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Drug Atlas · C5 Antivirals / 抗ウイルス薬

ファビピラビル

favipiravir

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(日本)
アビガン
科目
Pharmacology
トピック
C5: Agents to treat Herpes simplex (HSV), varicella-zoster (VZV), cytomegalovirus (CMV). Anti-influenza agents. Drugs against Corona- and other viruses
標的微生物
Sin Nombreウイルス
副作用
痙攣黄疸
監視検査値
尿酸
影響検査値
アミノトランスフェラーゼ
対象疾患
重症熱性血小板減少症候群

🧠 全体像:は、として細胞内でRTP(リボシル)に活性化され、幅広いウイルスの依存性ポリメラーゼ(RdRp)をにして阻害するという単一の機序で、日本では新型/再興型インフルエンザと重症熱性候群(SFTS)という系統の異なる2つのウイルス感染症に承認されている変わり種の抗ウイルス薬である。⭐ この「RdRp阻害という保存された標的を突く」という設計そのものが、SFTSウイルス(目)と同じ目に属するSin Nombreウイルス()に対しても実験的に検討される根拠になっている——in vitroでは既に近縁のProspect Hillウイルスなど複数のハンタウイルスへのが報告されている。一方でという別のウイルスに対しては、2024年のPLATCOV試験がin vivoでの抗ウイルス活性を示せなかった——「機序が広域だから効く」とは限らないという教訓も併せ持つ薬である。

薬効群の中での位置づけ

ウイルス 承認・検討状況 根拠
(新型・再興型) 日本で承認(他のが無効・効果不十分な場合限定、国の判断がある場合のみ投与検討) RdRp阻害。既存薬耐性株にもを示さない1
SFTSウイルス 日本で承認(入院管理下、緊急時対応可能な医療機関限定) RdRp阻害。in vitroで複数のに抗ウイルス活性1
Sin Nombreウイルスなど ・in vitro段階の実験的選択肢 近縁のProspect Hill等のハンタウイルスへのin vitroが報告されている2
SARS-CoV-2(COVID-19) 有効性を示せず(2024年PLATCOV試験) 高用量でもウイルスに対照群との有意差なし3

💡 「同じRdRp阻害という機序が、ウイルスによって効いたり効かなかったりする」というこの対比が理解の軸になる。 アレナウイルス・フレボウイルス・ハンタウイルス・・・・・ノロウイルスなど、in vitroでの抗ウイルス活性が報告されたウイルス科は非常に広いが2、それがを保証しない——に対するの否定的な結果がその典型である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='favipiravir'>ファビピラビル</span>を内服(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)"] --> B["細胞内酵素によりリボシル<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triphosphate form'>三リン酸体</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='favipiravir'>ファビピラビル</span>RTP)へ代謝"]
    B --> C["ウイルス<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>ポリメラーゼ(RdRp)が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='favipiravir'>ファビピラビル</span>RTPを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='purine nucleotide'>プリンヌクレオチド</span>と誤認識"]
    C --> D["RdRpに取り込まれ、ウイルス<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>複製を阻害"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='viral replication'>ウイルス複製</span>↓"]

💡 標的がRdRpという「多くのウイルスに保存された構造」であることが、広域抗ウイルス活性の理由である。 ポリメラーゼαへの阻害作用は無く、β・γへの阻害も限定的、ポリメラーゼⅡへのも治療濃度から離れており、選択性は保たれている1。

適応

日本での適応は2つの系統の異なるウイルス感染症に限定される1。

  1. 新型又は再興型感染症(他の抗薬が無効又は効果不十分なものに限る)——⚠️ この適応は「発生してから国が使用を判断する」という条件付きで、平時に処方される薬ではない。 添付文書は「他の抗薬が無効又は効果不十分な新型又は再興型感染症が発生し、本剤を当該への対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される」と明記し、新型・再興型インフルエンザに対する本剤の投与経験は無いとも述べている
  2. 重症熱性候群ウイルス感染症(SFTS)——⚠️ として、診療が整備され緊急時に十分な措置が可能な医療機関において、入院管理下で投与することが求められる

⭐ Sin Nombreウイルスによるはどちらの適応にも含まれない。 SFTSウイルス(目フレボウイルス属)とハンタウイルス(同じ目の属)は目のレベルでは近縁だが、日本のはSFTSウイルスに限定されており、ハンタウイルス感染症への使用は・in vitro段階の実験的選択肢にとどまる2。

用法・用量

  • インフルエンザ:1日目は1回1600 mgを1日2回、2日目から5日目は1回600 mgを1日2回。総投与期間5日間1
  • SFTS:1日目は1回1800 mgを1日2回、2日目から10日目は1回800 mgを1日2回。総投与期間10日間1

⚠️ この承認用法・用量そのものを検証したは実施されていない。 添付文書は「承認用法及び用量における本剤の有効性及び安全性が検討されたは実施されていない」とし、感染症患者対象の第I/II相試験成績と国内外のデータから推定した用量であると明記している1。実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌は2項目のみ:妊婦又は妊娠している可能性のある女性、本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者1
  • ⚠️ 催奇形性が最大の注意点である。 での初期胚致死、マウス・・ウサギ・サルでの催奇形性(外表・内臓・骨格の異常)が臨床を下回る用量で認められている。妊娠する可能性のある女性には投与開始前に妊娠検査で陰性を確認したうえで投与を開始し、投与期間中及び投与終了後10日間はパートナーと共に極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導する。精液中への移行も確認されており男女双方の避妊期間遵守が求められる1
  • があらわれることがあるため、投与開始前及び投与中は肝機能検査を実施する1
  • 血中尿酸値が上昇しがあらわれることがあるため、痛風・のある患者では注意する1
  • インフルエンザ罹患時の(急に走り出す・徘徊する等)が、薬剤とのは不明ながら報告されている——他のと同様、発熱後少なくとも2日間の事故防止対策を患者・家族に説明する1

副作用

頻度 内容
重大な副作用(頻度不明を含む) 、ショック・アナフィラキシー、肺炎、・(0.2%)・黄疸、・、、・好中球減少・血小板減少、痙攣(0.2%)・(意識障害・譫妄・・等)、出血性大腸炎
その他 過敏症(発疹等)、(・・γ-GTP増加)

(頻度区分・項目は日本の添付文書「11. 副作用」による1)

まとめ

  • はで、細胞内でRTP(リボシル)に代謝された後、ウイルスポリメラーゼ(RdRp)をとして阻害する。
  • 日本での適応は新型/再興型インフルエンザ(国の使用判断がある場合限定、投与経験なし)と重症熱性候群(SFTS)(入院管理下限定)の2つ。
  • ⭐ RdRpという保存された標的ゆえに、アレナウイルス・フレボウイルス・ハンタウイルス・など幅広いウイルス科にin vitroの抗ウイルス活性が報告されている。 Sin Nombreウイルスを含むへの使用は、のSFTSウイルスと同じ目に属することを背景にした・in vitro段階の実験的選択肢にとどまる。
  • ⚠️ 同じ広域機序でも、に対しては2024年のPLATCOV試験がin vivoでの抗ウイルス活性を示せなかった(ウイルスの対照群との差-1%、95%信用区間-14%〜14%)——広域in vitro活性がを保証しない好例。
  • 禁忌は妊婦・妊娠可能性のある女性と成分過敏症の2項目のみだが、での催奇形性を理由に厳格な(投与期間中及び終了後10日間、男女双方)が求められる。
  • 用法・用量はインフルエンザで5日間、SFTSで10日間投与だが、この承認用法・用量自体を検証したは実施されていない(データからの推定)。

出典

  1. 1.アビガン錠200mg 添付文書(富士フイルム富山化学(PMDA医療用医薬品情報検索システム)・2024)2024年8月改訂(第3版)のアビガン錠200mg添付文書で、規制区分が劇薬・処方箋医薬品であること、効能・効果が「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」と「重症熱性血小板減少症候群ウイルス感染症」の2つであること、インフルエンザ適応については「他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品である」と明記され新型・再興型インフルエンザに対する本剤の投与経験は無いこと、警告1.1がSFTS感染症について「重症感染症診療体制が整備され、緊急時に十分な措置が可能な医療機関において、本剤について十分な知識をもつ医師のもと、入院管理下で投与すること」と定めること、警告1.2・1.3が動物実験で初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと・妊娠する可能性のある女性への投与前には妊娠検査で陰性を確認し投与期間中及び投与終了後10日間はパートナーと共に極めて有効な避妊法を徹底するよう指導することを定めること、禁忌が2.1妊婦又は妊娠している可能性のある女性・2.2本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者の2項目のみであること、用法・用量がインフルエンザでは1日目1回1600mgを1日2回、2日目から5日目1回600mgを1日2回で総投与期間5日間、SFTSでは1日目1回1800mgを1日2回、2日目から10日目1回800mgを1日2回で総投与期間10日間であること、18.1の作用機序が細胞内でリボシル三リン酸体(ファビピラビルRTP)に代謝されファビピラビルRTPがインフルエンザウイルスやSFTSウイルスの複製に関与するRNAポリメラーゼを選択的に阻害すると考えられていること、ヒト由来DNAポリメラーゼαには阻害作用を示さずβ・γへの阻害作用は限定的でヒト由来RNAポリメラーゼⅡに対するIC50値は905μmol/Lであったこと、重大な副作用が異常行動・ショック/アナフィラキシー・肺炎・劇症肝炎/肝機能障害/黄疸・中毒性表皮壊死融解症/皮膚粘膜眼症候群・急性腎障害・白血球減少/好中球減少/血小板減少・痙攣/精神神経症状・出血性大腸炎であることを確認した。閲覧 2026-09-16
  2. 2.Favipiravir (T-705), a novel viral RNA polymerase inhibitor(Antiviral Research・2013)ファビピラビル(T-705)が細胞内酵素によりリボシル三リン酸体(RTP)へ代謝され活性化されるプロドラッグであり、ウイルスRNAポリメラーゼがファビピラビル-RTPをプリンヌクレオチドと誤認識することで抗ウイルス効果を示すこと、インフルエンザウイルス(A(H1N1)pdm09、A(H5N1)、A(H7N9)を含む既存抗インフルエンザ薬耐性株も含む)に加え、アレナウイルス(Junin、Machupo、Pichinde)・フレボウイルス(リフトバレー熱、サシチョウバエ熱、Punta Toro)・**ハンタウイルス(Maporal、Dobrava、Prospect Hill)**・フラビウイルス(黄熱、West Nile)・エンテロウイルス(ポリオ・ライノウイルス)・アルファウイルス(西部ウマ脳炎)・パラミクソウイルス(RSウイルス)・ノロウイルスなど幅広いRNAウイルス科の複製を阻害することを確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.Clinical antiviral efficacy of favipiravir in early COVID-19 (PLATCOV): an open-label, randomised, controlled, adaptive platform trial(BMC Infectious Diseases・2024)早期症候性COVID-19の低リスク成人を対象とした多施設非盲検無作為化アダプティブプラットフォーム試験で、高用量経口ファビピラビル(初日3.6 g、以後1日1.6 gを計7日間)群114例と無治療対照群126例を比較し、無作為化後8日間の口腔咽頭スワブ定量PCRから推定したウイルス消失速度に有意差が無かったこと(線形混合効果モデルで平均差-1%、95%信用区間-14%〜14%)、高用量ファビピラビルの忍容性は良好だったが「in vivoで測定可能な抗ウイルス活性を示さず、臨床的有益性がある可能性は極めて低い」と結論したことを確認した。閲覧 2026-09-16