薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬 · 必修

ペンタミジン

pentamidine

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬Antifungals / 抗真菌薬
科目
Pharmacology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugsC4: Antifungal agents
承認適応
ニューモシスチス肺炎リーシュマニア症
標的微生物
Pneumocystis jiroveciiLeishmania donovaniLeishmania tropicaLeishmania braziliensisTrypanosoma brucei
副作用
血圧低下動悸
影響検査値
血糖クレアチニンマグネシウム

🧠 全体像は「分類が真菌薬にもにもまたがる」という一点で覚える薬である。ジアミジンとして原虫・真菌の合成やRNAポリメラーゼ活性を阻害するが、その臨床的な立ち位置は大半の適応で「他のが使えないときの代替薬」である——ではST合剤が使えないアレルギー患者の代替、では複雑な皮膚型に対する複数選択肢の一つという位置づけである。唯一の例外がアフリカ)の第1期で、ここではになる1。もう一つの顔は、多臓器にまたがる重篤な副作用プロファイル(低血糖→高血糖、膵炎、QT延長、腎毒性、急速静注時の低血圧)を併せ持つ「使うなら理由が要る薬」という点であり、経口吸収が悪いため静注・筋注・吸入にが限られることとも表裏一体である。

薬効群の中での位置づけ

・抗真菌薬のいずれの枠組みでも、は基本的に「代替薬」という立ち位置を持ち、アフリカ第1期だけが例外的に第一選択となる。

領域 第一選択 の位置づけ
PCP治療・予防 ST合剤 アレルギー時の代替。治療は静注・予防は吸入というの使い分けがある
アフリカ 第1期(血液リンパ期) (4 mg/kg/日を筋注または静注で7〜10日間)1。中枢神経に移行しないため第2期には使えない
(地域により経口筋注) 主要な第一選択レジメンには含まれない
複雑な 原虫種・地域・妊娠・併存症で個別化 と並ぶ選択肢の一つ2

「なぜ第一選択にならないのか」の答えは、機序の特異性の低さと副作用の多さにある。 合成・RNAポリメラーゼ阻害という機序は原虫・真菌の細胞に選択的とは言えず、宿主側の・心筋・腎尿細管にも作用してしまう。この「の低さ」が、下記の多彩な副作用プロファイルの根底にある。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pentamidine'>ペンタミジン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aromatic'>芳香族</span>ジアミジン)が病原体細胞内に取り込まれる"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyamine'>ポリアミン</span>合成を阻害"]
    A --> C["RNAポリメラーゼ活性を阻害"]
    B --> D["蛋白質・核酸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='folate metabolism'>葉酸代謝</span>に必要な<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyamine'>ポリアミン</span>が枯渇"]
    C --> E["mRNA合成が障害される"]
    D --> F["Pneumocystis・Leishmania等の<br>増殖・生存が阻害される"]
    E --> F
    F --> G["経口吸収がきわめて不良なため<br>静注・筋注・吸入投与に限られる"]

💡 が低い薬という理解が、副作用プロファイルの多彩さを説明する。 合成・RNAポリメラーゼは病原体に限らず細胞にも存在する経路であるため、)・心筋(QT)・腎尿細管(電解質再吸収)など複数の宿主組織が巻き込まれる1

薬物動態

項目 値・特徴
経口吸収 きわめて不良——は行わない
静注・筋注(:3〜4 mg/kgを14〜21日間、予防投与:4 mg/kgを月1回)、または吸入(300 mgを4週ごと、PCP予防に特化)1
半減期 長い(10〜14日)——組織への強い分布・蓄積を反映する1

吸入投与はPCP「予防」にしか使わない。 吸入経路は肺局所への到達に限られ全身の(治療)はカバーできないため、PCP治療には必ず静注・筋注を用いる。

適応

領域 使いどころ
呼吸器・感染症 ——ST合剤にアレルギーがある場合の治療(静注)・予防(吸入)の代替
熱帯医学・ のうち複雑な皮膚型(多発・大型病変、顔面/関節部、免疫不全、粘膜病変リスクを伴う例)の全身治療の選択肢の一つ2
熱帯医学(第一選択) アフリカ)の第1期=血液リンパ期——4 mg/kg/日を筋注または静注で7〜10日間1

用法・用量

PCP治療:静注または筋注で3〜4 mg/kgを14〜21日間PCP予防:吸入なら300 mgを4週ごと、非経口なら4 mg/kgを月1回1アフリカ(第1期):4 mg/kg/日を筋注または静注で7〜10日間1では原虫種・地域・病変の複雑さに応じてレジメンが個別化される。急速な静注は重篤な低血圧を誘発しうるため、緩徐な投与とし、投与中・投与後の血圧モニタリングを行う。実際の用量・・投与期間は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ 急速静注により重篤な血圧低下を来しうる。 必ず緩徐に投与し、投与中は血圧をモニタリングする
  • ⚠️ QT延長・のリスク。 の既往・疑いには使用を避け、他のQT延長薬(キノロン系・マクロライド系・・抗精神病薬など)との併用に注意する1
  • ⚠️ 膵炎:致死例の報告があり、膵炎を示唆する症状が出現すれば中止する1
  • 腎毒性:電解質異常()を伴いうるため腎機能・電解質をモニタリングする
  • 経口吸収不良のためでは効果が期待できない(を誤らない)

副作用

頻度 内容
高頻度 低血糖のインスリン放出亢進による)——後に高血糖・糖尿病へ進行することがある1
注意 急速静注時の血圧低下を伴いうるQT延長・不整脈、腎毒性(電解質異常)
重篤・まれ (致死例あり)、重症不整脈、吸入投与時の・咳嗽

まとめ

  • ジアミジンで、合成・RNAポリメラーゼ活性の阻害を機序とする抗原虫・抗真菌薬であり、の低さが多彩な副作用の背景にある。
  • 臨床的にはほとんどの適応で「第一選択が使えないときの代替薬」という位置づけで、PCPではST合剤アレルギー患者の治療(静注)・予防(吸入)の代替、複雑なでは複数選択肢の一つとして使う。例外はアフリカ第1期で、ここではになる。
  • 経口吸収がきわめて不良なため静注・筋注・吸入にが限られ、吸入はPCP予防専用(治療には使えない)。
  • 低血糖→高血糖への進行、、QT延長・不整脈、急速静注時の重篤な血圧低下、腎毒性という多臓器にまたがる副作用プロファイルを持つため、緩徐な投与とモニタリングが欠かせない。
  • 半減期が10〜14日と長く、組織への強い蓄積を反映する。

出典

  1. 1.Pentamidine(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2023)ペンタミジンの機序(ポリアミン合成・RNAポリメラーゼ活性阻害)、投与経路(静注・筋注は3〜4 mg/kgを14〜21日間の治療用量、または4 mg/kgを月1回の予防投与、吸入は300 mgを4週ごとの予防投与)、経口吸収不良のため非経口・吸入投与に限られること、半減期が10〜14日と長いこと、適応としてニューモシスチス肺炎・リーシュマニア症に加えアフリカトリパノソーマ症があり第1期(血液リンパ期)では第一選択薬(4 mg/kg/日を筋注または静注で7〜10日間)であること、主要な副作用(低血糖から高血糖への進行、膵炎、QT延長・トルサード・ド・ポワントを含む不整脈、腎毒性に伴う高カリウム血症・低マグネシウム血症、急速静注時の低血圧)を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Diagnosis and Treatment of Leishmaniasis: Clinical Practice Guidelines by IDSA and ASTMH(Infectious Diseases Society of America / American Society of Tropical Medicine and Hygiene・2016)複雑な皮膚リーシュマニア症(多発・大型病変、顔面/関節部、免疫不全、粘膜病変リスクを伴う例)に対する全身治療の選択肢の一つとしてペンタミジンが位置づけられていることを確認した閲覧 2026-08-10