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Drug Atlas · C18 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

メトロニダゾール

metronidazole

分類
Antibiotics / 抗菌薬Antiparasitics / 抗寄生虫薬
商品名(日本)
フラジール
商品名(EU)
Flagyl
科目
Pharmacology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugsC18: Metronidazole. Fidaxomicin. Rifaximin. Nitrofurantoin. Fosfomycin
標的微生物
Bacteroides fragilisClostridioides difficileTrichomonas vaginalisGiardia lambliaEntamoeba histolyticaHelicobacter pylori
副作用
悪心しびれ発作
相互作用
エタノールジスルフィラムワルファリン
自然耐性の微生物
Eikenella corrodens
対象疾患
Lemierre症候群イレウス・腸閉塞クロストリディオイデス・ディフィシル感染症トリコモナス症ヒルシュスプルング病ベゾルド膿瘍胃炎横隔膜下膿瘍回腸嚢炎壊死性腸炎眼窩蜂窩織炎機能性ディスペプシア急性壊死性潰瘍性歯肉炎急性胆管炎急性虫垂炎憩室症・憩室炎好中球減少性腸炎骨髄炎骨盤内炎症性疾患根尖性歯周炎細菌性肝膿瘍細菌性腟症酒皶・口囲皮膚炎縦隔炎消化性潰瘍胆石症智歯周囲炎中毒性巨大結腸症腸管原虫症腸間膜虚血(急性・慢性、虚血性大腸炎を含む)腸腰筋膿瘍腸重積症尿路感染症脳膿瘍破傷風肺膿瘍副咽頭膿瘍腹膜炎・消化管穿孔卵管卵巣膿瘍卵巣炎頸部膿瘍

🧠 全体像:メトロニダゾールは、と一部の原虫(Trichomonas・Giardia・Entamoeba)という一見畑違いの相手を、「還元されて初めて毒性を持つ」という同じ一つの機序で仕留めるの代表薬である。酸素の乏しい環境でしかが還元されないため、には無効というが成り立つ。アルコールとのは長くの定番とされてきたが、2021年性感染症治療ガイドラインの根拠レビューはこれを支持するエビデンス不足を理由にの一律指導を見直した(後述)。C. difficile感染症での位置づけは国によって違い、米国・欧州では第一選択をバンコマイシン・へ譲ったが、日本のガイドラインは非重症の初発に今も第一選択として残している(後述)。

薬効群の中での位置づけ

嫌気性菌カバーが必要な場面では、標的も投与形態も異なる複数の選択肢がある。

薬剤 機序 得意な相手 特徴
メトロニダゾール 還元され損傷 (Bacteroides fragilisが中心)+原虫 が極めて高く、静注とほぼ同等に使える。膿瘍・中枢神経系への移行も良好
クリンダマイシン 阻害 グラム陽性嫌気性菌・口腔内嫌気性菌 C. difficile感染症の誘発リスクがとくに高い
+、配合ペニシリン 阻害+βラクタマーゼ阻害 ・嫌気性菌を単剤で広くカバー 併用薬を増やさずに済む利便性がある一方、より広域

では、同じのが半減期の長さ(メトロニダゾールの6〜8時間に対し12〜14時間)を活かしたで使われることがある。

⭐ での位置づけは国によって違う。

国・地域 メトロニダゾールの扱い
2017年改訂で、初発にはバンコマイシンかをメトロニダゾールより優先し、メトロニダゾールは両剤へのアクセスが限られる非重症例に限った。劇症型では経口(イレウスがあれば注腸も)バンコマイシンに静注メトロニダゾール500 mg 8時間ごとを併用する1
欧州( 2021) かバンコマイシンが使えるなら治療に推奨しない2
日本(日本化学療法学会・日本感染症学会 2022) 非重症の初発では500 mg 1日3回10日間(経口または)が第一選択(強い推奨)。重症はバンコマイシンかで、両者が使えない場合に限りメトロニダゾール。ショック・イレウスなどではバンコマイシン高用量にの併用を考慮する3

💡 日本が非重症例に残したのは、非重症例ではバンコマイシンとに有意差がなく、が安く、バンコマイシンの使用量が増えるとが増えうるためである。重症例ではバンコマイシンのが有意に高く、メトロニダゾールは高用量・長期投与(とくに10日超・1日1,500 mg以上)で神経障害が出やすいので、非重症の初発例に限っている3。

機序

flowchart TD
    A["メトロニダゾールが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='passive diffusion'>受動拡散</span>で<br>嫌気性菌・原虫の細胞内へ侵入"] --> B["嫌気性環境で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electron transport chain protein'>電子伝達系タンパク</span>により<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nitro group'>ニトロ基</span>が還元される"]
    B --> C["反応性の高い中間体<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nitro radical anion'>ニトロラジカルアニオン</span>)が生成"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>鎖に結合し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='double-strand break'>二本鎖切断</span>を誘発"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>修復が追いつかず細胞死(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>)"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aerobic bacteria'>好気性菌</span>・ヒト細胞では"] -.->|"酸素が電子を奪い<br>元のメトロニダゾールに戻ってしまう"| G["活性中間体が蓄積せず無効"]

💡 「酸素が少ない環境で活性化する」の中身は、酸素による“解毒”が起きないというだけの話。 還元されて生じたは不安定で、酸素があるとすぐに酸素へ電子を渡して元のメトロニダゾールに戻ってしまう()。が低い嫌気性菌の内部や原虫の細胞質でだけ、この不安定な中間体が蓄積してを攻撃する時間を得る。これがに無効な理由であり、の根拠でもある。

薬物動態

項目 値・特徴
非常に高い(>90%)。静注とほぼ同等の血中濃度が得られ、重症感染でも経口へ移行しやすい
分布 良好。膿瘍・中枢神経系・胎盤関門も通過する
代謝 (を生成)
排泄 主に腎(尿が赤褐色〜暗色になることがある。無害)
半減期 約6〜8時間

適応

領域 使いどころ
・、穿孔を伴う、、腹膜炎・消化管穿孔などの嫌気性菌カバー。通常βラクタム系と併用する
消化器 (日本では非重症の初発に第一選択、米国・欧州ではバンコマイシン・が使えない場合の代替。劇症型では静注で併用)、消化性潰瘍のH. pylori除菌(時の代替レジメン)
(パートナーの同時治療が必須)、Giardia症・を含む
婦人科 、
・(・)
歯科・口腔 :とFusobacteriumのに対して用いる。とが主体で、抗菌薬は全身症状を伴う例に加える

用法・用量

嫌気性菌感染:500 mgを8時間ごとに静注またはする。:女性は500 mgを1日2回・7日間を優先し(2 g単回投与より率が低い)、男性は2 g単回投与を用いる4。Giardia症:250 mgを1日3回・5〜7日間。:750 mgを1日3回・7〜10日間投与し、その後必ずなど薬を追加する(メトロニダゾール単独では腸管内に嚢子が残存しうるため)。実際の用量・期間は適応・重症度・腎肝機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:メトロニダゾールまたはへの過敏症、投与中・中止後2週間以内(精神症状・せん妄のリスク)
  • ⚠️ (アルコール):阻害による反応と長く教えられてきたが、2021年性感染症治療ガイドラインの根拠レビューではこの相互作用を支持するin vitro・動物・臨床のいずれのエビデンスも見つからず、メトロニダゾールはのようにを阻害しないことが確認された。服薬中の一律はもはや推奨されないが、添付文書にの記載がある場合はそれに従う5
  • ワルファリンとの併用でCYP2C9阻害によりが上昇し出血リスクが増す。併用時はを頻回にモニタリングする
  • 高用量・長期使用で末梢神経障害、まれに(・脳症・発作)を起こしうるため、てんかんなど中枢神経系の器質的疾患がある患者では慎重に投与する

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心、、
注意 (無害)。アルコールとのは2021年指針で否定的に見直されている
重篤・まれ 末梢神経障害(しびれ、長期・高用量で蓄積)、発作・脳症(まれ)、好中球減少

まとめ

  • の代表薬。還元されて生じる損傷が、嫌気性菌・原虫という酸素の乏しい環境の病原体に選択的に効く根拠。
  • が非常に高く、静注とほぼ同等に使えるため重症感染でも経口移行しやすい。
  • 標的は(Bacteroides fragilisが中心)+4大原虫(Trichomonas・Giardia・Entamoeba、一部H. pylori除菌に併用)。
  • アルコールとのは、これを支持するエビデンス不足を理由に2021年指針での一律指導が見直された。
  • C. difficile感染症では、米国・欧州はバンコマイシン・を優先してメトロニダゾールを代替・劇症型の静注併用にさせたが、日本は非重症の初発に第一選択として残している。
  • ワルファリンの作用を増強(CYP2C9阻害)するためモニタリングが必要。
  • 長期・高用量投与で末梢神経障害・が蓄積しうる。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guidelines for Clostridium difficile Infection in Adults and Children: 2017 Update by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA)(Clinical Infectious Diseases(IDSA / SHEA)・2018)発行元(IDSA)の推奨ページで、成人の初発には「Either vancomycin or fidaxomicin is recommended over metronidazole」とし、メトロニダゾールはバンコマイシン・フィダキソマイシンへのアクセスが限られる場合の非重症例に限ること、劇症型では経口(イレウスがあれば注腸も)バンコマイシンに静注メトロニダゾール500 mg 8時間ごとを併用すること、初回再発の選択肢はバンコマイシンの漸減・パルス法、フィダキソマイシン、初発をメトロニダゾールで治療していた場合のバンコマイシン標準投与であることを確認した閲覧 2026-09-27
  2. 2.European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases: 2021 update on the treatment guidance document for Clostridioides difficile infection in adults(Clinical Microbiology and Infection(ESCMID Study Group on Clostridioides difficile)・2021)抄録(Europe PMC、PMID 34678515)の Recommendations で、前版からの主な変更として、フィダキソマイシンかバンコマイシンが使えるならメトロニダゾールはCDI治療に推奨されないこと、フィダキソマイシンが利用可能で実施できるなら初発と初回再発に望ましい薬であることを確認した(抄録の範囲のみ)閲覧 2026-09-27
  3. 3.Clostridioides difficile感染症診療ガイドライン2022(日本化学療法学会・日本感染症学会(感染症学雑誌 97巻 Supplement 01、2023年1月24日)・2023)日本感染症学会サイトの全文PDF(guideline_cdi_230125.pdf)で確認した。S50の表1は、非重症の初発にメトロニダゾール500 mg 1日3回10日間の経口投与または点滴静注(強い推奨・A)、重症にはバンコマイシンまたはフィダキソマイシンとし、両者が使えない場合に限りメトロニダゾール(弱い推奨・B)、ショック・低血圧・中毒性巨大結腸症・麻痺性イレウスにはバンコマイシン500 mg 1日4回の経口・経鼻胃管または注腸にメトロニダゾール点滴静注の併用を考慮する(弱い推奨・C)とする。S51の本文は、2018年のメタ解析で非重症例ではメトロニダゾールとバンコマイシンの治療成功率に有意差がなく重症例ではバンコマイシンが有意に高かったこと、メトロニダゾールの薬価の安さ、バンコマイシン使用量の増加がVREを増やしうることから前回同様に非重症例でメトロニダゾールを第一選択薬として推奨したこと、2018年版は海外のガイドラインと異なり非重症例でメトロニダゾールを推奨したこと、PMDAの審査報告書では重篤な中枢・末梢神経障害が投与期間10日超の症例のみに認められ1,500 mg/日以上で副作用発現率が高い傾向があったこと、高用量・長期投与で副作用が出やすいため非重症の初発例にのみ推奨したことを述べる。閲覧 2026-09-27
  4. 4.Diagnosis and Management of Trichomonas vaginalis: Summary of Evidence Reviewed for the 2021 CDC Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines(CDC(Clinical Infectious Diseases誌掲載のガイドライン根拠レビュー)・2021)トリコモナス症の女性はメトロニダゾール500 mgを1日2回7日間投与するほうが2 g単回投与より再感染率を半減させるため優先され、男性は2 g単回投与を用いることを確認した閲覧 2026-08-03
  5. 5.Diagnosis and Management of Bacterial Vaginosis: Summary of Evidence Reviewed for the 2021 CDC Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines(CDC(Clinical Infectious Diseases誌掲載のガイドライン根拠レビュー)・2021)メトロニダゾールとアルコールのジスルフィラム様反応を支持するin vitro・動物・臨床のエビデンスがsystematic reviewで見当たらず、メトロニダゾールはジスルフィラムのようにアセトアルデヒド脱水素酵素を阻害しないこと、2021年CDC性感染症治療ガイドラインでは服薬中の禁酒が一律には推奨されなくなったことを確認した閲覧 2026-08-03