薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬 · 必修

ミルテホシン

miltefosine

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬
商品名(EU)
Impavido
科目
Pharmacology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs
承認適応
リーシュマニア症カラアザール後皮膚リーシュマニア症
標的微生物
Leishmania donovaniLeishmania braziliensis
副作用
悪心嘔吐下痢頭痛めまい腹痛
監視検査値
アミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)クレアチニン

🧠 全体像:はで唯一の経口全身治療薬という一点で他の肢(すべて注射薬)と一線を画す。もとはとして開発されたで、原虫の代謝を撹乱してアポトーシス様の細胞死を誘導する。できる利便性の代償として強い催奇形性(妊娠は)というを抱え、この二面性が臨床での使い分けの軸になる。2026年7月のガイドライン改訂(推奨1.1)では、東アフリカのでとの併用が+より「提案される」(条件付き推奨・低い確実性)となり、従来の主役だった()は同併用が除外される患者向けの位置づけ(推奨1.2)にした。1

薬効群の中での位置づけ

薬剤 機序 東アフリカでの現在の位置づけ
経口 、代謝の撹乱 筋注との併用(14日間)をが提案(条件付き推奨・低い確実性)1
() 静注・筋注 、原虫のATP産生阻害 併用(17日間)は新レジメンを使えない患者向けの代替1
() 静注 への結合による膜傷害 インド亜大陸では単回投与が中心。東アフリカでは選択肢の一つ
筋注 アミノグリコシド、 上記いずれのレジメンでも併用相手として登場

⭐ 東アフリカの治療は「+」対「+」という2つの併用レジメンの比較で理解する。 第3相では両レジメンの治癒率はほぼ同等(91.2% vs 91.8%)だったが、+群はに伴う心毒性による死亡がなく、のも有意に低かった。2 この安全性の差が、2026年の改訂で+が提案された根拠になっている(推奨の強さは条件付き、確実性は低い)。1

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miltefosine'>ミルテホシン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphocholine derivative'>ホスホコリン誘導体</span>)が<br>原虫細胞膜に取り込まれる"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane phospholipid'>膜リン脂質</span>の合成・代謝を阻害"]
    B --> C["細胞膜シグナル伝達・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='GPI anchor'>GPIアンカー</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='biosynthesis'>生合成</span>も障害"]
    C --> D["原虫にアポトーシス様の細胞死を誘導"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>で全身に吸収される"] -.->|"注射薬中心の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leishmaniasis'>リーシュマニア症</span>治療で唯一の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral drugs'>経口薬</span>"| A

💡 もとは乳癌治療薬として開発された分子が転用されたという開発経緯を知っておくと機序を覚えやすい。 腫瘍細胞・原虫のいずれも細胞膜のリン脂質代謝に依存しており、はこの代謝を横断的に撹乱することで両方に細胞死を誘導する。

適応

領域 使いどころ
感染症・ 12歳以上・体重30 kg以上の(L. donovani)、(L. braziliensis・L. guyanensis・L. panamensis)、(L. braziliensis)3
感染症・ 東アフリカのでは筋注との併用(14日間)をが提案(条件付き推奨・低い確実性)1

用法・用量

体重30〜44 kgでは50 mgカプセルを1日2回、45 kg以上では1日3回、いずれも28日間、食後に内服する。東アフリカの新レジメンでは筋注との併用で投与期間が14日間に短縮される。実際の用量・期間は適応・により異なるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。31

禁忌・注意

  • ⚠️ 禁忌:妊娠。 動物試験で1.2 mg/kg/日以上の用量により胎児死亡・催奇形性(無形成大脳、、など)が確認されており、に記載されている。生殖可能な女性には治療中および治療終了後5か月間の効果的な避妊と授乳回避を指導する3
  • 禁忌:、過敏症の既往3
  • 定期的な肝機能(・)・腎機能(クレアチニン)のモニタリングが推奨される
  • in vitroでヒト酵素を阻害せず、臨床的に問題となる薬物相互作用は限定的3

副作用

頻度 内容
高頻度(2%以上) 悪心・嘔吐・下痢、頭痛、、めまい、腹痛、掻痒、傾眠3
注意 、クレアチニン上昇3
重篤 (催奇形性)——妊娠中は禁忌3

まとめ

  • 治療で唯一の経口全身治療薬。もとはとして開発されたで、原虫の代謝を撹乱してアポトーシス様の死を誘導する。
  • 適応は内臓型(L. donovani)・皮膚型(L. braziliensisほか)・(L. braziliensis)と幅広い。
  • 妊娠は禁忌(の)。治療中・治療終了後5か月間の避妊が必須。
  • 東アフリカのでは、2026年7月の改訂により筋注との併用(14日間)が併用より提案されるようになり(条件付き推奨・低い確実性)、心毒性のリスクを避けられる点・のが低い点が根拠になっている。
  • 従来の主役だった()+は、このレジメンを使えない患者向けの代替に位置づけが変わった。

出典

  1. 1.WHO guidelines on leishmaniases: treatment of visceral leishmaniasis and post-kala-azar dermal leishmaniasis in eastern Africa and South-East Asia(World Health Organization・2026)2026年7月28日発行のガイドライン本体(推奨1.1)で、東アフリカの内臓リーシュマニア症はパロモマイシン硫酸塩20 mg/kg/日筋注+経口ミルテホシン(いずれも14日間)がSSG 20 mg/kg/日+パロモマイシン15 mg/kg/日(17日間)より「提案される(suggested)」とされた。⚠️ これは**条件付き推奨・低い確実性のエビデンス**であって「第一選択」への格上げではない。推奨1.2でSSG+パロモマイシンはパロモマイシン+ミルテホシンが除外される患者向け、推奨1.3でリポソーマルアムホテリシンB(3〜5 mg/kg/日を6〜10日、総量30 mg/kg)はその両方が除外される患者向けと位置づけられている。本ガイドラインの推奨はすべてHIV陰性患者が対象で、対象地域も東アフリカ・南アジアのVLとPKDLに限られる閲覧 2026-09-05
  2. 2.Paromomycin and Miltefosine Combination as an Alternative to Treat Patients With Visceral Leishmaniasis in Eastern Africa: A Randomized, Controlled, Multicountry Trial(Clinical Infectious Diseases・2022)ケニア・エチオピア・スーダン・ウガンダで実施された第3相多施設無作為化比較試験(439例登録・424例完了)で、パロモマイシン+ミルテホシン併用(PM/MF)の6か月時点での治癒率(91.2%)が標準治療のスチボグルコン酸ナトリウム+パロモマイシン(SSG/PM、91.8%)と同等であったこと、SSG/PM群でのみ心臓合併症による死亡が1例発生しPM/MF群では発生しなかったこと、カラアザール後皮膚リーシュマニア症の発生率がスーダン・エチオピア合算でPM/MF群4.4%・SSG/PM群20.9%とPM/MF群で有意に低かったことを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.IMPAVIDO (miltefosine) capsules, for oral use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed) / Profounda, Inc.・2015)ミルテホシンの承認適応が12歳以上・体重30 kg以上の内臓リーシュマニア症(Leishmania donovani)、皮膚リーシュマニア症(L. braziliensis・L. guyanensis・L. panamensis)、粘膜リーシュマニア症(L. braziliensis)であること、機序がホスホコリン誘導体としてリン脂質の合成・代謝を阻害することであること、用法が体重30〜44 kgで50 mgカプセルを1日2回、45 kg以上で1日3回を28日間食後に投与することであること、禁忌が妊娠・Sjögren-Larsson症候群・過敏症であること、動物試験で1.2 mg/kg/日以上の用量で胎児死亡・催奇形性(無形成大脳・頭蓋内出血様液体貯留・口蓋裂・全身浮腫)が認められボックスド警告として記載されていること、生殖可能な女性には治療中および治療終了後5か月間の効果的な避妊と同期間の授乳回避が求められること、頻度2%以上の有害事象として悪心・嘔吐・下痢・頭痛・食欲減退・めまい・腹痛・掻痒・傾眠・トランスアミナーゼ上昇・クレアチニン上昇があること、in vitroでヒトCYP450酵素を阻害せずラットでCYP3A活性を誘導しなかったことを確認した。閲覧 2026-08-10