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Drug Atlas · C4 Antifungals / 抗真菌薬

硫化セレン

selenium sulfide

分類
Antifungals / 抗真菌薬
科目
Pharmacology
トピック
C4: Antifungal agents
承認適応
癜風脂漏性皮膚炎
標的微生物
Malassezia furfur

🧠 全体像:硫化を理解する軸は、これがのような「真菌の酵素を狙う」薬ではないという一点にある。がCYP51を阻害して合成を止める特異的な抗真菌薬であるのに対し、硫化は表皮・毛包上皮細胞の分裂を抑えての入れ替わりを速め、菌要素を含んだごと物理的に脱落させるという非特異的な作用・ふけ症に効く。厳密には「抗真菌スペクトラムを持つ薬」ではなく、「宿主側のを作り替えることで結果的に菌を減らす薬」というのが実態であり、この一点が用法(塗布後に一定時間置いてから洗い流す)の意味も説明する。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 作用の対象 特異的な抗真菌活性
(外用) 真菌のCYP51(合成酵素) ありによる特異的機序)
非特異的角質溶解・抑制薬 硫化 宿主の表皮・毛包上皮細胞 なしの入れ替わりを速めて菌を物理的に除去)
(経口) 真菌のCYP51 あり(広範囲・難治例の経口治療)

硫化は「抗真菌薬」という呼び名が便宜的なものであることを教える薬である。 と同じ棚に並ぶが、標的も機序もまったく異なり、真菌そのものを殺すのではなく宿主の代謝を変えることで間接的に菌量を減らす。では2.5%製剤の週1回投与がシャンプーとほぼ同等の率を示しており、非特異的な機序であっても有効性はに劣らない1

機序

flowchart TD
    A["硫化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selenium'>セレン</span>を患部に塗布"] --> B["表皮・毛包上皮細胞の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell division'>細胞分裂</span>を抑制"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratinocyte'>角化細胞</span>(コルネオサイト)産生の減少"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stratum corneum'>角層</span>のターンオーバーが亢進"]
    D --> E["菌要素を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stratum corneum'>角層</span>が<br>物理的に脱落・除去される"]
    E --> F["Malassezia furfurの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stratum corneum'>角層</span>内定着量が減少"]
    A -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Azoles'>アゾール系</span>のような<br>真菌酵素の特異的阻害ではない"| G["厳密な意味での<br>抗真菌スペクトラムは持たない"]

💡 「なぜ塗布後にすぐ洗い流さず、一定時間置くのか」という用法の意味は、この機序に直結している。 の入れ替わりを促す効果は接触時間に依存するため、十分な時間皮膚上に留めてから洗い流すことで初めて角質溶解・菌の物理的除去という効果が得られる2

薬物動態

項目 値・特徴
外用(ローション・シャンプー、代表的な濃度は2.5%)
全身吸収 健常な皮膚では最小限にとどまる
吸収が増える条件 びらん・炎症のある皮膚、広範囲塗布ではが増加しうる2

適応

領域 使いどころ
の外用第一選択の一つ(と並ぶ)1、頭皮の、ふけ症

用法・用量

には患部に塗布し少量の水で泡立て、10分間皮膚上に置いてから十分にすすぐという使い方を連日7日間反復するレジメンが用いられる2・ふけ症には頭皮を濡らして塗布し2〜3分間置いてからすすぐ操作を週2回程度から開始し、症状改善後は頻度を減らして維持する。再発予防として月1回程度の間欠使用が検討されることもある1

⚠️ 「置く時間」を守らないと効果が落ちる。 洗浄剤のようにすぐ洗い流すと角質溶解効果が不十分になり得るため、指定の接触時間を守ることを患者に伝える必要がある。

禁忌・注意

  • びらん・炎症のある皮膚には使用しない。 吸収が増加するおそれがある2
  • ⚠️ 広範囲・びらん面への使用や頻回使用ではが増え、皮膚刺激や毛髪・爪の(脱色)を来しうる
  • 眼・への接触は刺激・灼熱感を来しやすく、付着した場合は十分にすすぐ
  • 使用中に強い刺激感が持続する場合は他系統()への変更を検討する

副作用

頻度 内容
高頻度 塗布部位の皮膚刺激、脱毛の一時的な増加
注意 毛髪・爪の(脱色)
まれ 広範囲・びらん面での使用時にが増え、全身性の刺激症状につながる可能性

まとめ

  • 硫化のような真菌の酵素を狙う特異的な抗真菌薬ではなく、表皮・毛包上皮細胞のを抑制してのターンオーバーを促し、菌要素を物理的に除去する非特異的な機序を持つ。
  • の外用第一選択の一つで、シャンプーと同等の率を示す。
  • 用法は「塗布後10分間置いてから洗い流す」という接触時間そのものが効果を左右する。
  • ⚠️ びらん・広範囲皮膚への使用はを増やし、皮膚刺激や毛髪・爪の脱色などのを高める。
  • 日本での状況(商品名)は本ノート作成時点で確認できていない。米国ではOTC(薬)として流通している。

出典

  1. 1.Selenium Sulfide Lotion USP, 2.5% — Prescribing Information(U.S. National Library of Medicine(DailyMed)/Morton Grove Pharmaceuticals, Inc.・2025)機序(表皮・毛包上皮細胞に対する細胞分裂抑制〔cytostatic〕作用でコルネオサイト産生を減らすという非特異的作用)、癜風での用法(患部に塗布し少量の水で泡立て10分間皮膚上に置いてから十分にすすぎ、連日7日間反復)、びらん・炎症のある皮膚には使用しないという注意(吸収増加のおそれ)、外用専用の表示、副作用(皮膚刺激、脱毛の一時的増加、毛髪の脱色)を確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Antifungal Treatment for Pityriasis Versicolor(Journal of Fungi (MDPI)・2015)硫化セレンが特異的な抗真菌薬ではなく「感染組織を物理的・化学的に除去する」非特異的な薬剤に分類されること、2.5%硫化セレンシャンプー週1回×3週投与がケトコナゾールシャンプーと同等の真菌学的治癒率(95%対85%、4週時点)を示したこと、月1回投与のイトラコナゾール・硫化セレンが再発予防に有用となりうるとの結論を確認した閲覧 2026-08-11