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Disease Atlas · 神経 · 症候群

Morvan症候群

Morvan syndrome

別名
モルバン症候群Morvan's syndrome
臓器系
神経免疫・膠原病
科目
Neurology
トピック
神経内科 G3-26:自己免疫性脳炎
鑑別疾患
Isaacs症候群
関連疾患
胸腺腫自己免疫性脳炎
治療薬
免疫グロブリン静注療法メチルプレドニゾロン
症状
ミオキミア不眠錯乱
検査値
神経自己抗体

🧠 全体像は、CASPR2抗体(一部はLGI1抗体を併せ持つ)による自己免疫性の稀な症候群であり、などの末梢神経過興奮、発汗過多・不整脈などの自律神経症状、そして重度の不眠・という3系統の症状が同時に出現する点が中核をなす。CASPR2抗体は末梢神経過興奮を来す点で(LGI1抗体が中心)と一線を画し、との強い関連を持つ。100万人あたり1例に満たない非常にまれな疾患であり、本項の記述は出典で確認できる範囲にとどめる。

概要・疫学

は、末梢神経の過興奮()、自律神経症状、重度の不眠を含む脳症という3系統の症状が同時に生じる自己免疫性の稀な症候群である。Orphanetによるは100万人あたり1例未満とされ、報告によって男性が70〜90%を占め、一部の研究では男女比19対1に達するほど男性に著しく偏る1

病態

原因抗体は複合体を構成する細胞表面蛋白(CASPR2・LGI1)に対する自己抗体である。かつて「VGKC抗体」として一括りにされていたが、その大半は実際にはCASPR2またはLGI1という別々の抗原に対する抗体であったことが2010年に示された2

flowchart TD
    A["CASPR2抗体(一部はLGI1抗体を併存)"] --> B["末梢神経の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axolemma'>軸索膜</span>の過興奮"]
    A --> C["中枢神経(辺縁系・視床下部)の機能異常"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myokymia'>ミオキミア</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromyotonia'>神経ミオトニア</span><br>有痛性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle spasm'>筋けいれん</span>"]
    C --> E["重度の不眠・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='confusion'>錯乱</span>・行動変化<br>自律神経中枢の機能異常"]
    A --> F["自律神経終末の過興奮"]
    F --> G["発汗過多・不整脈・血圧不安定"]

LGI1抗体陽性者はが中心で腫瘍関連が乏しいのに対し、CASPR2抗体陽性者はを来しやすくを伴いやすいという臨床像の違いがある2の患者ではCASPR2抗体が約75%、LGI1抗体が約60%に検出され、両抗体が併存する例も少なくない1

臨床像

系統 主な症状
末梢神経過興奮 後に手が開きにくいなどの筋弛緩遅延を伴う持続的過興奮)、有痛性
自律神経症状 発汗過多、便秘、血圧の不安定・、不整脈
(脳症) 重度の不眠、行動変化、様体験を伴うこともある

これら3系統が単独でなく同時に出現することがを特徴づける。のみでを欠けばの項で扱う(後天性)に近い病像にとどまり、とは呼ばない。

⚠️ の合併率が50〜90%と高い。 の診断時にはの系統的な検索が必須であり、CASPR2/LGI1関連神経症候群としての位置づけの詳細はの項も参照する1

診断

末梢神経過興奮・自律神経症状・重度の不眠を伴う脳症という組合せから本症候群を疑い、検査でCASPR2・LGI1抗体を確認する。単一のだけで診断を確定せず、臨床像との整合を確認する原則は他のスペクトラムと共通する(詳細はを参照)。

flowchart TD
    A["末梢神経過興奮+自律神経症状+<br>重度の不眠・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='confusion'>錯乱</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuronal autoantibody'>神経自己抗体</span>検査でCASPR2・LGI1抗体を確認"]
    B --> C{"抗体陽性か"}
    C -->|"陽性"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Morvan syndrome'>Morvan症候群</span>として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Thymoma'>胸腺腫</span>を系統的に検索"]
    C -->|"陰性"| E["臨床像で強く疑われれば<br>専門施設で経過を追いながら再評価"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Thymoma'>胸腺腫</span>があれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular/surgical intervention'>外科的治療</span>を計画"]

治療

治療はを中心に、ステロイドなどの免疫抑制を併用することが第一選択とされる1も免疫治療の選択肢に含まれる(スペクトラムに共通する免疫療法の枠組みはを参照)。悪性を合併する例では、腫瘍そのものの治療(外科的切除、必要に応じた化学療法)を免疫治療と並行して進める。

末梢神経過興奮による有痛性の症状緩和には、カルバマゼピンフェニトインなどのが対症的に試みられてきたが、有効性は乏しいとされる。治療の主軸はと免疫である。ただしこれらは原因治療ではなく、免疫治療・腫瘍治療が本体であることに変わりはない。

まとめ

  • は、CASPR2抗体(一部はLGI1抗体を併存)による末梢神経過興奮・自律神経症状・重度の不眠を伴う脳症が同時に出現する自己免疫性の稀な症候群である。
  • は100万人あたり1例未満とされ、男性に著しく偏る。
  • CASPR2抗体はLGI1抗体と比べてを伴いやすいという臨床像の違いがある。
  • 悪性の合併率は50〜90%と高く、診断時には系統的な腫瘍検索が必須である。
  • 治療はを中心とした免疫治療が第一選択で、があれば腫瘍そのものの治療を並行する。カルバマゼピン・フェニトインなどの薬は症状緩和の補助にとどまる。

出典

  1. 1.Morvan Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)Orphanetによる有病率が100万人あたり1例未満とされる非常にまれな疾患であること、男女比が研究により70〜90%、一部では19対1に達するほど男性に著しく偏ること、中枢神経症状(錯乱・行動変化・ミオクローヌス・重度の不眠、ときに幻覚様体験・脳症)、自律神経症状(発汗過多・便秘・血圧の不安定・血行動態不安定・不整脈)、末梢神経症状(有痛性筋けいれん・ミオキミア・神経ミオトニア)の3系統が同時に出現すること、CASPR2抗体が症例の75%、LGI1抗体が60%に検出されること、悪性胸腺腫を症例の50〜90%に合併すること、治療は血漿交換を中心に免疫抑制を併用することが第一選択であることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Antibodies to Kv1 potassium channel-complex proteins leucine-rich, glioma inactivated 1 protein and contactin-associated protein-2 in limbic encephalitis, Morvan's syndrome and acquired neuromyotonia(Brain (Irani SR, Vincent A, et al.)・2010)従来一括りにされていた電位依存性Kチャネル複合体(VGKC)抗体高力価症例の大半(96検体中LGI1抗体55・CASPR2抗体19で77%、既知の標的抗原が同定できたものは計78=81%)が実際にはLGI1抗体・CASPR2抗体という別々の細胞表面抗原への抗体であったこと、LGI1抗体陽性者は辺縁系脳炎が中心で腫瘍関連が乏しいのに対しCASPR2抗体陽性者はニューロミオトニア・Morvan症候群や胸腺腫を伴いやすいという臨床像の違いがあることを確認した閲覧 2026-08-11