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Drug Atlas · C6 Antivirals / 抗ウイルス薬 · 必修

ドルテグラビル

dolutegravir

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(日本)
テビケイ
商品名(EU)
Tivicay
科目
Pharmacology
トピック
C6: Antiretroviral agents
標的微生物
HIV-1HIV-2
副作用
頭痛不眠悪心
影響検査値
クレアチニン
相互作用
メトホルミン
対象疾患
HIV感染症・AIDS

🧠 全体像:は現行ART()の初回治療の主軸である()の代表格である。ウイルスが宿主染色体へ組み込まれる最後の一歩を止めるという機序自体は先行のと同じだが、結合が長く外れにくいためが入りにくい(高い遺伝子的バリア)ことと、に依存せず不要で1日1回投与できることで、実質的に世界の治療の標準骨格を塗り替えた薬である。

薬効群の中での位置づけ

世代 代表薬 特徴
第1世代 1日2回、が低く単一変異で耐性化しやすい
依存型 でのが必須
第2世代 ・ 1日1回、不要、が高い。現行初回治療の中核
長時間作用型 と同じ「-gravir」機序を持つが、経口ではなく筋注の長時間作用型製剤

⭐ +の2剤レジメン(DTG/3TC)は、の高さがあって初めて成立する簡略化。 は2019年の改訂でを第一選択・第二選択レジメンで優先すべきと位置づけている1。 3剤が当たり前だった時代からを1剤減らせるのは、自体が単独でも高い抗ウイルス活性とを持つためである。ただしB型肝炎、治療開始前の が非常に高い場合、検査結果判明前の迅速治療開始などでは2剤化は避け3剤を用いる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dolutegravir'>ドルテグラビル</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='integrase'>インテグラーゼ</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='active site'>活性部位</span>に結合"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='integrase'>インテグラーゼ</span>が持つ2価金属イオン<br>(Mg2+)を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chelation'>キレート</span>して酵素活性を阻害"]
    B --> C["逆転写で作られた<br>二本鎖ウイルス<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>が<br>宿主染色体へ組み込めなくなる<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='strand transfer'>鎖転移</span>阻害)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proviral integration'>プロウイルス化</span>を阻止<br>→複製環が完成しない"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dolutegravir'>ドルテグラビル</span>は酵素からの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dissociation rate'>解離速度</span>が非常に遅い"] -.->|"結合の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duration'>持続時間</span>が長い"| B
    E -.->|"1つの変異では<br>簡単に外れない"| F["高い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='barrier to resistance'>耐性バリア</span>"]

💡 「が長い」という上の性質が、そのままの高さという臨床的な強みに直結している。 先行のは同じ標的・同じ阻害様式でも酵素からすぐ外れるため、単一の変異でも効果が失われやすかった。

薬物動態

項目 値・特徴
良好。食事でさらに吸収が上がる(脂肪分の多い食事で顕著)
代謝 主にUGT1A1による、一部。依存度が低く不要
相互作用 Mg・Al・Ca・Fe等のとし吸収低下(・・カルシウム剤と時間をずらす)
排泄 主に糞中(未変化体・代謝物)
半減期 約14時間。1日1回投与を支える
腎機能への影響 腎尿細管のOCT2輸送体を阻害し、実際のは変えないままを軽度上昇させる(見かけ上の腎機能低下)

💡 クレアチニン上昇=腎障害とは限らない。 開始後にクレアチニンがわずかに上がるのはOCT2阻害による分泌障害であり、自体は保たれている。他の原因(脱水、併用など)を除外したうえで経過観察でよいことが多い。

適応

領域 使いどころ
初回治療 +NRTI2剤の3剤レジメン(第一選択の中核)。または+の2剤レジメン
治療変更 耐性・の問題で他クラスから切り替える場合の主軸
小児・思春期 体重区分に応じたで使用可
妊娠 現在は妊娠中・妊娠を計画する女性を含め第一選択として推奨される(後述)

用法・用量

通常成人量は1日1回50mg。への耐性が疑われる場合は1日2回50mgに増量することがある。リファンピシン併用時は/UGT1A1誘導により血中濃度が下がるため1日2回50mgへ増量する。 含有製剤(・カルシウム・・マルチビタミン)とは服用前2時間または服用後6時間以上あける。実際の用量は年齢、体重、耐性、併用薬で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • との:・カルシウム・と同時服用しない
  • リファンピシン併用:誘導により血中濃度低下→増量が必要
  • ⚠️ :不眠・頭痛が高頻度。稀に・の報告があり、既往のある患者では注意
  • 体重増加:全体、特に・との併用で顕著になりやすい。南アフリカのADVANCE試験(治療未経験例1,053例、48週)では、TAF併用群の体重増加(平均+6.4kg)がTDF併用群(+3.2kg)・を含む標準治療群(+1.7kg)を上回った2
  • 妊娠:2018年のTsepamo研究(ボツワナの出生、暫定426例)で受胎時曝露との関連が報告され0.94%という頻度が示され一時懸念されたが3、2019年の追跡例数を増やした更新解析では頻度は0.30%へ改訂されとの差も縮小した4。この経過を踏まえ、は2019年にをを含む妊娠中も第一選択として推奨する方針へ転換した1

副作用

頻度 内容
高頻度 頭痛、不眠、悪心
注意 体重増加、の軽度上昇(OCT2阻害による見かけ上のもの)
重篤・まれ 過敏反応(発熱・発疹・全身症状)、肝毒性、・

まとめ

  • 第2世代。の金属イオンをしてを阻害し、酵素からの解離が遅いためが高い。
  • 不要で依存度が低く、1日1回投与が可能。現行初回治療の中核。
  • とするため・・カルシウム剤と時間をずらす。リファンピシン併用では増量する。
  • OCT2阻害によりが見かけ上上昇する(は不変)。
  • (不眠・頭痛、稀に抑うつ)と体重増加に注意。
  • 妊娠中のへの懸念(2018年報告の暫定頻度0.94%)は、2019年の追跡例数を増やした更新解析で頻度0.30%へ改訂され34、は現在妊娠中も第一選択として推奨している1。体重増加はTAF併用でとくに顕著である2。
  • は同じ機序を持つ長時間作用型の「きょうだい」に当たる。

出典

  1. 1.Update of recommendations on first- and second-line antiretroviral regimens(World Health Organization・2019)WHOが2019年7月の改訂で、それまでの神経管閉鎖障害リスクの懸念による慎重姿勢を転換し、ドルテグラビルを第一選択・第二選択レジメンで優先すべき抗レトロウイルス薬(preferred ARV drug)として位置づけたことを確認閲覧 2026-08-27
  2. 2.Dolutegravir plus Two Different Prodrugs of Tenofovir to Treat HIV(The New England Journal of Medicine・2019)南アフリカの治療未経験患者1,053例を対象としたADVANCE試験(48週)で、体重増加(除脂肪量・脂肪量とも)はTAF/ドルテグラビル/エムトリシタビン群で最大(平均+6.4kg)、TDF/ドルテグラビル/エムトリシタビン群で中間(+3.2kg)、TDF/エファビレンツ/エムトリシタビン群(標準治療)で最小(+1.7kg)であり、とくに女性で顕著だったことを確認閲覧 2026-08-27
  3. 3.Neural-Tube Defects with Dolutegravir Treatment from the Time of Conception(The New England Journal of Medicine・2018)ボツワナの出生サーベイランスで、受胎時点でドルテグラビル含有レジメンに曝露していた母体からの出生426例中4例(0.94%)に神経管閉鎖障害(無脳症・髄膜瘤・脳瘤・完全無脳畸形など)を認め、これが受胎前後曝露と神経管閉鎖障害の関連を最初に報告した事例であることを確認閲覧 2026-08-27
  4. 4.Neural-Tube Defects and Antiretroviral Treatment Regimens in Botswana(The New England Journal of Medicine・2019)2014年8月〜2019年3月のボツワナの出生サーベイランス(119,477分娩)で追跡例数を増やした結果、受胎時ドルテグラビル曝露群での神経管閉鎖障害の頻度は0.30%(1,683分娩中5例)へ改訂され、非ドルテグラビルART曝露群の0.10%(14,792分娩中15例)との差は0.20ポイントに縮小したこと(2018年報告時の暫定値0.94%より低下)を確認閲覧 2026-08-27