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Drug Atlas · C4 Antifungals / 抗真菌薬 · 必修

ケトコナゾール

ketoconazole

分類
Antifungals / 抗真菌薬
科目
Pharmacology
トピック
C4: Antifungal agents
承認適応
脂漏性皮膚炎カンジダ症皮膚糸状菌症(白癬)クッシング症候群
標的微生物
Malassezia furfurCandida albicansTrichophyton rubrum
副作用
掻痒女性化乳房
監視検査値
AST/ALT
相互作用
イブレキサフンガープサキサグリプチンバルベナジン
対象疾患
マラセチア毛包炎癜風

🧠 全体像を理解する軸は「同じ薬が2つの顔を持つ」という点である。真菌のCYP51()を阻害して合成を止める点は他のと同じだが、ヒトのCYP酵素(CYP3A4、副腎・性腺の)も強く阻害するという選択性の低さを併せ持つ。この「効きすぎる」性質が、①外用薬としてはの第一選択の一つという地位を保つ一方、②全身投与(経口)では重篤な肝障害・副腎不全・薬物相互作用のリスクから他のにほぼ置き換えられたという、同じ薬効群の中で剤形によって評価が正反対になるという珍しい経過をたどらせた。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 ヒトCYP酵素への影響 現在の位置づけ
(外用) 外用 ごくわずか ・白癬の標準治療
(外用が主用途) 外用(シャンプー・)が主、経口は限定的 強い(CYP3A4阻害、副腎・性腺ステロイド合成阻害) 外用はの第一選択の一つ。経口は第一選択から外れた
(全身) 経口・静注 は比較的弱い、は中等度 全身性の第一選択

は最初に実用化された広域スペクトルの経口だったが、その地位は現在に完全に取って代わられている。 理由は有効性ではなく安全性——ヒトのCYP酵素への選択性が他のより明らかに劣るため、同程度の抗真菌効果を得るためので肝毒性・内分泌毒性が前面に出てしまう。外用薬としてはがごく少なく保たれるため、この欠点が問題にならず生き残っている。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ketoconazole'>ケトコナゾール</span>が細胞膜を通過"] --> B["真菌のCYP51(14α-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='demethylation'>脱メチル化</span>酵素)を阻害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lanosterol'>ラノステロール</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ergosterol'>エルゴステロール</span>の変換が止まる"]
    C --> D["細胞膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ergosterol'>エルゴステロール</span>が欠乏し<br>異常ステロールが蓄積"]
    D --> E["真菌細胞膜の透過性が破綻し増殖が止まる"]
    A --> F["ヒトのCYP3A4を強力に阻害"]
    F --> G["CYP3A4で代謝される他剤の血中濃度が上昇"]
    A --> H["副腎・性腺の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='steroidogenic enzyme'>ステロイド合成酵素</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='11-beta-hydroxylase (CYP11B1)'>11β-水酸化酵素</span>、17,20-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lyase'>リアーゼ</span>等)も阻害"]
    H --> I["コルチゾール・アンドロゲン産生が低下"]
    I --> J["全身投与量では副腎不全・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gynecomastia'>女性化乳房</span>などの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='endocrine side effects'>内分泌系副作用</span>が生じうる"]

💡 「真菌のCYP51だけを狙えず、ヒトのCYP酵素まで巻き込んで止めてしまう」という選択性の低さが、この薬のすべての臨床的特徴の起点になっている。 が世代を経て真菌選択性を高めていったのに対し、の中でもヒトCYPが際立って強く、この性質はでコルチゾール合成そのものを止める目的に逆手に利用されることもある一方、通常の抗真菌治療では望まない副作用として現れる。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収(経口) 胃酸依存性——胃内pHが低いほど溶解・吸収されやすいため、PPI・併用で吸収が低下する
代謝 肝で代謝され、強力なCYP3A4阻害薬として他の多くの薬剤(後述)の相互作用リストに繰り返し登場する
外用時の全身吸収 皮膚からの吸収はごくわずかで、上記の全身性リスクは基本的に問題にならない

適応

領域 使いどころ
(外用・第一選択級) (頭皮用シャンプー・顔面用)、、皮膚カンジダ症(白癬)
内分泌(経口) でのとしての使用(メトラポンなどと役割が重なる)。承認状況は国・製剤により異なり、となる国もある
全身性(経口・現在は限定的) かつては広く使われたが、肝毒性・薬物相互作用のリスクからに置き換わっている。2013年以降はいかなるでも第一選択とせず、他の抗真菌薬が使えないかできない場合の性真菌症に限って用いる1

用法・用量

外用:頭皮のには抗真菌シャンプーとして週数回、顔面・体幹にはを1日1〜2回塗布する。改善後も間欠的な維持使用で再発を減らす。経口など限定的用途):ステロイド合成阻害を目的とした用量は抗真菌治療量とは異なり、コルチゾール値をモニタリングしながら調整する。実際の用法・用量は適応・剤形で大きく異なるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 経口製剤:急性・の既往は禁忌。定期的な肝機能モニタリング(AST/ALT)が必要1
  • 経口製剤:CYP3A4で代謝される薬剤(QT延長を来しうる薬剤を含む)との併用は血中濃度上昇による重篤な有害事象のリスクがあり、避けるか慎重に管理する1
  • 経口製剤を抑える薬剤(PPI・)は吸収を低下させうる
  • 外用製剤:上記の全身性リスクは基本的に及ばないが、刺激感が強い場合は他系統への変更を検討する

副作用

頻度 内容
外用・高頻度 塗布部位の刺激感、掻痒
経口・注意 悪心などの消化器症状、(ステロイド合成阻害による)
経口・重篤 重篤な肝障害(肝不全・に至った例を含む)、副腎不全、QT延長を伴う薬物相互作用1

まとめ

  • 抗真菌薬。真菌CYP51阻害で合成を止める機序は他のと共通するが、ヒトのCYP3A4・副腎/性腺も強く阻害する選択性の低さが特徴。
  • 外用が少なく安全性が保たれるため、・白癬の治療で今も広く使われる。
  • 経口は肝毒性・副腎不全・薬物相互作用のリスクからに主役を譲り、治療での使用は限定的になった。
  • 同じステロイド合成阻害という性質は、でのコルチゾール抑制という臨床的に有用な使い方にも転用される(承認状況は国・製剤により異なる)。
  • 胃酸依存性の吸収という上の特徴があり、PPI・との併用で経口吸収が落ちる。

出典

  1. 1.FDA Limits Usage of Oral Ketoconazole Due to Potentially Fatal Liver Injury and Risk of Drug Interactions and Adrenal Gland Problems(The ASCO Post(2013年7月26日のFDA医薬品安全性情報を報じた記事)・2013)2013年7月26日のFDA医薬品安全性情報の内容として、経口ケトコナゾール錠は重篤な肝障害・副腎機能への影響・薬物相互作用(QT延長等)のリスクからいかなる真菌感染症でも第一選択とすべきでなく、他の抗真菌薬が使用できないか忍容できない場合の風土病性真菌症に限って用いること、肝疾患のある患者には使用しないこと、外用剤にはこの制限が及ばないことを確認した。FDA自身のページ(fda.gov)は取得できず本記事を経由して確認した。閲覧 2026-08-10