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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 疾患

2型糖尿病

Type 2 diabetes mellitus

別名
T2DT2DM
臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal MedicinePathophysiology
トピック
内科学 E-10:血糖異常の原因と診断内科学 E-11:糖尿病患者と合併症の管理内科学 L-20:糖尿病の分類と診断内科学 L-21:糖尿病の食事療法と非インスリン薬病態生理学 I-9:2型糖尿病の発症機序
上位概念
糖尿病
鑑別疾患
1型糖尿病単一遺伝子糖尿病(MODY・新生児糖尿病)低血糖(非糖尿病性)妊娠糖尿病
合併症
糖尿病性ケトアシドーシス・高血糖高浸透圧症候群糖尿病性腎症
続発疾患
急性冠症候群慢性心不全慢性腎臓病カンジダ症丹毒・蜂窩織炎脳梗塞外耳炎末梢動脈疾患末梢神経絞扼症候群結核アテローム性動脈硬化症脂質異常症慢性冠症候群(安定狭心症)壊死性軟部組織感染症非アルコール性脂肪肝疾患
関連疾患
急性膵炎高血圧症歯周炎
治療薬
メトホルミンエンパグリフロジンリラグルチドグラルギンインスリンアカルボースカナグリフロジンコレセベラムダパグリフロジンデュラグルチドエルトゥグリフロジンエクセナチドグリクラジドグリメピリドグリピジドリナグリプチンピオグリタゾンレパグリニドセマグルチドシタグリプチンティルゼパチドビルダグリプチンサキサグリプチンアログリプチンクロルプロパミド
原因薬剤
アトルバスタチンオランザピンロスバスタチンシンバスタチン
症状
しびれ筋力低下倦怠感灼熱痛多尿体重減少霧視腹痛嘔吐痙攣
検査値
アルブミン尿血糖高血糖Neuropad
原因となる疾患
クッシング症候群ヘモクロマトーシス多嚢胞性卵巣症候群肥満症閉塞性睡眠時無呼吸慢性膵炎膵癌
適応薬
アスパルトインスリンアログリプチングリクラジドグリピジドグリメピリドグルリシンクロルプロパミドサキサグリプチンシタグリプチンビルダグリプチンリナグリプチン

🧠 全体像:2型糖尿病は、インスリン抵抗性に対してが十分なを維持できなくなり、慢性高血糖を来す進行性疾患である。治療は「血糖値を下げる」だけでなく、体重、低血糖、、心不全、、本人の負担を同時に評価し、合併症を早期発見して臓器予後を守る。

定義

2型糖尿病は、インスリン抵抗性と進行性を中心とする糖尿病である。成人に多いが、小児・若年者にも発症し、肥満を伴わない例もある。「成人発症」「」という呼び方だけで病型を決めない。

診断後も、急速な体重減少、、自己免疫疾患、早期の薬効低下、低Cペプチドがあれば1型糖尿病を再評価する。若年発症、の家族歴、自己抗体陰性、保たれたCペプチド、腎・膵の特徴的異常があればを考える。

病態

不足、睡眠、加齢、薬剤、社会環境などが、筋・肝・脂肪組織のインスリン作用を弱める。初期にはβ細胞が分泌を増やして血糖を保つが、代償が破綻すると、続いてが上昇する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic predisposition'>遺伝素因</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visceral fat'>内臓脂肪</span>+環境因子"] --> B["筋・肝・脂肪組織のインスリン抵抗性"]
    B --> C["代償性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulin secretion'>インスリン分泌</span>亢進"]
    C --> D["β細胞への持続的負荷"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucotoxicity'>糖毒性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipotoxicity'>脂肪毒性</span>・炎症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative stress'>酸化ストレス</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-cell dysfunction'>β細胞機能不全</span>が進行"]
    F --> G["持続性高血糖"]
    G --> E
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microvascular complications'>細小血管障害</span>"]
    B --> I["高血圧・脂質異常・動脈硬化と集積"]
    I --> J["心血管・腎リスク上昇"]
臓器・系 主な異常 血糖への影響
初期分泌、追加分泌、分泌量が進行性に低下 食後・
骨格筋 糖取り込みとが低下
肝臓 糖新生・が十分に抑制されない
脂肪組織 抑制が弱まり、が増える 肝・筋の抵抗性とを増幅
・腸管 グルカゴン抑制不良、低下 増加、食後分泌不足
腎臓 糖再吸収が持続する 高血糖を維持

💡 残存インスリンは通常、をある程度抑える。このためが目立ちやすいが、感染、絶食、インスリン不足、SGLT2阻害薬などを背景に2型でもを起こす。

臨床像

多くは無症候で、健診、感染、心血管疾患、を契機に見つかる。症状の強さは血糖値、上昇速度、脱水、に左右される。

病態 主な症状・所見
高血糖・ 口渇、、多尿、夜間尿、脱水、
体重減少、筋力低下。強い場合は著明なインスリン不足を疑う
易感染・組織障害 皮膚・尿路・性器感染、創傷治癒遅延、
眼・神経 、足の
嘔吐、腹痛、深い呼吸、著明な脱水、意識変容、局在神経症状、痙攣

、高血圧、はインスリン抵抗性を示唆するが、いずれも必須ではない。診断時に、腎臓病、神経障害、冠動脈疾患、がすでに存在し得る。

診断

糖尿病の確認

非妊娠者では、標準化された検査で次のいずれかを満たせば糖尿病域である。

検査 糖尿病域
HbA1c 6.5%以上
7.0 mmol/L(126 mg/dL)以上
75 g2時間値 11.1 mmol/L(200 mg/dL)以上
典型的高血糖症状またはを伴い11.1 mmol/L以上
flowchart TD
    A["症状・リスク・スクリーニング異常"] --> B["標準化したHbA1c・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fasting blood glucose'>空腹時血糖</span>・75 g<span class='jp-term jp-term-diagram' title='challenge test'>負荷試験</span>"]
    B --> C{"典型症状/クリーゼ+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='random plasma glucose'>随時血糖</span>11.1 mmol/L以上か"}
    C -->|"はい"| D["糖尿病と診断し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='timing'>緊急度</span>を評価"]
    C -->|"いいえ"| E["同一検体の別検査または別日に再検"]
    E --> F{"2つの異常結果があるか"}
    F -->|"はい"| G["糖尿病と診断"]
    F -->|"不一致"| H["閾値を超えた検査を速やかに再検"]
    G --> I["病型・合併症・心腎リスクを評価"]

明白な高血糖がなければ、同一検体の異なる2検査または別日の再検査による2つの異常結果で確証する。自己測定血糖やは管理には有用だが、無症候者の確定診断は標準化された静脈血漿検査とHbA1cで行う。

妊娠、・輸血、溶血、透析、、G6PD欠損、一部のなどではHbA1cが実血糖と乖離するため、基準を優先する。

病型と初期評価

  • 発症速度、体重変化、ケトン体、家族歴、膵疾患、内分泌疾患、原因薬剤を確認する。
  • 1型糖尿病が疑わしければGAD抗体を第一に、必要に応じ、ZnT8抗体などを追加する。
  • Cペプチドは同時血糖、食事、腎機能、とともに解釈する。進行した2型糖尿病では低値になり得る。
  • 診断時から血圧、脂質、体重、喫煙、eGFR、尿アルブミン、眼底、神経・足、心血管疾患を評価する。

治療目標

多くの非妊娠成人ではHbA1c 7%未満を出発点とする。健康状態が良好で低血糖リスクと治療負担が小さければ6.5%未満などの厳格な目標を検討できる。一方、重症低血糖、、認知・機能障害、重い併存症、限られた予後、治療負担が利益を上回る場合は緩和する。

目標はHbA1cだけではない。低血糖を避け、体重、血圧、脂質、腎機能、喫煙、生活の質、本人の優先事項も追跡する。達成のために低血糖を起こしている場合は、インスリンやなどを減量・変更し、過剰治療を解く。

治療

生活・自己管理支援

・支援を診断時、治療変更時、目標未達時、生活上の転機に提供する。単一の「糖尿病食」を強制せず、文化、費用、嗜好、腎機能、薬剤、低血糖リスクに合わせる。

  • 野菜、豆、、魚、不飽和脂肪を基盤とし、砂糖入り飲料、穀物、過度の加工食品を減らす。
  • 体重減少が必要なら、維持可能なエネルギー不足を作り、薬物療法や適格例のも選択肢に含める。大きな体重減少により寛解へ至る例があるが、再発を見込んで追跡を続ける。
  • 多くの成人では中等度以上のを週150分以上、週3日以上に分け、2日を超えて連続して休まないことを目標にする。筋力運動と、30分ごとの長い座位の中断も組み合わせる。
  • 禁煙、十分な睡眠、、歯科・足のを扱う。

薬剤選択

薬物療法は原則として診断時から生活支援と並行して開始する。HbA1cだけで固定順序を作らず、心腎疾患、体重、低血糖、腎機能、副作用、費用、、本人の希望から選ぶ。

flowchart TD
    A["2型糖尿病を診断"] --> B["高血糖の重症度・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catabolism'>異化</span>症状・クリーゼを確認"]
    B -->|"重症/1型疑い"| C["インスリンを優先し病型を再評価"]
    B -->|"安定"| D["ASCVD・心不全・CKD・肥満を評価"]
    D --> E["ASCVD/高リスク:利益が示されたGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬"]
    D --> F["心不全:利益が示されたSGLT2阻害薬"]
    D --> G["CKD:腎利益が示されたSGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬"]
    D --> H["強い体重減少目標:GLP-1関連薬を優先検討"]
    D --> I["上記なし:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metformin'>メトホルミン</span>を含め個別選択"]
    C --> J["効果・低血糖・体重・腎機能・負担を再評価"]
    E --> J
    F --> J
    G --> J
    H --> J
    I --> J
    J --> K{"個別目標を達成したか"}
    K -->|"いいえ"| L["作用機序の異なる薬を追加・治療強化"]
    K -->|"はい"| M["臓器保護と安全性を継続評価"]
薬剤群 主な利点 主な注意点
有効、安価、低血糖が少ない、 消化器症状、ビタミンB12低下。eGFRと急性低酸素・循環不全を確認
SGLT2阻害薬 心不全・CKD進展抑制、一部で心血管利益、体重・血圧低下 性器感染、脱水、。急性疾患、絶食、手術時の計画が必要。手術前は原則3〜4日前から
GLP-1受容体作動薬・ 強い血糖・体重低下、一部で心血管・腎利益 悪心・嘔吐、。重いや急速な血糖改善時のに注意
低血糖が少なく 効果は中等度。GLP-1関連薬と併用せず、一部薬は心不全に注意
、比較的安価 低血糖、体重増加。腎機能低下・不規則な食事で危険が増す
インスリン抵抗性改善、単独低血糖が少ない 浮腫、体重増加、心不全、骨折
を低下、単独低血糖が少ない 腹部膨満。併用薬による低血糖時はショ糖でなくブドウ糖を使う
インスリン 最も強力で、重症高血糖・状態・クリーゼに必須 低血糖、体重増加、注射負担。開始後も心腎保護薬の必要性を別に評価

ASCVDまたはその高リスク、心不全、CKDでは、臓器利益が示されたSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を、追加の血糖低下が必要か、を使用中かだけに左右されず組み込む。CKDではeGFRとを確認し、SGLT2阻害薬の血糖低下作用が弱くなる腎機能域でも心腎保護の適応を別に判断する。

肥満を伴う症候性のでは、心不全症状・イベントへの利益が示されたGLP-1受容体作動薬またはも、HbA1cとは独立して治療計画に組み込む。

著しい高血糖、口渇・多尿と体重減少、、DKA/HHS、1型糖尿病の疑いではインスリンを優先する。重症高血糖がなく注射薬が必要なら、体重・心血管利益とを踏まえGLP-1関連薬を先に選ぶことが多い。

低血糖と高血糖緊急症

低血糖

血糖70 mg/dL未満は速やかな対処が必要で、54 mg/dL未満は臨床的に重大である。数値を問わず、認知・身体機能が低下して他者の介助を要する場合は重症低血糖とする。

  • 安全に嚥下できれば、ブドウ糖など糖質15 g前後を摂り、15分後に再測定して必要なら反復する。
  • 嚥下できない、痙攣、意識障害がある場合は、周囲がグルカゴンを投与して救急要請する。医療下ではを用いる。
  • 回復後に食事欠食、運動、アルコール、腎機能低下、インスリン・の過量を見直す。重症低血糖リスクがある患者と家族へグルカゴンを準備・教育する。

DKAとHHS

項目
ケトン体増加と代謝性アシドーシス 高度高血糖、、著明な脱水
発症 比較的急速 数日から数週かけて進むことが多い
主な所見 悪心、嘔吐、腹痛、深い呼吸、 意識変容、局在神経症状、痙攣、循環不全
2型糖尿病との関係 2型でも起こる。SGLT2阻害薬では血糖が高くない場合がある 2型に多いが病型だけで決めない

どちらも救急疾患であり、家庭で補正を続けない。治療は気道・呼吸・循環の評価、、Kを含む電解質管理、インスリン、誘因治療を並行する。Kが著しく低い場合は先に補正し、DKAでは血糖が改善してもが解消するまでインスリンを継続する。HHSでは急速な浸透圧低下を避ける。

⚠️ SGLT2阻害薬使用中は、悪心、嘔吐、腹痛、、強い感があれば血糖が軽度でもケトン体を確認し、薬を中止して早急に医療評価を受ける。絶食、急性疾患、脱水、手術前には事前の計画を立てる。

合併症スクリーニング

領域 2型糖尿病での基本評価 異常時の要点
網膜 診断時に。その後は原則年1回 正常所見と良好な血糖が続けば1〜2年ごとを検討。進行例・妊娠では頻回化
腎臓 診断時から少なくとも年1回、UACRとeGFR CKDでは病期に応じ年1〜4回以上。持続性を確認し、心腎保護治療へ
末梢神経 診断時から少なくとも年1回、症状、温痛覚、振動覚を評価 痛みだけでなく感覚消失を探し、他原因も除外
少なくとも年1回、皮膚・変形・10 g・他の感覚検査・動脈拍動 感覚消失、既往潰瘍・切断、PADでは毎回観察し、潰瘍・感染・虚血は緊急紹介
心血管 診断時と継続的に血圧、脂質、喫煙、ASCVD、心不全、PADを評価 無症候者の冠動脈検査を一律に行わず、症状・所見と治療を変える可能性で判断

高血圧かつがあればACE阻害薬またはARBを最大量まで用い、両者を併用しない。T2D+CKDではSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、適格例のを、eGFR、UACR、K、心血管リスクに応じて組み合わせる。

ASCVDのではと脂質・を行う。のアスピリンは糖尿病だけを理由に一律投与せず、心血管利益と出血リスクを比較する。

継続管理

  • HbA1c、自己測定または、低血糖、体重、血圧、脂質、腎機能を、目標と治療変更に応じて再評価する。
  • 薬剤追加だけでなく、服薬可能性、注射手技、費用、食料・住居、抑うつ、、健康リテラシーを確認する。
  • 急性疾患時に、脱水を避け、血糖・必要時ケトン体を測定し、どの薬を休止し、いつ受診するかを事前に共有する。
  • 数値が改善した後も、心腎保護、合併症スクリーニング、過剰治療の見直しを続ける。

まとめ

  • 2型糖尿病は、インスリン抵抗性と進行性が相互に増幅する疾患である。
  • 診断はHbA1c、、75 g、症候性ので行い、明白な高血糖がなければ2つ目の異常結果で確証する。
  • 多くの成人ではHbA1c 7%未満を出発点とするが、低血糖、機能、併存症、予後、治療負担で個別化する。
  • 薬剤は固定順序ではなく、ASCVD、心不全、CKD、体重、低血糖、腎機能、本人の希望から選ぶ。
  • 2型でもDKAは起こり、HHS、重症低血糖とともに迅速な救急対応が必要である。
  • 診断時から眼、UACR・eGFR、神経・足、血圧・脂質・心血管リスクを定期評価する。