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Symptoms · Published

不眠

Insomnia

臓器系
内分泌・代謝神経精神
科目
Psychiatry
トピック
精神医学 B-07:睡眠障害の診断基準と臨床管理
関連疾患
COVID-19罹患後症状Morvan症候群アルコール使用障害オピオイド離脱症候群クッシング症候群パーキンソン病バセドウ病プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病)概日リズム睡眠・覚醒障害気分障害(うつ病・双極性障害)筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群月経前不快気分障害更年期症状水銀中毒致死性家族性不眠症適応反応症統合失調感情障害脳振盪後症候群非24時間睡眠覚醒障害夜間摂食症候群
起因薬
(es)シタロプラムアトモキセチンアマンタジンアリピプラゾールアンフェタミン誘導体イサツキシマブエファビレンツエフェドリンオベポレクストンジロートンセルトラリンセレギリンソルリアムフェトールデキサメタゾンデューテトラベナジンデュロキセチンドネペジルトラニルシプロミンドルテグラビルニコチンニフルチモクスバルベナジンバレニクリンピトリサントピラセタムファンプリジンフェキシニダゾールフェゾリネタントフェルバマットブプロピオンフルオキセチンフルボキサミンプレドニゾロンプレドニゾンプロプラノロールペグインターフェロン アルファベンラファキシンマジンドールメタンフェタミンメチルフェニデートメフロキンモクロベミドモダフィニルモンテルカストリスデキサンフェタミンリルピビリンルラシドンレボキセチンレボチロキシン
スコア
POEM(患者主体の湿疹評価尺度)SCORAD(アトピー性皮膚炎重症度スコア)夜間摂食質問票

🧠 全体像:不眠は「眠れた時間が短い」ことではなく、適切ながあるのに入眠・睡眠維持・覚醒のいずれかに問題があり、日中機能に支障が出る状態を指す。でも日中に支障がなければとして扱わない。評価の軸は2つ——どの時間帯に問題が出るか(型)と、背景の原因が精神疾患・身体疾患・薬剤・のどれかである。

不眠の3類型

型 定義 臨床的な傾向
床についてから寝つくまでに時間がかかる 不安やの、就寝前ので目立ちやすい
入眠後に夜間覚醒し、再入眠が困難 疼痛、、などで目立ちやすい
希望する時刻より早く覚醒し、再入眠できない うつ病に伴う不眠の典型的なパターンとして知られる

💡 3型は互いに排他的ではなく、同一患者に複数の型が併存することも多い。

原因の4群

原因群 代表例 特徴
精神疾患 うつ病、不安症、の離脱 不安症との合併は特に多く、の型で現れやすい
身体疾患 ・などの内分泌疾患、パーキンソン病、() 、夜間の運動症状、視床変性など機序は多様
薬剤 ステロイド、、一部の抗うつ薬、などの、利尿薬の服用時刻(下の「薬剤性不眠」の節) と内服時刻の確認だけで改善することがある
・行動 不規則な、就寝前の・アルコール・画面使用、長い昼寝 「眠れないこと自体への不安」が覚醒を、悪循環を形成する

⭐ のうち(FFI)は、視床の変性により難治性の不眠とを来す遺伝性の型で、通常の不眠とは機序が異なる。

薬剤性不眠

⭐ 薬剤は「4群のひとつ」ではなく、外来で最初に潰す群である。 中止・減量・服用時刻の変更だけで解決しうるうえ、原因薬を残したままではもも効きが悪くなる。⚠️ 一方で、原因薬を自己判断で中止させない——抗うつ薬・抗精神病薬・ステロイドはいずれも中止それ自体が有害な群である。

機序で束ねると、覚えるべき薬効群は次のようになる。

機序 代表的な薬効群・薬剤 見分けの手がかり
中枢の覚醒系を直接上げる (・・・)、覚醒維持薬(・)、に作用する、作動薬、・・ で、午後以降の服用に強く紐づく。半減期の長い薬ほど朝1回へ寄せる
の・分解阻害 ・(・・・・)、、(・)、阻害薬(・・) 投与開始・増量から数日〜数週で出て、うつ病そのものの不眠と紛らわしい。朝投与への変更で改善することが多い
が乏しい抗精神病薬 ・など、H1・への親和性が低い薬 「鎮静が弱い=眠くならない」の裏面。ではのSmPCが成人でvery common(10%以上)の副作用に不眠を挙げている1
を介する不眠 を遮断する抗精神病薬・、阻害薬(・) ⚠️ 「眠れない」ではなく「じっとしていられない」。を足すのではなく原因薬の減量・変更で対応する。との切り分けも要る
ステロイド ・ 高用量・夕方以降の投与で目立つ。を朝1回へ寄せるのが最初の手
β遮断薬 など 夜間分泌の抑制という説明がある(下の💡)。⚠️ 「脂溶性の薬だけの問題」と単純化しない——水溶性のでも分泌は同程度に落ちる
の一部として (異常な夢・不眠)、、・、、 不眠が単独ではなく・気分変化・と一緒に出るときに疑う
内分泌作用 の過剰補充 ・体重減少・振戦を伴う。で確かめる
離脱・ ・非、鎮静性抗ヒスタミン薬、アルコール、オピオイドの中止・減量 中止直後にもとより強い不眠が出る。原疾患のと区別し、計画で対応する

💡 β遮断薬の不眠には、夜間分泌の抑制という説明がある。 健常人15名ので、夜間尿中排泄量は、β遮断作用を持つ(S)-で−80%、(S)-で−86%と有意に低下した一方、β遮断作用を持たない(R)-とでは有意な変化がなかった。著者はここからβ遮断薬がβ1受容体の特異的阻害を介して分泌を減らすとしている。⭐ 抑制されたのは脂溶性のと水溶性のの両方である——中枢移行の良し悪しではなく、のβ1受容体を遮断するかどうかで決まっている2。⚠️ ただし著者自身は「夜間の低下が睡眠障害の理由かもしれない」と留保しており、因果を断定していない。 ⭐ さらに同じ試験で、α・βの両方を遮断するはを低下させなかった(−10%、有意差なし)——「β遮断薬だから一律に抑制する」わけではない2。

慢性不眠症の診断

⚠️ は、適切ながあるのに・・のいずれかがあり、週3夜以上、3か月以上続いて日中機能を障害する状態と定義される(-TR)。単発の寝つきの悪さをとして扱わない。

評価と治療の進め方

flowchart TD
    A["不眠の訴え"] --> B["型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='difficulty falling asleep (sleep-onset insomnia)'>入眠困難</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nocturnal awakening'>中途覚醒</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early morning awakening'>早朝覚醒</span>)を確認"]
    B --> C{"精神疾患・身体疾患・薬剤で説明できるか"}
    C -->|"はい"| D["背景疾患・薬剤の評価と治療を優先"]
    C -->|"いいえ"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sleep hygiene'>睡眠衛生</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conditioning'>条件づけ</span>られた覚醒を評価"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive behavioral therapy for insomnia, CBT-I'>不眠症認知行動療法</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive behavioral therapy'>CBT</span>-I)を第一選択とする"]
    E --> F

米国睡眠医学会(AASM)の2021年の診療ガイドラインは、成人の慢性について6つの推奨を出しており、強い推奨(「推奨する」)はひとつだけ——多要素の(-I)である。短時間版の多要素療法、単独療法としての・・リラクセーションはいずれも条件付き推奨(「提案する」)にとどまる。⚠️ そして6つ目の推奨は、を単独療法として用いないことを提案する(条件付き)というものである3。

⭐ 「は不十分」ではなく「単独では使わないことが提案されている」と覚える。 は-Iの構成要素として、あるいは治療を支える土台としては有用だが、それだけを治療と称してはいけない。⚠️ 一方、単独療法の・・リラクセーションが「条件付き」なのは効かないという意味ではなく、多要素-Iより根拠が弱いという意味である3。

は併存症や相互作用を踏まえて個別化し、・非は転倒・への影響・依存のリスクから長期使用を避ける。診断・治療の詳細はのノートを参照する。

まとめ

  • 不眠は睡眠時間の短さではなく、入眠・維持・覚醒のいずれかの問題と日中機能障害で定義する。
  • ・・の3型は排他的ではなく併存しうる。
  • 原因は精神疾患・身体疾患・薬剤・の4群に整理する。
  • ⭐ 薬剤性不眠は機序で束ねる——中枢覚醒系の、、の乏しい抗精神病薬、を介するもの、ステロイド、β遮断薬、の一部、内分泌作用、離脱・。服用時刻の変更だけで解決する群がある。
  • ⚠️ を介する不眠にを足さない。訴えが「眠れない」ではなく「じっとしていられない」なら原因薬の減量・変更を先に考える。
  • 不安症との合併は特に多いが、不安そのものの評価枠組みは不安を参照する。
  • は-TRで週3夜以上・3か月以上・日中機能障害と定義される。
  • 治療はAASM 2021で多要素-Iだけが強い推奨であり、を単独療法として用いないことが提案されている3。

出典

  1. 1.Latuda (lurasidone) film-coated tablets — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency (Committee for Medicinal Products for Human Use)・2026)4.8の冒頭が成人で頻度10%以上の副作用をアカシジア・悪心・不眠の3つとし、成人の統合失調症試験の統合データを示すTable 1で不眠がvery commonの列にあることを確認した。鎮静作用の乏しい抗精神病薬でも不眠が高頻度の副作用として掲げられる実例として引いている。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Influence of beta-blockers on melatonin release(European Journal of Clinical Pharmacology・1999)健常人15名の無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験で、夜間尿中6-スルファトキシメラトニン排泄量がプラセボ26 µgに対し(S)-プロプラノロールで5 µg(−80%)、(S)-アテノロールで4 µg(−86%)と有意に低下し、(R)-エナンチオマー・カルベジロール・ベラパミルでは有意な変化がなかったこと、著者がβ遮断薬はβ1受容体の特異的阻害を介してメラトニン分泌を減らすと結論し、夜間メラトニン低下が睡眠障害の理由であるかは今後の検討課題として留保していることを、Europe PMCの抄録で確認した。全文は購読誌のため取得していない。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline(American Academy of Sleep Medicine・2021)成人の慢性不眠障害に対する6つの推奨のうち、強い推奨(We recommend)は多要素の不眠症認知行動療法1件だけであり、短時間版の多要素療法・単独療法としての刺激制御・睡眠制限・リラクセーションはいずれも条件付き推奨(We suggest)であること、6つ目の推奨が「睡眠衛生を単独療法として用いないことを提案する」(条件付き)であることを、Europe PMC(PMC7853203)の抄録に載る推奨文の逐語で確認した。全文は取得していない。閲覧 2026-09-08