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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

皮膚糸状菌症(白癬)

Dermatophytosis (tinea)

別名
TineaRingwormOnychomycosis爪白癬
臓器系
感染症皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-16:微胞子虫症・小胞子菌症と表在性真菌症皮膚科 1-17:表在性真菌症(頭部白癬・体部白癬・足白癬・股部白癬)皮膚科 1-19:爪真菌症(爪白癬)
鑑別疾患
ばら色粃糠疹貨幣状湿疹環状肉芽腫紅色陰癬脂漏性皮膚炎手湿疹尋常性乾癬接触皮膚炎脱毛症抜毛症癜風
関連疾患
アトピー性皮膚炎
治療薬
テルビナフィンイトラコナゾールフルコナゾールクロトリマゾール
原因微生物
Trichophyton rubrumTrichophyton mentagrophytesTrichophyton indotineaeTrichophyton tonsuransTrichophyton schoenleiniiMicrosporum canisMicrosporum gypseumEpidermophyton floccosum
症状
小水疱掻痒皮疹疼痛白癬疹落屑
検査値
KOH標本
下位分類
黄癬
適応薬
グリセオフルビンケトコナゾールシクロピロクス
禁忌薬
フルオシノロン

🧠 全体像:は、を栄養源にする真菌(・・)が・毛・爪へ感染する病態である。菌種ではなく「どこに感染したか」で病名(・・・・)が決まり、頭部と爪は原則として全身(経口)治療、限局した体部・股部・足部の病変は外用治療が基本となる。

病原体と成立機序

は生きた深部組織ではなく、・毛・爪のを栄養源として感染する表在性真菌である。代表属は(Trichophyton)、(Microsporum)、(Epidermophyton)の3属で、・・に分けられ、直接接触や床・タオル・衣類などのを介して伝播する。

⚠️ 「」と「」は名称が似るが別物である。は菌類に近縁な偏性細胞内病原体で、主に免疫不全者の・・播種感染に関与し、よくあるの原因ではない。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermatophytes'>皮膚糸状菌</span>への接触"] --> B["高温多湿・密閉・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microtrauma'>微小外傷</span>・免疫抑制"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stratum corneum'>角層</span>・毛・爪の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin'>ケラチン</span>へ定着"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='annular erythema'>環状紅斑</span>・鱗屑・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fissure'>亀裂</span>・脱毛・爪変形"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scratching (excoriation)'>掻破</span>やバリア破綻"]
  E --> F["細菌性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary infection'>二次感染</span>"]

感染部位による分類と臨床像

病型 部位・臨床像 治療の基本
鱗屑、、折れた毛。強い炎症では疼痛性の膿瘍状局面()となりを残し得る 毛包内へ届くが必須。外用単独は不十分
ひげ部の・膿疱・結節 との鑑別が必要
中央が軽快し鱗屑を伴う隆起性の活動性辺縁が外側へ拡大する 通常は
〜の境界明瞭な紅褐色局面。通常は陰嚢へ波及しにくい 、高温多湿・密閉性衣類などの誘因管理
、小水疱、足底の角化性鱗屑 。の併存を確認
() 遠位側縁からの黄白色、、肥厚、 菌学的確認後、範囲・病変の有無に応じ経口または外用治療

では毛の外側に胞子を形成すると、内に形成するがある。菌体そのものがない遠隔部に反応による丘疹・小水疱性の発疹()が生じることもある。

⚠️ は高率にを残す。(も残しうるが、はに年単位で進んで不可逆になる点が違う。) Trichophyton schoenleinii による慢性の病型で、⭐ 黄色いカップ状のと特有の悪臭が手掛かりになる。他のが治療により毛が再生するのに対し、本症は不可逆なに至る点で危険度が違う。

診断

flowchart TD
    A["環状<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scaly'>鱗屑性</span>局面・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='patch of alopecia'>脱毛斑</span>・爪変形"] --> B["活動性辺縁・毛・爪下角質から検体採取"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='potassium hydroxide'>KOH</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='direct microscopic examination'>直接鏡検</span>"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fungal culture'>真菌培養</span>または分子学的同定"]
    C --> E["菌糸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthroconidia'>分節胞子</span>を確認"]
    D --> F["菌種・耐性を評価"]
    E --> G["感染部位に応じ治療"]
    F --> G
  • 皮膚病変は活動性辺縁、は・折れた毛と鱗屑、爪は部より近位の下角質を採取する。(トリコスコピー)ではで・といった特徴的な所見が診断の補助になる。
  • はの存在を迅速に示すが、にはや、などの分子検査が必要である。
  • 難治・広範囲・再発例、特に股部・体部・顔面に強い掻痒と炎症を伴う病変では、耐性のTrichophyton indotineae(T. mentagrophytes ITS genotype VIIIとも呼ばれる)を疑う。通常の培養だけでは他のTrichophyton属と区別できないため・が必要になる1。
  • 湿疹、乾癬、、カンジダ症、、、、反復外傷、爪部腫瘍などが鑑別に挙がるため、長期の経口治療前には菌学的確認を行う。

治療

状況 基本方針
限局した体部・股部・ またはの外用薬を通常2〜4週、病変より外側まで指示された期間塗布する
外用単独では毛包内へ届かないためが必須。米国ではTrichophyton属に経口4〜6週間、Microsporum属に6〜8週間が第一選択で、Microsporum属にはよりが優れうる2。⚠️ 日本ではが使用できないため、起因菌を問わず経口またはを用い(内服療法は推奨度A)、Microsporum属では海外のガイドラインに準じてを選ぶことが推奨されている3
表層・少数爪で病変なし 外用を長期間継続し、爪切り・削爪を併用する。日本では・の爪外用液(いずれも推奨度B、か培養で確定した患者に保険適用)3、米国では爪ラッカー・タバボロールなども使われる2。は内服より低い
複数爪・病変・著明な肥厚 内服療法。日本の指針はとホスラブコナゾールをともに推奨度A、のを推奨度Bとする3。米国では多くの患者で経口が優先され、は二次選択とされる2
広範・再発・免疫抑制例 診断を再確認し、薬物相互作用・肝機能を評価したうえで経口治療を検討する

の内服の用法は国によって違う。日本では125 mg/日を6か月連続で内服し、定期的に血液検査を行う(推奨度A)。は400 mg/日を1週間投与・3週間で3サイクルの(推奨度B)、ホスラブコナゾールはラブコナゾールとして100 mgを1日1回12週間(推奨度A)用いる3。米国では250 mgを1日1回、6〜12週間用いる2。いずれも肝疾患、併用薬、菌種を確認して個別化する。爪の伸長は遅いため、菌学的治癒と見た目の改善には数か月から1年以上の時間差がある。米国の総説は、開始前にベースラインの肝機能検査・血算を確認するのが妥当で、肝疾患・の既往や65歳以上でない限り治療中の追加モニタリングは通常不要としている2。一方、日本の指針は内服中の定期的な血液検査を求めている3。

⚠️ 診断未確定の環状皮疹へステロイド含有配合外用薬を用いない。 炎症だけが隠れて感染が拡大するや白癬を招き得る。は重篤な肝障害のリスクがあるため皮膚・には用いない。

⚠️ 耐性Trichophyton indotineaeが世界的に拡大している。 インド亜大陸に由来し、股部・体部・顔面に強い炎症・掻痒を伴う難治性病変を作る。標準治療に反応しない非典型な白癬ではこの菌種を疑い、・を行う。耐性例の第一選択は(最大3か月間)12。

足を乾燥させ、靴・靴下・タオル・爪切りなどの共有を避けることでを減らす。では同居者の症状も確認する。

まとめ

  • は・毛・爪を侵し、感染部位により、、、、と呼ぶ。
  • 診断はで迅速に確認し、・・難治例では培養や分子検査で菌種を同定する。
  • ・(病変・多発例)は経口治療、限局した体部・股部・は外用治療が基本である。
  • の第一選択は国と起因菌で変わる。米国ではTrichophyton属に、Microsporum属にが優先される2が、⚠️ 日本ではが使えず、経口または(Microsporum属では)を用いる3。世界的に拡大する耐性Trichophyton indotineaeではとへの切り替えを要する。
  • 診断不明の環状皮疹にステロイドを単独・配合で塗らず、では治療前に必ず菌学的確認を行う。

出典

  1. 1.Terbinafine Resistance in Trichophyton rubrum and Trichophyton indotineae: A Literature Review(Antibiotics (MDPI)・2025)Trichophyton indotineae(T. mentagrophytes ITS genotype VIII)はインド亜大陸で出現しヨーロッパ・アジア・南北アメリカ・オーストラリア・アフリカへ拡大しており、スクアレンエポキシダーゼ遺伝子変異(Phe397Leu・Ala448Thrなど)によりテルビナフィンに高頻度に耐性化する。股部・体部・顔面に強い炎症性病変を作り、通常の培養だけでは他のTrichophyton種と区別できず分子検査・薬剤感受性試験が必要である。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Diagnosis and Management of Tinea Infections(American Family Physician (AAFP)・2025)頭部白癬の全身治療はTrichophyton属では経口テルビナフィン4〜6週間が第一選択(米国症例の9割以上を占める)、Microsporum属ではテルビナフィンの効果が劣るため従来通りグリセオフルビン6〜8週間が優先される。テルビナフィン開始前はベースラインの肝機能検査・血算が妥当だが、肝疾患・血液疾患の既往や65歳以上でない限り追加のモニタリングは通常不要。Trichophyton indotineaeはテルビナフィンに高頻度に耐性を示し難治・広範な感染を起こすため、イトラコナゾール(最大3か月間)が第一選択となる。2026-09-27にPMC掲載の全文で、爪真菌症には多くの患者で経口テルビナフィン250 mg 1日1回を6〜12週間用いる方法がイトラコナゾールなど他の経口薬より好まれ、経口イトラコナゾールは二次選択であること、シクロピロクス爪ラッカーやタバボロールは完全治癒率が低い(29〜36%、31〜36%)ことを説明したうえで提示しうることも確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会・2025)全文PDF(日皮会誌135巻13号)で、爪白癬の内服療法はテルビナフィン125 mg/日の6か月連続内服(CQ5、推奨度A、定期的な血液検査が必要)、イトラコナゾール400 mg/日を1週間投与・3週間休薬で3サイクルのパルス療法(CQ6、推奨度B)、ホスラブコナゾール(CQ7、推奨度A、ラブコナゾールとして100 mgを1日1回12週間内服したRCTに基づく)であり、外用療法はエフィナコナゾール10%爪外用液(CQ3、推奨度B)とルリコナゾール5%爪外用液(CQ4、推奨度B)で、外用薬は経口薬より完全治癒率が低いものの内服できない・希望しない患者に使われ、直接鏡検または培養で確定診断された患者に保険適用があることを確認した。頭部白癬については、原則として経口テルビナフィンまたはイトラコナゾールで治療し外用単独は推奨されないこと(CQ10「内服療法を行うよう強く勧める」推奨度A)、"Microsporum 属による場合には,テルビナフィンよりもグリセオフルビンの有用性が示されているが,本邦ではグリセオフルビンを使用できない"(2544頁)と明記され、Microsporum属でテルビナフィンとイトラコナゾールを直接比較したRCTは無いものの海外のガイドラインではイトラコナゾールの選択が推奨されていること、本邦ではテルビナフィン・イトラコナゾールとも小児への適用がないことを確認した閲覧 2026-09-27