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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

黄癬

Favus

別名
tinea favosa
臓器系
皮膚感染症
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
微生物学 4/5:皮膚糸状菌症皮膚科 1-17:表在性真菌症(頭部白癬・体部白癬・足白癬・股部白癬)
上位概念
皮膚糸状菌症(白癬)
鑑別疾患
脂漏性皮膚炎尋常性乾癬
関連疾患
脱毛症
治療薬
グリセオフルビンテルビナフィンイトラコナゾール
原因微生物
Trichophyton schoenleinii
症状
痂皮落屑掻痒
検査値
KOH標本

🧠 全体像:はのうちの一型でありながら、この群のなかで唯一「毛包を壊し尽くす」経過をとる。ほかのが数週〜数か月で治り毛が生え戻るのに対し、は年単位で炎症と修復を繰り返し、不可逆なを残す。⭐ 見た目の指標は3つ——毛の根元にできる黄色いカップ状の、独特の悪臭、そして戻らない脱毛。⚠️ 思春期を迎えても自然に治らないという点が、小児期に自然軽快しうる他のと決定的に違う。

頭部白癬のなかでの位置づけ

は毛髪への侵襲様式で3つに分かれ、はそのうちの独立した1型である12。でも・と並ぶ3つ目の型として整理される1。

型 侵襲様式 代表菌 経過
(以外) 胞子がの外側に付着 Microsporum canis など 非炎症性。原則として瘢痕を残さない
() 胞子がの内部に Trichophyton tonsurans 非炎症性。折れた毛が黒点にみえる
への が多い 強い炎症・膿疱。を残しうる
内に長い菌糸とを生じる第3の型 T. schoenleinii 慢性の炎症型。不可逆な

💡 とは、ともに「炎症型」に括られる。 どちらも真菌そのものより宿主の反応が組織破壊を担い、その帰結としてを残しうる2。違いは時間軸で、が数週の急性経過で一気に膿瘍状になるのに対し、はに始まり年単位で進む。菌学的な特徴(・・endothrix型)はTrichophyton schoenleiniiのノートが担う。

3段階で進む

⭐ はに発症し、明瞭な3段階をたどる2。

flowchart TD
    A["第1段階:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perifollicular'>毛包周囲</span>の紅斑"] --> B["第2段階:毛包内に scutulum が形成される"]
    B --> C["黄色・角化性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crusting'>痂皮化</span>した陥凹性の局面<br>菌糸と好中球を含む"]
    C --> D["細菌の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary infection'>二次感染</span>を受けやすい"]
    C --> E["第3段階:複数の scutula が融合"]
    E --> F["広範な脱毛と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scarring'>瘢痕化</span>"]
    F --> G["毛包が破壊され毛は再生しない"]
  • scutulum(複数形 scutula) は、毛包内に形成される黄色・角化性・した陥凹性の局面で、菌糸と好中球を含む2
  • scutula は細菌のの温床になる2
  • 痂皮は特有の悪臭(カビ臭・ネズミ臭と形容される)を伴う
  • 第3段階で scutula が融合すると、広範な脱毛とに至る2

⚠️ 慢性の疾患であるため、小児期・思春期に獲得しても思春期の到来で自然消退せず、成人期まで持続する2。「は思春期に治る」という一般則をに当てはめてはいけない。

診断

検査 での所見
内に長い菌糸とを認める。この配列が型侵襲そのものである2
T. schoenleinii の感染毛は青色を呈しうる。Microsporum 属(M. canis・M. audouinii・M. rivalieri・M. ferrugineum)の緑色〜とは色調が異なる1
発育が遅く時間を要する。⚠️ 陰性でも否定できない
分子学的同定 培養陰性例でも、病理検体からの・で菌種を同定できる3

⚠️ を診断の主軸にしない。 全体でみると T. tonsurans は蛍光を示さず、蛍光陰性はを否定しない1。でも臨床像(scutula・悪臭・)と鏡検が診断の初動を担い、は補助にとどまる。

💡 培養陰性でも診断は諦めない。 日本で報告された63歳女性ののでは、は陰性だったがで痂皮とにを検出し、ホルマリン固定検体からの・で T. schoenleinii と確定した3。

鑑別

鑑別 手掛かり
黄色調の鱗屑が似るが、痂皮は毛包内にしたカップ状ではなく、を残さない
(頭部) 境界明瞭な紅斑と厚い。他部位の典型病変・爪所見を伴う
数週の急性経過で膿瘍状の局面。を伴いやすい
瘢痕性(など) 真菌検査が陰性。の紅斑・鱗屑と

⚠️ すでにが完成した段階では、原因が真菌だったことが見えにくくなる。 活動性のある辺縁から鱗屑・毛髪を採取して真菌検査に回すことが、可逆な段階を取り逃さない唯一の手段になる。

疫学

  • 米国・西欧ではまれだが、アフリカの一部では今なお的であり、アジアの中東・極東でも報告が続いている2
  • 中国の2000〜2019年の269例のでは、は4例(1.5%)にとどまり、の84例(31.2%)より少なかった2
  • ⚠️ 日本では過去40年間ほとんど報告がなく、その間 T. schoenleinii が臨床的に分離されたこともなかったが、2019年に63歳女性ののが報告された3。「日本にはない病気」と決めつけない

治療

⚠️ 頭部の感染であり、外用単独は無効で推奨されない。が必須である1。

⚠️ は不可逆であり、治療開始の遅れがそのまま脱毛範囲になる。 とを含む炎症型のは、という不可逆ののリスクが高い2。診断がつく前でも、scutula と悪臭という組み合わせを見たら真菌検査と並行して治療開始を検討するという姿勢が、毛包を残せるかどうかを分ける。菌によるヒト-ヒト感染なので、同居者・のスクリーニングと・帽子の共有回避を同時に行う。

まとめ

  • は Trichophyton schoenleinii によるの一型で、・と並ぶ第3の毛髪侵襲様式として分類される。
  • 臨床の要点は黄色いカップ状の・特有の悪臭・不可逆なの3つ。scutula は菌糸と好中球を含み、細菌のの温床になる。
  • に始まり、の紅斑→scutulum 形成→scutula の融合と広範なという3段階で進む。
  • ⚠️ 慢性のため思春期で自然消退せず成人期まで持続する。ほかのとの最大の違いはこの点とにある。
  • 診断は鏡検(内の長い菌糸と)と臨床像が主軸で、(青色調)は補助。培養陰性でもによるが可能。
  • 米国・西欧ではまれだがアフリカの一部で的、中東・極東でも報告が続く。日本でも過去40年ぶりに2019年に報告された。
  • 治療は(4〜8週が定番、・も用いられる)。外用単独は無効で、早期開始が毛包温存の鍵になる。

出典

  1. 1.Tinea Capitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)2023年8月8日改訂版。頭部白癬の毛髪侵襲様式が内毛性(Trichophyton tonsurans など)・外毛性(Microsporum canis など)・黄癬(Trichophyton schoenleinii)の3型に分けられること、黄癬が炎症反応・痂皮すなわちscutulaと脱毛を特徴とすること、頭部白癬の臨床型が黒点型・ケルスス禿瘡・黄癬の3つに整理されること、Wood灯下でM. canis・M. audouinii・M. rivalieri・M. ferrugineum の感染毛が緑色〜黄緑色を呈するのに対しT. schoenleinii の感染では青色を呈しうること、T. tonsurans による頭部白癬は通常蛍光を示さないこと、頭部白癬が全身抗真菌薬で治療可能でグリセオフルビンが第一選択となることが多く治療期間が4〜8週であること、外用治療は無効であり推奨されないこと、イトラコナゾール・フルコナゾールなどのアゾール系が代替となること、ケルスス禿瘡のような病型では短期間の全身副腎皮質ステロイドなど抗炎症治療を要すること、KOH20%を用いた直接鏡検と真菌培養が診断に用いられることを確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Comprehensive Review of Tinea Capitis in Adults: Epidemiology, Risk Factors, Clinical Presentations, and Management(Journal of Fungi(Hill RC, Gold JAW, Lipner SR)・2024)頭部白癬の毛髪侵襲様式が外毛性・内毛性・黄癬の3型に分かれ、黄癬は毛幹内に長い菌糸と気泡を生じる型でKOH鏡検で確認できること、黄癬が非炎症型ではなくケルスス禿瘡と並ぶ炎症型に分類され過敏反応の関与が想定されていること、黄癬の原因菌が好人性種のTrichophyton schoenleiniiであることが最も多いこと、黄癬が米国・西欧ではまれである一方アフリカの一部では今なお地方病的であり、アジアの中東・極東でもみられること、黄癬が潜行性に発症して3段階で進行すること(第1段階=毛包周囲の紅斑、第2段階=毛包内に形成される痂皮すなわちscutulum、第3段階=複数のscutulaが融合して広範な脱毛と瘢痕化に至る)、scutulaが頭皮上の角化性・黄色・痂皮化した陥凹性局面で菌糸と好中球を含み細菌の二次感染を受けやすいこと、黄癬が慢性のため小児期・思春期に獲得しても思春期を迎えても自然消退せず成人期まで持続すること、中国の2000〜2019年の頭部白癬269例の後方視的検討では黄癬が4例(1.5%)にとどまりケルスス禿瘡の84例(31.2%)より少なかったこと、黄癬とケルスス禿瘡を含む炎症型頭部白癬では瘢痕性脱毛という不可逆の後遺症のリスクが高いことを確認した。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Revival of favus in Japan caused by Trichophyton schoenleinii(The Journal of Dermatology(Iwasa K, et al.)・2019)黄癬が毛包周囲に黄色のscutulaを生じる皮膚糸状菌症の一型であり世界の症例の大半がTrichophyton schoenleinii によること、日本では過去40年間ほとんど報告がなくその間T. schoenleinii が臨床的に分離されたこともなかったこと、63歳日本人女性の軟毛の黄癬症例を報告したこと、真菌培養は陰性であったがGrocott染色で痂皮と毛球に真菌要素を検出し、ホルマリン固定パラフィン包埋検体からrRNA遺伝子のITS領域を標的としたPCR・塩基配列決定によりT. schoenleinii と同定したこと、経口テルビナフィンと外用ルリコナゾールクリームで治癒したことを確認した。⚠️ 抄録のみを閲覧しており全文は未取得(出版社ペイウォール)。閲覧 2026-09-03