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Drug Atlas · B19 Antidiabetics / 糖尿病薬 · 必修

メトホルミン

metformin

分類
Antidiabetics / 糖尿病薬
商品名(日本)
メトグルコグリコラン
商品名(EU)
Glucophage
科目
Pharmacology
トピック
B19: Oral antidiabetics
禁忌疾患
慢性腎臓病
副作用
下痢悪心
監視検査値
クレアチニン乳酸
影響検査値
乳酸アシドーシス
相互作用
ドルテグラビルヨード造影剤
対象疾患
2型糖尿病子宮体癌多嚢胞性卵巣症候群妊娠糖尿病
原因となる疾患
巨赤芽球性貧血

🧠 全体像は2型糖尿病のほぼ全ガイドラインで第一選択に据えられている唯一のである。理由は薬効そのものではなく「やらないこと」の多さにある——単剤で低血糖を起こさず、体重を増やさず、心血管を悪化させない。この「安全性の余白の広さ」が、SU薬やが次々と第一選択の座を追われる中でだけが生き残った理由になる。裏に隠れた弱点はただ一つ、腎機能に依存するのリスクであり、このノートの禁忌・注意はほぼすべてこの一点に集約される。

薬効群の中での位置づけ

は「どこに作用して血糖を下げるか」で5〜6系統に分かれる。

系統 代表薬 機序 低血糖 体重への影響
AMPK活性化→↓・末梢感受性↑ 起こさない 中立〜減少
SU「-gli」 β細胞閉鎖→ 起こす 増加
グリニド 同上(速効・短時間) 起こす 軽度増加
チアゾリジン PPAR-γ作動→インスリン抵抗性改善 起こさない 増加
腸管での糖質吸収遅延 起こさない(単剤) 中立
DPP-4阻害 など 分解阻害 起こさない(単剤) 中立
SGLT2阻害 など 腎の糖再吸収阻害 起こさない(単剤) 減少

が第一選択である理由は「効果の強さ」ではなく「害の少なさ」。 HbA1c低下幅そのものはSU薬と同程度だが、低血糖・体重増加という2大デメリットを持たず、UKPDS試験以来、肥満合併2型糖尿病患者での心血管死亡・の減少が示されている数少ない古い薬である。SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬が心不全・腎保護ので注目される現在も、費用と実績の蓄積の厚さから治療の土台であり続けている。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metformin'>メトホルミン</span>が肝細胞へ取り込まれる<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organic cation transporter 1 (OCT1)'>OCT1トランスポーター</span>経由)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitochondrial electron transport chain'>ミトコンドリア電子伝達系</span><br>複合体Iを軽度に阻害"]
    B --> C["細胞内ATP/AMP比↓"]
    C --> D["AMPK(AMP活性化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protein kinase'>プロテインキナーゼ</span>)活性化"]
    D --> E["肝臓:糖新生の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rate-limiting enzyme'>律速酵素</span>を抑制"]
    D --> F["末梢組織:GLUT4発現↑→糖取り込み↑"]
    E --> G["肝からの糖放出↓"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulin sensitivity'>インスリン感受性</span>↑"]
    B -.->|"複合体I阻害が強すぎると"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anaerobic metabolism'>嫌気性代謝</span>への切り替え"]
    I -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal excretion (renal elimination)'>腎排泄</span>が保てないと蓄積"| J["⚠️ 乳酸産生↑・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactic acidosis'>乳酸アシドーシス</span>"]

💡 を刺激しない。 効果の起点はではなく肝細胞のであり、これが「インスリンが出ていない状態でも血糖を下げすぎない=低血糖を起こさない」という性質の直接の理由になる。同じ理由で、単独では膵のさせない。

薬物動態

項目 値・特徴
約50〜60%
代謝 を受けない(未変化体のまま)
排泄 が主体)。OCT2・MATE1/2-Kトランスポーターに依存
半減期 約4〜9時間()。製剤(XR)は1日1回投与が可能
腎機能との関係 eGFR低下に伴い血中濃度が直線的に上昇する。・中止の基準そのものがeGFR

を理解する鍵は「を受けずだけに頼る」という一点。 肝機能はほとんど問題にならない一方、腎機能低下がそのまま蓄積・リスクに直結する。造影剤・NSAIDs・ACE阻害薬などを起こしうる薬剤との併用が問題になるのもこのためである。

適応

領域 使いどころ
糖尿病 2型糖尿病と同時に開始することが多い)
婦人科 でインスリン抵抗性を伴う場合の代謝リスク低減
産科 でインスリンの代替・補助として使われることがあるが第一選択ではない(があり、単剤でのコントロール不良例ではインスリン追加・切替が必要)
腫瘍学(補助的) で肥満・インスリン抵抗性を伴う症例に、の補助として用いるデータがある

用法・用量

成人では通常1回500 mgを1日2〜3回、または開始時1日500 mgより漸増し、を見ながら1日最大2,000〜2,500 mg程度まで増量する。GI副作用を減らすため少量から漸増し、食後に服用するのが基本。製剤(XR)は1日1回夕食後でが上がることが多い。実際の用量は年齢・体重・腎機能・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:重度の(目安としてeGFR<30 mL/min/1.73m²、eGFR 30〜45では減量・慎重投与)、の既往、重度、低酸素状態を伴う心不全・呼吸不全、大量飲酒
  • ⚠️ との関係:造影剤によるを契機にが蓄積しを起こしうる。腎機能低下例・造影剤大量投与例では検査前後でし、腎機能が正常であることを確認してから再開するのが標準的な運用(腎機能正常例では必ずしも一律が要らないという考え方もあるが、施設プロトコルに従う)
  • ⚠️ 手術・絶食・急性疾患時は一時中止:脱水・低灌流・のリスクがある状況ではのリスクが上がるためする
  • ビタミンB12欠乏:長期投与でビタミンB12吸収低下を起こしうる。末梢神経障害の悪化と紛らわしいため定期的な確認が有用

副作用

頻度 内容
高頻度 下痢悪心(多くは漸増と食後服用で軽減)
注意 ビタミンB12欠乏(長期投与)
重篤・まれ (頻度はまれだが致死的になりうる。腎機能低下・低酸素状態・大量飲酒・が誘因)

まとめ

  • 2型糖尿病の。効果の強さでなく「低血糖を起こさず体重を増やさない」安全性の広さが理由。
  • 機序はAMPK活性化による抑制+末梢改善。は刺激しない。
  • を受けずのみに依存する。腎機能低下が蓄積・に直結する。
  • 禁忌は重度既往・低酸素を伴う心不全/呼吸不全。前後のが定番の注意点。
  • 高頻度の副作用はGI症状(下痢・悪心)で、漸増・食後服用で軽減できる。
  • SGLT2阻害薬などが心不全・腎保護で注目される現在も、費用と実績の蓄積から治療の土台であり続けている。