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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬 · 必修

スチボグルコン酸ナトリウム

sodium stibogluconate

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬
商品名(EU)
Pentostam
科目
Pharmacology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs
承認適応
リーシュマニア症カラアザール後皮膚リーシュマニア症
標的微生物
Leishmania donovaniLeishmania braziliensisLeishmania tropica
副作用
関節痛筋痛腹痛
監視検査値
アミラーゼリパーゼアミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)

🧠 全体像:()は治療の「古典」でありながら、その地位が現在進行形で失われつつある薬である。として何十年も内臓・皮膚・粘膜すべての型で標準治療の中核を担ってきたが、心毒性・膵炎・肝毒性という重い副作用プロファイルと長期の連日静注・筋注が必要という運用上の負担から、経口のなど毒性の少ない併用レジメンに置き換えられつつある。2026年7月の改訂(推奨1.1)では、東アフリカので+が+より「提案される」(条件付き推奨・低い確実性)となり、+はそのレジメンが除外される患者向け(推奨1.2)に位置づけが変わった。1

薬効群の中での位置づけ

薬剤 ・期間 代表的な毒性 東アフリカでの現在の位置づけ
() 静注・筋注、20〜28日間 心毒性(QT延長)・膵炎・肝毒性が高頻度 併用(17日間)は新レジメンを使えない患者向けの代替1
経口、14〜28日間 消化器症状、() 併用(14日間)をが提案(条件付き推奨・低い確実性)1
() 静注 腎毒性・(より軽減) インド亜大陸では単回投与が中心
筋注 腎毒性・耳毒性(アミノグリコシド共通) 上記いずれのレジメンでも併用相手

⭐ 「なぜが第一選択から外れたか」は副作用の頻度で説明できる。 米国での治療報告では心電図変化10〜52%、膵炎・28〜97%、肝機能検査値上昇18〜85%、関節痛・筋肉痛49〜59%と、いずれも高頻度で全体の約25%が治療中断に至る。2 東アフリカでの第3相試験でも併用群でのみ心臓合併症による死亡が発生し、のも+群20.9%と+群4.4%より高く、この安全性の差が2026年の方針転換の根拠になっている。3

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pentavalent antimony'>五価アンチモン</span>(SbV)が投与される"] --> B["マクロファージ内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trivalent antimony'>三価アンチモン</span>(SbIII)へ還元される<br>(活性化に必要な過程)"]
    B --> C["原虫の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trypanothione reductase'>トリパノチオン還元酵素</span>を阻害"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative stress'>酸化ストレス</span>防御機構が破綻"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amastigote'>無鞭毛型</span>の生存・増殖が阻害される"]
    B -.->|"ヒト側でも心筋カルシウム電流の増加"| F["QT延長・不整脈などの心毒性"]

💡 正確な機序は完全には解明されていないが、有力な説はの阻害である。 はリーシュマニアなどの原虫に特有の防御分子で、ヒトの系とは異なる標的になる——の理論的根拠だが、実際にはヒト側にも心筋へのというできない毒性を及ぼす。4

適応

領域 使いどころ
感染症・ 米国ではの(IND)プロトコルの下で提供される、皮膚・粘膜・内臓型を含むの治療2
感染症・ 東アフリカのでは、筋注併用(17日間)が新レジメン(+)を使えない患者向けの代替1

用法・用量

標準投与量は20 mg/kg/日を10〜15分かけて静注または筋注する。投与期間は病型により異なり、皮膚型は10〜20日間、・内臓型は28日間がな用法である。米国では商業的に認可されておらず、のIND()プロトコルの下で無償提供される。実際の用量・期間は・により異なるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。2

禁忌・注意

  • ⚠️ 心毒性に注意。 QT延長・torsades de pointes・ST変化・T波異常を来しうるためが推奨される。基礎心疾患があるとリスクが高まる4
  • ⚠️ 膵炎のリスク(特に陽性患者で高頻度)。 ・リパーゼのモニタリングが必要42
  • ではに至る例を含む肝障害を来しうるため定期的な肝機能モニタリングを行う4
  • 高頻度の有害事象により約25%が治療中断に至る2

副作用

頻度 内容
高頻度 関節痛・筋痛(49〜59%)、膵炎・(28〜97%)、心電図変化(10〜52%)、肝機能検査値上昇(18〜85%)2
注意 腹痛、悪心、発熱、倦怠感、血小板減少・2
重篤・まれ 重篤な不整脈、、腎障害・、・可逆性末梢神経障害4

まとめ

  • 。マクロファージ内でに還元され、原虫のを阻害することが有力な機序とされる(完全には未解明)。
  • 米国では未認可でのIND提供、標準用量は20 mg/kg/日を皮膚型10〜20日間・/内臓型28日間投与する。
  • 心毒性(QT延長)・膵炎・肝毒性が高頻度で、心電図・/リパーゼ・肝機能の定期モニタリングが必須。約25%が治療中断に至る。
  • 東アフリカのでは、2026年7月の改訂により+(14日間)のほうが提案され(条件付き推奨・低い確実性)、+はそのレジメンが除外される患者向けという位置づけに変わった。
  • 第3相試験でも併用群でのみ心臓合併症による死亡が発生しており、経口・低毒性の新レジメンへの移行を後押ししている。

出典

  1. 1.WHO guidelines on leishmaniases: treatment of visceral leishmaniasis and post-kala-azar dermal leishmaniasis in eastern Africa and South-East Asia(World Health Organization・2026)2026年7月28日発行のガイドライン本体(推奨1.1)で、東アフリカの内臓リーシュマニア症は経口ミルテホシン+パロモマイシン筋注(いずれも14日間)がSSG 20 mg/kg/日+パロモマイシン15 mg/kg/日(17日間)より「提案される(suggested)」とされた。⚠️ 条件付き推奨・低い確実性のエビデンスであって「第一選択」への格上げではない。推奨1.2でSSG+パロモマイシンは同併用が除外される患者向けとされ、SSG単剤(20 mg/kg/日30日間)よりは提案される閲覧 2026-09-05
  2. 2.Leishmaniasis in the United States: Treatment in 2012(The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene・2012)米国ではスチボグルコン酸ナトリウム(SSG、Pentostam)が商業的に認可されておらずCDCの治験薬(IND)プロトコルの下で無償提供されていること、標準投与量が20 mg/kg/日を10〜15分かけて静注(皮膚型は10〜20日間、粘膜型・内臓型は28日間)であること、有害事象として心電図変化(10〜52%、週1回の心電図モニタリングが必要)、膵炎・高アミラーゼ血症(28〜97%、リパーゼ・アミラーゼのモニタリングが必要)、肝機能検査値上昇(18〜85%)、関節痛・筋肉痛(49〜59%)が高頻度にみられ、約25%の患者で治療中断に至ることを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Paromomycin and Miltefosine Combination as an Alternative to Treat Patients With Visceral Leishmaniasis in Eastern Africa: A Randomized, Controlled, Multicountry Trial(Clinical Infectious Diseases・2022)ケニア・エチオピア・スーダン・ウガンダで実施された第3相多施設無作為化比較試験(439例登録・424例完了)で、標準治療のスチボグルコン酸ナトリウム+パロモマイシン(SSG/PM)群でのみ心臓合併症による死亡が1例発生したこと(ミルテホシン+パロモマイシン群では発生なし)、カラアザール後皮膚リーシュマニア症の発生率がスーダン・エチオピア合算でSSG/PM群20.9%とミルテホシン+パロモマイシン群4.4%より高かったことを確認した。閲覧 2026-08-10
  4. 4.Antimony Toxicity(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2024)五価アンチモン製剤(スチボグルコン酸ナトリウムを含む)の機序として寄生虫の酸化ストレス防御に関わるトリパノチオン還元酵素の阻害が挙げられること、心毒性は心筋のカルシウム電流増加を介したQT延長・torsades de pointes・ST変化・T波異常として現れ基礎心疾患があるとリスクが高まること、投与中は心電図モニタリング(QT延長・不整脈の評価)が推奨されること、HIV陽性患者では特に膵炎のリスクが高いこと、慢性投与では免疫学的肝障害と直接的なアンチモン毒性の両方により肝毒性(劇症肝不全に至る例を含む)を来しうることを確認した。閲覧 2026-08-10