内科学

内科学 · L-56

下痢の鑑別診断

Differential Diagnosis of Diarrhea

前提:病態
吸収不良症候群
前提:正常
水・カリウム・ナトリウムの吸収
疾患
顕微鏡的大腸炎
症状
下痢

🧠 全体像:下痢は通常1日3回以上の軟便・で、急性は感染・薬剤、慢性は水様性・脂肪性・炎症性に分けると整理しやすい。脱水とを先に評価し、・内視鏡は病期と病型に合わせて選ぶ。

病期と神経危険徴候

  • 急性:14日未満。感染、薬剤、食餌が多い。
  • 持続性:14〜30日。寄生虫、感染後、薬剤、初発など。
  • 慢性:4週超。機能性、吸収不良、炎症、薬剤、内分泌など。

💡 「4週」という線に厳密な合意はない。 急性と慢性を分ける期間について確立した合意はないが、4週を超えて続く下痢はの原因を示唆し精査に値するというのが実務上の共通了解である1。は頻度と性状の両方を織り込み、「Bristol便性状スケール5–7の便が4週を超えて頻回に続く状態」という実用的な定義を採っている1。急性感染性下痢の診断・治療・予防は別建てのガイドラインが扱う2。

血便、高熱、強い腹痛、敗血症、夜間症状、体重減少、貧血・低アルブミン、脱水・AKI、免疫不全、高齢新規発症、家族歴は精査を急ぐ。

慢性下痢の病型

病型 機序・特徴 主な原因
水様性・浸透圧性 絶食で改善、高値 ラクトースなど糖不耐、Mg含有薬、、下剤
水様性・分泌性 絶食・夜間も持続、量が多い 、、薬剤、内分泌腫瘍
水様性・機能性 なし、腹痛との関係 -D、機能性下痢
脂肪性 、体重減少、 セリアック病、慢性、小腸疾患・切除、胆汁酸不足
炎症性 血便、発熱、高値 、、虚血、癌、放射線性

は 290 − 2 ×(便Na+便K)。ただし採取・保存の影響があり、診断は臨床像と合わせる。薬剤では、抗菌薬、、、、、下剤、などを確認する。

は、Giardia・セリアック・などのと、・胆汁酸不足などの消化障害を分ける。では感染だけでなく、、などの、甲状腺機能亢進・を臨床背景に応じ検索する。これらは稀なため、薬剤、、を先に評価する。

⭐ 「-Dだろう」で止めず、を積極的に診断する。 機能性腸疾患・型下痢と見える例にが相当数まぎれており、はの経験的投与で済ませるのではなく、75SeHCATまたは血清7α-hydroxy-4-cholesten-3-one(7αC4)で陽性の診断をつけることを強く推奨している(1)1。そのものも運用の幅があり、腹痛の頻度要件を月3日以上へ緩めた修正版は二次診療で感度を改善し特異度を保った3。

診断アルゴリズム

flowchart TD
    A["下痢"] --> B{"脱水・ショック・血便・敗血症"}
    B -->|"あり"| C["蘇生+急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stool examination'>便検査</span>/画像を選択"]
    B -->|"なし"| D{"4週を超えるか"}
    D -->|"いいえ"| E["曝露・薬剤・感染リスクで検査を限定"]
    D -->|"はい"| F["血算・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C-reactive protein'>CRP</span>・アルブミン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>・セリアック抗体+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal calprotectin'>便カルプロテクチン</span>"]
    F --> G["水様性"]
    F --> H["脂肪性"]
    F --> I["炎症性/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alarm feature'>警告徴候</span>"]
    G --> J["薬剤・浸透圧性/分泌性・胆汁酸を評価"]
    H --> K["膵・小腸・胆汁酸を評価"]
    I --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colonoscopy'>大腸内視鏡</span>+回腸観察・生検"]

急性下痢の適応は血便、高熱、敗血症、強い腹痛、免疫不全、集団発生など2。C. difficileは適切なの未形成便1検体で検査する。ではセリアックのtTG-IgA+総IgA、、Giardia、薬剤を基本に、膵、評価を追加する。

⚠️ は「内視鏡所見が正常」なのが常態で、だけでは拾えない。 は除外のためにとの両方から生検するを強く推奨しており、直腸のみの生検では不十分である(1)1。

💡 のは50 µg/g。 の見落としが不要な内視鏡より重大だという理由で感度を優先した閾値で、一次医療でも二次医療でも同じ値を使う4。50–150 µg/gはわずかな上昇として経過観察の対象になり、陰性ならはきわめて考えにくく内視鏡を省く根拠になる4。はが疑われる40歳未満で大腸の炎症を除外する目的にこの検査を強く推奨している1。

対応

  • 軽〜中等度脱水は、重症はと。
  • 食事を性に応じ継続し、原因に応じラクトース・薬剤などを調整する。
  • は非炎症性に短期使用できるが、発熱・血便、C. difficile、疑いでは避ける。
  • 経験的抗菌薬をルーチンに用いず、感染リスクと重症度に応じ検査・する。
  • 慢性例は病型に応じ、、、、治療など原因特異的に扱う。

まとめ

  • 急性/持続性/慢性を分け、まず脱水と血便・敗血症などを評価する。
  • は水様性、脂肪性、炎症性に分類し、検査を絞る。
  • と抗菌薬を一律に使わず、炎症性・感染性病態を除外してから選ぶ。

出典

  1. 1.Guidelines for the investigation of chronic diarrhoea in adults: British Society of Gastroenterology, 3rd edition(British Society of Gastroenterology(Gut誌)・2018)急性と慢性を分ける症状持続期間に確立した合意はないものの、4週を超えて続く下痢は非感染性の原因を示唆し精査に値するとされること、実用的な定義はBristol便性状スケール5〜7の便が4週を超えて頻回に続くこととされること、機能性腸疾患・IBS型下痢では胆汁酸性下痢を経験的治療で済ませず75SeHCATまたは血清7α-hydroxy-4-cholesten-3-oneで積極的に診断すべきこと(エビデンスレベル1・強い推奨)、顕微鏡的大腸炎の除外には直腸ではなく右側結腸と左側結腸の生検を伴う大腸内視鏡が必要であること(エビデンスレベル1・強い推奨)、便中カルプロテクチンはIBSが疑われる40歳未満で大腸の炎症を除外するために推奨されること(エビデンスレベル1・強い推奨)を確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.ACG Clinical Guideline: Diagnosis, Treatment, and Prevention of Acute Diarrheal Infections in Adults(The American Journal of Gastroenterology・2016)急性感染性下痢の診断・予防・治療について、抗菌薬治療と非抗菌薬治療の双方を含む根拠に基づく方針を、米国内および渡航者の双方の状況を想定して示したACG診療ガイドラインであることを確認した閲覧 2026-08-25
  3. 3.Validating Simple Modifications to the Rome IV Criteria for the Diagnosis of Irritable Bowel Syndrome in Secondary Care(Alimentary Pharmacology & Therapeutics・2025)ローマIV基準の腹痛頻度を月3日以上へ緩和した修正版が、単施設二次診療集団で感度を改善し特異度を保ったこと閲覧 2026-08-25
  4. 4.Faecal calprotectin testing for differentiating amongst inflammatory and non-inflammatory bowel diseases: systematic review and economic evaluation(NIHR Journals Library(Health Technology Assessment 17巻55号)・2013)一次医療と二次医療で同一のカットオフ50 µg/gを用いるべきとしていること、これはIBDの見落としが不要な大腸内視鏡より重大な結果を招くという理由で感度を優先した閾値であること、50〜150 µg/g(小児ではおよそ200 µg/gまで)はわずかな上昇として経過観察の対象になること、陰性であればIBDはきわめて考えにくく内視鏡を省く根拠になることを確認した。閲覧 2026-08-25