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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

癜風

Tinea (pityriasis) versicolor

別名
pityriasis versicolorでんぷう
臓器系
皮膚感染症
科目
DermatologyMedical MicrobiologyInternal Medicine
トピック
皮膚科 1-15:癜風微生物学 4/6:表在性・皮下真菌症微生物学 4/2:真菌症の分類・病態機序・危険因子内科学 S-58:局所・全身性真菌感染症
鑑別疾患
カンジダ症マラセチア毛包炎脂漏性皮膚炎尋常性白斑皮膚糸状菌症(白癬)
治療薬
ケトコナゾールクロトリマゾールイトラコナゾールフルコナゾールテルビナフィン硫化セレン
原因微生物
Malassezia furfur
症状
掻痒
検査値
KOH標本
適応薬
硫化セレン

🧠 全体像は「感染る病気」ではなく、皮膚に常在するMalassezia属がから菌糸型へ転じて内で増殖するという状態変化の病気である。だから他人にうつす心配をするより、高温多湿・発汗・脂漏・免疫抑制・ステロイド使用といった転換を起こす条件を考える方が実践的で、治療後も再発しやすいことの説明にもなる。もう一つの核心は名前の由来そのもの——同じ菌がにも色素沈着にもなる——で、「versicolor(色とりどり)」という語がこの臨床像をそのまま言い当てている。

病態

Malassezia属は皮膚常在の酵母で、通常は単相のとしての多い部位に定着している。高温多湿、多汗、脂漏、免疫抑制、使用などの条件が重なると、短く湾曲したを伴う菌糸型(疾患形)へ転換し、内で増殖してを発症する。ヒトからヒトへ強く伝播する感染症ではなく、常在菌の状態変化として理解する。

flowchart TD
    A["Malassezia属(皮膚常在の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipophilic'>脂質好性</span>酵母)"] --> B{"高温多湿・発汗・脂漏・免疫抑制・ステロイド"}
    B -->|"転換"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='yeast'>酵母型</span>から菌糸型(疾患形)へ移行"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stratum corneum'>角層</span>内で増殖"]
    D --> E["脂質分解産物(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azelaic acid'>アゼライン酸</span>など)を産生"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='melanocyte'>メラノサイト</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyrosinase'>チロシナーゼ</span>阻害"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypochromia'>低色素</span>斑(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypopigmentation'>色素脱失</span>)"]
    D --> H["炎症・周囲皮膚との色調差"]
    H --> I["高<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigmented macule'>色素斑</span>(色素沈着)"]

💡 なぜ同じ菌が「色が抜ける」病気と「色が濃くなる」病気の両方を起こすのか。 菌の脂質分解産物であるなどがを阻害してを起こす一方、炎症のある皮膚や日焼けした皮膚では周囲との色調差が逆転して相対的に濃く見える——同じ機序が経過や日焼けの有無によってにも高色素にも見える。これが「versicolor(色とりどり)」という病名の由来である。

臨床像

  • 体幹・上腕を中心に、境界比較的明瞭で微細な鱗屑を伴う斑が多発・融合する。
  • と色素沈着のどちらの形でも生じうる。 淡い皮膚では淡褐色〜紅褐色(色素沈着)、日焼けした皮膚や濃い皮膚ではに見えることが多い。
  • 鱗屑は肉眼で目立たないことがあるが、爪やキュレットで軽く擦ると鱗屑が浮き出る(coup d’ongle徴候/Besnier徴候)——器具を使わず診察の場で確認できるベッドサイドの所見である。
  • 掻痒はないか軽度にとどまる。

診断

検査 所見
太く短い菌糸と胞子がする像——比喩的に「スパゲッティと」像と呼ばれる1
黄色〜の蛍光を示すことがあるが、陰性でも否定できない
臨床診断 分布、色調、細かい鱗屑、coup d’ongle所見、再発歴を統合する

⚠️ 病変を擦るとの陽性率が上がる。爪で擦って浮いた鱗屑を採取すると、菌要素の採取量が増え偽陰性を減らせる。

鑑別

疾患 鑑別点
尋常性 完全なそのものの消失)で境界はよりさらに明瞭、鱗屑を伴わない
頭皮・顔面(など)優位の紅斑・で、体幹の色調不同は主体ではない
(白癬) 辺縁が活動性で中心治癒傾向の環状病変。KOHではのみで胞子を伴わない
炎症後 先行する炎症性皮疹の既往があり、は陰性
同じMalassezia属だがの丘疹・膿疱が主体で、鱗屑を伴う斑ではない

治療

外用抗真菌薬が第一選択で、広範囲・難治例に限りを検討する2

治療群 内容
外用(第一選択) などの硫化
経口(広範囲・頻回再発・外用不応) 200 mg/日を5〜7日間(1000 mg以上)、または300 mg週1回を2週間もしくは400 mg単回投与2
再発予防 高温多湿期に抗真菌シャンプーを間欠使用するなど個別に検討

⚠️ 経口には無効である。 ・汗腺への移行が乏しくMalassezia属に対する殺真菌活性が不十分なためで、外用の有効性とは分けて考える必要がある2

⚠️ 治療後も色素異常は数週〜数か月残る。 菌学的には治癒していても・高そのものはの機能回復を待つ必要があり、色が残っているだけで・再発と誤解しない。

まとめ

  • は皮膚常在のMalassezia furfurがから菌糸型へ転じて内で増殖する状態変化であり、人から人への伝染性は乏しく、高温多湿・発汗・脂漏・免疫抑制・ステロイドが誘因になる。
  • 体幹・上腕の境界明瞭で微細な鱗屑を伴う斑が特徴で、・色素沈着のどちらの形でも生じうる(「versicolor」の由来)。爪で擦ると鱗屑が浮き出るcoup d’ongle所見も手がかりになる。
  • 診断の核心はでの「スパゲッティと」像で、陰性は否定根拠にならない。
  • 治療は外用・硫化が第一選択で、広範囲・難治例に経口を用いる。経口は無効。
  • 治療後も色素異常は数週〜数か月残り得るため、色調の回復だけでと判断しない。

出典

  1. 1.皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会・2025)癜風では太く短い菌糸と球状胞子の集簇(「スパゲッティとミートボール」像)がKOH直接鏡検で観察されること、癜風・マラセチア毛包炎ではKOHを使わず酸性メチレンブルー(ズームブルー®)で溶解と染色を兼ねられること閲覧 2026-08-11
  2. 2.Antifungal Treatment for Pityriasis Versicolor(Journal of Fungi (MDPI)・2015)経口テルビナフィンは角層・汗腺への移行が乏しくMalassezia属に対する殺真菌活性が不十分なため癜風の経口治療としては無効であること(外用テルビナフィンとは異なる)、有効な経口レジメンとしてイトラコナゾール200mg/日を5〜7日間(総投与量1000mg以上)、フルコナゾール300mg週1回を2週間または400mg単回投与が挙げられること、外用のジンクピリチオン・ケトコナゾール・テルビナフィンが第一選択であること閲覧 2026-08-11