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Drug Atlas · B31 Antineoplastics / 抗腫瘍薬

チピラシル

tipiracil

分類
Antineoplastics / 抗腫瘍薬
科目
Pharmacology
トピック
B31: Drugs used in cancer treatment I: Antimetabolites
承認適応
大腸癌胃癌
副作用
悪心嘔吐下痢発熱
監視検査値
好中球数ヘモグロビン血小板数

🧠 全体像:チピラシルはそれ自身に抗腫瘍活性を持たない、純粋なのである。阻害薬として、相棒の(抗腫瘍性のピリミジン)が体内で急速に分解されるのを防ぎ、血中曝露を保つことだけに徹する。両者は1:0.5の固定比率で配合されたLONSURF(TAS-102、ロンサーフ)としてのみ臨床使用され、チピラシル単剤の製剤は存在しない1。

薬効群の中での位置づけ

成分 薬効分類 役割 単独での抗腫瘍活性
ピリミジン に取り込まれ合成を阻害し細胞死を誘導 あり(主役)
チピラシル 阻害薬 の分解を防ぎ曝露を高める 無し(記載無し)

💡 ()がの効果を「増強」するのと発想が似ているが、仕組みは違う。 はとの複合体形成を安定化してに効果を強めるのに対し、チピラシルはを分解から守って的(血中濃度を保つ)に効果を支える。どちらも単独ではとして使われないという点は共通する。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trifluridine'>トリフルリジン</span>を経口摂取"] --> B{"チピラシルの併用は"}
    B -->|"無し(単剤)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thymidine phosphorylase'>チミジンホスホリラーゼ</span>が急速に分解"]
    C --> D["血中濃度が保てず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antitumor effect'>抗腫瘍効果</span>が不十分"]
    B -->|"あり(LONSURF、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='molar ratio'>モル比</span>1:0.5)"| E["チピラシルが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thymidine phosphorylase'>チミジンホスホリラーゼ</span>を阻害"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trifluridine'>トリフルリジン</span>の分解が抑制される"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='area under the curve'>AUC</span>が約37倍・Cmaxが約22倍に増加"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trifluridine'>トリフルリジン</span>ががん細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>に取り込まれる"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>合成阻害→細胞増殖抑制"]

⚠️ 「チピラシルを増やせば効果が上がる」という単純な話ではない。 チピラシル自体は合成やがん細胞増殖に直接働きかける機序を持たず、添付文書の機序(12.1)でも抗腫瘍活性はの取り込みにのみ帰属している。チピラシルの役割はを分解から守ることに限定される12。

適応

チピラシルは常にとの配合剤(LONSURF)として、以下の既治療の患者に用いる。

疾患 の要件
転移性大腸癌(単剤または併用) 系・系・系の化学療法、。RAS野生型なら抗EGFR療法も
転移性胃癌・腺癌 ・・またはを含む2レジメン以上(該当すれば/neu標的療法も)

⭐ どちらの適応も「既治療()」であることが共通の前提。 初回治療としては使わない1。

用法・用量

28日を1サイクルとして1〜5日目・8〜12日目に、あたり35 mg/m2を1日2回、食後にし、残り14日間はする。・チピラシルは1:0.5の固定配合であり、チピラシルだけを増減する調整はできない——減量が必要な場合はLONSURF全体を1段階下げる1。

禁忌・注意

  • ⚠️ ・注意は骨髄抑制。 各サイクルの投与前とDay15にを行い、必要に応じてさらに頻回に検査する。重度骨髄抑制が起きたらし、次サイクルは減量して再開する1
  • を受けた1,114例で、Grade3-4の好中球減少症38%・貧血17%・4%・3%を含む重度〜生命を脅かす骨髄抑制が生じ、好中球減少性感染症・敗血症で0.3%、で0.5%が死亡した1
  • の懸念があり、妊娠可能な女性には有効な避妊法を指導する

副作用

頻度 内容
(Grade3-4、単剤時) 好中球減少症(38%)、貧血(17%)、(4%)、(3%)1
非(頻度10%以上) 倦怠感、悪心、、下痢、嘔吐、腹痛、発熱1

まとめ

  • チピラシルは阻害薬であり、それ自体には抗腫瘍活性が無い。相棒のの分解を防いで血中曝露を高める、純粋なである1。
  • 併用によりのが約37倍、Cmaxが約22倍に増加する——チピラシル無しではは急速に分解され臨床的に意味のある血中濃度を維持できない2。
  • 常に1:0.5の固定配合剤(LONSURF=TAS-102)としてのみ使われ、既治療の転移性大腸癌・胃癌が適応。チピラシルだけを増減する調整はできない1。
  • ・注意は骨髄抑制——各サイクルの投与前とDay15にを確認し、重度なら・減量する1。

出典

  1. 1.LONSURF (trifluridine and tipiracil) tablets — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration・2023)LONSURF(トリフルリジン・チピラシル配合剤)の適応が、フルオロピリミジン系・オキサリプラチン系・イリノテカン系の化学療法歴と抗VEGF療法歴があり、かつRAS野生型であれば抗EGFR療法歴もある成人の転移性大腸癌(単剤またはベバシズマブ併用)、およびフルオロピリミジン・白金製剤・タキサンまたはイリノテカンを含む2レジメン以上の化学療法歴(適応があればHER2/neu標的療法歴も)がある成人の転移性胃癌・胃食道接合部腺癌であること、機序(12.1)としてトリフルリジン(チミジン核酸アナログ)とチピラシル(チミジンホスホリラーゼ阻害薬)がモル比1:0.5(重量比1:0.471)で配合され、チピラシルの配合によりチミジンホスホリラーゼによる代謝を阻害してトリフルリジンの曝露を高めること、抗腫瘍活性はがん細胞に取り込まれたトリフルリジンがDNAに取り込まれDNA合成を妨げ細胞増殖を阻害することに帰属していてチピラシル自体の抗腫瘍活性への言及は無いこと、警告・注意(5.1)として単剤投与を受けた1114例でGrade3-4の好中球減少症38%・貧血17%・血小板減少症4%・発熱性好中球減少症3%を含む重度〜生命を脅かす骨髄抑制が生じ、好中球減少性感染症・敗血症で0.3%、敗血症性ショックで0.5%が死亡したこと、各サイクルの投与前とDay15に全血球算定を行い重度骨髄抑制時は休薬し次サイクルは減量して再開すること、推奨用量が28日を1サイクルとして1日目から5日目・8日目から12日目に食後1日2回、体表面積あたり35 mg/m2を経口投与しその後14日間休薬すること、単剤投与での頻度10%以上の有害事象・検査値異常が好中球減少症・貧血・血小板減少症・倦怠感・悪心・食欲減退・下痢・嘔吐・腹痛・発熱であることを確認した。2023年8月改訂版。閲覧 2026-09-07
  2. 2.A phase 1 study of the pharmacokinetics of nucleoside analog trifluridine and thymidine phosphorylase inhibitor tipiracil (components of TAS-102) vs trifluridine alone(Investigational New Drugs・2017)トリフルリジン単剤とトリフルリジン・チピラシル併用を比較した第1相薬物動態試験で、チピラシル併用によりトリフルリジンのAUC0-lastが約37倍(幾何平均比37.55)、Cmaxが約22倍(幾何平均比22.39)に増加したこと、トリフルリジンの平均半減期は単剤の1.14時間・併用時の1.42時間とほぼ同程度であったことをPMCの全文で確認した。閲覧 2026-09-07