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Symptoms · Published

多尿

Polyuria

臓器系
腎・泌尿器内分泌・代謝
科目
Internal MedicineAnesthesiology
トピック
内科学 S-09:尿崩症と抗利尿不適合症候群内科学 S-22:慢性尿細管間質性疾患内科学 E-04:カルシウム代謝異常麻酔科学 B-03:糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態
関連疾患
1型糖尿病2型糖尿病Fanconi症候群ネフロン癆下垂体機能低下症急性・慢性尿細管間質性腎炎原発性アルドステロン症原発性副甲状腺機能亢進症多胎妊娠多発性骨髄腫単一遺伝子糖尿病(MODY・新生児糖尿病)糖尿病性ケトアシドーシス・高血糖高浸透圧症候群頭蓋咽頭腫尿崩症妊娠糖尿病
起因薬
エルトゥグリフロジンエンパグリフロジンカナグリフロジンソタグリフロジンダパグリフロジントルバプタン

🧠 全体像:多尿の鑑別は尿浸透圧を測った瞬間に半分決まる。薄い尿が大量に出ているなら水そのものが排泄されている()、濃い尿が大量に出ているなら溶質が水を引きずり出している()。この分岐を飛ばして「か糖尿病か」と考え始めると、両方あり得る症例で迷う。分岐が決まってから、ならAVPが足りないのか・効かないのか・そもそも要らないのかなら何が溶質なのかを問う。

多尿と頻尿は別のもの

⚠️ 患者はどちらも「トイレが近い」と訴える。最初の一手は、1日尿量と1回排尿量を分けて聞くことである。

多尿 頻尿
定義 1日尿量が多い(成人でおおむね3 L/日超50 mL/kg/日超 1回量は少なく、排尿回数が多い
障害の場 腎の水・溶質処理 膀胱の機能と刺激
主な病態 、高血糖、電解質異常、薬剤 感染、、腫瘍
初期検査 24時間尿量と尿浸透圧 尿検査・培養、

💡 が両者を一度に分ける。 1回量が毎回200 mL以上で総量も多ければ多尿、1回50〜100 mLで回数だけ多ければ頻尿である。夜間に偏るならとして別に扱う。

最初の分岐:水利尿か浸透圧利尿か

まず3 L/日超を実測で確かめ、そのうえで尿浸透圧を見る。

尿浸透圧 低い(おおむね300 mOsm/kg未満では著明に低い) 保たれる〜高い(300 mOsm/kg前後以上)
1日の溶質排泄量 正常範囲 1000 mOsm/日を超える
出ているもの ほぼ水 溶質と、それに引かれた水
代表 高血糖、尿素、、造影剤、高張栄養

⚠️ 両者は併存しうる。 高血糖のあるの多尿(貯留尿素の排泄+)などでは尿浸透圧が中間値になる。「どちらか一方」に決めきれない値のときは、溶質排泄量を計算して切り分ける。

水利尿:AVP軸の3つの異常

⭐ 薄い尿が大量に出る病態は3つしかない。足りない・効かない・要らないである。

(AVP欠乏) (AVP抵抗性)
障害部位 視床下部・ ・AQP2) ・行動
血清Na・ 〜高値 〜高値 正常低値〜低値
への反応 尿浸透圧が明確に上がる ほとんど上がらない 判定が紛らわしい
主な原因 下垂体手術・外傷、腫瘍、浸潤性疾患、特発性 、高Ca血症、低K血症、遺伝性、 、口渇の習慣化

血清Naが最初の手掛かりになる。 水を出しすぎている病態()では飲水が追いつかない分だけNaが上がり、水を飲みすぎている病態()ではNaが下がる。同じ多尿でも向きが逆である。

💡 鑑別の順序は「まず二次性のを潰す」。 、高カルシウム血症、低カリウム血症、は頻度が高く、原因を是正すれば戻りうる。高価なの前に薬剤歴と電解質を確認する。

確定検査

  • :飲水を止めて尿浸透圧の変化を追い、最後にを投与する。尿浸透圧がさらに50%以上上がれば中枢性、ほとんど反応しなければ腎性と判定する。
  • ⚠️ 部分型のの鑑別で精度が低い。慢性のでは腎髄質のが洗い流されており、AVPが正常でも尿を十分濃縮できないためである。
  • ⭐ 現在はを用いた検査が第一選択である。またはで刺激したは、より高い精度で3者を分ける。では刺激後がおよそ4.9 pmol/L以下を示唆する。
  • ⚠️ いずれの検査も重度脱水と高Na血症を起こしうるので、入院・監視下で行い、体重と血清Naを追う。

浸透圧利尿:何が溶質か

溶質 典型的な状況
ブドウ糖 高血糖を超えるとが始まる。SGLT2阻害薬でも同じことが起こる
尿素 高蛋白の経管・、大量のステロイド、消化管出血の吸収、AKIの、尿路閉塞の解除後
・造影剤・高張輸液 医原性
Na・水 利尿薬、副腎不全、

⚠️ 糖尿病では多尿が「診断の入口」であると同時に「破綻の合図」でもある。 口渇と多尿が急激に強まり、脱水・意識障害が加わればを疑う。この段階では飲水では追いつかず、輸液が必要になる。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["トイレが近いという訴え"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bladder diary'>排尿日誌</span>で1日尿量と1回排尿量を分ける"]
    B --> C{"1日尿量が3 L超か"}
    C -->|"いいえ"| D["頻尿として膀胱側を評価"]
    C -->|"はい"| E["尿浸透圧と血糖・血清Na・Ca・K・腎機能を測る"]
    E --> F{"尿浸透圧は低いか"}
    F -->|"高い・保たれる"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osmotic diuresis'>浸透圧利尿</span><br>血糖・尿素・薬剤・輸液内容を確認"]
    F -->|"低い"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water diuresis'>水利尿</span><br>血清Naの向きを見る"]
    H --> I{"薬剤・高Ca・低Kなど是正できる原因があるか"}
    I -->|"あり"| J["原因を是正して再評価"]
    I -->|"なし"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copeptin stimulation test'>コペプチン刺激試験</span><br>(施行不能なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water deprivation test'>水制限試験</span>)"]
    K --> L["中枢性・腎性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary polydipsia'>原発性多飲</span>を確定"]

見落とすと危険な場面

⚠️ 口渇に応じて飲めない患者では、多尿は短時間で致死的な高Na血症になる。 意識障害、乳幼児、鎮静中、術後、そのものが障害されたでは、飲水という代償が働かない。下垂体手術後の多尿は特に注意し、尿量・体重・血清Naを計画的に追う。

⚠️ 逆に、で治療中の患者が自由に飲水するとの低Na血症に振れる。多尿の治療は「尿量をゼロにすること」ではなく、必要最小量で症状を抑えることである。

まとめ

  • 多尿は1日尿量(3 L/日超)、頻尿は1回量と回数。訴えは同じなので、まず分けて聞く。
  • 尿浸透圧でに分けるのが最初の分岐。溶質排泄量が中間例を助ける。
  • は「AVPが足りない・効かない・要らない」の3つ。血清Naの向きが手掛かりになる。
  • 、高Ca血症、低K血症など是正できるの原因を、の前に潰す。
  • は部分型との鑑別に弱い。が現行の第一選択。
  • では溶質を特定する。高血糖のほか、尿素・・輸液内容を確認する。
  • 飲めない患者の多尿は高Na血症へ、飲みすぎる患者の治療は低Na血症へ振れる。