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Drug Atlas · B19 Antidiabetics / 糖尿病薬 · 必修

クロルプロパミド

chlorpropamide

分類
Antidiabetics / 糖尿病薬
商品名(EU)
Diabinese
科目
Pharmacology
トピック
B19: Oral antidiabetics
承認適応
2型糖尿病
禁忌疾患
1型糖尿病糖尿病性ケトアシドーシス・高血糖高浸透圧症候群
副作用
ジスルフィラム様反応めまい皮疹掻痒黄疸光線過敏
監視検査値
血糖
影響検査値
低血糖低ナトリウム血症
原因となる疾患
無顆粒球症

🧠 全体像は第一世代の代表で、半減期約36時間というSU薬の中で突出した長さが、効果の持続と重篤な遷延性低血糖という同じコインの裏表を生む。もう一つの顔は、SIADH様のという、第二世代SU薬にはほとんど見られない2つの副作用——ただしこの機序は、同じ「」を起こすNMTT側鎖系()とは全く別物であり、混同しないことが学習の要点になる。

薬効群の中での位置づけ

世代 代表薬 半減期 ・低Na血症
第一世代 約36時間(SU薬中最長) 報告が多い(本剤の特徴)
第二世代 数時間程度 いずれも頻度は低い

「第一世代=古い薬」ではなく「第一世代=半減期が長く副作用プロファイルが特殊」という軸で覚える。 はトルブタミドの約6倍とされ、緩徐な排泄と有意な代謝失活を欠くことが長い作用持続の背景にある。第二世代への切り替えが進んだのは、低血糖の遷延・という本剤特有のリスクを避けるためでもある。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chlorpropamide'>クロルプロパミド</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic beta cell'>膵β細胞</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfonylurea receptor (SUR)'>スルホニル尿素受容体</span>(SUR1)に結合"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP-sensitive potassium channel'>ATP感受性Kチャネル</span>を閉鎖"]
    B --> C["細胞膜が脱分極"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated calcium channel'>電位依存性Caチャネル</span>が開口しCa流入"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulin secretion'>インスリン分泌</span>が促進"]
    F["半減期が約36時間と長い"] --> G["効果は持続するが<br>低血糖も遷延しやすい"]
    H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal collecting duct'>腎集合管</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasopressin'>バソプレシン</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='V2 receptor'>V2受容体</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensitization'>増感</span><br>(AVP分泌自体は増えない)"] --> I["水の再吸収が増加<br>→SIADH様の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyponatremia'>低ナトリウム血症</span>"]
    J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetaldehyde'>アセトアルデヒド</span>代謝を<br>阻害しうる(機序の詳細は不明瞭)"] --> K["飲酒時に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disulfiram-like reaction'>ジスルフィラム様反応</span>"]

💡 は「厳密にはSIADHではない」という点が学習上のひっかけになる。 血漿AVP濃度は上昇せず、そのものがされることでが亢進する腎性のであり、臨床像(・尿浸透圧上昇)はSIADHと区別がつかないが機序は異なる1。または、NMTT側鎖系のようにALDH阻害機序が的に詳しく解析されているわけではなく、報告の厚みも症例レベルにとどまる2

適応

領域 使いどころ
内分泌・代謝 ・運動療法の補助としての2型糖尿病

用法・用量

初期量は1日250mgを朝食時に単回投与する(高齢者・・腎肝機能低下例では1日100〜125mgから開始)。負荷投与は不要かつ推奨されない。血中濃度が安定する5〜7日後を目安に、3〜5日間隔で1回50〜125mgずつ増減して調整する。は多くの患者で1日250mg程度、重症例で1日500mgを要することがあるが、1日750mgを超えるは避ける(500mgに完全奏功しない例が高用量で奏功することは通常ない)3

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤成分への過敏症、1型糖尿病・(インスリンで治療すべき病態)
  • ⚠️ 「心血管死亡リスク増加に関する特別:UGDP試験でトルブタミド投与群の心血管死亡が単独群の約2.5倍であったことを根拠に、作用機序・化学構造が近いクラス全体に適用されるではなく、の項の冒頭に置かれた一区分である3
  • 半減期が長いため低血糖が遷延しやすく、発現した場合は少なくとも3〜5日間の頻回な補食・経過観察を要し、入院・が必要になることもある
  • 高齢者は低血糖・のいずれも来しやすく、腎機能・を踏まえて慎重投与する
  • ミコナゾールとの併用で重篤な低血糖が報告されている

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心(5%未満)、消化器症状、めまい、頭痛
掻痒(3%未満)、皮疹・蕁麻疹、・遅発性皮膚
頻度不明・重篤 遷延性低血糖(昏睡に至りうる)、胆汁うっ滞性黄疸、肝性・溶血性貧血・(稀)、SIADH様の

⚠️ 「特別」とを取り違えない。 の添付文書にはの項目自体が存在しないの項の冒頭に「心血管死亡リスク増加に関する特別」が大文字の小見出しで置かれているだけであり、これは枠組みで囲まれたではない3は相互作用の項に、SIADH様のは副作用の項の内分泌反応にそれぞれ記載される。目立つ体裁のではないという点で、NMTT側鎖系()と同じく、本剤もを持たない薬である。

まとめ

  • 第一世代。半減期約36時間とSU薬中最長で、効果の持続と低血糖の遷延という同じ特性の裏表を持つ。
  • とSIADH様のは第二世代SU薬より頻度が高いが、機序はNMTT側鎖系()とは別物——ALDH阻害の詳細は不明瞭で、による腎性機序(真のSIADHではない)である。
  • は無い。 の項の冒頭に置かれた「心血管死亡リスク増加に関する特別」(UGDP試験に基づき、クラス全体に適用)をと取り違えない。現行のなどでも同じ内容は・注意の一として扱われている。
  • 1型糖尿病・には禁忌。高齢者・腎肝機能低下例では低用量から開始し、低血糖・の両方を警戒する。

出典

  1. 1.DIABINESE (chlorpropamide) tablets prescribing information(FDA(Pfizer Labs添付文書)・2008)枠組み警告の項目自体が存在せず、「心血管死亡リスク増加に関する特別警告」は警告の項の冒頭に置かれた一区分にすぎないこと(UGDP試験でトルブタミド群の心血管死亡が食事療法単独群の約2.5倍、クラス全体に適用されるとされる)、アルコール摂取によるジスルフィラム様反応が相互作用の項に、SIADH様の低ナトリウム血症が副作用の項の内分泌反応にそれぞれ記載されること、半減期が約36時間と長く低血糖が遷延しやすいため少なくとも3〜5日間の監視を要すること、通常成人量(初期250mg/日、高齢者100〜125mg/日、維持量250〜500mg/日、上限750mg/日)を確認した。同じ特別警告が現行のスルホニル尿素薬の添付文書でも警告・注意の一小節(グリメピリドでは5.4)に置かれ、枠組み警告として立てられていないことを別途照合した閲覧 2026-08-10
  2. 2.The Role of Vasopressin V2 Receptor in Drug-Induced Hyponatremia(Frontiers in Physiology・2021)クロルプロパミドは血漿バソプレシン(AVP)濃度を上昇させずに腎集合管のバソプレシンV2受容体を増感させることで抗利尿作用を発揮し、臨床的にはSIADH様の低ナトリウム血症を呈するが真のSIADH(AVP分泌過剰)ではなく腎性の機序(NSIAD)に分類されること、1970年の最初の報告以来SIADHとして記載されてきた歴史的経緯があることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Fact versus Fiction: a Review of the Evidence behind Alcohol and Antibiotic Interactions(Antimicrobial Agents and Chemotherapy・2020)第一世代スルホニル尿素薬がアセトアルデヒド代謝の阻害を介して飲酒時に顔面紅潮を起こすことが報告されている一方、根拠はNMTT側鎖を持つセフェム系ほど詳細に検討されていないことを確認した閲覧 2026-08-10