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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬 · 必修

パロモマイシン

paromomycin

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬Antibiotics / 抗菌薬
商品名(EU)
Humatin
科目
Pharmacology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs
承認適応
リーシュマニア症
標的微生物
Leishmania donovaniEntamoeba histolytica
副作用
耳鳴り
監視検査値
クレアチニン

🧠 全体像「経口では吸収されない」という一点から適応が枝分かれするアミノグリコシドである。腸管から吸収されないため、では腸管内だけに効くアメーバ駆除薬になる一方、に切り替えると全身に分布し、の治療薬という別の顔を持つ。同じ薬でもがまったく違う適応を生む、という構造そのものが出題ポイントになる。

薬効群の中での位置づけ

の中でも「アミノグリコシド=抗菌薬」という通常の分類に収まらない、で適応が変わる薬として理解する。

吸収 主な適応
経口 ほとんど吸収されない(腸管内にとどまる) Entamoeba histolyticaによるアメーバ駆除(無症候性シスト保有者・薬後の残存虫体の駆除)
全身に分布(アミノグリコシドとしての通常の の治療(東アフリカの新標準レジメンではと併用)1

同じアミノグリコシド系のが細菌のを標的にするのと同じ発想で、は原虫のリボソームRNAに作用する——標的分子のクラスが共通するため、という機序も、耳毒性・腎毒性という副作用プロファイルも、細菌用アミノグリコシドと基本的に共有する。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paromomycin'>パロモマイシン</span>がリボソーム小サブユニットの解読部位に結合<br>(細菌では30S、原虫では細胞質リボソームの小サブユニット)"] --> B["mRNAの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reading frame'>読み枠</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miscoding'>誤読</span>させる/翻訳を停止させる"]
    B --> C["異常な蛋白質が合成される、または蛋白合成そのものが止まる"]
    C --> D["細胞機能が破綻し虫体・細菌が死滅(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>)"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>時は腸管からほぼ吸収されない"] --> F["腸管内の高濃度がEntamoeba histolyticaの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraluminal'>管腔内</span>シストに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='direct action'>直接作用</span>"]
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramuscular injection'>筋肉内注射</span>時は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic circulation'>全身循環</span>に入る"] --> H["Leishmania感染マクロファージ内の原虫リボソームにも到達"]

💡 「吸収されない」という一見の弱点が、では逆に利点になる。 全身に回らないためなど組織に浸潤したそのものには無効だが、その分だけ全身毒性を避けながら腸管内の虫体濃度を高く保てる。だからは侵襲性の主治療薬ではなく、を他剤(メトロニダゾールなど)で叩いた後の残存虫体の掃除役という位置づけになる。

適応

領域 使いどころ
感染症・消化器 Entamoeba histolyticaによる駆除(無症候性シスト保有者、または組織侵襲型治療後の残存虫体の駆除)2
感染症・熱帯医学 の治療。東アフリカではWHOの2026年改訂で経口筋注(14日間)が新たな推奨レジメンとなった1。インド亜大陸ではとの併用でも用いられる

用法・用量

11 mg/kg/日を21日間投与する用法がインドでので確立され、に対しの治癒率(94.6% vs 98.8%)を示した3。東アフリカの新レジメンではと併用し投与期間は14日間に短縮される1ではで腸管内のみを狙う。実際の用量は適応・地域のプロトコルにより異なるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 時はアミノグリコシド共通の注意(腎毒性・耳毒性)が当てはまる。 があると腎臓に蓄積し腎毒性を来しうる2
  • インドのでは、腎毒性の頻度は群でむしろ低く(0% vs 群4%)、上昇も2%と少なく可逆性だったが、注射部位痛は55%と高頻度であった3
  • は腸管内限定の効果であり、組織に浸潤したなど)の単独治療には無効——他剤との使い分けを誤らない
  • 妊娠中の治療では、アミノグリコシドの胎児への影響を踏まえレジメン選択を個別化する

副作用

頻度 内容
消化器症状(悪心・下痢など)2
筋注時・高頻度 注射部位痛(55%)3
筋注時・注意 一過性の可逆性の高音域上昇(2%、臨床的な難聴・の訴えはまれ)、AST一過性上昇3
まれ 腎毒性(がある場合に蓄積しやすい)2

まとめ

  • 経口では吸収されないアミノグリコシド。この一点が、腸管限定のアメーバ駆除(経口)と全身治療としての治療(筋注)という、で分かれる二つの適応を生む。
  • 機序はリボソームへの結合によるで、他のアミノグリコシドと共通する。
  • では筋注11 mg/kg/日を21日間(インドの)、東アフリカの新標準ではとの併用で14日間に短縮される。
  • 筋注時はアミノグリコシド共通の腎毒性・耳に注意するが、では腎毒性・聴力障害とも比較的少なく、注射部位痛が最も高頻度の副作用だった。
  • は組織浸潤性のには無効で、の残存虫体を掃除する補助的な位置づけにとどまる。

出典

  1. 1.WHO updates treatment guidelines on visceral and post-kala-azar dermal leishmaniasis(World Health Organization・2026)2026年7月の改訂で東アフリカの内臓リーシュマニア症は経口ミルテホシン+パロモマイシン筋注(14日間)がSSGを使わない新たな推奨レジメンとなり、五価アンチモン製剤(SSG)はこのレジメンを使えない患者向けの代替に位置づけが変わったこと、インド亜大陸では単回投与リポソーマルアムホテリシンB(単独またはミルテホシン・パロモマイシンとの併用)が引き続き用いられることを確認した閲覧 2026-08-02
  2. 2.Injectable Paromomycin for Visceral Leishmaniasis in India(New England Journal of Medicine・2007)インドの内臓リーシュマニア症患者を対象とした非劣性試験で、パロモマイシン筋注(11 mg/kg/日を21日間)はアムホテリシンBに対し非劣性(治癒率94.6% vs 98.8%)を示したこと、腎毒性はパロモマイシン群0%・アムホテリシンB群4%(p<0.001)と少なかったこと、可逆性の一過性聴力閾値上昇(高音域)が2%にみられたが臨床的な難聴・前庭障害の訴えはなかったこと、注射部位痛が55%と高頻度であったことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Antiparasitic Drugs(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2023)パロモマイシンがアミノグリコシド系の蛋白合成阻害薬に分類され、Entamoeba histolyticaによる腸管アメーバ症の管腔内アメーバ駆除薬として、また内臓リーシュマニア症の治療選択肢として用いられること、消化器症状を来しやすく腎機能障害があると腎臓に蓄積して腎毒性を来しうることを確認した閲覧 2026-08-10