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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬 · 必修

ピリメタミン

pyrimethamine

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬
科目
Pharmacology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs
承認適応
トキソプラズマ症
標的微生物
Toxoplasma gondii
副作用
発疹
監視検査値
血算

🧠 全体像治療の基幹薬であり、を阻害して原虫のを止めるである。だが、この薬を理解する本当の軸は単剤の薬理ではなく「必ず葉酸)と3点セットで使う」という運用にある。DHFRはヒト細胞にも存在するため、単独では骨髄抑制という宿主毒性を避けられない。(すでに還元された活性型葉酸)を同時に補うことで、DHFRを経由できる宿主細胞だけが救済され、の取込み経路を持たない原虫は救済されない——この「宿主だけを守り、原虫は見捨てる」という選択的の仕組みこそが、という薬の核心である。

薬効群の中での位置づけ

の中では、マラリア用DHFR阻害薬()と機序を共有しながら標的とする原虫が異なる。

薬剤 標的 DHFR阻害の対象 特徴
Toxoplasma gondii(スルファドキシンとの合剤ではPlasmodium属も) のDHFR との3剤併用が原則
Plasmodium のDHFR 通常と併用(・治療)
ST合剤成分 細菌 細菌のDHFR DHPS阻害()と連続してブロックする設計

「DHFR阻害薬」というカテゴリーは標的の種(原虫・細菌)で使い分けられており、はその中で治療の中心を担う薬という位置づけを押さえる。 自体はスルファドキシンとの合剤としてマラリアにも用いられるが、本ノートはでの用途を扱う。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyrimethamine'>ピリメタミン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DHFR'>ジヒドロ葉酸還元酵素</span>を阻害"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydrofolate (DHF)'>ジヒドロ葉酸</span>→活性型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tetrahydrofolate (THF)'>テトラヒドロ葉酸</span>)への還元が止まる"]
    B --> C["活性型葉酸が枯渇し核酸(プリン・ピリミジン)合成が止まる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Toxoplasma'>トキソプラズマ</span>の増殖が抑制される"]
    B --> E["宿主(骨髄)細胞でも同様に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid synthesis'>核酸合成</span>が障害される"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leucovorin (folinic acid)'>ロイコボリン</span>(すでに還元された活性型葉酸)を併用"]
    F --> G{"DHFRを経由せず活性型葉酸を直接利用できるか"}
    G -->|"宿主細胞:できる"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid synthesis'>核酸合成</span>が回復し骨髄抑制から救済される"]
    G -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Toxoplasma'>トキソプラズマ</span>:できない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='reduced folate'>還元型葉酸</span>の取込み経路を持たない"| I["救済されず抗原虫効果は保たれる"]

💡 との併用は「同じ経路の上流と下流を同時に叩く」設計。 は葉酸新規合成の上流()を、は下流のDHFRを阻害する二段階ブロックで、単剤より強力に原虫の葉酸依存経路を止める。

薬物動態

項目 値・特徴
半減期 約96時間と非常に長い——1日1回投与が可能な根拠1
標準的な用量設定 初回負荷投与200 mg、以後は体重で分けた60 kg未満は1日50 mg、60 kgを超える場合は1日75 mg2

適応

領域 使いどころ
感染症 ——、AIDS患者の、妊婦の胎児感染において、(または時はクリンダマイシン)+との3剤併用が基本3

⚠️ 胎児感染が未確定な妊婦にはを使わない。 その段階では性の低いを用い、胎児感染が確定して初めてへ切り替える。

用法・用量

初回負荷投与200 mgの後、体重に応じて50 mg/日(60 kg未満)または75 mg/日(60 kgを超える場合)として継続する2は全患者に併用し、高用量投与例ではを含む血算を週2回モニタリングすることが推奨されている1。実際の投与期間・は病態(・AIDS患者の急性期・など)で異なるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ 必ずを併用する。 併用なしでは治療域の用量でも骨髄抑制(・血小板減少・)を来しうる1
  • ⚠️ 妊娠中の投与は利益がリスクを上回る場合に限る。 )で・多指(趾)症・などの催奇形性所見が高用量で確認されている1。胎児感染が未確定な段階ではを優先する
  • との併用時は過敏反応(を含む)のリスクに注意——添付文書は併用時に特にこのリスクを強調している1
  • が既にある患者への投与は避ける(骨髄抑制をさらに悪化させうる)

副作用

頻度 内容
高頻度 骨髄抑制(・血小板減少)——併用により軽減される
注意 発疹を含む過敏反応。併用時はより重篤な皮膚粘膜反応のリスクが高まる
重篤・まれ ・アナフィラキシー(主に併用時)

まとめ

  • はDHFR阻害によるで、治療の基幹薬。(上流のを阻害)との二段階ブロックでに働く。
  • との併用が必須——宿主細胞はDHFRを経由せず活性型葉酸を利用できるため骨髄抑制から救済されるが、原虫はを取り込めないため抗原虫効果は保たれるという選択的の仕組みによる。
  • 半減期は約96時間と長く、初回負荷200 mg+体重別(50 mg/日または75 mg/日)という用量設計が特徴的。
  • 妊娠中の投与はで確認された催奇形性のため利益がリスクを上回る場合に限り、胎児感染が未確定な段階ではを優先する。
  • との併用時は骨髄抑制に加えて重篤な皮膚粘膜反応(等)のリスクにも注意する。

出典

  1. 1.Toxoplasmosis(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2024)トキソプラズマ症治療の標準レジメンがピリメタミン(初回負荷投与200 mg、以後体重60 kg未満は1日50 mg、60 kgを超える場合は1日75 mgを維持投与)+サルファジアジンであり、サルファジアジンによる葉酸合成阻害を補うために葉酸系薬剤を併用することを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.DARAPRIM (pyrimethamine) tablets — Prescribing Information(FDA(DailyMedに掲載の添付文書)・2017)ピリメタミンは葉酸拮抗薬で血漿半減期が約96時間と長く、巨赤芽球性貧血・白血球減少・血小板減少・汎血球減少を治療域用量でも来しうるため全患者にロイコボリン(folinic acid)の併用投与を強く推奨し、高用量投与例では血小板数を含む血算を週2回モニタリングすべきであること、動物実験(ラット)で口蓋裂・小顎症・多指(趾)症・小眼球症などの催奇形性所見が確認されており妊娠中の投与は利益がリスクを上回る場合に限るべきであることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Combination of Clindamycin and Azithromycin as Alternative Treatment for Toxoplasma gondii Encephalitis(Emerging Infectious Diseases・2019)AIDS患者のトキソプラズマ脳炎治療でピリメタミン+クリンダマイシンがピリメタミン+サルファジアジンの代替として位置づけられ、クリンダマイシンはサルファジアジンより副作用が少ないことを確認した閲覧 2026-08-10