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Drug Atlas · C4 Antifungals / 抗真菌薬 · 必修

ナタマイシン

natamycin

分類
Antifungals / 抗真菌薬
科目
Pharmacology
トピック
C4: Antifungal agents
承認適応
角膜炎
標的微生物
Fusarium
副作用
眼痛視力低下呼吸困難

🧠 全体像:ナタマイシンは、と同じでありながら眼科の真菌性角膜炎という単一の適応に特化して生き残った薬である。が「消化管を素通りする」ことで局所カンジダ症に特化したのと対をなし、ナタマイシンはのまま角膜表層にとどまり全身にはほぼ吸収されないという性質によって、点眼というそのものが治療域になっている。特に糸状菌(Fusarium属など)による角膜炎に対する第一選択という地位は、RCT(MUTT I)でに対するが示されたことに裏づけられている。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 主な適応 全身投与
口腔・皮膚・腸管の局所カンジダ症 不可(経口吸収されない)
ナタマイシン 真菌性角膜炎(特にFusarium属) 不可(点眼で局所にとどまる)
全身性真菌症、真菌性角膜炎の全身投与・追加治療 可(内服・静注)

「点眼で治療域が完結する」という一点がナタマイシンの位置づけを決める。 全身性真菌症には無効だが、角膜という限局した部位に対してはのまま高濃度で作用でき、しかもRCTで糸状菌性角膜炎におけるまで示されている数少ないである。

機序

flowchart TD
    A["ナタマイシン(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Polyenes'>ポリエン系</span>)を点眼投与"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suspension'>懸濁液</span>のまま角膜局所にとどまる<br>(全身吸収は期待されない)"]
    B --> C["真菌細胞膜のステロール部分に結合"]
    C --> D["膜の透過性が変化"]
    D --> E["細胞内の必須構成成分が漏出"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fungicidal'>殺真菌的</span>に作用"]
    G["Fusarium属などの糸状菌"] -.-> C

💡 細菌には作用しない。 はステロールを含む真菌細胞膜を標的にするため、ステロールを持たない細菌には in vitro で無効である1。細菌性・真菌性のを疑う場合は、ナタマイシン単独に頼らず抗菌薬の併用を検討する。

適応

領域 使いどころ
眼科 感受性菌による真菌性眼瞼炎・炎・角膜炎Fusarium solaniによる角膜炎を含む)1

MUTT I試験(塗抹陽性の糸状菌性角膜潰瘍323例、RCT)で、ナタマイシンはより3か月時点の最良矯正視力が有意に良好で、の必要性も少なかった。 この差はFusarium属のサブグループで特に大きく(穿孔0.06)、Fusarium属以外の起因菌では両群に有意差がなかった2。この結果が、糸状菌性角膜炎、とりわけFusarium属に対する第一選択という位置づけの根拠になっている。可能な限り、原因真菌に対するナタマイシンのin vitro感受性を確認することが望ましい1

用法・用量

角膜炎では1滴を嚢内に1〜2時間ごとに点眼して開始し、3〜4日後には1日6〜8回まで頻度を減らせることが多い。治療期間は活動性の真菌性角膜炎が消退するまで、通常14〜21日間継続する。7〜10日間投与しても改善が見られない場合は、原因菌がナタマイシンに感受性を持たない可能性を考え、臨床的な再評価と追加の検査室診断を行う1。眼瞼炎・炎ではより少ない回数から開始することが多い。実際の投与回数・期間は重症度・治療反応で個別に調整するため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

副作用

頻度 内容
局所症状 眼痛、眼刺激、1
注意 視力変化1
重篤・まれ 過敏反応、胸痛、呼吸困難後報告)1

まとめ

  • ナタマイシンはの点眼用抗真菌薬で、真菌細胞膜のステロールに結合しを変化させてに働く。と同じ機序ながら、眼科の局所治療という別の適応で使われる。
  • 点眼のまま角膜局所にとどまり全身にはほぼ吸収されないため、全身性真菌症には無効。逆にこのゆえに角膜での高い治療濃度が得られる。
  • 糸状菌(特にFusarium属)による真菌性角膜炎の第一選択。 MUTT I試験でに対する視力・穿孔リスクのが示された。
  • 用法は1〜2時間ごとの頻回点眼で開始し、3〜4日後に1日6〜8回へ減量、14〜21日間継続。7〜10日で無効なら原因菌の再評価を行う。
  • 禁忌は成分への過敏症のみ。細菌には無効なためでは抗菌薬の併用を検討し、・全身性真菌症には全身投与可能な抗真菌薬へ切り替える。

出典

  1. 1.NATACYN (natamycin ophthalmic suspension) 5% — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2025)適応が感受性菌(Fusarium solaniによる角膜炎を含む)による真菌性眼瞼炎・結膜炎・角膜炎であること、機序が真菌細胞膜のステロール部分への結合による膜透過性変化と細胞内容物の漏出で殺真菌的に働くこと、局所投与後に全身吸収は期待されないこと、細菌には in vitro で無効であること、禁忌が成分への過敏症の既往のみであること、角膜炎での用法が1〜2時間ごとの点眼で開始し3〜4日後に1日6〜8回へ減らし14〜21日間(または活動性病変が消退するまで)継続すること、7〜10日で改善がなければ感受性の無い病原体を疑い再評価すること、有害事象として過敏反応・視覚変化・胸痛・角膜混濁・呼吸困難・眼不快感・眼瞼浮腫・眼充血・眼刺激・眼痛・異物感・知覚異常・流涙が報告されていることを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.The Mycotic Ulcer Treatment Trial: A Randomized Trial Comparing Natamycin vs Voriconazole(JAMA Ophthalmology(Prajna NV, et al.)・2013)塗抹陽性の糸状菌性角膜潰瘍323例を対象とした二重盲検多施設RCT(MUTT I)で、3か月時点の最良矯正視力がナタマイシン群でボリコナゾール群より有意に良好であり(回帰係数0.18 logMAR、P=.006)、角膜穿孔・角膜移植の必要性もナタマイシン群で少なかった(オッズ比0.42、P=.009)こと、Fusarium属によるサブグループではこの差がさらに大きく(視力の回帰係数0.41 logMAR、P<.001、穿孔オッズ比0.06、P<.001)、Fusarium属以外の起因菌では両群で有意差がなかった(視力P=.81、穿孔P=.86)ことを確認した。閲覧 2026-08-11