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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

脂漏性皮膚炎

Seborrheic dermatitis

臓器系
皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 3-18:脂漏性皮膚炎の臨床型と治療
鑑別疾患
Darier病アトピー性皮膚炎カンジダ症黄癬酒皶・口囲皮膚炎尋常性乾癬接触皮膚炎全身性エリテマトーデス皮膚糸状菌症(白癬)疥癬癜風
治療薬
ケトコナゾールシクロピロクスクロトリマゾール硫化セレンタクロリムスピメクロリムスロフルミラスト
原因微生物
Malassezia globosaMalassezia restrictaMalassezia furfur
症状
掻痒落屑
原因となる疾患
HIV感染症・AIDS
適応薬
ケトコナゾールシクロピロクスピメクロリムスロフルミラスト硫化セレン

🧠 全体像:は、の多い頭皮・顔面・胸部などに生じる慢性再発性の紅斑・鱗屑である。そのものの異常だけでなく、への炎症反応、皮膚バリア、(免疫状態など)が絡み合って生じる——「の量」ではなく「への宿主の反応」が病態の主役だと理解すると、治療が抗真菌薬中心である理由も、急な重症化で感染などを疑う理由も筋が通る。

好発部位と形態

部位
頭皮 細かい白色〜黄白色鱗屑、紅斑、掻痒。軽症のから厚い痂皮まで幅がある
顔面 ・眉毛、、、耳介周囲、外耳道の紅斑と脂性鱗屑
体幹 ・に境界比較的明瞭な紅斑・鱗屑
腋窩、鼠径、などの紅斑。カンジダ症やを鑑別
乳児 頭皮の厚い黄白色鱗屑・痂皮()。顔面・へ広がることもある

病態

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sebum'>皮脂</span>の多い部位の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='commensal yeast'>常在酵母</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Malassezia'>マラセチア属</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sebum'>皮脂</span>中脂質の利用・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metabolite'>代謝産物</span>"]
    B --> C["宿主の炎症反応+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin barrier function'>皮膚バリア機能</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='seborrheic dermatitis'>脂漏性皮膚炎</span>の紅斑・鱗屑"]
    E["冬季・ストレス・睡眠不足"] --> D
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human immunodeficiency virus'>HIV</span>感染・パーキンソン病などの免疫/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological'>神経学的</span>背景"] --> G["重症化・広範化・治療抵抗性"]

は正常皮膚にも常在するため、単なる感染症ではない。同じでも菌種で役割が異なり、・の病態に主に関与するのはMalassezia globosa・Malassezia restrictaで、黄金色蛍光とで知られるMalassezia furfurは主にの病態で扱われる別の菌種であり、両者を同一視しない1。重症化しやすい背景には、感染などの免疫抑制、パーキンソン病などの、全身状態不良がある。急に重症化した広範な例や治療抵抗例では、臨床背景に応じてこれらを評価する。を単純に「乾癬の前段階」とは捉えないが、両者の特徴を併せ持つはある。

鑑別診断

疾患 鑑別点
境界明瞭で厚い、頭髪境界を越える局面、
乾燥、年齢別の特徴的分布、
化粧品・・外用薬との時間関係、接触範囲に一致
、脱毛、黒点、膿瘍性病変。真菌検査が有用
のと
を避ける、、全身所見
夜間に強まる掻痒、・手関節・の分布、同居者にも掻痒。の多い部位という分布に合わない

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='seborrheic areas'>脂漏部位</span>の紅斑と鱗屑"] --> B["分布・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hair breakage'>断毛</span>・爪・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intertriginous (area)'>間擦部</span>を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='seborrheic dermatitis'>脂漏性皮膚炎</span>が典型"]
    B --> D["非典型または治療抵抗性"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topical antifungal'>外用抗真菌薬</span>を第一選択とする"]
    E --> F["炎症時のみ短期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-inflammatory therapy'>抗炎症治療</span>を追加"]
    F --> G["抗真菌薬による維持療法で再発予防"]
    D --> H["白癬・乾癬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contact dermatitis'>接触皮膚炎</span>・免疫抑制を再評価"]
部位 治療の要点
頭皮 2%、1%などのを規則的に使用する。、配合シャンプーも選択肢。強い炎症・掻痒には頭皮用副腎皮質ステロイドを短期間追加し、鱗屑が厚い場合は角質軟化を刺激に注意しつつ組み合わせる
顔面・体幹 を第一選択とし、代表薬は2%である。増悪時にはのを短期間だけ用いる。反復部位では、などを目的に検討する。ステロイドを避けたい部位では、非ステロイド性の外用フォーム0.3%も選択肢になる。改善後も週1〜数回の抗真菌薬維持療法で再発を減らせる
乳児 多くは自然軽快する。やオイルで鱗屑を軟らかくし、洗髪後にやさしく除去する(無理に剝がさない)。炎症が強ければ短期間のステロイドまたは抗真菌薬を検討し、広範囲・滲出・・があれば別疾患を評価する

抗真菌薬を軸に置く根拠

51試験9052例を集めた系統的レビューが、この治療体系の骨格を支えている2。

  • 2%外用は4週時点で・基剤より皮疹の消退失敗が31%少ない(相対危険0.69、95%CI 0.59〜0.81、8試験)。群で消退しなかった者の割合の中央値は69%だった。ただしエビデンスの確実性は「低」で、試験間のも大きい(I²=74%)。
  • 1%外用もより消退失敗が少なく(0.79、0.67〜0.94、8試験、確実性は中)、との直接比較では差が明らかでない(1.09、0.95〜1.26、3試験)。同じ系統の薬剤どうしで優劣をつける根拠は乏しく、剤形・使用感・入手性で選んでよい。
  • 💡 ステロイドではなく抗真菌薬を軸に据える理由は、効果ではなく副作用にある。 とは寛解率が同等(1.17、0.95〜1.44、6試験)である一方、副作用は群で44%少なかった(0.56、0.32〜0.96、8試験、確実性は中)。慢性再発性で長く使う疾患だからこそ、この差が積み上がる。
  • ⚠️ を代表薬として覚えない。 対照試験は12試験(N=3253)・11試験(N=3029)に対し、は1試験(N=126)しかない。同レビューはとについて「単一試験の短期評価でステロイドと同等」と述べるにとどまる。臨床で使えないという意味ではないが、根拠の厚みが桁違いである。
  • ⚠️ この評価はほぼ4週時点のものである。 追跡が5週を超えた試験は51試験中6試験しかなく、維持療法の期間・間隔を決める根拠は弱い。

フォーム0.3%は、米国の添付文書上は9歳以上のが適応で、体幹および/または頭皮の患部が乾いた状態で1日1回塗布する(頭皮・体幹のは12歳以上と別枠の適応である)。承認の根拠は8週間の基剤対照試験2件(STRATUM・Trial 203、計683例、中等症〜重症)で、8週時点のIGA治療成功は79.5%対58.0%(差20.6%、95%CI 11.2〜30.0)と73.1%対40.8%(差33.8%、95%CI 20.3〜47.4)だった。組み入れられたのは頭皮・顔面・体幹のいずれかに病変を持つ例である(用法の項が「体幹および/または頭皮」と書いているのは塗り方の記述で、顔面の病変を除外する趣旨ではない)3。

⚠️ 顔面への強力な副腎皮質ステロイドの長期連用は、、、、を起こし得るため避ける。

⚠️ フォームは中等度〜重度の( B・C)が禁忌である。外用でも血漿中にとが検出され、の試験ではで両者のが増加した。ではを要しない3。

まとめ

  • 頭皮、眉毛、、耳周囲、の紅斑・脂性鱗屑が典型である。
  • は病態に関与するが正常常在菌でもあり、「量」より「宿主の炎症反応」が病態の中心である。
  • を軸に、炎症時だけ短期のを加え、維持療法で再発を減らす。⭐ 最も根拠が厚いのは2%と1%で、はと効果が同等でありながら副作用が少ない。
  • ただし比較試験のほとんどが4週間の評価であり、維持療法の期間・間隔を決める根拠は弱い。
  • 顔面での強力なステロイド長期使用は避け、急な重症化・広範化・治療抵抗性では感染などの背景疾患とを見直す。

出典

  1. 1.Skin Commensal Fungus Malassezia and Its Lipases(Journal of Microbiology and Biotechnology・2021)脂漏性皮膚炎・フケの病態に主に関与するのはMalassezia restrictaとMalassezia globosaであり、Malassezia furfurは主に癜風の病態研究で扱われる別の菌種である。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Topical antifungals for seborrhoeic dermatitis(Cochrane Database of Systematic Reviews(Okokon EO, et al.)・2015)51試験9052例の系統的レビュー。4週時点で、ケトコナゾール2%外用は偽薬・基剤に比べて皮疹が消退しないリスクを31%下げた(相対危険0.69、95%CI 0.59〜0.81、8試験、確実性は低)。偽薬群で消退しなかった者の割合の中央値は69%。シクロピロクス1%も偽薬より消退失敗が少なく(0.79、0.67〜0.94、8試験、確実性は中)、ケトコナゾールとシクロピロクスの差は明らかでない(1.09、0.95〜1.26、3試験)。ケトコナゾールと外用ステロイドの寛解率は同等(1.17、0.95〜1.44、6試験、確実性は低)だが、副作用はケトコナゾール群で44%少なかった(0.56、0.32〜0.96、8試験、確実性は中)。偽薬対照試験の数はケトコナゾール12試験(N=3253)・シクロピロクス11試験(N=3029)に対しクロトリマゾールは1試験(N=126)のみで、クロトリマゾールとミコナゾールについては「単一試験の短期評価でステロイドと同等」と述べるにとどまる。⚠️ 著者らは考察で「ケトコナゾールは他の抗真菌薬と比べて効果の一貫性が高い」と書く一方、Implications for practice では「他の抗真菌薬との比較はほとんどが単一試験なので、ケトコナゾールが一貫して優れる/劣るとは言えない」とも明記している。抗真菌薬どうしの優劣を主張する根拠には使わない。追跡が5週を超えた試験は51試験中6試験にとどまる閲覧 2026-09-05
  3. 3.ZORYVE (roflumilast) aerosol, foam — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / Arcutis Biotherapeutics・2026)2026年6月改訂版。ZORYVEフォーム0.3%は9歳以上の脂漏性皮膚炎に適応を持つ(頭皮・体幹の尋常性乾癬は12歳以上と別枠の適応)。皮膚が乾いた状態の患部(体幹および/または頭皮)へ1日1回薄く塗布してすり込む。中等度〜重度の肝機能障害(Child-Pugh B・C)は禁忌。脂漏性皮膚炎の根拠は8週間の基剤対照試験2件(STRATUM・Trial 203、計683例、中等症〜重症のIGA 3〜4)で、8週時点のIGA治療成功(IGA 0または1かつベースラインから2段階以上の改善)はSTRATUMで79.5%対58.0%(差20.6%、95%CI 11.2〜30.0)、Trial 203で73.1%対40.8%(差33.8%、95%CI 20.3〜47.4)。9〜17歳を組み入れたのはSTRATUMのみで、2試験の基剤対照期間に含まれる9〜17歳は32例(うち実薬17例)閲覧 2026-09-05