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Microbe Atlas · 細菌

Fusobacterium necrophorum

分類
G− 桿菌・偏性嫌気性 / Gram− rods (anaerobic)Fusobacterium
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli偏性嫌気性 Obligate anaerobe
科目
Medical MicrobiologyOtorhinolaryngology
トピック
2/6: Anaerobic Gram-negative rods (Bacteroides, Fusobacterium, Prevotella, Porphyromonas)41: Complications of acute tonsillitis. Peritonsillar abscess
自然耐性薬
ゲンタマイシンアミカシントブラマイシンアズトレオナム
原因となる疾患
Lemierre症候群咽後膿瘍急性扁桃炎・扁桃周囲膿瘍縦隔炎副咽頭膿瘍頸部膿瘍

🧠 全体像:F. necrophorumはグラム陰性桿菌で、青年・若年成人の・咽頭炎の重要な原因菌であると同時に、の主な起因菌でもある——「若く健康な人の咽頭炎が、数日後にを伴う重症疾患へ豹変する」という臨床像の中心にいる菌で、文献上の症例の約7割から分離される1。近縁のF. nucleatumがの「橋渡し役」としてに関与するのに対し、F. necrophorumは単独でも咽頭からへ進展しうる攻撃性の高さが対照的である。

微生物学的な特徴

のグラム陰性桿菌で、咽頭・消化管・のの一部とされる2。ただしとして記載されるFusobacterium属は主にF. nucleatumで、F. necrophorumが口腔の常在菌であることを裏付ける説得力のある培養の証拠は無いとする総説もあり、健常者の咽頭からの検出はによる報告にとどまる1。他のと同様、を解毒する酵素系(・カタラーゼ)を欠く、または部分的にしか持たないため、酸素のある環境では自壊する。

病原性の仕組み

⭐ 咽頭炎からへの進展が本菌の病原性の核心である。がへ波及し周囲へ至ると、本菌が血小板を凝集させてを促す一方、周囲組織の炎症による外部からの静脈圧迫()が加わり、のが形成される2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oropharyngeal infection'>口腔咽頭感染</span><br>(咽頭炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritonsillar abscess'>扁桃周囲膿瘍</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral pharyngeal space'>外側咽頭間隙</span>への進展"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet aggregation'>血小板凝集</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravascular coagulation'>血管内凝固</span><br>+周囲炎症による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous stasis'>静脈うっ滞</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal jugular vein'>内頸静脈</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic thrombophlebitis'>敗血症性血栓性静脈炎</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic embolism'>敗血症性塞栓</span>が全身へ播種"]
    E --> F["肺・胸膜・関節・骨・筋・脾・肝・腎"]

感染経路と疫学

  • 咽頭からの進展:とくに青年・若年成人の・咽頭炎の重要な原因菌である3。咽頭の常在菌からのとする見方がある一方、は若年期に新たに獲得した菌による外因性感染と考える見方もあり、決着していない1
  • の好発年齢は10〜35歳(中央値19〜22歳)で、以前は健康であった若年者に多く、男女比は約2:1である2

起こす疾患

疾患 特徴
・咽頭炎 青年・若年成人での重要な原因菌の一つ
咽頭炎後の+。本菌が主な原因菌(文献222例の68%、種不明のFusobacterium属を含めると86%)で、F. nucleatumなどによる例外的な症例も報告されている1

診断

  • 画像検査:造影CTが最も広く用いられる。は血栓の検出感度97%と高いが、ほど利用しやすくない2
  • 血液培養:70%超でFusobacterium属が陽性となるが、に時間・技術を要するため偽陰性もありうる2
  • として、軽度〜高度の、、血小板減少を伴うことが多い2

治療と予防

  • (などのを含む)やメトロニダゾール・クリンダマイシンなど嫌気性菌カバーを持つ薬剤を、通常6週間投与する2
  • ⚠️ の適応は議論がある。 への進展、大きい・両側性の血栓、72時間で改善しない場合などに限って考慮される2
  • 膿瘍形成・・縦隔や頭蓋内への進展があれば外科的介入を要することがある
  • 適切な治療下でも死亡率は5〜18%、平均入院期間は約3週間でしばしばを要する2
  • 嫌気性菌に共通してアミノグリコシド系・には通常耐性である4。アミノグリコシド系は取り込みに性のが作る膜電位を要し、はのPBP3に強く結合して効く薬で、嫌気性菌には臨床的に有用な活性を持たない

まとめ

  • F. necrophorumはグラム陰性桿菌で(咽頭・消化管・の常在菌とされるが、口腔の常在菌としての培養の裏付けは乏しいとする総説もある)、青年・若年成人の・咽頭炎の重要な原因菌である。
  • によると周囲炎症によるを介して(咽頭炎後の+)を起こす主な原因菌で(F. nucleatumなどによる例外的な症例もある)、好発は10〜35歳の健康な若年者(男女比2:1)である。
  • 診断は造影CT・による血栓評価と嫌気性血液培養(陽性率70%超だが偽陰性もありうる)で行う。
  • 治療はなどによる6週間の抗菌薬投与が基本で、や外科的介入の適応は個別に判断する。適切な治療下でも死亡率5〜18%と侮れない。

出典

  1. 1.Human infection with Fusobacterium necrophorum (Necrobacillosis), with a focus on Lemierre's syndrome(Clinical Microbiology Reviews(Riordan T)・2007)PMC全文(PMC2176048、ウェブアーカイブで本文を取得)で、著者の症例定義を満たすLemierre症候群222例のうち68%でF. necrophorum、86%でF. necrophorumまたは他のFusobacterium属、90%で何らかの嫌気性菌が発育したこと、著者が「F. necrophorumがLemierre症候群の唯一の原因かどうかは結論が出ていない」と述べ、F. nucleatum菌血症がLemierre症候群の臨床像を呈した例や、血液培養でF. nucleatumが発育し内頸静脈血栓症と肺病変を伴った症例(Woywodtらの報告)を挙げていること、著者が「F. necrophorumが口腔の常在菌叢の一部であることを裏付ける説得力のある培養の証拠は無い」と結論し、健常者の咽頭での検出は分子生物学的研究1件(PCRで扁桃炎患者の51%、健常対照の21%)にとどまるとしていること、Lemierre症候群は外因性に獲得される感染と考えられ、若年期に曝露と獲得が集中する可能性を論じていることを確認した閲覧 2026-09-27
  2. 2.Lemierre Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)F. necrophorumが咽頭・消化管・女性生殖器の常在フローラの一部である偏性嫌気性グラム陰性桿菌でLemierre症候群の中心的な原因菌であること、病態が口腔咽頭感染→外側咽頭間隙への進展→内頸静脈の敗血症性血栓性静脈炎→肺・胸膜・関節・骨・筋・脾・肝・腎への敗血症性塞栓の播種という順に進むこと、血小板凝集による血管内凝固と外部圧迫による静脈うっ滞が機序に関与すること、好発が10〜35歳(中央値19〜22歳、男女比2:1)の若年健常者であること、CTが最も広く使われる画像検査でMRIは内頸静脈血栓検出感度97%であること、血液培養は70%超でFusobacterium属が陽性となるが嫌気培養の困難さから偽陰性もありうること、βラクタマーゼ耐性βラクタム系を通常6週間投与すること、抗凝固療法の適応は議論があり脳静脈洞への進展や72時間で改善しない例などに限られること、適切な治療下でも死亡率が5〜18%であることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Anaerobic Infections(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)Fusobacterium属が口腔・消化管の常在フローラの一部であるグラム陰性桿菌で頭頸部感染の重要な嫌気性病原体であること、F. necrophorumがとくに青年・若年成人で扁桃周囲膿瘍・咽頭炎を起こす重要な病原体であり、これがLemierre症候群(内頸静脈の敗血症性血栓性静脈炎、しばしば敗血症性肺塞栓を伴う)へ進展しうる生命を脅かす病態の主要な原因菌であることを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)現行版(v1.2、2023年1月)のPDFを取得し、Table 5(嫌気性菌)の表題が「嫌気性菌は通常アズトレオナム・アミノグリコシド系・ポリミキシンB/コリスチン・ナリジクス酸に耐性」と述べていることを確認した。同表に種別の行はClostridium ramosum・C. innocuumのバンコマイシン耐性の1行だけで、Fusobacterium属の個別の行は無い閲覧 2026-09-27