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Drug Atlas · A1 Other / その他 · 必修

デューテトラベナジン

deutetrabenazine

分類
Other / その他
商品名(EU)
Austedo
科目
Pharmacology
トピック
A22: Drugs of neurodegenerative diseases (extrapyramidal motoric system, nootropic drugs)A1: Cholinergic and adrenergic transmission and its presynaptic modification
承認適応
ハンチントン病
禁忌疾患
気分障害(うつ病・双極性障害)
副作用
傾眠下痢口渇不眠
相互作用
テトラベナジンパロキセチンフルオキセチン
対象疾患
遅発性ジスキネジア

🧠 全体像素化体であり、も効果も母化合物と本質的に同じだが、素-炭素結合の強さを利用してCYP2D6による代謝を遅らせるという一点だけで臨床上の使い勝手を作り直した薬である。分子構造の変更ではなく「同じ分子の一部の水素を素に置き換える」という化学的トリックだけで、1日3回以上必要だった投与を1日2回にまで減らせた点が、として最も面白い部分になる。

薬効群の中での位置づけ

分類 代表薬 特徴
VMAT2阻害(母化合物) 小胞内の貯蔵を枯渇 スコアの改善幅は3剤中最大だが、1日3回以上の投与と高い有害事象発現率が課題1
VMAT2阻害(素化体) 同上 素化によりCYP2D6代謝が遅延し半減期が延長。1日1〜2回投与、最大48mg/日で足り、が相対的に優れる21
VMAT2阻害(別系統) 同上 1日1回投与。にも適応

素化=効果を変えずにだけを改良する」という発想の典型例。 化学構造の骨格自体を変えるのではなく、代謝で最初に切られるC-H結合をC-D結合に置き換えることでCYP2D6による酸化的を遅らせ、母化合物より安定した血中濃度と長い半減期を実現している。は変わらないため、有効性はとほぼ同等のまま、ピーク・の変動と投与回数だけが改善される。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deutetrabenazine'>デューテトラベナジン</span>がVMAT2を阻害"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic vesicle'>シナプス小胞</span>内への<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoamine'>モノアミン</span>取り込みを阻止"]
    B --> C["ドパミン・セロトニン・ノルアドレナリンが枯渇"]
    C --> D["ドパミン枯渇→線条体刺激低下→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chorea'>舞踏運動</span>を抑制"]
    C --> E["セロトニン・ノルアドレナリンも枯渇→抑うつ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suicidal ideation'>自殺念慮</span>のリスク"]
    F["分子中のメトキシ基の水素を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heavy water'>重水</span>素に置換"] --> G["CYP2D6によるO-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='demethylation'>脱メチル化</span><br>(C-D結合切断)が遅くなる"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span>の半減期が延長し<br>血中濃度の変動が小さくなる"]
    H --> I["1日2回投与で足り、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peak concentration'>ピーク濃度</span>依存の副作用が減る"]

💡 VMAT2を阻害してを枯渇させるという「効かせ方」はと共通で、変わったのは「どれだけ長く、どれだけ滑らかに効かせられるか」というの質だけ。 試験でこの2剤の違いを問われたら、機序ではなく素置換によるCYP2D6代謝の遅延と、それに伴う投与回数・最大用量の違いを軸に答える。

薬物動態

項目 値・特徴
代謝 (α-HTBZ・β-HTBZ)に変換され、主にCYP2D6でさらに代謝される
半減期 はα-HTBZ約12時間、β-HTBZ約7.5時間と、の対応する代謝物より長い2
最大用量 通常48mg/日。強いCYP2D6阻害薬併用時は36mg/日に制限3
との対比 は1日3回以上・最大100mg/日を要するのに対し、は1日1〜2回・最大48mg/日で同程度の効果を狙える2

適応

に伴う、および(抗精神病薬などの長期使用で生じる不)。2017年にFDAがに対して承認したのが最初の適応で、その後にも適応が拡大された3

用法・用量

経口。1日12mg(TEDO XRなら1日1回12mg、通常製剤なら1回6mgを1日2回)から開始し、週単位で1日6mgずつ増量する。通常の最大用量は1日48mgだが、強いCYP2D6阻害薬(など)を併用する場合は1日36mgを上限とする3。実際の用量・上限は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:活動性の・十分に治療されていないうつ病・患者において特に強調される)、、MAO阻害薬・との併用(枯渇作用の重複)3
  • ⚠️ 患者における抑うつ・の見出しそのものが「患者における抑うつと自殺傾向」であり、集団に限定された1本である(の適応にはは置かれていない)。抑うつ・の出現/増悪を綿密に監視し、抑うつ・の既往がある患者では特に慎重に扱う。活動性ののある患者、未治療・治療不十分なうつ病の患者への投与は禁忌であることもの中に明記されている3
  • QT延長を起こす薬剤との併用は慎重に

副作用

頻度 内容
高頻度(、8%超) 傾眠下痢口渇3
高頻度(、3%超) 不眠3
重篤・まれ 抑うつ・群2%、群0%)、QT延長、急な中止による3

⚠️ 同じ適応症でも副作用の頻度は母集団で異なる。 患者では傾眠・下痢・口渇・感が目立つ一方、の患者集団では・不眠が高頻度に挙がる——これは薬そのものというより、基礎疾患を持つ患者集団の違いを反映している面もある。

まとめ

  • 素化体。VMAT2阻害という・効果は母化合物と本質的に同じ。
  • 素-炭素結合がCYP2D6による代謝を遅らせ、の半減期を延長させる(よりα-HTBZ・β-HTBZの半減期が長い)。
  • 結果として1日1〜2回投与・最大48mg/日で足り、(1日3回以上・最大100mg/日)よりに優れる。
  • 適応は(2017年FDA承認)との両方。
  • 患者における抑うつ・の1本で、も同じ見出しのを持つ(クラス共通、かついずれも集団に限定された)。強いCYP2D6阻害薬併用時は最大用量を36mg/日に下げる。

出典

  1. 1.AUSTEDO / AUSTEDO XR (deutetrabenazine) tablets — full prescribing information(米国FDA / DailyMed(Teva Pharmaceuticals)・2017)デューテトラベナジンがハンチントン病の舞踏運動と遅発性ジスキネジアの両方でFDA承認されたVMAT2阻害薬であり、開始用量12mg/日から週単位で6mgずつ最大48mg/日まで漸増すること(強いCYP2D6阻害薬併用時は36mg/日まで)、活動性の自殺念慮・未治療のうつ病を伴うハンチントン病患者では枠組み警告の対象となることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Efficacy and safety of vesicular monoamine transporter 2 inhibitors for Huntington's disease chorea based on network meta-analysis(Frontiers in Pharmacology・2025)テトラベナジン・デューテトラベナジン・バルベナジンの3剤のうち、デューテトラベナジンは1日1〜2回投与で全体的な忍容性に優れるという相対的な位置づけを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Deutetrabenazine Therapy and CYP2D6 Genotype(Medical Genetics Summaries(NCBI Bookshelf)・2019)重水素化によりCYP2D6によるO-脱メチル化が遅くなり半減期が延長すること、その結果デューテトラベナジンが1日2回投与・最大48mg/日で足りる一方、非重水素化のテトラベナジンは1日3回以上・最大100mg/日を要することを確認した閲覧 2026-08-10