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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

リーシュマニア症

Leishmaniasis

臓器系
感染症皮膚
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
微生物学 4/21:リーシュマニア皮膚科 1-12:ハンセン病とリーシュマニア症の臨床病型・治療
鑑別疾患
スポロトリコーシス
関連疾患
ハンセン病
治療薬
アムホテリシンBミルテホシンスチボグルコン酸ナトリウムパロモマイシン
原因微生物
Leishmania donovaniLeishmania tropicaLeishmania braziliensisLeishmania infantum
症状
掻痒体重減少発熱
下位分類
カラアザール後皮膚リーシュマニア症
適応薬
スチボグルコン酸ナトリウムパロモマイシンペンタミジンミルテホシン

🧠 全体像:はが媒介する感染で、寄生虫がどこまで広がるかで臨床像が決まる。皮膚にとどまれば皮膚型、粘膜まで破壊すれば、全体に播種すれば内臓型(最も致死的)になる。治療は「どの型にも同じ薬」ではなく、・原虫種・・宿主を統合して個別に選ぶことが現行方針の核心である。

病原体と生活環

リーシュマニア属はので、に媒介される。20種を超える原虫がヒト疾患を起こし、同じでも地域により原因種と薬剤反応が異なる。は都市部ではヒト、農村部では・イヌなどの動物であり、人獣共通感染症としての性格を持つ。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sandfly'>サシチョウバエ</span>が吸血<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='promastigote'>前鞭毛型</span>を皮膚に注入"] --> B["マクロファージに貪食される"]
  B --> C["マクロファージ内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amastigote'>無鞭毛型</span>に変化"]
  C --> D["細胞内で増殖し宿主細胞を破壊"]
  D --> E{"感染の広がりの深さ"}
  E -->|"皮膚にとどまる"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cutaneous leishmaniasis'>皮膚リーシュマニア症</span>"]
  E -->|"粘膜まで破壊"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucocutaneous leishmaniasis'>粘膜皮膚リーシュマニア症</span>"]
  E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticuloendothelial system, RES'>網内系</span>へ播種"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visceral leishmaniasis'>内臓リーシュマニア症</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='kala-azar'>カラアザール</span>)"]

臨床像:3つの型

病型 主な原因種 臨床像 特に注意する点
L. tropicaなど(旧世界) 刺咬部の→掻痒・。硬化しながら瘢痕を残して治癒 潰瘍段階でを合併しやすい
L. braziliensisと、同じのL. panamensis・L. guyanensisなど(新世界) 鼻閉・が最初で最も多い症状。進行すると口腔・咽頭・喉頭の炎症、潰瘍、などの組織破壊。皮膚病変からの間隔は典型的には数年だが、30日未満から数十年までの幅がある1 へ進むのはこれら原虫種による皮膚感染の少数にとどまり、皮膚病変と同時にも遅れても起こる1。皮膚病変の既往が無くても発症しうる。気道・に至り得るため全例で全身治療の対象となる
() L. donovani、L. infantum 長期発熱、体重減少、肝脾腫、(赤血球・白血球・血小板すべての低下)、腎障害 最も致死的。未治療では致死的。治療後も色素沈着病変()を残すことがある

⚠️ を単一の原虫種だけに固定しないこと。地域(旧世界か新世界か)と(免疫状態、妊娠など)を合わせて評価する。

診断

  • 確定診断は病変組織のなどによるの鏡検・培養・である。
  • 内臓型で採取部位ごとの陽性率は93〜99%、52〜85%、リンパ節穿刺52〜58%で、が最も高い。しかしの報告があるため北米では診断手順に組み込まれず、感度は劣るが安全なを第一の検体とする(肝・腫大リンパ節・全血バフィーコートも検体になる)1。血液・液のは鏡検より明らかに感度が高いが、実施できるのは紹介病院や研究施設に限られる2。
  • rK39抗原を用いた迅速免疫クロマト検査は、症状のあるVL(感染の可能性が低い集団)を対象とした13報ので感度94%・特異度91%だが、東アフリカでは感度が75〜85%に落ちる(南アジア・中南米より低い)。中南米ではや皮膚型で偽陽性が出る。したがって単独の確定診断法としては推奨されず、より侵襲的な検査へ進む判断材料として使う1。免疫不全患者では抗体が陰性になりうるため、疑いが強ければ抗体の結果で組織検査を止めない。
  • ⚠️ 抗体検査は治癒判定にもにも使えない。 治癒後も数年にわたり抗体が残り、とを区別できない。再発の診断には寄生虫学的確認が要る21。
  • 皮膚型・は慢性の熱帯性・を呈する点でなど他の慢性とも臨床的に鑑別が必要になりうるため、確定診断には組織検査が有用である。では医による生検が診断確定と他疾患の除外の双方に有用である1。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endemic region'>流行地域</span>曝露歴+臨床像から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leishmaniasis'>リーシュマニア症</span>を疑う"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Clinical Types'>臨床型</span>"}
    B --> C["皮膚型:病変組織の鏡検・培養・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymerase chain reaction'>PCR</span>"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucocutaneous form'>粘膜皮膚型</span>:病変組織に加え全身評価"]
    B --> E["内臓型:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow aspiration'>骨髄穿刺</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amastigote'>無鞭毛型</span>を確認<br>rK39迅速検査は補助・単独では確定しない"]

治療:臨床型・原虫種・地域に応じた個別化

かつて教えられた「全病型に+」という画一的な治療は、現行のでは標準治療とされていない。皮膚型については「普遍的に適用できる治療は同定されておらず、薬剤・用量・期間は個別化すべき」と明記されている1。現在はごとにが異なる。

病型 現行の考え方
(流行地の対策プログラム) 地域で第一選択が異なる。南アジア(インド亜大陸)では免疫正常者の初回治療に単回投与の(10 mg/kg、2時間かけて)が用いられており、2026年のガイドラインもこれを前提に再発時の推奨を組み立てている。東アフリカは従来(SSG)+筋注17日間が標準だったが、は2026年7月のガイドラインで筋注20 mg/kg/日+経口(いずれも14日間)を併用より「提案する」とし、+はこのレジメンを使えない患者向けの代替にした。両者とも使えない場合に(3〜5 mg/kg/日を6〜10日、総量30 mg/kg)を用いる2
(北米など非流行地の個別診療) 免疫正常者にはを推奨し、承認用法は3 mg/kg/日を第1〜5・14・21病日(総量21 mg/kg)である(強い推奨・高い確実性)。系とのいずれも使えない場合、耐性の頻度が低い(10%未満)地域で感染した免疫正常者には(換算20 mg/kg/日)を28日間用いる1
の再発(南アジア) 単回 10 mg/kgで初回治療した地域では、寄生虫学的に確認された再発に同じ単回投与を繰り返さない。 +10日間などの併用、または総量15〜20 mg/kgのを3〜4回に分けて投与する2
単純な(など) 免疫正常で、リスクの高い原虫種によるものでない単純病変が自然治癒に向かっている場合は、患者が同意すればでよい。治療するときは・温熱療法・外用・病変内治療などのを優先する1
複雑な皮膚型(多発・大型・顔面/関節部・免疫不全・粘膜病変リスクあり) 、、、などから原虫種・地域・妊娠・併存症に応じて全身治療を選ぶ
全例に全身治療を行う(醜形などのと、・気道閉塞による死亡を防ぐ目的)。従来の選択肢は(換算20 mg/kg/日、静注または筋注、28〜30日)と(1回0.5〜1.0 mg/kg、連日または隔日、約20〜45 mg/kg)。脂質製剤(製剤で約20〜60 mg/kgと幅が広い)と経口(約2.5 mg/kg/日、最大150 mg/日、28日)は「比較的限られたデータに基づいて」近年加わった追加の選択肢であり、従来薬を置き換えたわけではない。薬剤・用量・期間は個別化する。治療前に専門医が鼻・口腔・咽頭・喉頭粘膜を全て診て病変の範囲と重症度を評価する1

⚠️ 喉頭・咽頭に病変があるでは、抗リーシュマニア薬の開始そのものが気道閉塞を起こしうる。 虫体崩壊後の炎症反応で腫脹が増悪するため、症状と的・画像的評価から気道閉塞リスクが高いと判断される例では、入院監視のうえ予防的にステロイドを併用する1。

⚠️ の2つの。 ①催奇形性があり妊娠中は禁忌。妊娠を否定できず確実な避妊もできない妊娠可能女性には使わず、投与中と投与後2か月(5〜10日の短期レジメン)または5か月(28日以上のレジメン)は避妊を続ける。②とのは「少なくとも合理的な可能性がある」との医薬品安全性が2023年に認めており、投与前の眼科的評価と、投与中および投与後の2週間ごとの眼科検査、患者への症状教育が求められる。小児はを訴えにくく監視が難しい点も選択に影響する2。

💡 の軸は「原虫種」だけでなく「病型(単純か複雑か、粘膜リスクの有無)」「における」「宿主の免疫状態・妊娠」の組み合わせであり、単一の固定レジメンに当てはめない。

⚠️ 2026年の改訂が及ぶ範囲は限られている。 対象は東アフリカの内臓型・南アジアの内臓型再発・両地域のPKDLだけで、推奨はすべて陰性患者が対象である(例は2022年の別ガイドラインが扱う)。皮膚型・、および他のについては2010年の専門委員会報告が引き続き有効とされている。また東アフリカの新レジメンの根拠となった試験は4歳未満・50歳超・妊娠授乳中・重症VL・高度・ヘモグロビン5 g/dL未満・などを除外しており、これらの患者にそのまま当てはめられない。2026年の推奨はいずれも条件付き推奨(エビデンスの確実性は低い〜非常に低い)であって、強い推奨ではない2。

まとめ

  • リーシュマニア属は感染の広がりの深さで皮膚型・・内臓型(最も致死的)に分かれる。
  • 内臓型は肝脾腫・・腎障害、皮膚型は潰瘍性丘疹と、はさらに鼻・口腔粘膜の破壊を特徴とする。
  • 確定診断は病変組織でのの証明(鏡検・培養・)による。rK39迅速検査は補助であって単独の確定診断法ではなく、抗体は治癒判定にもにも使えない。
  • 治療は・原虫種・・で個別化し、内臓型はを軸に(東アフリカでは+14日間)、単純皮膚型はや経過観察を優先し、は全例で全身治療を行う。「全病型に+IFN-γ」という画一的治療はもはや標準ではない。
  • 喉頭・咽頭に病変のあるでは治療開始後の炎症で気道閉塞が起こりうるため、入院監視と予防的ステロイドを検討する。はで、の監視が要る。

出典

  1. 1.Diagnosis and Treatment of Leishmaniasis: Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and the American Society of Tropical Medicine and Hygiene (ASTMH)(Infectious Diseases Society of America / American Society of Tropical Medicine and Hygiene・2016)皮膚リーシュマニア症には普遍的に適用できる治療は同定されておらず薬剤・用量・期間は個別化すべきとすること、rK39迅速検査は単独の確定診断法として推奨せずより侵襲的な検査へ導く目的で使うこと(メタ解析で感度94%・特異度91%、東アフリカでは感度75〜85%)、抗体検査は治癒判定に使えないこと、脾穿刺は陽性率93〜99%だが致死的出血の報告があり北米では推奨せず骨髄穿刺(52〜85%)を第一の検体とすること、新世界粘膜型は全例に全身治療を行い喉頭・咽頭病変で気道閉塞リスクがある場合は入院監視と予防的ステロイド投与を行うことを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.WHO guidelines on leishmaniases: treatment of visceral leishmaniasis and post-kala-azar dermal leishmaniasis in eastern Africa and South-East Asia(World Health Organization・2026)2026年7月28日発行のガイドライン本体で、東アフリカの内臓リーシュマニア症はパロモマイシン筋注20 mg/kg/日+経口ミルテホシン各14日間がSSG+パロモマイシン17日間より「提案される」(条件付き推奨・低い確実性)となり、SSG+パロモマイシンはこのレジメンが使えない患者向けの代替に後退したこと、南アジアで単回リポソーマルアムホテリシンB 10 mg/kgで初回治療した後の寄生虫学的に確認された再発には同じ単回投与を用いないこと、本ガイドラインの推奨はすべてHIV陰性患者を対象とし対象地域も東アフリカ・南アジアのVLとPKDLに限られること、ミルテホシンと眼有害事象の因果関係が「少なくとも合理的な可能性がある」とされ2週間ごとの眼科検査が求められることを確認した閲覧 2026-09-05