない。 薬剤全般に共通する注意点で、DNA合成は改善しても神経症状の進行を隠しうる1
  • は禁忌。 致死的な性を来しうる1
  • 5-FUと併用すると下痢・などの消化管毒性が増強されるため、・支持療法をあらかじめ計画する。

副作用

頻度 内容
高頻度 は高く、単独投与での重大な副作用は乏しい
注意 5-FUとの併用時に下痢・骨髄抑制が増強される
重篤・まれ 過敏反応(まれ)、誤ってした場合の致死的

まとめ

  • はすでに還元された活性型葉酸で、DHFRを経由せず利用できる点が全ての作用の起点。
  • メトトレキサートの高用量療法・では正常細胞・宿主を守る「救済」では複合体を安定化する「増強」という正反対の目的で使われる。
  • の治療でを併用できるのは、原虫がの取込み経路を持たず抗原虫効果が保たれるため。
  • ⚠️ Pneumocystis肺炎のST合剤治療にはを併用しない。 とは事情が異なり、・死亡のリスクを上げるというの結果がある。
  • 高用量メトトレキサート療法では投与開始24時間以内に救済を始め、40時間を超える遅延は不可逆的毒性のリスクを高める。
  • は致死的となりうるため禁忌。B12欠乏を除外せずにへ単独投与しない。

出典

  1. 1.Leucovorin(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)機序・適応・投与法(10 mg/m²を6時間ごと、40時間を超えると不可逆的毒性のリスク)・B12欠乏マスクのリスク・髄腔内投与の危険性閲覧 2026-08-10
  2. 2.Adjunctive folinic acid with trimethoprim-sulfamethoxazole for Pneumocystis carinii pneumonia in AIDS patients is associated with an increased risk of therapeutic failure and death(Journal of Infectious Diseases・1994)AIDS患者のPCP治療(92例)でST合剤にロイコボリンを併用した群は、好中球減少は少なかった(23% vs 47%)ものの、プラセボ群と比べ治療失敗率が高く(15% vs 0%、P=0.01)、死亡も多かった(11% vs 0%、P=0.06。生存解析では P=0.02)という二重盲検RCT閲覧 2026-08-10
  3. 3.FDA Approves Wellcovorin (leucovorin) for Patients With Cerebral Folate Deficiency(CheckRare(FDA承認を報じた希少疾患専門メディア。FDAプレスリリースの二次情報)・2026)2026年3月、FDAが経口ロイコボリン(Wellcovorin)を葉酸受容体1遺伝子(FOLR1)変異を確認した成人・小児の脳葉酸欠乏症(CFD-FOLR1)に対する初の治療薬として承認したこと。承認根拠は46例の公表文献のシステマティックレビューで、経口投与27例中24例で神経症状の改善、27例全例で髄液5-MTHF濃度の上昇が報告されたこと閲覧 2026-08-10