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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

血管異形成

Angiodysplasia

別名
Vascular ectasia
臓器系
消化器
科目
PathologyInternal MedicineSurgery
トピック
病理学 C/36:消化管の発生異常・血管障害内科学 L-55:消化管出血内科学 G-05:消化管出血外科学 S-28:下部消化管出血内科学 H-12:フォン・ヴィレブランド病
鑑別疾患
憩室症・憩室炎大腸癌虚血性大腸炎動静脈奇形
続発疾患
消化管出血(上部・下部)鉄欠乏性貧血
関連疾患
フォン・ヴィレブランド病大動脈弁狭窄症慢性腎臓病
治療薬
オクトレオチド
症状
消化管出血血便下血潜在性出血倦怠感蒼白
検査値
ヘモグロビンフェリチン血算

🧠 全体像は「加齢に伴うな伸展と蠕動による→壁の薄いだけが間欠的に閉塞・うっ滞する→毛細血管が拡張し異常な血管網が形成される→した血管が破綻する」という一本の変性性の因果で理解できる、高齢者の慢性消化管出血の代表的原因である。好発部位は盲腸・上行結腸で、出血は間欠性・無痛性であることが多く、大量出血よりもとして気づかれることが少なくない。に伴うといったとの関連が特徴的で、診断はを中心に据え、治療は内視鏡的凝固を第一選択とする。

概要

は、消化管の静脈と隣接する毛細血管が後天的に・拡張する血管病変で、高齢者における原因不明の慢性消化管出血の原因として最も頻度が高いものの一つである。先天性のとは異なり、加齢に伴う変性性の変化として生じる点が特徴で、多くは60歳以降に診断される。病変は多発性かつ小型(多くは1cm未満)であることが多く、内視鏡検査で発見されることも少なくないため、発見された病変が本当に出血源であるかを見極める視点が診断上重要になる。

発生機序

を貫いて走行するは、腸管の圧の上昇によって周期的に圧迫・閉塞を受ける。壁の厚い動脈はこの圧迫に耐えて開存を保つが、壁が薄く圧に弱い静脈だけがにうっ滞し、経年的に拡張・していく。

💡 盲腸・上行結腸に好発する理由はで説明できる。同じ内圧でも腸管の内腔径が大きいほど壁にかかる張力は高くなるため、大腸のなかでも内腔径が最大の盲腸・上行結腸には最も強い壁伸展と静脈圧迫がかかり、変性性の血管拡張が起こりやすい。

flowchart TD
    A["加齢に伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut wall'>腸管壁</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>な伸展と蠕動による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shear stress'>ずり応力</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='submucosal vein'>粘膜下静脈</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramural'>壁内</span>を通過する部位で間欠的に圧迫・閉塞"]
    B --> C["壁の厚い動脈は開存を保つが静脈は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>にうっ滞"]
    C --> D["静脈圧上昇が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary network'>毛細血管網</span>へ波及"]
    D --> E["毛細血管が拡張し動脈・静脈間に異常な交通が形成される"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='submucosal'>粘膜下</span>から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamina propria'>粘膜固有層</span>にかけて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tortuosity'>蛇行</span>・拡張した血管網(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiodysplasia (angioectasia)'>血管異形成</span>)"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor weakness'>脆弱化</span>した血管壁が破綻し出血する"]

拡張した血管網では動脈血がを経ずに静脈側へ短絡することがあり、これが粘膜表層の血流を不安定にして出血をさらに誘発しやすくすると考えられている。

関連する全身疾患

の多くはに生じるが、血流のや止血能の異常を介して特定のと関連することが知られている。

⭐ 代表例がである。重症のでは、狭小化した弁口を血液が通過する際に高いが生じ、これがを機械的に切断して、後天性の(血小板依存性の活性が低下する2A型に類似した病態)を引き起こす。粘膜止血能が低下した状態でからの出血が持続・反復しやすくなり、大動脈弁の治療(やTAVI)によってが解消されると出血が軽快することが多い。

⚠️ を疑う手がかりは、原因不明の消化管出血とが同一患者に併存することであり、の重症度と後天性異常の程度はおおむね並行して変化する。

関連出血の古典的な合併背景として知られる。により血小板の・凝集能が障害される後天性のが、脆弱な血管病変からの止血をさらに困難にすると考えられている。

臨床像

そのものは無症候であることが多く、内視鏡で見つかった病変が必ずしも出血源であるとは限らない。症候性の場合は次のいずれかの形で現れる。

慢性・間欠性で無痛性の経過が典型的であり、急速に増悪する腹痛や発熱を伴わない点が、と一線を画す手がかりになる。

診断

flowchart TD
    A["高齢者の原因不明の慢性消化管出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron-deficiency anemia, IDA'>鉄欠乏性貧血</span>"] --> B["血行動態を評価し安定していれば内視鏡検査を計画"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colonoscopy'>大腸内視鏡</span>で盲腸・上行結腸を重点的に観察"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tortuosity'>蛇行</span>・拡張した血管病変を認めるか"}
    D -->|"あり"| E["他に明らかな出血源がないことを確認し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endoscopic treatment'>内視鏡的治療</span>"]
    D -->|"なし"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper gastrointestinal endoscopy'>上部消化管内視鏡</span>で上部出血を除外"]
    F --> G["原因不明の持続・反復出血では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='video capsule endoscopy'>ビデオカプセル内視鏡</span>で小腸を評価"]
    G --> H["病変検出時は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='balloon-assisted enteroscopy'>バルーン内視鏡</span>で到達し治療"]
    B --> I{"活動性大量出血で血行動態が不安定か"}
    I -->|"はい"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CT angiography'>CT血管造影</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extravasation'>血管外漏出</span>を検索"]
    J --> K["陽性なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiographic embolization'>血管造影下塞栓術</span>へ"]
検査 位置づけ
第一選択。盲腸・上行結腸を中心に観察し、多くは治療も同時に行える
上下部内視鏡で原因不明の持続・反復出血がある場合の小腸評価の第一選択
で病変を認めた場合に到達し、治療まで行う手段
活動性大量出血でを検索し、陽性ならへつなぐ
活動性出血時に出血源を局在し、選択的塞栓術を同時に行う

⚠️ は無症候性の偶発病変としても高頻度に見つかる。内視鏡で病変を確認しても、憩室や腫瘍など他に明らかな出血源がないことを併せて確認したうえで、初めて出血源と判断する。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiodysplasia (angioectasia)'>血管異形成</span>による出血を確認"] --> B["血行動態を安定化"]
    B --> C["内視鏡的凝固(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='argon plasma coagulation'>アルゴンプラズマ凝固</span>など)を第一選択で施行"]
    C --> D{"再発または多発性か"}
    D -->|"いいえ"| E["経過観察"]
    D -->|"はい"| F{"内視鏡的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retreatment'>再治療</span>が困難か"}
    F -->|"いいえ"| C
    F -->|"はい"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiographic embolization'>血管造影下塞栓術</span>または外科的切除を検討"]
    G --> H{"内視鏡・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiography'>血管造影</span>・手術でも制御困難な多発病変か"}
    H -->|"はい"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='somatostatin analog'>ソマトスタチンアナログ</span>などの薬物療法を追加"]
治療 位置づけ
内視鏡的凝固(など) 第一選択。低侵襲で個々の病変を非接触的にする
が困難な活動性出血や、後の再発例で検討する
外科的切除 内視鏡・で制御できない再発・多発病変や、限局した重症例に用いる
などの しない多発・再発例の。血管新生の抑制が関与すると考えられる
難治性の多発病変で用いられることがあるが、催奇形性・末梢神経障害などの副作用管理を要する

⚠️ ・NSAIDsはからの出血を助長するため可能な限り中止・変更を検討するが、の適応で継続が必要な場合はとの兼ね合いで個別に判断する。では、大動脈弁の治療自体が出血に対する根本的な治療になりうる。

鑑別

疾患 典型像 鑑別点
高齢、間欠性・無痛性の出血、慢性の経過 内視鏡で・拡張した血管病変を確認する
突然の無痛性大量出血、自然止血と再出血を繰り返す 内視鏡で憩室内の出血・を確認する
大腸癌 ・鉄欠乏、便通変化、体重減少 内視鏡で腫瘤性病変を認め生検で確定する
急なに続く血性下痢 内視鏡での浮腫・出血性びらんを認める

💡 いずれも高齢者ので鑑別に挙がるが、の違いが軸になる。は痛みを伴わない慢性・間欠性の経過、は突然の無痛性大量出血、は腹痛が先行する血性下痢という違いで整理すると混同しにくい。

まとめ

  • は加齢に伴うの変性性拡張で、盲腸・上行結腸に好発し、高齢者における慢性消化管出血・の代表的原因である。
  • 機序は、蠕動による静脈の間欠的閉塞からと異常な血管交通の形成へ至る一連の変性性変化として説明される。
  • に伴うによる)や、を伴うとの関連が知られる。
  • 診断はを中心に据え、原因不明の持続出血ではで小腸を評価し、活動性大量出血ではを用いる。
  • 治療は内視鏡的凝固()が第一選択で、難治・多発例では、外科的切除、などの薬物療法を検討する。
  • 、大腸癌、との鑑別は、突然の無痛性大量出血、進行性の便通変化・体重減少、腹痛が先行する血性下痢というの違いで整理する。