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Drug Atlas · B15 Other / その他 · 必修

フェゾリネタント

fezolinetant

分類
NK3 receptor antagonists / NK3受容体拮抗薬
商品名(EU)
Veoza
科目
PharmacologyObstetrics and Gynecology (Gynecology)
トピック
B15: Estrogens and antiestrogens12: Menopause
承認適応
更年期症状
禁忌疾患
肝硬変重度腎機能障害・末期腎不全
副作用
腹痛下痢不眠背部痛
監視検査値
アミノトランスフェラーゼビリルビン
相互作用
フルボキサミンメキシレチン

🧠 全体像:は、の(ほてり・)に対し、症状が起きる仕組み(視床下部の神経回路)を直接標的にした初めての薬であり、という新しい薬効群の先駆けである。(エストラジオールなど)は最も有効な治療だが、乳癌の既往・のリスクなどで使えない患者が一定数いる——はその隙間を埋める非ホルモン治療として期待されている。⚠️ ただし「が使えない患者用の薬」と単純化しない。 承認された適応は患者背景を限定しておらず、逆にのは乳癌等の腫瘍治療を受けている女性には推奨しない(に組み入れられていない)と明記している1。そして非ホルモンであることの代わりに背負うのが承認後に判明した肝毒性という独自のリスクで、この一点が処方時のモニタリング設計のすべてを決めている。

薬効群の中での位置づけ

の治療は、エストロゲンを「与える」か「介さない」かで大きく分かれる。

系統 代表薬 機序 有効性 独自のリスク
エストラジオールなど を直接刺激 最も強力 血栓塞栓症・癌への影響
非ホルモン(既存の薬) 低用量(米国ではそのものを適応として承認済み)2、その他の/・(多くは適応外) 中枢性のセロトニン・ノルアドレナリン系、を介した 中等度 各薬剤固有の副作用(傾眠・性機能への影響など)。⚠️ はを阻害しの効果を減弱させうる2
(新規機序) 視床下部のを直接標的 中等度〜良好3 肝毒性()4

⭐ 「が使えない・使いたくない患者への非ホルモン選択肢」という位置づけが最重要。 ただし「初めての」と言い切るのは誤り——米国では低用量(7.5 mg)がそのものを適応として先に承認されており2、非ホルモン薬の承認はが最初ではない。が一線を画すのは、の発生機序(視床下部の)そのものを標的にした初めての薬効群である点にある。

💡 乳癌既往例で「非ホルモンなら何でもよい」とはならない理由がここに出ている。 を内服している患者では、非ホルモンであるが阻害を介しての効果を落としうる2。一方は、のが腫瘍治療中の乳癌・悪性腫瘍の女性には推奨しない(に組み入れられておらず安全性・有効性が不明)とし、腫瘍治療を終えた既往者については個別の・リスク判断としている1。どちらも「使ってよい」と単純化できない。

機序

flowchart TD
    A["閉経に伴いエストロゲンが低下"] --> B["視床下部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='KNDy neuron'>KNDy神経</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='kisspeptin'>キスペプチン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurokinin B (NKB)'>ニューロキニンB</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dynorphin'>ダイノルフィン</span>産生)の<br>エストロゲンによる抑制が外れる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='KNDy neuron'>KNDy神経</span>が肥大・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperactivity'>過活動</span>化し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurokinin B (NKB)'>ニューロキニンB</span>(NKB)を過剰放出"]
    C --> D["隣接する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thermoregulatory center'>体温調節中枢</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='NK3 receptor'>NK3受容体</span>を刺激"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thermoneutral zone'>熱中性帯</span>が狭小化し<br>わずかな体温変化で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heat dissipation response'>熱放散反応</span>が誘発される"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral vasodilation'>末梢血管拡張</span>・発汗=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hot flashes'>ホットフラッシュ</span>"]
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fezolinetant'>フェゾリネタント</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='NK3 receptor'>NK3受容体</span>を拮抗"] -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='KNDy neuron'>KNDy神経</span>からのシグナルを遮断"| D

💡 「エストロゲンを補うのではなく、エストロゲン低下が引き起こす下流の神経回路の乱れそのものを断つ」のがこの薬の発想。 (・・をする視床下部ニューロン)はもともとの制御に関わるが、エストロゲンによる抑制が外れると肥大し、に隣接する回路を介してを引き起こす。この経路を狙い撃ちするため、乳房・子宮・血管系のには触れない。

適応

閉経に伴う中等度〜重度の(ほてり・)の治療。 米国・とも適応の文言に患者背景の限定は無い41。臨床上は、が禁忌・使用を避けたい患者(癌の既往、のリスクなど)で選択肢になる位置づけだが、⚠️ のは腫瘍治療中の乳癌・悪性腫瘍の女性には推奨せず、エストロゲンによるとの併用も推奨していない(いずれもで検討されていないため)1。

⚠️ 日本では未承認である(2026年9月時点)。 米国で2023年、で2023年12月7日に承認されており41、そのほか複数の国・地域で承認されているが、PMDAの新医薬品承認品目一覧(2025年度・2026年度)のいずれにも収載がなく、日本の電子添文は存在しない5。本ノートの記述は米国添付文書とのに基づく。

用法・用量

45 mgを1日1回、食事の有無にかかわらずする。は割ったり砕いたり噛んだりしない41。SKYLIGHT 1試験(40〜65歳で中等度〜重度のが1日平均7回以上の女性527例)では、30 mg・45 mgのいずれも4週時・12週時でに対しVMSの頻度・重症度を有意に改善した(12週時の頻度の群間差は30 mg −2.39回/日、45 mg −2.55回/日、いずれもp<0.001)。改善は1週後から観察され、52週まで維持された3。のは、の持続期間にがあるため長期投与の有益性を定期的に評価するよう求めている1。実際の用量は肝機能・併用薬で調整するため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌の範囲は米国とで違う。 どちらか一方だけを見ると取りこぼす。

米国(VEOZAH PI 4)4 EU(Veoza SmPC 4.3)1
過敏症 (記載なし) 禁忌
阻害薬の併用 禁忌(等の強い阻害薬、等の中程度の阻害薬、等の弱い阻害薬を含む) 禁忌(中等度・強い阻害薬)
既知の肝硬変 禁忌 禁忌欄には無い。分類B・Cの慢性は4.2・4.4で「推奨されない」
重度・ 禁忌 禁忌欄には無い。 30未満とは4.2で「推奨されない」
妊娠 禁忌欄には無い 禁忌(妊娠が判明している又は疑われる場合)

本ノートの contraindicatedDiseases は、米国添付文書が疾患名で挙げている肝硬変と重度・を保持している。がこれらを「禁忌」ではなく「推奨されない」に置いていることは、上表のとおり本文で書き分ける。

  • ⚠️ :肝毒性。 市販後に肝毒性が報告されており、投与開始前に・を測定し、いずれかが基準値上限の2倍以上であれば投与を開始しない(は「又はが2×以上、あるいはが上昇している場合」と表現する)41
  • ⚠️ 治療中の肝機能モニタリングスケジュールもの中に書き込まれている。 米国は最初の3か月は毎月、その後6か月時・9か月時に肝機能検査を行うと期日で定め、は最初の3か月は毎月、以後は臨床判断に基づくとする。中止基準は米国が「が5×超」または「3×超かつが2×超」、が「5×超」または「3×以上かつ(2×超または肝障害を示唆する症状)」で、は症状だけでも中止根拠になる41
  • 米国添付文書は、が3×を超えた場合に正常化するまで検査間隔を詰めるよう求める。も正常化するまで監視を続けるよう求めている41
  • 倦怠感・食欲低下・悪心・嘔吐・掻痒・黄疸・便色低下・・腹痛など肝障害を示唆する症状が出現したら直ちに中止し受診するよう患者に指導する4
  • ⚠️ のだけにある注意。 ①腫瘍治療(化学療法・放射線治療・抗)を受けている乳癌・悪性腫瘍の女性には推奨しない(既往者は個別判断)、②エストロゲンによるとの併用(局所腟製剤を除く)は推奨しない、③痙攣性疾患の既往がある女性はに組み入れられておらず個別判断、④65歳を超えて開始する場合の安全性・有効性は検討されていない1

副作用

頻度 内容
高頻度(45 mg群で2%以上かつより多い) 腹痛(4.3%)、下痢(3.9%)、不眠(3.9%)、(3.0%)、ほてり(2.5%)4
注意 上昇(2.3%)4
重篤・まれ 肝毒性(市販後に報告。の対象)。のは/が3×以上に上昇した例のなかに、上昇と肝障害を示唆する症状を伴う重篤例があったとし、いずれも中止によりおおむね可逆であったとする41

まとめ

  • のの発生機序そのものを標的にした初めての薬効群()。視床下部ののを拮抗し、エストロゲン低下で乱れたの回路を直接断つ。「初めての」ではない(低用量が米国で先に承認されている)。
  • 日本では未承認(2026年9月時点。PMDAの新医薬品承認品目一覧に収載がなく、日本の電子添文も存在しない)。米国2023年・ 2023年12月に承認済み。
  • が禁忌・使用を避けたい患者(癌既往、血栓塞栓症リスクなど)への選択肢という位置づけが最重要。⚠️ ただし承認された適応にその限定は無く、は腫瘍治療中の乳癌・悪性腫瘍には推奨しないとしている。
  • :肝毒性。 投与開始前の・測定、開始後は3か月間毎月+(米国では)6・9か月時の定期モニタリングが必須。
  • 阻害薬(・・など)との併用は3極に共通の禁忌。⚠️ 肝硬変・重度/は米国では禁忌、では「推奨されない」。妊娠は逆にだけが禁忌に挙げる。
  • SKYLIGHT 1試験では、1日平均7回以上の中等度〜重度を有する40〜65歳の女性で1週後から症状改善が観察され、4週時・12週時の共通をいずれも達成した。12週までの有害事象発現率は群がプラセボ群を上回らなかった。

出典

  1. 1.Veoza (fezolinetant) Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2026)EUの製品概要を取得して確認した。4.1の適応は「閉経に伴う中等度〜重度の血管運動症状(VMS)の治療」で、米国と同じく患者背景による限定は無い。4.2は45mgを1日1回、VMSの持続期間に個人差があるため長期投与の有益性を定期的に評価するよう求める。⚠️ **4.3の禁忌は米国と異なり「有効成分・添加剤への過敏症」「中等度又は強いCYP1A2阻害薬の併用」「妊娠が判明している又は疑われる場合」の3項目で、肝硬変・重度腎機能障害/末期腎不全は禁忌欄に無い**(Child-Pugh分類B・Cの慢性肝機能障害、eGFR 30未満の重度腎機能障害、末期腎不全はいずれも4.2・4.4で「推奨されない」)。4.4の薬剤性肝障害(DILI)の節は、ALT/ASTが基準値上限の3倍以上に上昇した例が総ビリルビン上昇と肝障害を示唆する症状を伴う重篤例を含めて観察されたとし、投与前に肝機能検査を行いALT又はASTが2×ULN以上、あるいは総ビリルビンが上昇(例えば2×ULN以上)していれば開始しないこと、投与開始後は最初の3か月は毎月、以後は臨床判断に基づいて検査すること、中止基準を「トランスアミナーゼが3×ULN以上かつ(総ビリルビン2×ULN超 又は 肝障害を示唆する症状)」「トランスアミナーゼが5×ULN超」と定める。⚠️ **4.4は乳癌等について、乳癌又は他のエストロゲン依存性悪性腫瘍で腫瘍治療(化学療法・放射線治療・抗ホルモン療法)を受けている女性は臨床試験に組み入れられておらず「推奨されない」とし、治療を終えた既往者については個々のベネフィット・リスクで判断するとしている。** エストロゲンによるホルモン補充療法との併用(局所腟製剤を除く)も検討されておらず推奨されない。痙攣性疾患の既往がある女性も試験に組み入れられておらず、個別のベネフィット・リスク判断による。本PDFの10.(DATE OF REVISION OF THE TEXT)は空欄で、9.は初回承認2023年12月7日、EMAのProduct informationページの Last updated 表示は21/04/2026である。閲覧 2026-09-08
  2. 2.BRISDELLE (paroxetine) capsules — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2025)米国添付文書(本文の Revised 表示は 4/2025)を取得して確認した。低用量パロキセチン(7.5mgカプセル、就寝前1日1回)は「閉経に伴う中等度〜重度の血管運動症状の治療」を適応として米国で承認されており、Limitations of Use に「いかなる精神疾患の治療にも適応を持たない」と明記されている(フェゾリネタント以前から非ホルモン薬の承認適応が存在することの裏づけ)。⚠️ 5.3に "Potential Impact on Tamoxifen Efficacy" の節があり、本剤がCYP2D6を阻害してタモキシフェンの効果を減弱させうるため、タモキシフェン投与中の患者には他の治療選択肢を考慮するよう求めている。5.5には閉塞隅角緑内障の節もある。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Fezolinetant for treatment of moderate-to-severe vasomotor symptoms associated with menopause (SKYLIGHT 1): a phase 3 randomised controlled study(The Lancet(Lederman S, et al.、SKYLIGHT 1試験)・2023)抄録を確認した。⚠️ 組入れは「40〜65歳で中等度〜重度のホットフラッシュが1日平均7回以上」の女性で、無症状や軽症の集団への一般化はできない。米国・カナダ・チェコ・ハンガリー・ポーランド・スペイン・英国の97施設で行われた12週の無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(40週の盲検継続投与期あり)で、プラセボ175例・フェゾリネタント30mg 176例・45mg 176例に1対1対1で割り付けられた。共通主要評価項目はVMSの頻度と重症度の4週時・12週時のベースラインからの変化量である。プラセボとの群間差(最小二乗平均の変化量の差)は頻度が4週時に30mg -1.87・45mg -2.07(いずれもp<0.001)、12週時に30mg -2.39・45mg -2.55(いずれもp<0.001)、重症度が4週時に30mg -0.15(p=0.012)・45mg -0.19(p=0.002)、12週時に30mg -0.24(p=0.002)・45mg -0.20(p=0.007)。⚠️ 抄録は「頻度と重症度の改善は**1週後**に観察され52週まで維持された」と述べており、効果発現が4週目からという読み方はしていない。12週までの治療下発現有害事象は30mg群37%(65/174)・45mg群43%(75/173)・プラセボ群45%(78/175)で実薬群のほうが低い。肝酵素上昇の発現はプラセボ1例・30mg 2例・45mg 0例と少なく、おおむね無症候性・一過性で、投与継続中または中止後に回復した。資金提供はAstellas Pharma。閲覧 2026-09-08
  4. 4.VEOZAH (fezolinetant) tablets — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2026)米国添付文書(本文の Revised 表示は 2/2026。RECENT MAJOR CHANGES 欄は枠組み警告・2.1・5.1の追加を 12/2024 と記す)を取得して確認した。枠組み警告「WARNING - RISKS OF HEPATOTOXICITY」は、市販後に肝毒性が発現したこと、投与開始前にアミノトランスフェラーゼ・総ビリルビンを測定しいずれかが基準値上限の2倍以上なら投与を開始しないこと、その後は最初の3か月は毎月・6か月時・9か月時に肝機能検査を行うこと、トランスアミナーゼが基準値上限の5倍超、または3倍超かつ総ビリルビンが2倍超で中止すること、3倍超の上昇が出た場合は正常化まで検査間隔を詰めることを求める。適応は「閉経に伴う中等度〜重度の血管運動症状の治療」。禁忌は既知の肝硬変・重度腎機能障害または末期腎不全・CYP1A2阻害薬との併用の3項目で、CYP1A2阻害薬の例としてフルボキサミン(強い阻害薬)・メキシレチン(中程度の阻害薬)・シメチジン(弱い阻害薬)が挙げられている。用法・用量は45mgを1日1回経口投与。主な有害事象(45mg群で2%以上かつプラセボより多いもの)は腹痛4.3%・下痢3.9%・不眠症3.9%・背部痛3.0%・ほてり2.5%・肝トランスアミナーゼ上昇2.3%。⚠️ 米国添付文書には「ホルモン療法が禁忌の患者に用いる」という趣旨の適応限定も、乳癌に関する注意も置かれていない。閲覧 2026-09-08
  5. 5.承認品目一覧(新医薬品:2026年9月)(独立行政法人医薬品医療機器総合機構・2026)PDFを取得してテキスト抽出し、2026年度分(収載されている承認日は2026.5.11・5.18・6.19・8.24)にフェゾリネタントも販売名ベオーザも収載されていないことを確認した。あわせて2025年度分(2025年4月〜2026年3月、https://www.pmda.go.jp/files/000277965.pdf )も取得して同様に0件であることを確認した。⭐ 2つの一覧で日本の承認品目を通しで見たうえで、2026年9月8日時点でフェゾリネタントは日本で承認されていないと判断した。掲載ページは https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/p-drugs/0040.html で、年度内は月ごとに更新されPDFのファイル番号が変わる閲覧 2026-09-08