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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

多形紅斑

Erythema multiforme

別名
EM
臓器系
皮膚免疫・膠原病
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 3-27:血管炎・多形紅斑・結節性紅斑
鑑別疾患
固定薬疹薬疹(SJS・TENを含む)
治療薬
(バル)アシクロビル
原因薬剤
クリンダマイシン
原因微生物
Herpes simplex virus 1
症状
浮腫
原因となる疾患
単純ヘルペスウイルス感染症

🧠 全体像は、感染を主な誘因とする、表皮を標的とした急性の免疫反応である。左右対称に・四肢伸側へ出現する典型的病変が特徴で、「暗い中心部→淡い浮腫性帯→外側の紅色輪」という3層構造をもつ。⚠️ EMはSpectrumとしてSJS/TENと連続する疾患ではない——「SJSはEMの重症型」という古い整理は誤りであり、両者は原因・分布・重症度の異なる別疾患として扱う。

病態と誘因

EMは主に感染(とくにHSV)に対する表皮標的型の細胞性免疫反応であり、(SJS・TENを含む)で中心となる薬剤性の広範な表皮壊死とは機序が異なる。

誘因 頻度・特徴
(HSV-1・HSV-2)感染 最も多い誘因。口唇・性器HSVの後、数日〜2週で皮疹が出現することが多い1
などの感染 HSV以外の感染症でも生じ得る誘因で、とくに小児例で重要となる1
薬剤(クリンダマイシンなど) 関与し得るが、SJS/TENほど中心的な原因ではない

感染(HSV・など)が誘因の約9割を占め、薬剤は少数にとどまる2。反復するEMの多くはHSV再活性化に伴うもので、明らかな臨床的HSV病変がなくてものたびに皮疹を生じることがある。

臨床像

典型病変はで、暗い中心部、その周囲の淡い浮腫性帯、外側の紅色輪という3層構造をもつ。・四肢伸側に左右対称に出現し、体幹病変は少ない。

病型 所見
EM minor 典型的病変が主体で、粘膜病変はないか軽い
EM major 典型的病変に1か所以上のを伴い、全身症状が強い

EMとSJS/TENの鑑別

両者は見た目が一部重なるが、原因・病変分布・重症度が異なる別疾患として扱う。

項目 SJS/TEN
主な誘因 HSV感染が中心 薬剤が中心((SJS・TENを含む)を参照)
病変 典型的な3層病変 体幹優位の非典型病変、
分布 四肢末端・伸側優位、左右対称 体幹優位に始まり広範囲へ拡大し得る
通常なし。水疱・びらんはあり得る 表皮壊死・が本態で、によりする
粘膜病変 EM majorでは1か所以上あり得るが限定的 複数粘膜に広範囲で及ぶことが多い

診断

臨床像(3層病変の分布と形態)で診断することが多く、非典型例や鑑別が困難な場合に皮膚生検を追加する。HSV既往・、口腔・眼・粘膜の評価、原因薬剤の有無の確認を行う。

flowchart TD
    A["左右対称の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target-shaped (targetoid)'>標的状</span>病変"] --> B["粘膜病変の有無を確認"]
    B --> C["粘膜病変なし・軽度:EM minor"]
    B --> D["粘膜病変あり・全身症状:EM major"]
    A --> E["体幹優位の非典型病変・広範な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidermal detachment'>表皮剝離</span>"]
    E --> F["SJS/TENを疑い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='culprit (suspected) drug'>被疑薬</span>を中止し緊急評価"]

⚠️ 眼痛、視力変化、広範なを認める場合はEMの枠組みで様子をみず、SJS/TENとして緊急評価する。

治療

  • 原因治療、創傷・口腔ケア、疼痛・水分管理を行う。多くは自然軽快する良性の経過をたどる。
  • HSV関連の反復例では、のたびに介入するのではなく持続的な抗ウイルス薬内服(アシクロビル400 mg 1日2回など)を6か月以上の単位で検討する——反復性EMに対する数少ない有効な予防手段である1
  • 粘膜病変を伴うEM majorでは、眼科的評価や口腔ケアを含めた支持療法を強化する。
  • は重症例で早期に投与されることがあるが、有効性を支持するエビデンスは限られており、位置づけは確立していない1。SJS/TENが疑われる場合は原因薬をただちに中止し、(SJS・TENを含む)の方針に沿って対応する。

まとめ

  • は主にHSV感染に対する免疫反応で、四肢末端・伸側優位の左右対称な3層病変を特徴とする。
  • EMはSJS/TENと連続する疾患ではなく、原因・病変分布・重症度が異なる別疾患として扱う。
  • 粘膜病変の有無でEM minorとEM majorに分けるが、広範なや複数を認めればSJS/TENを疑い緊急評価する。
  • 反復するHSV関連EMには持続的抗ウイルス薬による予防を検討する。

出典

  1. 1.Erythema Multiforme(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)EMはSJS/TENとは別疾患として分類されること、症例の約90%が感染(HSVが最多、マイコプラズマは小児で重要)に起因すること、全身性副腎皮質ステロイドを支持するエビデンスは限られること、反復するHSV関連EMにはアシクロビル400 mg 1日2回を6か月以上継続する抑制療法が提案されることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Erythema Multiforme(British Association of Dermatologists・2024)約9割の症例がHSVやマイコプラズマなどの感染を誘因とし、薬剤(NSAIDs・抗菌薬・抗けいれん薬など)は少数にとどまること、HSV再燃に伴う反復例には低用量アシクロビルの長期内服が選択肢になることを確認した。閲覧 2026-08-03