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Drug Atlas · B23 Antiulcer drugs / 抗潰瘍薬 · 必修

シメチジン

cimetidine

分類
Antiulcer drugs / 抗潰瘍薬
商品名(日本)
タガメット
商品名(EU)
Tagamet
科目
Pharmacology
トピック
B23: Drugs influencing gastric acid secretion, protective drugs of gastric mucosa
承認適応
消化性潰瘍GERD
副作用
女性化乳房錯乱めまい頭痛
相互作用
テオフィリンフェニトインワルファリン
対象疾患
バンコマイシン注入反応間質性膀胱炎
原因となる疾患
無顆粒球症

🧠 全体像:は世界初の(H2RA)として登場した歴史的な薬だが、現在の臨床での代わりに選ばれることはほぼない。理由は薬効ではなく付随作用にある。分子内のが肝のP-450(・など)に強く結合するため、併用薬の血中濃度を広範囲に押し上げる。同じが弱いも持ち、という薬にはない副作用を生む。「H2RAだから同じ」で済ませず、という一点の違いが臨床像を変えることを押さえる。

薬効群の中での位置づけ

項目 (歴史的)
機序 H2受容体をに遮断 同じ 同じ
分子構造 を持たない を持つ を持たない
への影響 ほとんどなし 強い(特に・)1 わずか(ほどではない)
・ 認めず、と同等2 弱いあり。米国添付文書は病的過分泌状態で約4%、その他の適応で0.3〜1%、日本の電子添文は0.1〜5%未満、英国SmPCは Uncommon(1,000分の1以上100分の1未満)314 対照試験でを認めず5
現在の位置づけ H2RAの標準薬 相互作用の多さから第一選択にはならない。歴史的重要性は高い 混入問題により2019〜2020年に市場から外れた。措置の形は国で違い、日本は出荷停止の指示6、は販売承認の停止7、米国は市場撤退の要請である8

⭐ 「=阻害+」の2点セットで覚える。 どちらもという同じ構造的特徴が原因で、にはどちらもない。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cimetidine'>シメチジン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parietal cell'>壁細胞</span>基底膜のH2受容体へ結合"] --> B["ヒスタミンのH2受容体への結合を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に遮断"]
    B --> C["Gs→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenylyl cyclase, AC'>アデニル酸シクラーゼ</span>活性化が起こらない"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclic adenosine monophosphate'>cAMP</span>↑が抑えられ、プロトンポンプの活性化が弱まる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric acid secretion'>胃酸分泌</span>が減少する(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrin'>ガストリン</span>・迷走神経経路は温存)"]
    F["分子内の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='imidazole ring'>イミダゾール環</span>"] -.->|"肝<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytochrome P450'>CYP450</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heme iron'>ヘム鉄</span>へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coordinate bond'>配位結合</span>"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytochrome P450 3A4'>CYP3A4</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytochrome P450 2D6'>CYP2D6</span>などを強く阻害"]
    F -.->|"弱い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiandrogenic effect'>抗アンドロゲン作用</span>"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gynecomastia'>女性化乳房</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='galactorrhea'>乳汁漏出</span>"]

💡 H2そのものはと同一だが、がついでにのを直接つかむ。 これが「胃酸を抑えるついでに他の薬の代謝まで止める」という特有の性質を生む。もを持たないため、阻害はよりずっと弱い。

適応

機序・適応の幹はと共通だが、承認された効能・効果は国によってはっきり違う。 添付文書を引くときは、どの国のものかを必ず添える。

国・地域 承認されている効能・効果
日本(電子添文) ・、、、、(消化性潰瘍・急性・によるもの)、・の期の病変の改善1
英国(SmPC) ・良性・に加えて、潰瘍の有無を問わない持続性の症状、重症患者におけるからの消化管出血の予防、全身麻酔前の症候群のリスクがある患者(とくにの産科患者)、の吸収不良・体液喪失の軽減、の失活の軽減4
米国(添付文書) 活動性の短期治療とその維持療法、活動性良性の短期治療、内視鏡で確認したびらん性GERD、病的過分泌状態(・・多発性腫)3

⚠️ 「」の扱いが日英で逆を向いている。 日本ではすでに起きている出血の治療が適応で、英国SmPCでは重症患者における出血の予防が適応である。米国の添付文書にはどちらの記載も無い。どちらか一方の文書だけを読んで「に使う薬」とまとめると、予防と治療のどちらの話か分からなくなる。

現在は相互作用の少なさから、いずれの国でもが第一選択になりやすい。

⭐ 胃酸と関係のない用途が1つある——/である。 ⚠️ これはガイドラインが挙げる用途であって承認された効能ではない——今回全文を確認した英国SmPC4・日本の電子添文1・米国添付文書3のいずれにもの効能・効果は無く、英国SmPCには cystitis・bladder の語自体が現れない。米国AUAガイドラインは、本剤・・・ナトリウムの4剤をベット順に並べた(優劣は含意しない)として推奨14に挙げ、推奨の強さは Option、本剤のエビデンスの質は Grade B としている9。400 mg 1日2回・3か月ので総症状・疼痛・がより有意に改善し、観察研究では1〜2年超の追跡で44〜57%が臨床的に有意な改善を報告した。有害事象の報告は無かった9。

💡 それでも Option 止まりの理由に、このノートの主題がそのまま出てくる。 同ガイドラインは、曝露例数が少ないこと(RCTを含めて計40例)と長期追跡データが不足していることに加えて、「他剤と相互作用しうること」を Option にとどめた理由として明示している9——慢性疼痛でになりやすい集団に長期間投与する薬として、由来の阻害が推奨の強さを直接押し下げている。

用法・用量

PO。日本の電子添文では・に1日800mgを朝食後と就寝前の2回に分割するのが標準で、1日量を毎食後+就寝前の4回に分割、または就寝前1回にまとめてもよい1。米国添付文書では活動性は就寝前800mgが第一選択で、維持療法は就寝前400mg、は1日1,600mgを分割(800mg 1日2回または400mg 1日4回)して12週間——つまり1,600mgは「増量の上限」ではなくの推奨用量である。病的過分泌状態では個別に調整するが通常1日2,400mgを超えない3。

⚠️ 腎機能低下では減量かの延長が要るが、刻み方は国の文書ごとに違う。 日本の電子添文は(mL/min)で4段階に分ける。

日本の電子添文の用量1
50以上 1回200mg 1日4回(6時間間隔)
30〜49 1回200mg 1日3回(8時間間隔)
5〜29 1回200mg 1日2回(12時間間隔)
0〜4 1回200mg 1日1回(24時間間隔)

英国SmPCは0〜15で1日2回、15〜30で1日3回、30〜50で1日4回、50超で通常量という別の区切りを使い、米国添付文書は高度に1回300mgを12時間ごとと記すだけでの表を持たない43。国の違う表を混ぜて1つにしない。 はで除去されるので、では透析後に投与する1。実際の用量は年齢・腎機能・適応で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

副作用

頻度 内容
高頻度 概しては良好
注意 頭痛、めまい、下痢
(日本の電子添文で0.1〜5%未満、英国SmPCで Uncommon、米国添付文書では病的過分泌状態で約4%・その他で0.3〜1%)。・増加・は日本の電子添文で0.1%未満314
重篤・まれ 可逆性の状態(高齢者・腎機能低下)、・などの血液障害、間質性腎炎、房室ブロック等の、意識障害・痙攣1

まとめ

  • 世界初の。H2受容体をに遮断する機序自体はと同一。
  • 分子内のが・などを強く阻害し、ワルファリン・フェニトイン・など多数の薬剤の血中濃度を上げる。・にはこの性質がほとんどない。
  • 同じ由来の弱いにより・が生じうる。頻度は文書により0.1〜5%未満(日本)から病的過分泌状態の約4%(米国)まで幅があるが、「0.1%未満」なのは・であってではない。
  • 相互作用の多さから、現在の臨床では第一選択にはならず、に置き換わっている。
  • 高齢者・腎機能低下では可逆性のに注意する。腎機能低下時は日本の電子添文の別の表に従ってをあける(国により刻み方が違う)。
  • 承認された効能は国で違う。は日本では治療の適応、英国SmPCでは重症患者の出血の予防が適応で、米国添付文書にはどちらも無い。
  • 胃酸とな用途として、米国AUAガイドラインが/の4剤の1つに挙げている(Option・Grade B)。相互作用の多さが、ここでも推奨を強くしない理由として名指しされている9。

出典

  1. 1.シメチジン錠200mg「クニヒロ」・シメチジン錠400mg「クニヒロ」添付文書(2024年3月改訂第1版)(医療用医薬品添付文書情報(PMDA登録)・2024)添付文書冒頭に「警告」欄が無く、禁忌は「シメチジンに対し過敏症の既往歴のある患者」のみであること。効能又は効果が「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道炎、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)」と「急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変の改善」であり、上部消化管出血は予防ではなく治療の適応であること。用法は胃潰瘍・十二指腸潰瘍で1日800 mgを2回分割が標準であること。「10. 相互作用」に「本剤は、肝薬物代謝酵素P-450を阻害する。特にCYP3A4とCYP2D6に対して強い阻害効果を有することが報告されている(外国人データ)」と明記され、併用注意薬としてワルファリン・フェニトイン・ジアゼパム・トリアゾラム・テオフィリン・リドカイン・プロプラノロール等が挙げられていること。「7.1」の腎機能障害患者の表がクレアチニンクリアランス0〜4で1回200 mg 1日1回、5〜29で1日2回、30〜49で1日3回、50以上で1日4回であること。⚠️ 「11.2 その他の副作用」の内分泌の行は女性化乳房が0.1〜5%未満の列、乳汁分泌・帯下増加・勃起障害が0.1%未満の列にあり、女性化乳房は0.1%未満ではないこと。「11.1 重大な副作用」がショック・アナフィラキシー、再生不良性貧血・汎血球減少・無顆粒球症・血小板減少、間質性腎炎・急性腎障害、皮膚粘膜眼症候群・中毒性表皮壊死融解症、肝障害、房室ブロック等の心ブロック、意識障害・痙攣の7項目であること。過量投与は血液透析で除去可能であること閲覧 2026-09-14
  2. 2.FAMOTIDINE tablet (label)(U.S. National Library of Medicine DailyMed(FDA承認添付文書)・2024)Alembic Pharmaceuticals Limited のファモチジン錠の米国添付文書。本文末尾の改訂表示が「Revised 10/2024」であることを確認した。「no antiandrogenic effects were noted」と明記され、女性化乳房は「rare cases of impotence and rare cases of gynecomastia have been reported; however, in controlled clinical trials, the incidences were not greater than those seen with placebo.」とあること(シメチジンとの対比の根拠)閲覧 2026-09-14
  3. 3.CIMETIDINE tablet, film coated (label)(U.S. National Library of Medicine DailyMed(FDA承認添付文書)・2026)Mylan Pharmaceuticals Inc.(Viatris)が販売するシメチジン錠の米国添付文書。本文末尾の改訂表示が「Revised 7/2026」であることを全文取得のうえ確認した(DailyMed の SPL 更新日は2026年7月15日、ANDA074246)。「Cimetidine has demonstrated a weak antiandrogenic effect.」と明記され、女性化乳房については「In patients being treated for pathological hypersecretory states, this occurred in about 4% of cases while in all others the incidence was 0.3% to 1% in various studies.」とあること。CYP450系を介してワルファリン型抗凝固薬・フェニトイン・プロプラノロール・ニフェジピン・クロルジアゼポキシド・ジアゼパム・三環系抗うつ薬・リドカイン・テオフィリン・メトロニダゾールの肝代謝を低下させると報告されていること。可逆性の錯乱状態(せん妄・興奮・幻覚等)が記載されていること。効能は十二指腸潰瘍の短期治療・その維持療法・良性胃潰瘍の短期治療・びらん性GERD・病的過分泌状態の5項目で、間質性膀胱炎は含まれないこと。びらん性食道炎の用量が「1,600 mg daily in divided doses (800 mg twice daily or 400 mg 4 times daily) for 12 weeks」であること、Zollinger-Ellison症候群等では通常1日2,400 mgを超えないこと、高度腎機能障害では1回300 mgを12時間ごととし血液透析の終了に合わせること。この添付文書には WARNINGS の節そのものが無く(PRECAUTIONS のみ)、全文に warning の語が0回であることも確認した閲覧 2026-09-14
  4. 4.Cimetidine 200mg Tablets - Summary of Product Characteristics (SmPC)(Medley Pharma Limited(emc/英国MHRA承認 SmPC、PL 43870/0018)・2022)英国SmPC(本文改訂日 25/10/2022)の全文を取得して確認した。4.1 の適応が米国・日本より広く、消化性潰瘍・逆流性食道炎のほか「In the prophylaxis of gastrointestinal haemorrhage from stress ulceration in seriously ill patients」「Before general anaethesia in patients thought to be at risk of acid aspiration (Mendelson's) syndrome, particularly obstetric patients during labour」「To reduce malabsorption and fluid loss in short bowel syndrome」を含むこと。cystitis・bladder の語は全文に0回で、間質性膀胱炎の適応は無いこと。4.3 の禁忌は過敏症のみであること。4.4 の腎機能障害時の用量がクレアチニンクリアランス0〜15で1回200 mg 1日2回、15〜30で1日3回、30〜50で1日4回、50超で通常量と、日本の電子添文の区分とは異なること。女性化乳房・可逆性の勃起障害の頻度区分が Uncommon(1,000分の1以上100分の1未満)であること閲覧 2026-09-14
  5. 5.RANITIDINE- ranitidine hydrochloride tablet (label)(U.S. National Library of Medicine DailyMed(FDA承認添付文書)・2012)WOCKHARDT LIMITED のラニチジン錠の米国添付文書。「Controlled studies in animals and man have shown no stimulation of any pituitary hormone by ranitidine and no antiandrogenic activity, and cimetidine-induced gynecomastia and impotence in hypersecretory patients have resolved when ranitidine has been substituted.」を全文取得のうえ確認した。⚠️ この文書には印字された「Revised」の改訂表示が無い(全文に0回)。year は DailyMed が「the label revision date included in the SPL」と定義する更新日(2012年12月12日、版2が最新)から採った。米国のラニチジン製剤は2020年に市場撤退しており、この SPL の NDC は FDA の措置により失効している閲覧 2026-09-14
  6. 6.ラニチジン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について(事務連絡)(厚生労働省医薬・生活衛生局・2019)予防的措置として分析結果が明らかになるまでの間ラニチジン塩酸塩製剤の新たな出荷を行わないよう指示したものであり、承認の停止や撤回ではないこと閲覧 2026-09-14
  7. 7.Ranitidine-containing medicinal products - referral(European Medicines Agency・2020)EU域内のラニチジン含有医薬品の販売承認を停止する措置が採られたこと閲覧 2026-09-14
  8. 8.FDA Requests Removal of All Ranitidine Products (Zantac) from the Market(U.S. Food and Drug Administration・2020)米国市場からのラニチジン製剤の撤退を要請したものであり、承認の撤回ではないこと閲覧 2026-09-14
  9. 9.Diagnosis and Treatment of Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome(American Urological Association・2022)AUAの当該ガイドラインページ(Published 2011; Amended 2014, 2022)の全文を取得して確認した。推奨14が「Amitriptyline, cimetidine, hydroxyzine, or pentosan polysulfate may be administered as oral medications (listed in alphabetical order; no hierarchy is implied)」であり、推奨の強さは Option、エビデンスの質は4剤それぞれ Grades B, B, C, and B(アルファベット順なのでシメチジンは B)であること。本文が、1件の無作為化比較試験で400 mg 1日2回・3か月投与により総症状・疼痛・夜間頻尿がプラセボより統計学的に有意に改善したこと、観察研究2件(300 mg 1日2回または200 mg 1日3回)で1年〜2年超の追跡時に44〜57%が臨床的に有意な改善を報告したこと、「No AEs were reported.」であること、それでも Option にとどめた理由を「in the context of a small total sample exposed to the drug (n=40, including the RCT), the lack of long-term follow-up data on sufficient numbers of patients, and its potential to interact with other drugs」と述べていること、また不確実性の説明の節でも曝露例数が少ない例としてシメチジンの試験を名指ししていることを確認した閲覧 2026-09-13