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Drug Atlas · C4 Antifungals / 抗真菌薬 · 必修

グリセオフルビン

griseofulvin

分類
Antifungals / 抗真菌薬
科目
Pharmacology
トピック
C4: Antifungal agents
承認適応
皮膚糸状菌症(白癬)
標的微生物
Trichophyton tonsuransTrichophyton rubrumMicrosporum canisEpidermophyton floccosum
副作用
光線過敏悪心ジスルフィラム様反応
相互作用
エチニルエストラジオール+レボノルゲストレルワルファリン
対象疾患
黄癬

🧠 全体像:は1950年代から使われる最も古典的なで、真菌の細胞膜やではなく微小管()に結合して有糸分裂そのものを止めるという、他のどの抗真菌薬とも異なる機序を持つ。にしか効かず(・Candidaには無効)、脂溶性で吸収が悪く数週間〜数か月という長期投与を要する「使い勝手の悪さ」から、などの新しい薬に大半の適応で置き換えられた。それでも小児のでは今も使われ続けている——理由は単純で、原因菌がTrichophytonかMicrosporumかによって勝敗が入れ替わるためである。もう一つの顔として、アルコールとを起こす薬としても記憶される。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 標的 特徴
微小管阻害(古典的) 真菌・有糸分裂 専用。長期投与が必要
阻害 Trichophyton属への効果が高く短期投与で済む
・ 阻害 以外にもカバーが広い

⭐ 同じでも、原因菌によって最適な薬が入れ替わる。 小児の456例をに検討した(治療反応を評価できたのは222例)では、Trichophyton tonsurans感染の臨床的は95%(19/20例)が38%(5/13例)を大きく上回った(p<0.001)が、Microsporum canis感染では73%(35/48例)と66%(39/59例)の間に有意差がなかった(p=0.44)1。米国の家庭医向けレビューも同じ方向で、はTrichophyton属に、はより頻度の低いMicrosporum属に優れうるとする2。「=で良い」と一律に考えず、Microsporum属が疑われる(動物との接触歴があるなど)場面ではが今も選択肢に残る、という理解が実務的に重要になる。

💡 ただし、菌種で薬を選び分ける前に「培養を待つか」という問題がある。 は2〜6週かかる一方、米国のの89%超はTrichophyton属なので、渡航歴がなければ培養を待たずで始めるのが妥当とされる。Microsporum属は南米・南欧/中欧・アフリカ・中東で相対的に多く、培養でMicrosporumと判明した患者ではへの切り替えを要しうる2。⚠️ 上のコホートでM. canisにが用いられたのは4例だけで、臨床的は0例だった——この比較は症例数が非常に少ない1。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Griseofulvin'>グリセオフルビン</span>が真菌細胞内へ取り込まれる"] --> B["真菌<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubulin'>チューブリン</span>に結合"]
    B --> C["微小管の重合・有糸分裂<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitotic spindle'>紡錘体</span>の形成を阻害"]
    C --> D["真菌の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell division'>細胞分裂</span>が停止(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fungistatic'>静真菌的</span>)"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin precursor cell'>ケラチン前駆細胞</span>にも取り込まれる"]
    E --> F["新しく作られる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin'>ケラチン</span>が<br>真菌の侵入に抵抗性を持つようになる"]
    F --> G["既感染部の治癒は皮膚の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='turnover'>ターンオーバー</span>を待つ必要がある<br>→長期投与が必須"]

💡 「新しいにしか予防効果がない」という機序が、長期投与という欠点に直結する。 すでに感染した(・毛髪)はでは治らず、健常なに置き換わるまで待つ必要がある。これが、米国添付文書で4〜6週・2〜4週・4〜8週・指爪4か月以上/足爪6か月以上という長い治療期間が置かれている理由である3。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 水溶性が低くが不安定。脂肪食とともに服用すると吸収が高まる
製剤 マイクロサイズ・ウルトラマイクロサイズの2種があり、粒子径が小さいウルトラマイクロサイズの方が同じに必要な用量が少ない
代謝 。誘導作用を持ち、他剤の代謝を促進する
分布 ・皮膚・毛髪・爪へ選択的に取り込まれる

適応

領域 使いどころ
小児 (白癬)のうち小児の。Microsporum canisなど、の効果が劣る菌種が疑われる場面で今も選択される41
だけでは治らない・・・鬚白癬。米国添付文書はも適応に挙げるが、AAFPの家庭医向けレビューは「白癬治療の落とし穴」の表で「にを使わない」と挙げている(のほうが・高い治癒率・低コストの点で通常はより良い選択肢であるため)32

⚠️ 「にある」と「現在の推奨」は別のことである。 はまさにその例で、添付文書の適応から外れてはいないが、実地では推奨されない。

・二形性真菌・Candida・には無効であり、感染に適応が限られる。米国添付文書はさらに、細菌感染症・・・・・北米・・・にも無効であること、外用薬で治る軽微な感染に本剤を用いることはされないことを明記している43。

用法・用量

いずれの製剤も脂肪食とともに服用する。臨床的・検査的に真菌が消失するまで継続するのが原則である。では、治療開始後1〜2週間にまたは含有シャンプーを併用すると、菌量と周囲への伝播を減らしうる(内服の代わりにはならない)52。

⚠️ 小児の用量は、添付文書の承認用量と、実地で用いられている用量が大きく違う。 どちらか一方だけを覚えると、量でも期間でも取り違える。

米国添付文書(承認用量)3 総説・実地で挙げられる用量5
小児・ウルトラマイクロサイズ 約7.3 mg/kg/日(体重16〜27 kgで1日125〜187.5 mg、27 kg超で1日187.5〜375 mg)。2歳以下は用量未確立 10〜15 mg/kg/日
小児・マイクロサイズ 体重1ポンドあたり約5 mg/日(=約11 mg/kg/日に相当。体重30〜50ポンドで1日125〜250 mg、50ポンド超で1日250〜500 mg)6 20〜25 mg/kg/日()
の期間 4〜6週 6〜8週

成人では、が・・で1日500 mg、・で1日1 g、がそれぞれ1日375 mg・分割750 mgである63。米国の家庭医向けレビューは薬剤一覧で1日500〜1000 mg・6〜12週と幅を持たせている2。

💡 期間の食い違いは、成書どうしのというより資料の性質の違いである。 4〜6週は米国添付文書の「代表的治療期間」の記載で、6〜8週は「長らく第一選択とされてきた期間」として家庭医向けレビューが挙げ、小児の総説の用量表も同じ6〜8週を採る325。⚠️ 同じ資料の中でも割れており、StatPearlsは用量表で4〜6週、投与方法の節で6〜12週、の節で6〜10週と3通りに書いている4。実際の用量・期間は施設のプロトコルと各国の添付文書で確認する。

禁忌・注意

💡 定期的な血液検査を行うかは、添付文書と近年の実測が食い違っている。 米国添付文書は長期投与例で腎・肝・造血機能の定期的な観察を求めるが3、StatPearlsは、またはを服用した成人・小児ので異常が低頻度かつ軽度だったことを根拠に、感染に対する投与では定期的な・・血算の測定は不要と考えられるとしている4。

副作用

頻度 内容
最も多い 過敏症型(皮疹、蕁麻疹、様の)。まれに血管神経性浮腫。中止を要することがある3
ときどき 頭痛、悪心・嘔吐・不快・下痢、疲労、めまい、不眠、精神、の遂行能力の低下、口腔カンジダ症3
注意 、(アルコール併用時)、長期投与後の手足の
まれ 蛋白尿、(があれば中止)、様症候群、の増悪
重篤 ⚠️ ・・、肝障害(・・、黄疸)。いずれも入院・死亡に至りうるがある3

💡 重い反応は高用量・長期投与、またはその両方に伴って生じるとされる。 添付文書はこの点を明記しており、長期投与例で臓器機能を観察する根拠になっている3。

まとめ

  • 微小管()に結合し真菌の有糸分裂を止める、専用の古典的な。新しいにのみ予防的に働くため長期投与(で4〜8週、では指爪4か月以上・足爪6か月以上)が必須。
  • 大半の適応で・に置き換えられたが、小児の、特にMicrosporum canisが疑われる場面では今も選択肢として残る。Trichophyton tonsurans感染ではが優れる。には用いない。
  • ⚠️ 小児用量は添付文書(ウルトラマイクロサイズ約7.3 mg/kg/日)と実地の総説(10〜15 mg/kg/日、マイクロサイズなら20〜25 mg/kg/日)で大きく違う。 どちらの数字かを意識して覚える。
  • 誘導によりワルファリンの効果減弱・経口避妊薬の効果減弱を来す。逆には本剤の作用を弱める。
  • アルコールとのが知られるが、根拠は症例報告レベルにとどまる。
  • 禁忌は妊娠・・肝細胞性肝不全・過敏症。⚠️ と肝障害という致死的でありうる副作用がに置かれている。

出典

  1. 1.Pediatric Tinea Capitis: A Retrospective Cohort Study from 2010 to 2021(Journal of Fungi (Basel)・2023)イスラエルの2施設で2010〜2021年に確定診断された18歳未満の頭部白癬456例のうち、抗真菌薬の記録がある424例・治療反応の評価が可能だった222例を解析した後方視的コホート。臨床的完全奏効はTrichophyton tonsurans感染でテルビナフィン95%(19/20例)・フルコナゾール68%(30/44例)・グリセオフルビン38%(5/13例)と有意差があり(p<0.001)、Microsporum canis感染ではグリセオフルビン73%(35/48例)・フルコナゾール66%(39/59例)で有意差がなかった(p=0.44)。M. canisにテルビナフィンを用いた4例は完全奏効0例だった。治療期間の中央値は全体で2か月、テルビナフィンのみ6週と短かった。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Diagnosis and Management of Tinea Infections(American Family Physician (AAFP)・2025)頭部白癬には全身抗真菌薬が必須で外用薬は毛包に届かないこと、グリセオフルビン6〜8週が長らく第一選択とされてきたが無作為化試験ではより短いテルビナフィン4〜6週が同等に有効かつ安全であること、テルビナフィンはTrichophyton属に、グリセオフルビンはより頻度の低いMicrosporum属に優れうること、米国の頭部白癬の89%超がTrichophyton属によるため培養結果を待たずテルビナフィンを選ぶのが妥当だがMicrosporum属と判明したらグリセオフルビンを要しうること、薬剤一覧表でグリセオフルビンの用量が1日500〜1000 mg・頭部白癬で6〜12週と示されていること、「白癬治療の落とし穴」と題した表が「爪白癬にグリセオフルビンを使わない。テルビナフィンのほうが忍容性・高い治癒率・低コストにより通常はより良い選択肢である」を挙げていることを確認した。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Ultramicrosize Griseofulvin Tablets, USP — Prescribing Information(U.S. National Library of Medicine, DailyMed(Amneal Pharmaceuticals of New York)・2025)2025年12月版の米国添付文書で、禁忌が妊娠・ポルフィリン症・肝細胞性肝不全・グリセオフルビン過敏症の既往であること(妊娠初回三半期の服用例で結合双胎が2例報告されている)、警告にStevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死融解症・多形紅斑などの重症皮膚反応と、AST・ALT・ビリルビン上昇および黄疸を含む肝障害が置かれていること、承認用量が成人で1日375 mg(体部・股部・頭部白癬)/分割750 mg(足白癬・爪白癬)、小児で約7.3 mg/kg/日(体重16〜27 kgで1日125〜187.5 mg、27 kg超で1日187.5〜375 mg)であり2歳以下では用量が確立していないこと、代表的治療期間が頭部白癬4〜6週・体部白癬2〜4週・足白癬4〜8週・指爪4か月以上/足爪6か月以上であること、Penicillium属由来のためペニシリンとの交差過敏の可能性はあるが既知のペニシリン過敏例が問題なく治療されているとも記載されていること、長期投与では腎・肝・造血機能の定期的な観察を求め顆粒球減少があれば中止すべきとしていること、バルビツール酸系がグリセオフルビンの作用を減弱させること、ワルファリン型抗凝固薬の活性を低下させること、経口避妊薬との相互作用の報告があること、アルコールの作用が増強され頻脈・紅潮を生じうることを確認した。閲覧 2026-09-08
  4. 4.Griseofulvin(StatPearls(NCBI Bookshelf)・2023)2023年7月31日最終更新の章で、グリセオフルビンが微小管重合を阻害し皮膚糸状菌(Trichophyton・Microsporum・Epidermophyton属)の有糸分裂を止める静真菌的薬であり酵母様真菌・二形性真菌・Candida・クロモミコーシスには無効であること、脂肪食で消化管吸収が高まること、肝代謝を受けCYP450誘導作用を持つこと、成人のマイクロサイズ製剤が頭部白癬で1日500 mg・4〜6週、爪白癬で1日1000 mgかつ指爪4か月/足爪6か月、ウルトラマイクロサイズ製剤が頭部白癬で1日375 mg・4〜6週であること、禁忌に妊娠・肝不全・晩発性皮膚ポルフィリン症・過敏症が含まれること、ワルファリンの抗凝固作用を酵素誘導により減弱させアルコールの作用を増強しジスルフィラム様反応を起こしうること、テルビナフィン/グリセオフルビン服用者の大規模後方視的研究を根拠に定期的な肝機能検査・血算の実施は成人・小児とも不要と考えられるとしていることを確認した。⚠️ 同じ章の投与方法の節は頭部白癬の治療期間を6〜12週、多職種連携の節は6〜10週と書いており、用量表の4〜6週と食い違っている。閲覧 2026-09-08
  5. 5.Superficial Fungal Infections in Children—What Do We Know?(Journal of Clinical Medicine・2025)小児の表在性真菌感染の総説で、全身抗真菌薬の用量・期間をまとめた表が頭部白癬のグリセオフルビンを小児でウルトラマイクロサイズ10〜15 mg/kg/日またはマイクロサイズ懸濁液20〜25 mg/kg/日・6〜8週、成人で1日500 mgとしていること、頭部白癬では治療開始後1〜2週間にケトコナゾールまたは硫化セレン含有シャンプーを併用すると菌量と伝播を減らしうるとしていることを確認した。⚠️ この用量表が引用している参考文献は爪疾患の総説であり、小児頭部白癬の原著ではない。閲覧 2026-09-08
  6. 6.Griseofulvin Oral Suspension, USP (microsize) — Prescribing Information(U.S. National Library of Medicine, DailyMed(Chartwell RX)・2024)2024年10月版の米国添付文書で、マイクロサイズ製剤の成人用量が体部白癬・股部白癬・頭部白癬で1日500 mg、足白癬・爪白癬で1日1 gであること、小児用量が体重1ポンドあたり約5 mg/日(体重30〜50ポンドで1日125〜250 mg、50ポンド超で1日250〜500 mg)であること、代表的治療期間が頭部白癬4〜6週・体部白癬2〜4週・足白癬4〜8週・指爪4か月以上/足爪6か月以上であること、禁忌がポルフィリン症・肝細胞性肝不全・グリセオフルビン過敏症の既往であることを確認した。閲覧 2026-09-08
  7. 7.Fact versus Fiction: a Review of the Evidence behind Alcohol and Antibiotic Interactions(Antimicrobial Agents and Chemotherapy・2020)グリセオフルビンとアルコールのジスルフィラム様反応(頻脈・顔面紅潮)を裏付けるエビデンスが症例報告レベルにとどまり対照試験は存在しないこと、500 mgのグリセオフルビンとビール1缶の摂取後に集中治療を要した重症例が報告されていること、それでも添付文書・専門家はアルコール併用を避けるよう推奨していることを確認した閲覧 2026-08-10