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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

憩室症・憩室炎

Diverticular disease (diverticulosis and diverticulitis)

臓器系
消化器
科目
PathologyInternal MedicineSurgery
トピック
病理学 C/39:結腸憩室症/腸閉塞内科学 G-04:大腸疾患と機能性消化管疾患内科学 S-30:大腸憩室症と憩室炎外科学 S-19:大腸憩室症・憩室炎
鑑別疾患
過敏性腸症候群急性虫垂炎血管異形成大腸癌腸間膜虚血
続発疾患
消化管出血(上部・下部)腹膜炎・消化管穿孔
関連疾患
腸腰筋膿瘍
治療薬
アモキシシリンクラブラン酸メトロニダゾールシプロフロキサシンパラセタモール(アセトアミノフェン)
原因微生物
Escherichia coliBacteroides fragilis
症状
悪心圧痛下痢血便出血発熱便秘嘔吐
組織像
S状結腸憩室症・ポリポーシスとS状結腸穿孔
禁忌薬
トシリズマブ

🧠 全体像はほとんどが無症候のであり、そこから生じる合併症は「出血」と「炎症()」という別々の道をたどる。は無痛性の大量血便として突然起こる止血の問題、は微小穿孔による局所炎症で、造影CTで単純性(合併症なし)か(膿瘍・穿孔・瘻孔・狭窄あり)かを分けることがを決める最初の一歩になる。単純性の軽症例では抗菌薬すら一律に必要とせず、手術も「発作回数」ではなく重症度・免疫状態・生活の質で個別化するという、近年の「治療を減らす」方向への転換を理解することが要点である。

疫学・解剖

  • 加齢とともにが上昇し、先進国の高齢者では非常に高頻度にみられる。
  • 欧米ではS状結腸に多いが、アジア人種ではの憩室も多く、痛で虫垂炎との鑑別が問題になる。
  • 加齢、遺伝、肥満、喫煙、不足、、NSAIDs常用がリスク因子として関連する。「低食+便秘」だけで説明できる単純な病気ではない。

病態

大腸憩室のほとんどは、腸壁全層が突出するが代表)ではなく、粘膜・の脆弱部から突出するである。

種類 壁構造 代表例
腸壁全層が突出 など
粘膜・が筋層の脆弱部から突出 一般的な大腸憩室

は、(taenia coli)にするが不完全な部分で、を貫通するにあたる。低繊維食による便量減少・通過遅延が内腔圧を上昇させ、誇張されたという2つの因子が重なってヘルニア状の突出を作る。

💡 =低繊維食だけで生じる病気ではなく、加齢による結合組織・筋層の変化、遺伝、肥満、運動不足など複数因子が重なった結果として理解する。

分類

病態 定義
無症候性 内視鏡・画像での。多くは生涯無症状
炎症・合併症を伴わない・便通異常
単純性(非合併性)急性 局所炎症のみで膿瘍・穿孔・瘻孔・閉塞を伴わない
(合併性)急性 膿瘍、、瘻孔、狭窄・閉塞のいずれかを伴う
憩室内のからの出血。炎症とは別の合併症

臨床像

  • 自体は無症候が多く、間欠的な差し込むような痛み、左下腹部の不快感、直腸の排出不完全感を伴うことがある。
  • 急性:持続する左下腹部痛、発熱、圧痛、悪心・嘔吐、便秘または下痢、白血球・。右側優位な人種・集団では痛を呈し、虫垂炎との鑑別を要する。
  • :典型的には突然の無痛性血便。炎症所見(発熱・)を伴わない点がとの鑑別点になる。

⚠️ 「左下腹部痛=」と決めつけず、右側優位の集団や若年者では、女性では、高齢者ではも鑑別に挙げる。

診断

flowchart TD
    A["持続する下腹部痛+発熱・炎症反応"] --> B["造影CT(腹部・骨盤)"]
    B --> C{"膿瘍・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free perforation'>遊離穿孔</span>・瘻孔・閉塞の有無"}
    C -->|"なし(単純性)"| D["免疫正常・軽症なら支持療法、抗菌薬は選択的"]
    C -->|"あり(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complicated'>複雑性</span>)"| E["入院、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV antibiotics'>静注抗菌薬</span>"]
    D --> F["改善不十分なら再評価・入院"]
    E --> G{"膿瘍サイズ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free perforation'>遊離穿孔</span>・制御不能な敗血症"}
    G -->|"小膿瘍"| H["抗菌薬+厳密な再評価"]
    G -->|"大きな膿瘍(目安3cm超)"| I["抗菌薬+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='percutaneous drainage'>経皮ドレナージ</span>"]
    G -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='generalized peritonitis'>汎発性腹膜炎</span>・制御不能な敗血症"| J["蘇生+緊急手術"]
  • 初回診断、重症、免疫抑制、治療反応不良では造影CTを行い、腸壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇、遊離ガス、膿瘍、瘻孔、閉塞を評価する。
  • 急性期の注腸は穿孔リスクがあるため避ける。
  • 大腸癌除外のは、後または初回単純性後に、既往検査・臨床経過を踏まえて行う。実施は症状消失後6〜8週以降が原則で、直近1年以内に高品質の内視鏡歴があれば省略できる場合がある。

治療

単純性(非合併性)急性憩室炎

⭐ 「単純性=必ず抗菌薬」という発想は現在の主要ガイドラインでは支持されない。免疫正常・軽症例では支持療法単独が選択肢になる。

複雑性(合併性)急性憩室炎

  • 敗血症対応、絶食・輸液、を開始する。
  • 膿瘍は大きさ・位置・臨床経過に応じて(目安として3cm超)を検討し、小さな膿瘍は抗菌薬単独で管理できることがある。
  • 、制御不能な敗血症、閉塞などでは緊急手術を行う。安定患者では病変切除+(必要に応じ)を検討し、循環不安定・重度汚染・が大きい症例では+直腸断端閉鎖+)を選ぶ。穿孔性の全例にを固定しない。

憩室出血

無痛性大量を来し得る。まず循環を安定化し、または持続出血時はで出血源を局在化する。、手術を病態に応じて段階的に選ぶ。

再発予防と待機手術

  • 質のよい食事(を含む)、適正体重、運動、禁煙が再発予防の基本であり、ナッツ・・ポップコーンを一律に禁止する根拠はない
  • 心血管以外での常用NSAID使用は避ける。
  • を再発予防目的にルーチン使用する根拠は乏しい。

⚠️ 「2〜3回再発したら切除」という回数基準は現在は推奨されない。は、再発の重症度・、免疫状態、、患者の価値観を総合して個別化する。手術は再発リスクを下げるがゼロにはせず、慢性腹部症状の改善を保証するものでもない。

まとめ

  • 大腸憩室のほとんどはで、加齢・遺伝・肥満・喫煙・運動不足など多因子が誇張されたと筋層のを介して形成に関与する。
  • 合併症は「出血(無痛性血便)」と「(炎症・微小穿孔)」という別々の経過をたどる。
  • 急性は造影CTで単純性・を分け、急性期のは避ける。
  • 免疫正常の軽症単純性では抗菌薬を選択的に用い、大きな膿瘍はは緊急手術が基本である。
  • 手術は再発回数ではなく、重症度・免疫状態・生活の質・患者希望で個別化する。