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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

急性・慢性尿細管間質性腎炎

Acute and chronic tubulointerstitial nephritis

臓器系
腎・泌尿器
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 N-02:尿細管間質性疾患・嚢胞性腎疾患内科学 S-21:急性尿細管間質性疾患内科学 S-22:慢性尿細管間質性疾患
鑑別疾患
急性尿細管壊死
合併症
急性腎障害
続発疾患
慢性腎臓病腎尿細管性アシドーシスFanconi症候群
治療薬
プレドニゾロンインフリキシマブリツキシマブ
原因薬剤
ジクロフェナクナプロキセンリファンピシンアモキシシリン(エス)オメプラゾールリチウムタクロリムスアロプリノールニボルマブ
原因微生物
レプトスピラレジオネラサイトメガロウイルス(CMV)
症状
悪心血尿倦怠感多尿発熱皮疹乏尿夜間頻尿
検査値
血中好酸球数尿中好酸球
画像所見
水腎症超音波エコー輝度
下位分類
逆流性腎症鎮痛薬腎症
元疾患
カドミウム中毒リチウム中毒
原因となる疾患
IgG4関連疾患

🧠 全体像:は、糸球体ではなくと間質を主座とする炎症で、蛋白尿が軽く、低下より先に・電解質異常が前面に出るのが糸球体疾患との対比軸になる。急性TINは薬剤性が最多で、によるがAKIを起こす病態であり、原因薬中止が治療の中心となる。慢性TINは、、、閉塞・逆流、代謝異常、自己免疫疾患などの持続的曝露がを積み重ねてへ進む病態で、軽度蛋白尿にもかかわらず進行することが鑑別の手掛かりになる。両者とも「原因を見つけて取り除く」ことが治療の幹であり、副腎皮質ステロイドは万能薬ではなく活動性炎症が示唆される選択例に限って検討する。

急性尿細管間質性腎炎(急性TIN)

病態と原因

急性TIN(、acute interstitial nephritis:AIN)は、多くが薬剤に対するT細胞性ので、間質へのリンパ球・との炎症を来す腎性AKIの一病型である。

flowchart TD
    A["原因薬剤・感染・自己免疫疾患への曝露"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular basement membrane (TBM)'>尿細管基底膜</span>・尿細管抗原に対する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delayed-type hypersensitivity (DTH)'>遅延型過敏反応</span>"]
    B --> C["間質へのリンパ球・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eosinophilic infiltration'>好酸球浸潤</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal tubular epithelium'>尿細管上皮</span>の炎症・浮腫"]
    D --> E["尿細管機能障害:濃縮障害・Na再吸収低下"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute kidney injury, AKI'>急性腎障害</span>(腎性AKI)"]
原因群 代表例
抗菌薬 アモキシシリンなどのβラクタム系、リファンピシン(再投与で急速発症・溶血・血小板減少を伴い得る)
NSAIDs など。様の蛋白尿を伴うことがある
など。潜伏期が数週〜数か月と長く見逃されやすい
など(irAEとしてのAIN、後述)
感染関連 レプトスピラ、、()などの直接感染
自己免疫・ 、、SLE、TINU症候群(tubulointerstitial nephritis and uveitis:間質性腎炎とぶどう膜炎を来す症候群)

💡 関連のAIN(irAE)は、投与中いつでも発症し得て他のirAEを伴うこともある。まずICIを中止し、高グレードでは早期に副腎皮質ステロイドを導入するのが基本方針で、腫瘍側の必要性が高く・の場合はなどの生物学的製剤を追加する報告が増えている。ICI再開は腎機能がグレード1/ベースラインまで回復し、ステロイドを使用している場合は換算10 mg/日未満に減量できてから個別に検討する。

臨床像

  • 発熱、皮疹、好酸球増多からなるが揃うのは全体の1割未満で、多くは倦怠感・悪心など非特異的症状か無症候性の上昇のみで気づかれる。
  • 尿所見は、、軽度〜中等度蛋白尿、血尿で、感染症のようなだが尿培養は陰性である。
  • ⚠️ 同じくAKIを起こす(ATN)とは、尿沈渣で切り分ける——ATNでは虚血・毒性で管腔へ脱落したとがみられるのに対し、AINではとが手がかりになる1。が「の中止」という別方向を向くので、AKIをまとめてATNとして片付けない。
  • 由来のAINでは、に(病変)が合併することがある。

⚠️ 三徴のうち発熱は約3〜4割、皮疹は2割程度、好酸球増多は3割程度にしか出現せず、三徴が揃わないことを理由にAINを除外してはならない。

診断

  • ・感染歴・の既往を丁寧に聴取することが最も重要な診断ステップである。
  • は感度・特異度ともに低く、スクリーニングとして推奨されない。 通常のより高感度なを用いても偽陽性が多く、陰性でもAINを除外できない。
  • 診断が不明でに影響する例、腎毒性のあるを中止しても腎機能低下が遷延する例では腎生検を検討する。病理ではびまん性の・(好酸球を伴うことが多い)を認める。

治療

原因薬の中止と原因(感染・自己免疫疾患)の治療が基盤である。副腎皮質ステロイドは全例には用いず、中止後も腎機能が改善しない例、生検で活動性炎症が確認された例で個別に検討する。2025年のでは、複数のでステロイド開始が早いほど腎機能回復が良好な傾向が報告されている一方、開始時期が転帰に影響したのは検討した研究の一部にとどまり、投与量・期間・開始時期は研究間でばらつきが大きく、確立された標準プロトコルはない。使用する場合はを用い、漫然と長期継続せず反応をみながらする。

⭐ 「をまず中止し、反応を見てから生検・ステロイドを検討する」という順序が急性TIN管理の骨格であり、診断確定前に一律でステロイドを開始するものではない。

慢性尿細管間質性腎炎(慢性TIN)

病態と原因

慢性TIN(、chronic tubulointerstitial nephritis:CTIN)は、持続的な尿細管傷害がととして蓄積し、のに至る病態群である。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='analgesic'>鎮痛薬</span>長期使用・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lithium'>リチウム</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heavy metals'>重金属</span>・尿路閉塞逆流・代謝異常・自己免疫疾患などの慢性曝露"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal tubular epithelium'>尿細管上皮</span>の持続的傷害と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial inflammation'>間質炎症</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular atrophy and interstitial fibrosis'>尿細管萎縮・間質線維化</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaired urinary concentration'>尿濃縮障害</span>・電解質異常が先行:多尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nocturia'>夜間頻尿</span>・RTA・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fanconi syndrome'>Fanconi症候群</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular filtration rate, GFR'>糸球体濾過量</span>の緩徐な低下(蛋白尿は軽度にとどまる)"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='end-stage renal failure'>末期腎不全</span>へ進行し得る"]
    E --> F
原因群 代表例
に代表される(等を含む)の長期大量使用による。非系単独の同等リスクは今も確立していないが関与しうるとされる。多くの国での以降には大きく低下しており(スイスの剖検研究ではが1980年の約3%から2000年前後には0.2%へ低下)2、現在では「世界的に最多の慢性TIN原因」とは言えない
薬剤・毒物 の長期使用、などの、・などの
代謝異常 高Ca血症、慢性低K血症、・(治療にはなどによる尿酸低下が用いられる)
免疫・ 、、SLE、関連疾患(-related disease:高値と特徴的なを示す全身性線維炎症性疾患)、
尿路 慢性閉塞、、反復性腎盂腎炎
遺伝性 (ADTKD)など

💡 関連腎疾患は診断確定後、まず副腎皮質ステロイドで導入するが・ステロイド抵抗例が少なくなく、そうした例ではリツキシマブを用いた報告が蓄積している。

臨床像

  • 糸球体疾患と異なり蛋白尿は軽度にとどまりやすく、低下より先に(多尿・・口渇)が前面に出る。
  • 障害では、では(の複合的な再吸収障害でブドウ糖尿・・などを来す病態)を来し得る。
  • 乏尿はまで典型的ではなく、緩徐な経過のため発見が遅れやすい。
  • 画像では小さくの萎縮腎が典型だが、では水腎症、関連や遺伝性疾患では嚢胞を伴うなど例外がある。

診断

  • 薬剤歴(・・)、・環境曝露(など)、尿路閉塞・逆流の既往、代謝異常、自己免疫疾患の有無を系統的に聴取する。
  • 尿検査では軽度蛋白尿・・濃縮障害を確認し、電解質・でRTAやのパターンを評価する。
  • でサイズ・・閉塞・嚢胞の有無を評価する。
  • 原因不明でに影響する例、活動性炎症の有無が問題になる例(関連疾患やなど)に限り腎生検を検討する。

治療

原因薬の中止、毒物曝露の除去、尿路閉塞の解除、感染・代謝異常・自己免疫疾患の治療など原因除去が治療の中心である。、があればRAS阻害薬、適応があれば阻害薬を用いてとしての腎保護を並行して行う。慢性化した線維化そのものに副腎皮質ステロイドを一律投与しても効果は乏しく、病理・から活動性の免疫性間質炎が示される選択例(関連疾患、、など)に限って専門的に判断する。

急性TINと慢性TINの比較

項目 急性TIN 慢性TIN
数日〜数週の急性経過 数か月〜数年かけた緩徐進行
代表的原因 薬剤性(抗菌薬・・・ICI)、感染、TINU症候群 使用、、、閉塞・逆流、代謝異常、関連疾患
尿所見 、、軽度〜中等度蛋白尿 軽度蛋白尿、、濃縮障害が主体
先行する機能異常 が前面 ・電解質異常が低下に先行
画像所見 または正常大のことが多い 萎縮した腎が典型(例外あり)
可逆性 原因除去+早期対応で部分〜完全回復し得る 線維化が主体で非可逆的なことが多く、として進行し得る

まとめ

  • TINは糸球体ではなく尿細管・間質を主座とする腎障害で、蛋白尿が軽く低下に先立ち・電解質異常が出やすいことが糸球体疾患との鑑別軸になる。
  • 急性TINは薬剤性(抗菌薬・・・など)が最多の原因で、発熱・皮疹・好酸球増多のが揃うのは1割未満にとどまる。
  • は感度・特異度が低く診断に頼れない。診断不明・腎機能低下遷延例で腎生検を検討し、ステロイドは全例ではなく活動性炎症が示唆される選択例に、可能なら早期に個別判断で用いる。
  • 慢性TINは使用、、、閉塞・逆流、代謝異常、関連疾患などの持続曝露がとしてへ進む病態で、原因除去と腎保護が治療の基盤である。
  • 関連AINはirAEとして増加しており、とステロイドを基本に、抵抗例ではなどの生物学的製剤が検討される。

出典

  1. 1.Acute Renal Tubular Necrosis(StatPearls Publishing・2025)NCBIのライブページ(2025年8月8日更新)で、尿検査(尿沈渣の鏡検)が急性尿細管壊死を腎前性AKIおよび急性間質性腎炎などの他のAKI原因から鑑別するのに用いられること、腎前性では沈渣が正常か硝子円柱にとどまるのに対し急性尿細管壊死ではしばしば泥状褐色円柱または尿細管上皮細胞がみられ、これは虚血性・毒性傷害で尿細管細胞が管腔へ脱落することによることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Obituary to analgesic nephropathy--an autopsy study(Nephrology Dialysis Transplantation・2006)バーゼルの剖検研究で、古典的鎮痛薬腎症の有病率が1980年の約3%から2000〜2002年の0.2%へ連続的に低下し、フェナセチンの市場撤退から約20年後には典型的な鎮痛薬腎症がほぼ消失したことをアブストラクトで確認した(全文は未読)閲覧 2026-08-20