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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

縦隔炎

Mediastinitis

臓器系
感染症呼吸器
科目
ENTSurgery
トピック
耳鼻咽喉科 45:頸部の解剖:頸部間隙、血管、神経、リンパ系外科学 B/07:食道損傷外科学 G-03:外科感染症・抗菌薬治療の適応・周術期抗菌薬予防
合併症
敗血症
治療薬
バンコマイシンピペラシリンメトロニダゾール
原因微生物
Staphylococcus aureusStreptococcus pyogenes (GAS)Fusobacterium necrophorumBacteroides fragilis
症状
胸痛発熱嚥下障害
検査値
CRP
画像所見
気液面
元疾患
ベゾルド膿瘍咽後膿瘍
原因となる疾患
頸部膿瘍

🧠 全体像は「どこから来た感染か」でを3つに分けると診療の型が決まる病態である。①心臓血管手術後後、最も頻度が高い)、・内視鏡損傷・異物)、③降下性壊死性が頸部間隙を伝って下降する)——この3系統は診断の入り口も原因制御の方法も異なるが、共通するのは抗菌薬だけでは治らず、外科的なが生死を分けるという一点である1。特に降下性壊死性は、頸部のドレナージだけでは不十分で、縦隔そのものへドレナージが到達しなければ死亡率が下がらない2

病態:3つの成因

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mediastinitis'>縦隔炎</span>の3つの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='etiology'>成因</span>"] --> B["①心臓血管手術後<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='median sternotomy'>胸骨正中切開</span>創・縦隔からの直接汚染)"]
    A --> C["②<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal perforation'>食道穿孔</span><br>(内視鏡損傷などの医原性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Boerhaave syndrome'>Boerhaave症候群</span>・異物)"]
    A --> D["③降下性壊死性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mediastinitis'>縦隔炎</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='odontogenic infection'>歯性感染</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritonsillar abscess'>扁桃周囲膿瘍</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retropharyngeal abscess'>咽後膿瘍</span>が頸部間隙を下降)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='danger space'>危険間隙</span>を介して<br>縦隔と直接連続"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mediastinitis'>縦隔炎</span>"]
    C --> F
    E --> F
    F --> G["感染源を制御しなければ<br>抗菌薬だけでは改善しない"]

①心臓血管手術後(術後性): などを伴う心臓血管手術後に、0.3〜5%の頻度で生じる、の中で最も頻度が高い型である。糖尿病、肥満、喫煙、腎不全、免疫不全状態が危険因子となる1。胸骨創部からの直接汚染や縦隔ドレーン留置部からのが機序となる。

内視鏡操作などによる医原性穿孔が全体の約50%を占め最多で、嘔吐に伴う全層破裂である、異物誤嚥も原因となる1。食道内容(消化液・口腔咽頭細菌叢)が縦隔へ直接流出するため、進行が急速である。

③降下性壊死性 などの頸部感染が、に乏しい疎な結合組織——前気管間隙、血管周囲/内臓周囲間隙、とその奥の——を伝って下降する型である2膜の間にあり縦隔と直接連続しているため、由来の感染はここへ達すると自由に縦隔へ波及しうる3としてはが最も広く受け入れられているが、報告によっては咽頭感染(炎など)が最多となることもある2

⚠️ 降下性壊死性は死亡率が高く、頸部のドレナージだけでは不十分である。 経頸部ドレナージのみでは死亡率47%にとどまるが、胸郭からの縦隔ドレナージを追加すると19%まで低下する2。適切な外科的がなければ死亡率は85%に達しうるとも報告されており2「頸部だけ開けて終わり」にしないことがこの型のの生死を分ける。

主な契機 病原体の傾向 治療で最も重視すること
①術後性 心臓血管手術後の 皮膚由来菌(黄色ブドウ球菌など) 創部の再開放・
内視鏡損傷(医原性)・・異物 口腔・消化管由来の多菌種 穿孔部の閉鎖・ドレナージ
③降下性壊死性 の下降 口腔嫌気性菌を含む多菌種 頸部+縦隔への到達を確認したドレナージ

同じ「」という病名でも、契機によって外科的な介入先がまったく異なる。術後性なら胸骨創、なら消化管そのもの、降下性壊死性なら頸部から縦隔まで連続するというように、感染源がどこにあるかを見誤ると、抗菌薬だけでは制御できない

臨床像

  • 痛・胸痛、発熱、嚥下障害が共通してみられる。
  • 術後性では胸骨創部の発赤・排膿・不安定性()を伴うことがある。
  • ・降下性壊死性では、を触知することがあり、では心拍と同期した握雪音(Hamman徴候)が聞かれることがある。
  • 降下性壊死性では、頸部腫脹・など頸部感染の所見が先行し、そこに痛が加わって縦隔への進展を疑う契機になる。

⚠️ 頸部の感染症(など)を診ているときに痛・胸痛が出現したら、局所にとどまらない下降性の進展を疑う。

診断

造影CT(頸部から胸部まで連続して撮影する)が診断の中心である2。縦隔の拡大、脂肪織濃度の上昇、膿瘍形成を示すが特徴的な所見である1。降下性壊死性を疑う場合は、頸部のから縦隔までを一連の検査で評価し、進展範囲を確認する。血液検査ではCRP上昇などの炎症所見を確認するが、これらは感染源の特定には寄与しない。

治療

  1. 外科的 原因に応じてドレナージ・を行う。術後性では胸骨創の再開放・では穿孔部の修復またはドレナージ、降下性壊死性では頸部の膿瘍ドレナージに加えて、必要に応じて胸骨下またはによる縦隔ドレナージを追加する2
  2. 広域(嫌気性菌カバーを含む): 術後性では皮膚常在菌であるStaphylococcus aureusを、・降下性壊死性では口腔・食道由来のStreptococcus pyogenes (GAS)や嫌気性菌(Fusobacterium necrophorumBacteroides fragilisなど)を含むを想定し、バンコマイシン配合)などの広域薬に、メトロニダゾールによる嫌気性菌カバーを組み合わせる2
  3. 原因の制御: では穿孔部そのものの閉鎖・修復、術後性では創部のというように、感染源そのものへの介入を抗菌薬と並行して行う1

⚠️ 抗菌薬だけで様子を見ない。 特に降下性壊死性では、経頸部ドレナージだけで終わらせず縦隔への到達を確認することが、47%から19%への死亡率低下に直結する2

合併症

未制御のまま進行すると敗血症に至りうる。降下性壊死性は3型の中でも進行が速く、診断の遅れと不十分なドレナージが高い死亡率の主因である2

💡 周術期抗菌薬予防は術後性の危険因子対策そのものである。 心臓血管手術での皮膚切開前の適切なタイミングでの予防投与、、禁煙は、術後性を左右する糖尿病・肥満・喫煙という危険因子への直接的な介入になる1

まとめ

  • は①心臓血管手術後(最多)、②・内視鏡損傷・異物)、③降下性壊死性の下降)の3系統に分けて考える。
  • 降下性壊死性を介して縦隔と直接連続するため、頸部感染から急速に波及しうる。
  • 診断は頸部から胸部まで連続した造影CT。治療は外科的と広域(嫌気性菌カバー)の組み合わせが基本。
  • ⚠️ 降下性壊死性では経頸部ドレナージのみでは不十分で、縦隔まで到達するドレナージを行わなければ死亡率が下がらない。

出典

  1. 1.Mediastinitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)縦隔炎が術後性縦隔炎・降下性壊死性縦隔炎・線維性縦隔炎の3型に分類されること、術後性縦隔炎は心臓移植・冠動脈バイパス術など心臓血管手術後に0.3〜5%の頻度で生じ糖尿病・肥満・喫煙・腎不全・免疫不全状態が危険因子となること、食道穿孔による縦隔炎は医原性が全体の50%を占めBoerhaave症候群・異物誤嚥も原因となること、降下性壊死性縦隔炎は頸部の感染が深筋膜面を伝って縦隔へ波及すること、造影CTで縦隔の拡大・脂肪織濃度上昇・膿瘍形成を示す気液面がみられること、治療の基本は早期の抗菌薬投与と外科的デブリードマンであること閲覧 2026-08-11
  2. 2.Etiology, diagnosis, and management of descending necrotizing mediastinitis: a narrative review(Mediastinum (AME Publishing)・2025)降下性壊死性縦隔炎は歯性または頸部由来の感染が下降することで定義され、免疫防御に乏しい疎な結合組織を介して前気管間隙・血管周囲/内臓周囲間隙・咽後間隙を伝って拡散すること(Etiology節)、適切な外科的感染源制御がなければ死亡率が85%に達しうること(Introduction節、Pearseの報告を引用)、頸部からの経頸部ドレナージのみでは死亡率47%だが胸郭ドレナージを追加すると19%まで低下すること(Management節、Corsten et al. 1997の報告)、診断は頸部から胸部まで連続した造影CTで行うこと(Diagnosis節)、治療は胸部外科・耳鼻咽喉科・感染症科による集学的アプローチと嫌気性菌カバーを含む広域静注抗菌薬(第2/3世代セファロスポリン+メトロニダゾールまたはクリンダマイシン)であること(Management節)、成因として歯性感染が最も広く受け入れられているが報告によっては咽頭感染が最多となることもあり、扁桃周囲膿瘍・喉頭蓋炎・舌扁桃炎も原因となること(Etiology節)閲覧 2026-08-11
  3. 3.Deep Neck Infections(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)危険間隙が翼状筋膜と椎前筋膜の間にあり縦隔と連続しているため、上気道消化管由来の感染がこの間隙へ達すると自由に縦隔炎へ波及しうること(Pathophysiology節)閲覧 2026-08-11