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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

顕微鏡的大腸炎

Microscopic colitis

臓器系
消化器免疫・膠原病
科目
Internal MedicinePharmacology
トピック
内科学 L-56:下痢の鑑別診断内科学 G-04:大腸疾患と機能性消化管疾患薬理学 B13:ミネラルコルチコイド・外用グルココルチコイド・副腎皮質拮抗薬及びステロイド合成阻害薬
鑑別疾患
クローン病セリアック病過敏性腸症候群潰瘍性大腸炎
治療薬
ブデソニド
原因薬剤
(エス)オメプラゾールナプロキセンセルトラリン
症状
下痢

🧠 全体像の核心は、名前どおり内視鏡では肉眼的にほぼ正常に見えるのに、慢性のが続くという一点にある。だから「内視鏡で異常が無かった」を診断の終わりにしてはいけない——生検を採らなければ診断できない疾患である。中高年女性に多く、性大腸炎とリンパ球性大腸炎という2つの組織型に分かれるが臨床的な扱いはほぼ同じで、⚠️ 治療の第一歩は薬剤性の誘因(・NSAIDs・SSRIなど)をまず疑うこと、そして治療の第一選択は経口である。

病態と2つの組織型

は、が肉眼的にはほぼ正常でありながら組織学的に炎症所見を認める慢性の炎症性疾患で、性大腸炎とリンパ球性大腸炎の2型に分かれる。診断時の平均年齢は60〜64歳で、女性は男性の約3倍罹患しやすい1

組織型 定義
性大腸炎 上皮下の帯の肥厚(10 μm超)
リンパ球性大腸炎 の増加(上皮細胞100個あたり20個超)

両型ともの透過性亢進・障害により分泌性・水様性の下痢を来す点は共通しており、臨床像・治療反応性に明確な差はないため、同じ枠組みで管理される。

flowchart TD
    A["慢性の水様性下痢"] --> B["内視鏡検査"]
    B --> C["粘膜は肉眼的にほぼ正常<br>(肉眼的異常は17%にとどまる)"]
    C --> D{"生検を採取したか"}
    D -->|"採取せず"| E["所見なしとして見逃される"]
    D -->|"右側・左側それぞれ2個以上採取"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Histological assessment'>組織学的評価</span>"]
    F --> G["上皮下<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fiber'>膠原線維</span>帯肥厚<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fiber'>膠原線維</span>性大腸炎"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraepithelial lymphocyte'>上皮内リンパ球</span>増加<br>=リンパ球性大腸炎"]

は内視鏡で正常に見えることが最も多く、肉眼的異常が見られるのはわずか17%にとどまる1の精査で内視鏡的に「異常なし」という結果を見ても、多部位からの生検を行わなければを見逃す。

誘因・危険因子

⚠️ 薬剤性の誘因をまず疑い、中止を検討する。 (エス)など)・NSAIDs(など)・SSRI(など)・スタチンの使用はのリスク上昇と関連するとされ、システマティックレビューでは通常対照群との比較でが2.65、NSAIDsのが2.02、SSRIのが2.12、スタチンのが1.74と、いずれも有意な関連が示されている(には有意な関連はない)2

💡 ただし、この関連の一部は下痢そのものによるを含んでいる可能性がある——下痢のある対照群と比較すると、・NSAIDs・スタチンの関連は減弱し有意差が消失する2薬剤中止は「下痢の発症と明確な時間的関連がある薬剤」に限る——長年服用していて症状発現との時間的関連が乏しい薬剤まで一律に中止する根拠にはならない1

他に、セリアック病・関節リウマチ・症候群・などの自己免疫疾患を合併しやすいことが知られており、自己免疫的な機序の関与が示唆されている。

臨床像

  • 慢性(多くは4週間超持続する)の水様性・分泌性の下痢で、脂肪性・血性ではない点が典型である。
  • 夜間や絶食下でも持続することがあり、の特徴を示す。
  • 腹痛、体重減少、軽度の脱水を伴うことがあるが、でみられるような重度のや血便は通常伴わない。

診断

  • 慢性水様性下痢の精査では、セリアック病・薬剤性下痢と並んでを鑑別に含める。
  • で肉眼的所見の有無にかかわらず、・左側結腸それぞれ2個以上の生検を系統的に採取する1。内視鏡が正常に見えるという理由で生検を省略しない。
  • で薬剤歴(・NSAIDs・SSRIなど)を必ず確認する。

治療

治療の第一選択は経口9 mg/日、8週間である1性大腸炎・リンパ球性大腸炎のいずれにも有効性が示されており、両型でを区別する必要はない。

  1. 誘因薬剤の中止:下痢の発症と時間的関連が明確な・NSAIDs・SSRIなど)があれば中止する1
  2. 経口製剤により結腸局所で作用し、高いにより全身性のステロイド副作用を抑えたまま寛解導入できる。第一選択として9 mg/日から開始し、寛解導入後にする。
  3. 維持療法・時の対応中止後にする例が多く、症状が強い例では最小での維持療法を継続することがある。
  4. に反応しない、または禁忌がある場合は、止痢薬(など)による症状コントロールや免疫調節薬が検討される。

鑑別診断

疾患 との違い
異常を伴わない機能性疾患。生検でも炎症所見を認めない
セリアック病 ・吸収不良が主体。tTG-IgA陽性、
内視鏡で肉眼的な粘膜病変(びらん・潰瘍)を認めることが多く、血便を伴いやすい

まとめ

  • は内視鏡で肉眼的にほぼ正常なに、組織学的にのみ炎症を認める疾患で、慢性水様性下痢の原因として見逃されやすい。
  • 性大腸炎(上皮下帯肥厚)とリンパ球性大腸炎(増加)の2型があるが、臨床的な扱いはほぼ同じ。
  • 診断には内視鏡所見の有無にかかわらず多部位からの生検が必須で、これを省略すると「異常なし」で見逃される。
  • ・NSAIDs・SSRIなどの薬剤性誘因をまず疑い、時間的関連が明確ながあれば中止する。
  • 治療の第一選択は経口9 mg/日、8週間である。

出典

  1. 1.Update on the Epidemiology and Management of Microscopic Colitis(Clinical Gastroenterology and Hepatology・2024)大腸粘膜は内視鏡で正常に見えることが最も多く肉眼的異常が見られるのは17%にとどまり診断には右側・左側それぞれ2個以上の生検を要すること、膠原線維性大腸炎は上皮下膠原線維帯の肥厚(10μm超)、リンパ球性大腸炎は上皮内リンパ球が上皮細胞100個あたり20個超で定義されること、診断時平均年齢が60〜64歳で女性は男性の約3倍罹患しやすいこと、アスピリン・NSAIDs・プロトンポンプ阻害薬・SSRIの使用がリスク上昇と関連するとされる一方で薬剤中止は下痢発症との明確な時間的関連がある場合に限り長期使用薬を漫然と中止しないこと、活動期の第一選択治療がブデソニド9 mg/日8週間であることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Are Drugs Associated with Microscopic Colitis? A Systematic Review and Meta-Analysis(Diseases (MDPI)・2022)通常対照群との比較で、プロトンポンプ阻害薬使用者の顕微鏡的大腸炎の補正オッズ比(AOR)が2.65、NSAIDs使用者のオッズ比が2.02、SSRI使用者のオッズ比が2.12、スタチン使用者のオッズ比が1.74といずれも有意な関連を示した一方でH2受容体拮抗薬は有意な関連を示さなかったこと、下痢のある対照群との比較ではプロトンポンプ阻害薬・NSAIDs・スタチンの関連が減弱し有意差が消失する(プロトンポンプ阻害薬はOR 0.68、NSAIDsはOR 1.13、スタチンはOR 0.91)ことを確認した閲覧 2026-08-11