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Drug Atlas · C5 Antivirals / 抗ウイルス薬

ブリンシドフォビル

brincidofovir

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(EU)
Tembexa
科目
PharmacologyMedical Microbiology
トピック
C5: Agents to treat Herpes simplex (HSV), varicella-zoster (VZV), cytomegalovirus (CMV). Anti-influenza agents. Drugs against Corona- and other viruses3/19: Poxviruses3/11: Adenoviruses
標的微生物
痘瘡ウイルスエムポックスウイルスヒトアデノウイルス
副作用
下痢悪心嘔吐腹痛
監視検査値
AST・ALTビリルビン
影響検査値
AST・ALTビリルビン
相互作用
シクロスポリンAシドフォビル

🧠 全体像:はに長鎖脂質を付けたである。⭐ に似せた脂質として細胞の内因性脂質取り込み経路に乗り、細胞の中で初めてが切り出される1——血中を遊離のとして流れないので、母体薬の代名詞だったへの取り込みと腎毒性が問題にならない。⚠️ ところが毒性は消えたのではなく、場所を変えただけである。 された脂質は消化管上皮と肝に負荷をかけ、下痢を中心とする消化管毒性と・が前面に出る1。⚠️⚠️ も「腎障害」ではなく「長期に使うと死亡が増える」という異例の内容で、だからの用法は週1回×2回だけという短さになっている。

薬効群の中での位置づけ

薬 細胞内への入り方
二リン酸 血中をとして循環し、に能動的に取り込まれる ⚠️ 強い腎毒性(併用と生食前負荷が必須)
同じ二リン酸 脂質を模した抱合体として脂質取り込み経路で細胞内へ入る1 ⚠️ 消化管毒性(下痢)と・1
— は高いがヒトでの有効性が未証明

⭐ 同じを作るのに、毒性プロファイルが正反対になる。 ⚠️ 軽度〜重度のでも、透析中のでも、のは不要である1——が55 mL/分以下で禁忌であることと対比して覚える。

⭐ とのは想定されない。 標的が違う(ポリメラーゼ対VP37)ため、耐性のが・に耐性であった例は確認されていない1。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brincidofovir'>ブリンシドフォビル</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cidofovir'>シドフォビル</span>+長鎖脂質)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lysophosphatidylcholine'>リゾホスファチジルコリン</span>を模した脂質として<br>内因性の脂質取り込み経路で細胞内へ"]
    B --> C["細胞内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ester bond'>エステル結合</span>が切断され<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cidofovir'>シドフォビル</span>が遊離"]
    C --> D["リン酸化されて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cidofovir'>シドフォビル</span>二リン酸に"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orthopoxvirus'>オルソポックスウイルス</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>ポリメラーゼを選択的に阻害"]
    E --> F["ウイルス<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>合成の速度が低下する"]
    B --> G["血中に遊離<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cidofovir'>シドフォビル</span>がほとんど出ない"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubule'>近位尿細管</span>への能動的取り込みが起きない"]

💡 腎毒性を避ける仕掛けが、そのまま消化管毒性の原因になる。 脂質取り込み経路を使うということは、で最初に高濃度に曝されるのが消化管上皮だということでもある。下痢・悪心・嘔吐・腹痛がとして並ぶのはこのためで、実際に静注製剤では肝毒性・消化管毒性が示されていない2。

適応

地域
米国(TEMBEXA) 新生児を含む成人・小児のヒト()の治療のみ1

⚠️ 添付文書は「以外の疾患には適応がない」と明示している1。以下はいずれもである。

  • :⚠️ 適応外である。 添付文書は「TEMBEXAはヒト以外の疾患の治療には適応がない」と明記している1。
  • 感染症:⚠️ 経口のに対する開発は、有意な消化管毒性のため中止された2。現在は静注製剤の開発に切り替わっており、静注と静注を比較する第3相試験が進行中である2。⭐ 「に」という記憶だけを持たない——経口では毒性で潰れた歴史があり、承認薬も依然として存在しない。

⚠️ 有効性はヒトで検証されていない。 の適応は、ウサギ()とマウス()のに基づいて与えられている1。

用法・用量

週1回、合計2回だけ投与する(Day 1とDay 8)1。

体重 用量
48 kg以上 200 mg(100 mg錠2錠、または20 mL)を週1回・計2回
10 kg以上48 kg未満 4 mg/kgを週1回・計2回
10 kg未満 6 mg/kgを週1回・計2回
  • 投与開始前に肝機能検査と妊娠検査を行う1。
  • は空腹時またはとともに、丸ごと服用する。⚠️ 砕いたり割ったりしない(の懸念があるため)。は空腹時に服用する1。
  • ⚠️ 割れたやに直接触れない。 皮膚・粘膜に付いたら石鹸と水でよく洗い、眼は水で十分に洗う1。

禁忌・注意

⚠️⚠️ :長期投与で死亡リスクが増加する1。

  • 根拠となった試験はではない。 感染予防を目的としたStudy 301(CMX001-301)で、303例が100 mgを週2回・最長14週間投与され、149例がを受けた。24週時点の率は群16%、プラセボ群10%であった1。⭐ 「Day 1とDay 8の2回だけ」という短い用法は、この所見からされたものである。
  • 禁忌:なし(添付文書上)1。⚠️ 禁忌欄が空であることを「安全」と読み替えない。
  • ⚠️ ・ビリルビンの上昇。 投与開始2週間で、392例中 3×超が7%、2×超が2%に生じた。開始前と投与中に・・ビリルビンを測る1。
  • ⚠️ 下痢その他の消化管有害事象。 投与開始2週間で、全グレード・全原因の下痢が392例中40%(208例では25%)に生じ、5%が下痢のため投与を中止した(1%)1。支持療法を行い、必要なら2回目(最終回)の投与を行わない。
  • ⚠️ 静注と併用しない1。
  • ⚠️ 。 妊娠可能な患者には胎児への危険を説明し、有効な避妊を指示する。動物での精巣毒性から、男性のを不可逆に損ないうる1。
  • :ヒトのとなりうるものとして扱う1。
  • 相互作用:OATP1B1・1B3阻害薬(、、、、・、リファンピシン単回投与)は本剤の曝露を上げる。可能なら他剤に替え、やむを得ず併用するときは本剤の投与から3時間以上あけて投与する1。
  • 生ワクチン()とのは、動物でワクチンへの免疫応答を低下させうる1。
  • ・のいずれでもは不要である1。

副作用

頻度 内容
2%以上(392例、208例) 下痢8%(3%)、悪心5%(1%)、嘔吐4%(1%)、腹痛3%(2%)1
異常 ・上昇、上昇1
中止に至った例 392例中15例(4%)1

まとめ

  • のリピッド抱合体。脂質取り込み経路で細胞内に入り、細胞内で切り出されたが二リン酸体となってポリメラーゼを阻害する。
  • ⭐ 血中を遊離として流れないために取り込まれず、母体薬の腎毒性を回避する。 でも透析中でもが不要。
  • ⚠️ 代わりに消化管毒性(下痢)と・がになる。
  • ⚠️ は「長期投与で死亡が増える」。 予防の第3相試験で24週死亡率16%対10%。の用法が週1回×2回だけなのはこのため。
  • は米国ののみ。も感染症も適応外で、⚠️ 経口剤の開発は消化管毒性で中止され、現在は静注製剤の第3相試験が進行中である。
  • とは標的が違うためは想定されない。静注とは併用しない。

出典

  1. 1.TEMBEXA (brincidofovir) tablets, for oral use; TEMBEXA (brincidofovir) oral suspension — Prescribing Information(DailyMed(U.S. National Library of Medicine)/Emergent BioDefense Operations Lansing・2025)openFDAのラベルAPI経由でSPL全文(effective_time 2025年7月23日)を確認した。枠組み警告が「長期投与時の死亡リスク増加」の1項目であり、別の疾患を対象とした24週間の臨床試験でブリンシドフォビル群の死亡が増えたこと、その試験がCMV感染予防を目的としたStudy 301(CMX001-301)で303例が100 mg週2回を最長14週間投与され149例がプラセボを受け、24週時点の全死因死亡率が16%対10%であったこと、適応が新生児を含む成人・小児の痘瘡(variola virusによるヒト天然痘)の治療に限られ、天然痘以外の疾患には適応がないと明記されていること、ヒトでの有効性は決定されておらず有効性がウサギ(ラビットポックス)とマウス(マウスポックス)の動物試験で確立されたこと、ブリンシドフォビルがシドフォビルのリピッド抱合体でありリゾホスファチジルコリンを模した脂質として内因性の脂質取り込み経路を利用し細胞内でエステル結合が切断されてシドフォビルが遊離し二リン酸体となってオルソポックスウイルスDNAポリメラーゼを阻害すること、痘瘡ウイルスに対するEC50中央値が0.11 μM、サル痘ウイルスが0.074 μM、ワクシニアが0.17 μMであること、テコビリマットとの交差耐性は機序が異なるため想定されずテコビリマット耐性株がブリンシドフォビル/シドフォビルに耐性であった例は確認されていないこと、用法が体重48 kg以上で200 mgを週1回2回のみ・10〜48 kg未満で4 mg/kg・10 kg未満で6 mg/kgであること、投与開始前と投与中に肝機能検査と妊娠検査を行うこと、禁忌が「なし」であること、警告がALT/AST・総ビリルビン上昇(投与開始2週間で392例中ALT 3×ULN超7%・ビリルビン2×ULN超2%)、下痢その他の消化管有害事象、静注シドフォビルとの併用回避、胚・胎児毒性、発癌性の可能性(錠剤を砕いたり割ったりしない)、動物での精巣毒性に基づく男性不妊であること、2%以上の副作用が下痢8%・悪心5%・嘔吐4%・腹痛3%(プラセボはそれぞれ3%・1%・1%・2%)であること、軽度〜重度の腎機能障害および透析中の末期腎不全のいずれでも用量調節が不要であること、軽度〜重度の肝機能障害(Child-Pugh A・B・C)でも用量調節が不要であること、OATP1B1・1B3阻害薬(クラリスロマイシン、シクロスポリン、エリスロマイシン、ゲムフィブロジル、HIV・HCVプロテアーゼ阻害薬、リファンピシン単回投与)の併用でブリンシドフォビルの曝露が上がるため可能なら他剤へ変更し、やむを得ない場合は本剤投与の3時間以上後にずらすこと、生ワクチンとの同時併用が動物で免疫応答を低下させうること、経口バイオアベイラビリティが懸濁液16.8%・錠剤13.4%で錠剤は低脂肪食でAUCが31%低下すること、代謝が加水分解とCYP4F2によることを確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Adenovirus Infections in Hematologic Malignancy and Hematopoietic Cell Transplant Recipients: Epidemiology, Diagnosis, and Management(Infection & Chemotherapy(Schoninger S, Jang HM, Lee YJ)・2026)出版社の全文ページで該当箇所を確認した。ヒトアデノウイルス感染症に対する経口ブリンシドフォビルの開発が有意な消化管毒性のため中止されたこと(原文 "However, its development for HAdV was discontinued due to significant GI toxicity")、経口剤と異なり静注ブリンシドフォビルでは肝毒性・消化管毒性の懸念が示されなかったこと(原文 "Unlike oral brincidofovir, intravenous brincidofovir did not show potential hepatic and GI toxicities")、現在の承認適応がヒト天然痘に限られること(原文 "its current approved indication is limited to human smallpox")、静注ブリンシドフォビルと静注シドフォビルを比較する第3相試験が進行中であることを確認した。全文の通読はしておらず、上記の記述箇所のみを確認している。閲覧 2026-09-03