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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

重症熱性血小板減少症候群

Severe fever with thrombocytopenia syndrome

別名
SFTS
臓器系
感染症
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 3/21:ブニヤウイルス(ハンタ・クリミア-コンゴ出血熱ウイルス)
合併症
血球貪食性リンパ組織球症
関連疾患
ハンタウイルス肺症候群腎症候性出血熱
治療薬
ファビピラビル
原因微生物
Dabie bandavirus
症状
発熱嘔吐下痢腹痛筋痛意識障害白血球減少
検査値
血小板減少アミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)乳酸脱水素酵素クレアチンキナーゼアルブミン

🧠 全体像:SFTSは「マダニに刺されて起こる、血が止まりにくく臓器が傷む」——2011年に中国で新規として初めて報告され1、日本では2013年に初の国内感染例が確認されて以来、西日本を中心に年間100件前後のが続く新興感染症である23。⚠️ 日本国内のは27%と、多くのウイルス性より一桁高い4。高齢者に極端に偏る(患者の90%が60歳以上)ことと、(HLH)を合併すると致死率がさらに跳ね上がることが臨床上の要点になる35。

病原体と感染経路

⭐ 起因ウイルスは Dabie bandavirus(フェニュイウイルス科バンダウイルス属の1本鎖ウイルス)で、当初は「SFTS」と呼ばれた新種である12。中国での症例集積では、当初 Anaplasma phagocytophilum 感染が疑われたが大半の患者で検出されず、血液からの分離・観察・を経てBunyaviridae科Phlebovirus属(現行分類ではPhenuiviridae科Bandavirus属)の新種と同定された1。

感染経路は2つに大別される24。

経路 詳細
マダニ刺咬 日本ではフタトゲチマダニ・キチマダニが媒介に関与する主経路2
動物・患者の血液や体液との接触 野生動物やネコ・イヌなどペットの血液からもウイルスが検出される。ネコに咬まれての感染例・獣医療従事者の感染例が報告されている一方、発症していない動物からの感染例は報告されていない4

💡 ベクター媒介だけの病気ではない。 2024年3月には患者から医療従事者への国内初のヒト-ヒト感染事例が報告されており、体液を介した直接感染も現実のリスクである4。は6〜14日(通常7〜10日)とされる2。

疫学——高齢者に極端に偏る新興感染症

中国での原記載(2009年以降の強化を契機に同定)では、6省でウイルス感染が確認された171例の解析が報告の中核をなした1。その後、韓国・日本を含む東アジアで報告が続いている2。

  • 日本では2013年に初の国内感染例が確認され、2013年3月〜2025年4月の累計数は1,071例3。
  • 年間数は2016年まで年60例前後だったが2017年以降増加傾向となり、2023年には134例に達した3。
  • ⭐ 患者の年齢中央値は75歳、60歳以上が90%を占める。男女比はほぼ同等34。
  • ヒトの症例は西日本を中心に報告されている3。⚠️ 「東日本へ拡大」はヒトではなく動物(発症ネコ・イヌ)の症例についての記述であり、混同しない——2017年以降、発症ネコ・イヌの報告数が年々増加し発生地域も東日本へ拡大しているが、これはヒトの症例の地理的傾向とは別のデータである3。
  • 国際的な(25件・4,143例)では流行のピークは5〜7月、マダニ刺咬歴を有する患者は24%にとどまった6。

臨床像と検査所見

主症状は発熱と消化器症状(・・嘔吐・下痢・腹痛)で、重症例では頭痛・筋肉痛・意識障害・出血症状を伴う4。

💡 「発熱+血小板減少+」の組み合わせが診断の出発点になる。 国際では、重症例は軽症例と比較して以下のが有意に偏っていた6。

重症例での変化(SMD)
アルブミン
有意差なし

⚠️ 死亡と関連する入院時症状は下痢(OR 1.60)・嘔吐(OR 1.56)で、死亡例は生存例より平均年齢が6.88歳高く、農業従事も死亡と関連した(OR 2.01)6。

flowchart TD
    A["マダニ刺咬歴・動物/患者の血液体液曝露歴<br>+発熱+消化器症状"] --> B["血算・生化学:<br>血小板減少・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Leukopenia'>白血球減少</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='aspartate aminotransferase'>AST</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alanine aminotransferase'>ALT</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactate dehydrogenase'>LDH</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='creatine kinase'>CK</span>上昇"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='severe features'>重症所見</span>あり<br>(意識障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic diathesis'>出血傾向</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemophagocytosis'>血球貪食</span>像)か"}
    C -->|"はい"| D["HLH合併を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intensive care'>集中治療</span>管理を検討"]
    C -->|"いいえ"| E["入院管理下で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='favipiravir'>ファビピラビル</span>投与を検討<br>対症療法"]
    D --> E

合併症——血球貪食性リンパ組織球症(HLH)が予後を左右する

⭐ 中国233例の検査確定SFTS患者のうち112例が入院中にHLHを合併した。 SFTS-HLH群はSFTS単独群より重症の臨床像・高い死亡率・強い臓器障害・合併感染の頻度が高く、多変量Cox解析でHLH合併は28日死亡のだった(2.942、95%CI 1.277-6.775)5。

  • SFTS-HLH群ではがより高度で、PD-1・Tim-3・CD39などのマーカーが上昇し、のとNK細胞が低下していた。これらの異常はよりで顕著だった5。
  • SFTSウイルス量が高いこと自体も独立した死亡予測因子である(1.636)5。

治療——ファビピラビルが日本で承認された特異的抗ウイルス薬

治療の中心は対症療法だが、日本では2024年6月に抗ウイルス薬がSFTSウイルス感染症に対して承認され、病状進行が予期される場合に投与が検討される4。

⚠️ 添付文書上の投与条件が厳しく限定されている。 1.1は「診療が整備され、緊急時に十分な措置が可能な医療機関において、本剤について十分な知識をもつのもと、入院管理下で投与すること」と定める7。

項目 内容
用法・用量 1日目:1回1800mgを1日2回。2日目〜10日目:1回800mgを1日2回(総投与期間10日間)
禁忌 妊婦又は妊娠している可能性のある女性/本剤成分に対する過敏症の既往歴
特記事項 で初期胚致死・催奇形性が確認されており、妊娠可能な女性には投与前の妊娠検査陰性確認と、投与期間中・投与終了後10日間の有効な避妊が必須

(すべて7)

予後と予防

⭐ 致死率は集団によって幅がある。 日本国内のは27%4、国際でのプール致死率は18%(国別では日本31%・韓国30%・中国16%)と報告されており6、いずれも「未治療なら致死率10%前後」のなどと比べて高い部類に入る。

💡 高齢・農業従事・HLH合併が予後不良に傾く軸として繰り返し出てくる。 予防はマダニ刺咬を避けること(の使用、肌の露出を最小化)と、感染が疑われる動物・患者の血液や体液に素手で触れないことに尽きる。承認されたワクチンはない2。

まとめ

  • SFTSの起因ウイルスはDabie bandavirus(フェニュイウイルス科バンダウイルス属)。2011年に中国で新規として報告され、日本では2013年以降、西日本を中心に年間100件前後がされる新興感染症である。
  • ⚠️ 日本国内のは27%。患者の90%が60歳以上という強い年齢偏在がある。
  • 主要な感染経路はマダニ刺咬と、・患者の血液や体液への接触。2024年3月には国内初のヒト-ヒト感染例も報告された。
  • は血小板減少・に加え、重症例で・・・の上昇とアルブミン低下が目立つ。
  • ⭐ (HLH)を合併すると死亡リスクが独立して上昇する(2.942)。
  • 2024年6月に抗ウイルス薬が承認されたが、入院管理下・診療が整った医療機関での使用に限定される。ワクチンは存在せず、予防の中心はマダニ刺咬対策と動物・患者の血液体液への直接接触回避である。

出典

  1. 1.Fever with thrombocytopenia associated with a novel bunyavirus in China(New England Journal of Medicine(Yu XJ, et al.)・2011)PubMedの抄録(PMID 21410387、PMCID PMC3113718)で確認した。2009年以降の中国での急性発熱性疾患サーベイランス強化により重症熱性血小板減少症候群(SFTS)という原因不明の症候群が同定されたこと、当初*Anaplasma phagocytophilum*感染が疑われたが大半の患者で検出されなかったこと、中国6省でSFTSの症例定義を満たした患者の血液から新規ウイルスを分離しSFTSブニヤウイルスと命名したこと、RNA配列解析によりBunyaviridae科Phlebovirus属の新種であることが判明したこと、電子顕微鏡でブニヤウイルスに特徴的な形態のウイルス粒子を確認したこと、6省171例のSFTS患者でウイルスRNA・特異抗体のいずれかまたは両方により感染が確認されたこと、急性期・回復期のペア血清35組全例でウイルス特異的な免疫応答を確認したこと、患者が発熱・血小板減少・白血球減少・多臓器機能不全を呈して発症したことを確認した。閲覧 2026-09-16
  2. 2.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト・2025)2025年6月19日最終更新のライブページで確認した。SFTSウイルスがフェニュイウイルス科バンダウイルス属の1本鎖RNAウイルスであること、主な感染経路がウイルスを保有するマダニの刺咬と感染動物・患者の血液や体液への接触の2つであること、日本ではフタトゲチマダニとキチマダニが媒介に関与すること、潜伏期間が6〜14日(通常7〜10日)であること、主症状が発熱と消化器症状で重症例では出血傾向や意識障害を伴い死亡することがあること、治療が抗ウイルス薬によることがあること、予防策が忌避剤の使用と肌の露出を避けることで承認されたワクチンはないことを確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.<特集>重症熱性血小板減少症候群(SFTS) 2025年5月現在(国立健康危機管理研究機構(IASR)・2025)ライブページで確認した。日本では2013年3月から2025年4月までに感染症発生動向調査へSFTS 1,071例が届出されたこと、年間届出数が2016年までは年60例前後だったが2017年以降増加傾向となり2023年には134例に達したこと、届出患者の年齢中央値が75歳で60歳以上が90%を占めること、男女比がほぼ同等であること、ヒトの届出症例は西日本を中心に報告されていること(東日本への拡大が明記されているのは2017年以降増加傾向にある発症ネコ・イヌの動物症例についてであり、ヒト症例の地域分布についてではない)を確認した。閲覧 2026-09-16
  4. 4.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A(厚生労働省・2025)第8版(令和7年11月21日作成)のライブページで確認した。日本国内の致命率が27%であること、患者の約90%が60歳以上で死亡患者の多くが50歳以上であること、主症状が発熱・全身倦怠感・消化器症状(食欲不振・嘔気・嘔吐・下痢・腹痛)で、重症時には頭痛・筋肉痛・意識障害・出血症状が現れることもあること、主な感染経路がマダニ刺咬だが野生動物やネコ・イヌなど動物の血液からもSFTSウイルスが検出されており感染動物との接触でも感染しうること、2024年3月に患者から医療従事者への国内初のヒト-ヒト感染事例が報告されたこと、ネコに咬まれて感染した事例や獣医療従事者の感染例が報告される一方で発症していない動物からヒトが感染した事例は報告されていないこと、治療は対症療法が主体だが2024年6月に抗ウイルス薬ファビピラビルが承認され病状進行が予期される場合に投与が検討されることを確認した。閲覧 2026-09-16
  5. 5.Immune profiling and prognosis implications in severe fever with thrombocytopenia syndrome with and without hemophagocytic lymphohistiocytosis(Travel Medicine and Infectious Disease(Zou S, et al.)・2025)PubMedの抄録(PMID 41232584)で確認した。検査確定SFTS患者233例中112例が入院中に血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を合併したこと、SFTS-HLH群はSFTS単独群より重症の臨床像・高い死亡率・強い臓器障害・合併感染の頻度が高かったこと、SFTS-HLH群ではリンパ球減少がより高度でPD-1・Tim-3・CD39などの疲弊マーカーが上昇しCD8陽性T細胞の細胞傷害能とNK細胞増殖能が低下していたこと、これらの異常は生存者より非生存者で顕著だったこと、SFTSウイルスRNA量がSFTS-HLH群で有意に高くサイトカインや臓器障害マーカーと正相関したこと、多変量Cox解析でSFTS-HLHの合併(ハザード比2.942、95%CI 1.277-6.775)と高ウイルス量(ハザード比1.636、95%CI 1.239-2.159)が28日死亡の独立予測因子だったことを確認した。閲覧 2026-09-16
  6. 6.Severe fever with thrombocytopenia syndrome: a systematic review and meta-analysis of epidemiology, clinical signs, routine laboratory diagnosis, risk factors, and outcomes(BMC Infectious Diseases(He Z, et al.)・2020)PMC7409422(オープンアクセス全文)で確認した。中国21件(3,876例)・韓国3件(218例)・日本1件(49例)の計25件・4,143例を統合したメタ解析で、プールした致死率が18%(95%CI 0.16-0.21、735/4,143例)であり国別では中国16%・日本31%・韓国30%だったこと、重症例では軽症例と比較してLDH(SMD 1.27)・AST(SMD 1.01)・ALT(SMD 0.55)・CK(SMD 1.04)が有意に高値で、血小板数(SMD -0.87)・アルブミン(SMD -1.00)が有意に低値だった一方、白血球数には有意差がなかったこと、死亡と関連する入院時症状として下痢(OR 1.60、95%CI 1.06-2.42)・嘔吐(OR 1.56、95%CI 1.01-2.39)が挙げられたこと、死亡例は生存例より平均年齢が6.88歳高く(95%CI 5.41-8.35)、農業従事がOR 2.01(95%CI 1.06-3.80)で死亡と関連したこと、マダニ刺咬歴を有する患者が24%(284/1,228例、95%CI 0.18-0.31)だったこと、流行のピークが5〜7月であったことを確認した。閲覧 2026-09-16
  7. 7.アビガン錠200mg 添付文書(富士フイルム富山化学(PMDA医療用医薬品情報検索システム)・2024)2024年8月改訂(第3版)のアビガン錠200mg添付文書で確認した。効能・効果に「重症熱性血小板減少症候群ウイルス感染症」が含まれること、警告1.1がSFTS感染症について「重症感染症診療体制が整備され、緊急時に十分な措置が可能な医療機関において、本剤について十分な知識をもつ医師のもと、入院管理下で投与すること」と定めること、SFTSに対する用法・用量が1日目1回1800mgを1日2回、2日目から10日目まで1回800mgを1日2回で総投与期間10日間であること、禁忌が妊婦又は妊娠している可能性のある女性・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者の2項目のみであること、動物実験で初期胚の致死及び催奇形性が確認されており妊娠する可能性のある女性への投与前には妊娠検査で陰性を確認し投与期間中及び投与終了後10日間は有効な避妊法を徹底するよう指導することを確認した。閲覧 2026-09-16