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Microbe Atlas · 細菌

Bacteroides fragilis

分類
G− 桿菌・偏性嫌気性 / Gram− rods (anaerobic)Bacteroides
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli偏性嫌気性 Obligate anaerobe
科目
Medical Microbiology
トピック
2/6: Anaerobic Gram-negative rods (Bacteroides, Fusobacterium, Prevotella, Porphyromonas)5/1: Bacteria causing skin and wound infections (list) and their diagnosis5/2: Bacteria causing abdominal infections (peritonitis, cholecystitis, cholangitis) (list) and their diagnosis
自然耐性薬
ゲンタマイシンアミカシントブラマイシンアズトレオナム
原因となる疾患
Fournier壊疽横隔膜下膿瘍化膿性血栓性静脈炎急性胆管炎急性虫垂炎憩室症・憩室炎骨膜下膿瘍細菌性肝膿瘍産褥敗血症・産褥感染自然流産縦隔炎胆石症脳膿瘍肺膿瘍副咽頭膿瘍腹膜炎・消化管穿孔卵管卵巣膿瘍良性肛門疾患(痔核・裂肛・痔瘻・肛門周囲膿瘍)
作用する薬剤
イミペネム+シラスタチンエラバサイクリンエルタペネムクロラムフェニコールセフォキシチンセフォペラゾンセフメタゾールチゲサイクリンチニダゾールドリペネムピペラシリンメトロニダゾールメロペネムモキシフロキサシン

🧠 全体像:B. fragilisは「バリアが破れた腹腔内で膿瘍を作る」嫌気性菌の代表として読む。大腸の正常フローラの中で数としては少数派だが、臨床的に最も重要な嫌気性菌——B. fragilis group は・膿瘍・から最も多く分離される嫌気性菌である1。などのを働かせて一時的な酸素曝露を生き延びる点、そしてが単なる防御ではなく能動的に膿瘍形成を誘導する点が、この菌を「ただの菌」以上の存在にしている。

微生物学的な特徴

グラム陰性桿菌で、大腸正常フローラの中で最も重要な嫌気性菌——大腸では:嫌気性菌の比が1:1000にも達し、その中でB. fragilisは臨床分離頻度が最も高い種である。

⭐ B. fragilisは「酸素に比較的強い」嫌気性菌。 古典的には「は・カタラーゼを欠くので酸素で自壊し、B. fragilisは例外的にを持つ」と説明され、試験でもこの整理で問われる。ただし現在は、嫌気性菌の多くがとほぼ同じ防御酵素を備えており、酸素が増殖を止める本体は代謝の中核酵素(酵素など)の直接の障害だと考えられている。B. fragilisは空気に触れるとカタラーゼ・AhpC・・ルブレリスリンを誘導し、bd酸化酵素を使ってごく低濃度の酸素ならむしろ増殖が促される2——穿孔直後の腹腔のようにが揺れる環境を生き延びられるのはこのためである。

、・・DNase・を産生し組織侵入を助ける。

病原性の仕組み

B. fragilisの複合体は単なるにとどまらず、に膿瘍形成そのものを誘導するという他の細菌にはあまり見られない性質を持つ——「莢膜=隠れるための盾」ではなく「莢膜=膿瘍という自分に有利な棲み処を積極的に作る」として働く点が特異的である。

臨床的にはほぼ常に好気性・(大腸菌など)とのとして現れる。

flowchart TD
    A["消化管の穿孔・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal contents'>腸内容</span>物の腹腔内漏出"] --> B["好気性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facultative anaerobe'>通性嫌気性菌</span>(E. coliなど)が<br>局所の酸素を消費し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='redox potential'>酸化還元電位</span>を低下"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anaerobic environments'>嫌気環境</span>が成立"]
    C --> D["B. fragilis が増殖"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capsular polysaccharide'>莢膜多糖体</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T-cell dependent'>T細胞依存性</span>に<br>膿瘍形成を誘導"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intra-abdominal abscess'>腹腔内膿瘍</span><br>(悪臭・ガス産生を伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixed infection (polymicrobial infection)'>混合感染</span>)"]

💡 と嫌気性菌は「」で膿瘍を作る。 好気性・が周囲の酸素を消費して低酸素環境を作ることでB. fragilisの増殖を助け、逆にB. fragilisはの貪食されやすさを軽減する——単独犯ではなく共犯関係で膿瘍が完成する。

感染経路と疫学

  • :大腸正常フローラに由来し、新しい菌が外から侵入するわけではない
  • 消化管の穿孔(虫垂炎、、消化性潰瘍、大腸癌など)やの感染を契機に、本来無菌の体腔(腹腔・)へ物が漏出することで発症する
  • 悪臭とガス産生は嫌気性菌の典型的なであり、で見落とさないための手がかりになる

起こす疾患

疾患 押さえどころ
・・ 穿孔を契機に物が腹腔内へ漏出し、B. fragilisを含む性の腹膜炎・膿瘍を起こす
腹膜炎・消化管穿孔 好気性腸内細菌科(E. coliなど)とのが典型
・ 腸管からのの一因となる
(を含む) 大腸内常在菌叢由来の膿瘍形成
・・ 周囲の内因性として関与

診断

  • 検体:血液培養(嫌気ボトルを含む)、。ではなく注射器吸引またはで搬送する——は酸素に触れる時間が長く嫌気性菌が死滅しやすい
  • 手がかり:悪臭のある膿、グラム染色で多菌種の混合像、標準培地での(が必要なため通常のでは検出されない)
  • は発育が遅く、結果判明まで数日を要することが多い——はを待たずに開始する

治療と予防

まとめ

  • B. fragilisはグラム陰性の桿菌で、大腸正常フローラの一員だが臨床的に最も重要な嫌気性菌——から最も高頻度に分離される。
  • 古典的には「例外的にを保有するのでがある」と整理される。実際にはなどの防御を誘導して一時的な酸素曝露を生き延びる。
  • は単なるではなくに膿瘍形成そのものを誘導する能動的な。
  • 消化管穿孔(虫垂炎・など)を契機に好気性腸内細菌科とのとして腹膜炎・を起こす——悪臭・ガス産生が。
  • 治療の中心はメトロニダゾール・・配合剤。アミノグリコシド系・には通常耐性、クリンダマイシン・は非感受性が20〜60%に達し単剤では信頼できない。 ・メトロニダゾール耐性(nim)も地域によって出現している。

出典

  1. 1.Time for Some Group Therapy: Update on Identification, Antimicrobial Resistance, Taxonomy, and Clinical Significance of the Bacteroides fragilis Group(Journal of Clinical Microbiology(Jean S, Wallace MJ, Dantas G, Burnham CD)・2022)PMC全文(PMC9491163)で確認した。B. fragilis group が腹腔内感染・膿瘍・血流感染を含むヒト感染症から最も多く分離される嫌気性菌であること、ペニシリン・アンピシリンにはβラクタマーゼ産生により90%超が耐性、セフォキシチン・セフォテタンへの感受性は一定せず(米国の調査でセフォキシチン耐性は全体で5%超、B. fragilis 狭義3.5%・それ以外のBacteroides属9.1%、欧州の一部では8〜74%)、βラクタム/βラクタマーゼ阻害薬配合剤への耐性は全体に低いが中国・日本の調査ではピペラシリン・タゾバクタム耐性11〜12%、カルバペネム耐性は南北米で5%未満・欧州とアジアでは中間/耐性が最大20%で主にcfiA(挿入配列で活性化されるメタロβラクタマーゼ)を持つ division II株による、メトロニダゾールは世界的に感受性90%超を保つがパキスタンで20%の耐性が報告され、nim遺伝子が関与すること、クリンダマイシンとモキシフロキサシンは世界的に非感受性20〜60%と高く臨床的有用性が限られること、アミノグリコシド系は作用に酸素を要するため本来無効であること、tetQとtetXを併せ持つことがテトラサイクリン系・チゲサイクリンの耐性上昇と関連することを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.When anaerobes encounter oxygen: mechanisms of oxygen toxicity, tolerance and defence(Nature Reviews Microbiology・2021)PMCの著者稿全文(PMC9191689)で確認した。偏性嫌気性菌が活性酸素の防御機構を欠くという従来の仮説は見直され、嫌気性菌は好気性菌の防御の大半を備えること、B. fragilis は通気に応じてカタラーゼ・アルキルヒドロペルオキシドレダクターゼ(AhpC)・チオレドキシンペルオキシダーゼ・ルブレリスリンを誘導すること、シトクロムbd酸化酵素によりナノモル濃度の酸素で増殖がむしろ促されること、溶存酸素約1 µM(0.1%)では最初の24時間の増殖が遅いがその後は嫌気条件と同じ速度で増殖したこと、B. fragilis やウェルシュ菌のような日和見病原体は酸素のある組織へ広がる際に酸素曝露を生き延びる必要があることを確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)現行版(v1.2、2023年1月)のPDFを取得し、Table 5(嫌気性菌)の表題が「嫌気性菌は通常アズトレオナム・アミノグリコシド系・ポリミキシンB/コリスチン・ナリジクス酸に耐性」と述べていることを確認した。同表に種別の行はClostridium ramosum・C. innocuumのバンコマイシン耐性の1行だけで、Bacteroides属の個別の行は無い閲覧 2026-09-27