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Drug Atlas · C5 Antivirals / 抗ウイルス薬

トリフルリジン

trifluridine

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬Antineoplastics / 抗腫瘍薬
科目
PharmacologyOncology and Reconstructive Oncoplastic Surgery
トピック
C5: Agents to treat Herpes simplex (HSV), varicella-zoster (VZV), cytomegalovirus (CMV). Anti-influenza agents. Drugs against Corona- and other virusesII-08: Treatment of small intestinal and colorectal cancer
承認適応
角膜炎大腸癌胃癌
標的微生物
単純ヘルペスウイルス1型単純ヘルペスウイルス2型
副作用
眼瞼浮腫悪心嘔吐下痢腹痛発熱

🧠 全体像:は1つの化合物がまったく別の2つの薬理学的文脈で使われている珍しい薬である。(点眼液)では・2型による角膜炎に対する抗ウイルス薬として1980年代から使われてきた一方、全身投与(経口)ではチピラシルとの配合剤(LONSURF=ロンサーフ、いわゆるTAS-102)の構成成分として、既治療の転移性大腸癌と既治療の転移性胃癌・腺癌に対する抗悪性腫瘍薬(ピリミジン)として使われる。⚠️ どちらの文脈の設問かをまず見分ける。 点眼液の話であれば「角膜のを止める局所抗ウイルス薬」、TAS-102の話であれば「に取り込まれてを阻害する全身性の抗拮抗薬」とまったく違う答えになる——同じ化合物だから機序も同じ、と早合点しない(詳細は「機序」参照)。の文脈でこの薬が名指しされるのは前者(角膜病変への点眼液としての用途)である1。

薬効群の中での位置づけ

・製剤 薬効分類 代表的な適応 併用成分
点眼液(VIROPTIC 1%) 抗ウイルス薬(ピリミジン) (角膜炎) 単剤
経口配合剤(LONSURF/TAS-102) 抗悪性腫瘍薬() 既治療の転移性大腸癌、既治療の転移性胃癌・腺癌 チピラシル(の分解を防ぐ阻害薬)

💡 点眼液の適応はに限られ、の治療に点眼液が使われることはない。 逆にLONSURFは経口の全身投与薬であり、角膜炎の治療に使われることはない——製剤(点眼か経口か)が2つの用途を隔てている23。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trifluridine'>トリフルリジン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorination'>フッ素化</span>ピリミジン<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleoside'>ヌクレオシド</span>)"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='route of administration'>投与経路</span>"}
    B -->|"点眼(局所)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal epithelium'>角膜上皮</span>細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='herpes simplex virus'>HSV</span>に取り込まれる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='herpes simplex virus'>HSV</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>合成を障害"]
    D --> E["正確な抗ウイルス機序は完全には未解明"]
    B -->|"経口(LONSURF、+チピラシル)"| F["腫瘍細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>に取り込まれる"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thymidylate synthase'>チミジル酸合成酵素</span>を阻害"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>機能が障害され細胞死"]
    F --> I["チピラシルが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thymidine phosphorylase'>チミジンホスホリラーゼ</span>を阻害"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trifluridine'>トリフルリジン</span>の分解を防ぎ曝露を維持"]

⚠️ 点眼液の添付文書自身が「正確な抗ウイルス機序は完全には解明されていない」と明記している。 ピリミジンとしてHSV1型・2型にinvitro・invivoの活性を持つとされるが、合成阻害以上の詳細なは添付文書レベルでは断定されていない2。一方、LONSURFの機序はより具体的に記載されており、がに直接取り込まれてを阻害するのに対し、チピラシル自体には抗腫瘍活性が無く、を分解する酵素()を阻害しての血中濃度を保つ役割に徹している3。

適応

  • 点眼液:・2型による原発性・再発性上皮型角膜炎。または療法に反応しなかった症例にも有効とされる2。
  • 経口配合剤(LONSURF):米国添付文書は適応を2つに書き分けている3。
適応(LONSURF) 求められる
転移性大腸癌(単剤または併用) 系・系・系の化学療法、抗生物学的製剤、かつRAS野生型なら抗EGFR療法
転移性胃癌・腺癌 ・・またはを含む2レジメン以上の化学療法(該当すれば/neu標的療法も)

⭐ どちらも「の既治療例」が前提で、初回治療には使わない。 ⚠️ の並びは癌種で違う。 大腸癌では抗製剤の治療歴まで求められるのに対し、胃癌・腺癌では「2レジメン以上」というライン数で規定されている——同じ薬の適応でも、条件の書き方そのものが異なる3。

の治療の文脈では、・・・と並んで点眼液が角膜病変に対する選択肢として整理されているが、⚠️ の治療について正式に承認されているわけではない——点眼液の適応はあくまでであり、による角膜病変への使用は文献上の整理にとどまる1。

用法・用量

  • 点眼液:覚醒中2時間ごとに患側角膜へ1滴(1日最大9滴)。潰瘍がした後は覚醒中4時間ごと1滴(1日最低5滴)へ減量し、さらに7日間継続する。の懸念から連続投与が21日を超えないようにする2。
  • 経口配合剤:あたり35 mg/m2(成分として)を食後に1日2回、28日を1サイクルとして1〜5日目・8〜12日目に投与し、残り14日間はする。1回あたり80 mgを上限とし、5 mg単位に丸める3。添付文書の別換算表では、2.30 m2以上で1回80 mg(1日総量160 mg)に頭打ちになる3。

禁忌・注意

  • 点眼液の禁忌:本剤への過敏症反応または化学的不耐性のみ2
  • ⚠️ 点眼液は21日を超える連続投与を避ける。 のリスクが上がるとされる2
  • での可能性・の懸念が示唆されているが、臨床的意義は不明とされる。妊娠・授乳中は有益性が危険性を上回る場合に限り使用する2
  • 経口配合剤(LONSURF)の禁忌欄は「None.(該当なし)」である。 安全性の要点は禁忌ではなく・注意(Warnings and Precautions)の2項——①骨髄抑制(5.1)と②(5.2)——に置かれている3
  • ⚠️ 骨髄抑制(5.1)。 重度の好中球減少症・・貧血が生じ、致死的となりうる。各サイクルの投与前と15日目にを行い、好中球数1,500/mm3以上・血小板75,000/mm3以上へ回復するまで次サイクルを開始しない。サイクル中も好中球数500/mm3未満・・血小板50,000/mm3未満・Grade 3〜4の非のいずれかでし、回復後は1回量を5 mg/m2ずつ減らして再開する3。⚠️ この骨髄抑制の・注意は経口配合剤に固有であり、点眼液には当てはまらない——製剤ごとに安全性プロファイルが大きく異なる
  • ⚠️ (5.2)。 と作用機序から、妊婦への投与で胎児に害を及ぼしうる。では推奨用量(35 mg/m2 1日2回)より低いで胚・胎児致死とが生じた。妊娠可能な女性には治療中および最終投与後6か月以上の有効な避妊を指導する3

副作用

製剤 頻度 内容
点眼液 最多 点眼時の一過性の軽い刺激感(4.6%)、(2.8%)2
点眼液 その他 、上皮性角膜症、過敏反応2
経口配合剤 ・注意 骨髄抑制(好中球減少症・・貧血)、3
経口配合剤() 10%以上 好中球減少症、貧血、、倦怠感、悪心、、下痢、嘔吐、腹痛、発熱3

まとめ

  • は点眼液(局所抗ウイルス薬)と経口配合剤LONSURF(全身性)というまったく別の2つの薬理学的文脈を持つ、同一化合物である23。
  • 点眼液の適応は(角膜炎)に限られ、機序の詳細(合成阻害以上)は添付文書上も完全には解明されていない2。
  • 経口配合剤(LONSURF=TAS-102)は既治療の転移性大腸癌と既治療の転移性胃癌・腺癌の2つが適応で、求められるは癌種で書き分けられている。チピラシルがの分解を防ぐことでを支えている。禁忌欄は「該当なし」で、・注意は骨髄抑制との2項——骨髄抑制は経口配合剤に固有で点眼液には当てはまらない3。
  • の角膜病変に対する局所抗ウイルス薬として名指しされるが、正式なではない1。

出典

  1. 1.Mpox therapeutics in the post-STOMP/PALM era(Current Opinion in HIV and AIDS・2026)テコビリマットが流行期を通じて人道的使用で広く投与されてきたにもかかわらず臨床的有効性の証拠が無いこと、複数の第3相プラセボ対照試験(STOMP・PALM007)がいずれもmpox治療におけるテコビリマットの臨床的有効性を示せなかったこと、およびSummaryが「テコビリマット・ブリンシドフォビル・シドフォビル・トリフルリジン・VIGIVを含む現行の治療推奨(current treatment recommendations)の根拠と、それ以外の研究段階の治療(other investigational treatments)をまとめる」と述べていることを、Europe PMC の抄録で確認した。⚠️ 全文はOvidの購読制で取得できず、抄録はこれら5剤を現行の治療推奨(current treatment recommendations)側に分類しており、investigational treatmentsはこれら5剤とは別の治療を指す閲覧 2026-08-26
  2. 2.VIROPTIC (trifluridine ophthalmic solution) 1% Sterile — Prescribing Information(Pfizer・2025)VIROPTIC点眼液1%(トリフルリジン)の適応が単純ヘルペスウイルス1型・2型による原発性角結膜炎および再発性上皮型角膜炎であり、イドクスウリジンまたはビダラビン療法に反応しなかった症例にも有効であるとされていること、用法が覚醒中2時間ごとに患側角膜へ1滴(1日最大9滴)を、潰瘍が再上皮化するまで点眼し、その後は覚醒中4時間ごと1滴(1日最低5滴)へ減じてさらに7日間継続すること、眼毒性の懸念から21日を超える連続投与は避けるべきとされていること、禁忌が本剤への過敏症反応または化学的不耐性のみであること、最も多い副作用が点眼時の一過性の軽い刺激感(4.6%)と眼瞼浮腫(2.8%)でその他に点状表層角膜症・上皮性角膜症・過敏反応があること、動物実験で変異原性の可能性と発癌性の懸念(臨床的意義は不明)が記載されていること、妊娠中・授乳中は有益性が危険性を上回る場合に限り使用するとされていること、薬理学的にはフッ素化ピリミジンヌクレオシドで単純ヘルペスウイルス1型・2型に対しinvitro・invivoの活性を持つが正確な抗ウイルス機序は完全には解明されていないとされていることを確認した。2025年4月改訂版。閲覧 2026-09-07
  3. 3.LONSURF (trifluridine and tipiracil) tablets — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration・2023)LONSURF(トリフルリジン・チピラシル配合剤)の適応が2つ書き分けられていること——1.1は「フルオロピリミジン系・オキサリプラチン系・イリノテカン系の化学療法歴、抗VEGF生物学的製剤の治療歴があり、かつRAS野生型であれば抗EGFR療法歴もある成人の転移性大腸癌(単剤またはベバシズマブ併用)」、1.2は「フルオロピリミジン・白金製剤・タキサンまたはイリノテカンを含む2レジメン以上の化学療法歴(該当すればHER2/neu標的療法歴も)がある成人の転移性胃癌・胃食道接合部腺癌」——を確認した。推奨用量が28日を1サイクルとして1日目から5日目・8日目から12日目に、体表面積あたり35 mg/m2(トリフルリジン成分として。1回あたり最大80 mgを上限とし、5 mg単位に丸める)を食後に1日2回経口投与し、その後は14日間休薬すること、禁忌(4項)が「None.」であること、警告・注意(Warnings and Precautions)が骨髄抑制(5.1。重度の好中球減少症・血小板減少症・貧血で致死的となりうる。各サイクルの投与前と15日目に全血球算定を行う)と胚・胎児毒性(5.2)の2項であること、機序についてトリフルリジンがDNAに取り込まれるヌクレオシド代謝拮抗薬でチミジル酸合成酵素を阻害しDNA機能を障害する一方、チピラシルはチミジンホスホリラーゼによるトリフルリジンの分解を阻害してトリフルリジンの曝露を高める役割を担うことを確認した。2023年8月改訂版(Reference ID 5219443)。閲覧 2026-09-07