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Drug Atlas · B19 Antidiabetics / 糖尿病薬 · 必修

サキサグリプチン

saxagliptin

分類
Antidiabetics / 糖尿病薬
商品名(日本)
オングリザ
商品名(EU)
Onglyza
科目
Pharmacology
トピック
B19: Oral antidiabetics
承認適応
2型糖尿病
副作用
関節痛血管性浮腫
影響検査値
リパーゼアミラーゼ
相互作用
ケトコナゾール

🧠 全体像:は・と同じ阻害薬だが、この薬を語るときに必ず出てくるのはそのものよりSAVOR-TIMI 53試験である。16,492例を対象にしたで、はに対しだったにもかかわらず、心不全による入院だけが有意に増加した(3.5% vs 2.8%、1.27)。この一試験の結果が、のEXAMINE試験と並んで阻害薬クラス全体への「心不全の徴候・症状を観察せよ」という添付文書上の注意喚起の根拠になっている——ただしではなく、・注意の項の一区分である。

薬効群の中での位置づけ

項目
TECOS CARMELINA SAVOR-TIMI 53
心不全入院 増加なし(HR 1.00) 増加なし(HR 0.90) 増加あり(HR 1.27、95%CI 1.07-1.51)1
主な排泄経路 胆汁・糞便排泄 ・の両方
腎機能低下時 必要 調整不要 必要(/CrCl 45未満で減量)
代謝 ほとんど代謝されない 一部 /5でへ変換

⚠️ で心不全入院の増加が「統計学的に有意」だったのはだけである。 のEXAMINE試験は3.9% vs 3.3%という数値的な増加にとどまり有意差はつかなかった——それでもこの2剤の結果が並べて扱われ、添付文書上はクラス全体への注意喚起の根拠になっている。・はそれぞれの(TECOS・CARMELINA)で増加を認めていない。「有意に増えたのは1剤、注意喚起はクラス全体」という非対称を押さえておく。

機序

flowchart TD
    A["食事摂取"] --> B["小腸の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='L cell'>L細胞</span>・K細胞から<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucagon-like peptide-1'>GLP-1</span>・GIP(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incretin'>インクレチン</span>)分泌"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dipeptidyl peptidase-4'>DPP-4</span>酵素が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucagon-like peptide-1'>GLP-1</span>・GIPを<br>数分で急速に分解"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saxagliptin'>サキサグリプチン</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nitrile group'>ニトリル基</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dipeptidyl peptidase-4'>DPP-4</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='active site'>活性中心</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serine residue'>セリン残基</span>と<br>共有結合性の可逆的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adduct'>付加体</span>を形成"] -.->|"解離が非常に遅い(slow off-rate)"| C
    C -.->|"分解が抑えられると"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucagon-like peptide-1'>GLP-1</span>・GIP濃度が持続的に上昇"]
    E --> F["血糖依存性にβ細胞からの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulin secretion'>インスリン分泌</span>↑"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha cell'>α細胞</span>からのグルカゴン分泌↓"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postprandial blood glucose'>食後血糖</span>の上昇を抑える"]
    G --> H

💡 の結合様式は「共有結合だが可逆的」という珍しいタイプ。 がの()と反応してを形成し、通常の共有結合薬より速く、単純な非共有結合薬()より遅く解離する。この「解離の遅さ」が、が約2.5時間と短いにもかかわらず1日1回投与で阻害を維持できる理由になっている——が非共有結合のまま強い親和性で長時間結合するのとは化学的な仕組みが異なるが、「結合様式が見かけの半減期を決める」という点は共通している。

薬物動態

項目 値・特徴
代謝 CYP3A4/5により(の約半分の力価)へ変換される
半減期 約2.5時間、約3.1時間
排泄 と肝(胆汁)排泄の両方に関与する
相互作用 強い/5阻害薬(、、など)との併用での血中濃度が上昇するため、通常5 mgを2.5 mgへ減量する2

適応

領域 使いどころ
糖尿病 2型糖尿病の。食事・運動療法の補助として単剤、または等への追加治療で用いる

⚠️ 米国ではオングリザ(ONGLYZA)の販売が終了している。 Drugs@ の構造化データ(2026年9月16日確認)で、NDA 022350 の2.5 mg・5 mg の2とも販売状況が Discontinued(安全性・有効性を理由とする中止ではないとの連邦官報の判断つき)である3。ただしそのものは米国で使えなくなったわけではない。 同じDrugs@で、(ANDA)のうちAurobindo・Mylan・Glenmarkの3社の2.5 mg・5 mg錠は販売状況がのままで、NDCディレクトリにも載っている(2026年9月16日確認)4。本ノートが引く米国の添付文書(2025年12月改訂)はオングリザの文書である。米国で終了したことは、・日本での状況を示すものではない。

用法・用量

成人では通常5 mgを1日1回、食事に関係なくする。/CrCl 45未満(中等度〜重度、透析中のESRDを含む)では2.5 mgへ減量する。(分類A・B・Cのいずれも)では不要2。強い/5阻害薬併用時も2.5 mgへ減量する。実際の用量は年齢・体重・併用薬で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分への重篤な過敏症の既往(アナフィラキシー、、など)。米国の添付文書で「禁忌」に区分されるのはこの過敏症のみで、は存在しない2
  • ⚠️⭐ のSmPCの禁忌は「本剤」で閉じていない。 4.3は本剤の成分への過敏症に加えて、いずれかの阻害薬に対するアナフィラキシー反応・・を含む重篤な過敏症反応の既往を禁忌に挙げる5。米国の添付文書は同じ状況を5.4で「他の阻害薬でを起こした患者に本剤が同じ反応を起こしやすいかは不明なので慎重に」と書くにとどめており2、上の強さが1段階違う。この文言は阻害薬のあいだで揃っていない(剤ごとの比較は→)
  • ⚠️ 「禁忌は過敏症だけ」は米国の添付文書についての事実である。 日本の電子添文の禁忌は3項目で、①本剤成分への過敏症の既往、②重症・糖尿病性昏睡又は前昏睡・1型糖尿病、③・手術前後・重篤な外傷である6
  • 1型糖尿病・に使わない理由自体はどの国でも同じで、を介する機序のため、能そのものが失われた病態には無効だからである
  • ⚠️ は3極すべての文書に載る。 EUのSmPC 4.8では併用レジメン4列すべてで Rare(まれ)——同じ皮膚障害の区分で発疹は Common、じん麻疹は Uncommon なので、は一段まれな側にある5。日本の電子添文では11.1.3の「重大な副作用(過敏症反応、頻度不明)」の本文にアナフィラキシー・皮膚剥脱と並んで挙がる6
  • ⚠️ の患者では、発作の誘因となるため避ける。 国際/カナダ版HAEガイドラインは、阻害薬・エストロゲン含有製剤・とともに阻害薬を「既知の薬剤誘因」に挙げ、HAE患者では中止・回避するよう求めている7。上の過敏症としてのとは別の話で、こちらはの発作を誘発するという文脈である
  • ⚠️ 心不全:SAVOR-TIMI 53試験で心不全による入院が有意に増加した(3.5% vs 2.8%、1.27、95%CI 1.07-1.51、P=0.007)。 心不全の既往・のある患者はベースラインリスクが高く、投与開始前にリスク・を検討し、投与中は心不全の徴候・症状(急な体重増加、浮腫、呼吸困難など)を観察する。心不全を発症した場合は現行の標準治療に従って管理し、本剤の中止を検討する21
  • ⚠️ は阻害薬クラス共通の。 市販後にの報告がある。原因不明の持続する腹痛があれば中止し評価する
  • ⚠️ もクラス共通の。 入院を要したがある。水疱・びらんが出たら報告するよう患者に伝え、疑ったら中止し紹介を検討する(詳細は)
  • SU薬・インスリンとの併用では低血糖リスクが上がる(クラス共通)。併用時はこれらの減量を検討する
  • ⭐ ADAガイドラインでの位置づけ: 心不全の既往・リスクが高い患者では、阻害薬よりも心腎保護作用を持つ受容体作動薬・阻害薬が優先される8。はこの文脈で積極的に避けられる場面がある、という点が他の阻害薬(特に・)より一段強い注意点になる

副作用

頻度 内容
高頻度 、尿路感染症、頭痛
注意 関節痛、リパーゼ・の無症候性上昇
重篤・まれ 心不全による入院(SAVOR-TIMI 53で有意差あり)、、、過敏反応(アナフィラキシー・)、SU薬・インスリン併用時の低血糖

まとめ

  • 阻害薬。の機序・低血糖を起こしにくい性質は他の阻害薬と共通。
  • がと共有結合性の可逆的を作り、解離が遅いため短いでも1日1回投与が成立する。
  • SAVOR-TIMI 53試験で心不全による入院が有意に増加(3.5% vs 2.8%、HR 1.27)——阻害薬で心不全入院の有意な増加を示した唯一の薬であり、数値的増加にとどまったと並んでクラス全体への心不全注意喚起の根拠になった。ただしではなく・注意の区分。
  • 禁忌の範囲が文書で違う。米国の添付文書は本剤への過敏症のみだが、のSmPC 4.3は「いずれかの阻害薬」に対するを含む重篤な過敏症の既往まで禁忌に含める。日本の電子添文は1型糖尿病・も禁忌に置いて3項目。
  • は SmPC 4.8で Rare、日本では11.1.3の重大な副作用(過敏症反応)に載る。・はクラス共通の。
  • /5で代謝されを生じる。強い/5阻害薬併用時・中等度以上のでは2.5 mgへ減量する。
  • 心不全リスクが高い患者ではADAガイドライン上も受容体作動薬・阻害薬が優先され、は避けられる場面がある。
  • 米国ではオングリザの2とも Drugs@ で Discontinued だが、(Aurobindo・Mylan・Glenmarkの ANDA)は Prescription のまま(2026年9月確認)。米国でが使えなくなったわけではない。

出典

  1. 1.Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus (SAVOR-TIMI 53)(New England Journal of Medicine(Scirica BM, et al.)・2013)16,492例(平均追跡2.1年)を対象としたSAVOR-TIMI 53試験で、主要心血管複合エンドポイントはプラセボに対し非劣性だったが、心不全による入院がサキサグリプチン群3.5%・プラセボ群2.8%(ハザード比1.27、95%CI 1.07-1.51、P=0.007)と有意に増加したことを確認閲覧 2026-08-10
  2. 2.ONGLYZA (saxagliptin) tablets — Highlights of Prescribing Information(AstraZeneca(米国添付文書、DailyMed収載)・2025)禁忌が本剤への重篤な過敏症のみであること、枠組み警告の項目は存在せず心不全の注意喚起が警告・注意の項(5.2)にSAVOR-TIMI 53試験に基づき記載されていること(289/8280例3.5% vs 228/8212例2.8%、ハザード比1.27、95%CI 1.07-1.51)、腎機能に応じた用量調整(eGFR/CrCl 45未満で2.5mgへ減量)、強いCYP3A4/5阻害薬併用時は2.5mgへ減量、肝機能障害では調整不要、急性膵炎・水疱性類天疱瘡・重度関節痛の警告、1型糖尿病・糖尿病性ケトアシドーシスには推奨されないことを確認。2026-09-14にopenFDA経由で同じSPL(setid c5116390…、バージョン27・2025年12月公開)を引き直し、4 CONTRAINDICATIONS がサキサグリプチンまたはONGLYZAの成分への重篤な過敏症反応の既往で、アナフィラキシー・血管性浮腫・剥脱性皮膚症状が報告されていると述べること、5.4が他のDPP-4阻害薬で血管性浮腫の既往がある患者では本剤で同じ反応が起きやすいかは不明なので慎重に投与するとしていることを逐語で確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.openFDA Drugs@FDA API — NDA 022350 (ONGLYZA) products(U.S. Food and Drug Administration (openFDA)・2026)2026-09-16に取得(meta.last_updated 2026-09-15)。NDA 022350 のスポンサーが ASTRAZENECA AB で、products 配列の ONGLYZA(SAXAGLIPTIN HYDROCHLORIDE)EQ 2.5MG BASE と EQ 5MG BASE の2件とも marketing_status が Discontinued であり、strength 欄に「Federal Register determination that product was not discontinued or withdrawn for safety or effectiveness reasons」と付記されていることを確認した。あわせて openFDA の NDC ディレクトリ(drug/ndc.json)で brand_name ONGLYZA および添付文書記載の NDC 0310-6105 が0件(対照の JANUVIA は11件、NDC 0006-0277 は1件)であること、drug/label.json の set_id c5116390-e0fe-4969-94cb-e9de5165fbab(version 27、effective_time 20251222)が現存するものの openfda の製品対応欄が空であることを確認した。販売終了の日付そのものはこの応答に含まれない。閲覧 2026-09-16
  4. 4.openFDA Drugs@FDA API — products with active ingredient SAXAGLIPTIN(U.S. Food and Drug Administration (openFDA)・2026)2026-09-16に取得(meta.last_updated 2026-09-15、17件)。サキサグリプチン単剤の後発品(ANDA)のうち ANDA205972(AUROBINDO PHARMA)・ANDA205980(MYLAN)・ANDA205994(GLENMARK PHARMS LTD)は、EQ 2.5MG BASE と EQ 5MG BASE の錠剤がいずれも marketing_status Prescription であり、ANDA206078(SUN PHARM)・ANDA205941(AMNEAL)は Discontinued、先発品 NDA022350(ONGLYZA)は Discontinued であることを確認した。あわせて openFDA の NDC ディレクトリ(drug/ndc.json、generic_name saxagliptin)に Aurobindo・Glenmark・Mylan の3社の上記 ANDA 番号の製品が掲載されていることを確認した。閲覧 2026-09-16
  5. 5.Onglyza 2.5 mg, 5 mg film-coated tablets — Summary of Product Characteristics(AstraZeneca(EU SmPC、EMA承認)・2024)4.3の禁忌が、本剤の有効成分または添加剤への過敏症に加えて、いずれかのDPP-4阻害薬に対するアナフィラキシー反応・アナフィラキシーショック・血管性浮腫を含む重篤な過敏症反応の既往を含むこと(米国の添付文書が同じ状況を5.4の慎重投与にとどめているのに対して禁忌に置いている)、4.8の副作用一覧で Angioedema が併用レジメン4列すべてで Rare(まれ)であり、同じ皮膚障害の区分で Rash が Common・Urticaria が Uncommon であること、4.4の過敏症反応の項が市販後にアナフィラキシー反応・アナフィラキシーショック・血管性浮腫が報告されたと述べていることを確認した。10項の改訂年月欄は空欄のため、年はEPARの製品情報(英語版)のLast updated(2024-05-13)で判定した。閲覧 2026-09-14
  6. 6.オングリザ錠2.5mg/オングリザ錠5mg 電子添文(協和キリン(日本の電子添文、2025年10月改訂 第3版)・2025)日本の禁忌が3項目で、2.1が本剤成分への過敏症の既往、2.2が重症ケトーシス・糖尿病性昏睡又は前昏睡・1型糖尿病、2.3が重症感染症・手術前後・重篤な外傷であること(米国の添付文書と違い1型糖尿病が禁忌欄に入る)、11.1.3の重大な副作用「過敏症反応(頻度不明)」の本文がアナフィラキシー・血管性浮腫及び皮膚剥脱等の重篤な過敏症反応があらわれることがあると述べていることを確認した。閲覧 2026-09-14
  7. 7.The International/Canadian hereditary angioedema guideline(Canadian Hereditary Angioedema Network (CHAEN/RCAOH)・2026)Europe PMC(PMC13123228)で全文を取得して確認した。C1インヒビター欠損型でも正常C1インヒビター型でも、エストロゲン含有の経口避妊薬・補充療法/ACE阻害薬/DPP-4阻害薬/ネプリライシン阻害薬という既知の薬剤誘因は中止・回避すべきであること、これらの薬剤による血管性浮腫はHAEの診断を否定せずむしろ潜在例を顕在化させうることを逐語で確認した。閲覧 2026-09-14
  8. 8.9. Pharmacologic Approaches to Glycemic Treatment: Standards of Care in Diabetes—2026(American Diabetes Association・2026)心不全の既往・リスクが高い患者ではDPP-4阻害薬より心腎保護作用を持つGLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬が優先される治療アルゴリズム上の位置づけを確認閲覧 2026-08-10