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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

接触皮膚炎

Contact dermatitis

別名
Allergic contact dermatitisIrritant contact dermatitisアレルギー性接触皮膚炎刺激性接触皮膚炎
臓器系
皮膚免疫・膠原病
科目
PathologyDermatologyInternal MedicinePediatrics
トピック
病理学 A/36:Ⅲ型・Ⅳ型過敏反応(免疫複合体型/遅延型)病理学 C/101:炎症性皮膚疾患皮膚科 1-05:皮膚炎・湿疹群の臨床病型と治療皮膚科 1-20:汗疱・異汗性湿疹内科学 R-14:アレルギー小児科 3-37:アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・おむつ皮膚炎
鑑別疾患
アトピー性皮膚炎外耳炎脂漏性皮膚炎手湿疹丹毒・蜂窩織炎皮膚糸状菌症(白癬)
治療薬
トリアムシノロンプレドニゾロンタクロリムス
原因薬剤
ネオマイシンバシトラシン
症状
掻痒汗疱・異汗性湿疹皮膚の滲出・湿潤
元疾患
うっ滞性皮膚炎

🧠 全体像は、外来物質が皮膚に直接触れて生じる皮膚炎の総称だが、機序が全く異なる2つの型を含む——は事前の感作を必須とするIV型(遅延型)過敏反応で、は感作を介さない化学的・物理的な直接障害である。同じ「接触部の湿疹」でも、前者は再曝露後にT細胞が抗原を攻撃するまで時間がかかり接触部を越えて拡大しうるのに対し、後者は誰にでも起こり接触部に鋭く限局する。この違いが診断法(の適応)とを分ける。

アレルギー性接触皮膚炎の機序:感作相と惹起相

は、抗体ではなくT細胞が主役となるの代表例である。

  1. :低分子の抗原()が皮膚を通過し、表皮のが自己タンパクと結合した抗原を取り込み処理する。
  2. が所属リンパ節へ遊走し、ナイーブT細胞へ抗原提示 → リーT細胞が形成される(この間は無症状。通常10〜14日を要する)。
  3. :感作後に同じ抗原へ再曝露すると、リーT細胞・Th1細胞が皮膚へ動員され、サイトカイン(IFN-γなど)を介して炎症細胞を呼び込み、表皮を傷害する。発症は通常曝露後数時間〜数日
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hapten'>ハプテン</span>の初回皮膚曝露"] --> B["表皮の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Langerhans cells'>ランゲルハンス細胞</span>が<br>抗原を取り込み処理"]
    B --> C["所属リンパ節へ遊走し<br>ナイーブT細胞に抗原提示"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antigen-specific'>抗原特異的</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Notes'>メモ</span>リーT細胞の形成<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensitization phase'>感作相</span>:無症状)"]
    D --> E["同一抗原への再曝露"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Notes'>メモ</span>リーT細胞・Th1細胞が皮膚へ動員"]
    F --> G["サイトカイン放出→炎症細胞の集積"]
    G --> H["湿疹性皮膚炎(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elicitation phase'>惹起相</span>)"]

💡 には症状がないため、患者は「初めて使った製品で突然かぶれた」と感じやすい。実際にはその抗原への無症状の感作が先行している。

一方、はT細胞感作を経ない。強酸・強アルカリ・有機などがのバリア脂質を直接破壊し、表皮を傷害する。傷害された自身がIL-1α・TNF-αなどのを放出して獲得免疫を介さず直接炎症を惹起する点が、抗原提示とT細胞記憶を必須とするアレルギー性の経路との根本的な違いである。

はさらに、単回の強い曝露で生じる急性(強酸・強アルカリによる様の変化)と、弱い刺激(水仕事、、摩擦、乾燥)への反復曝露で徐々に生じる性(慢性)に分けられる。後者は医療従事者の頻回手洗いや美容師の水仕事など、の主因となる。

アレルギー性 vs 刺激性の対比

特徴
機序 IV型(T細胞介在性) 化学的・物理的な直接障害(非免疫性)
感作 必要(既往曝露が前提) 不要。誰にでも初回から起こりうる
発症までの時間 再曝露後、数時間〜数日 強い刺激では直後、弱い刺激では反復曝露後に緩徐に
症状の質 そう痒が優位 灼熱感・疼痛・刺激感が優位
分布 接触部を越えて拡大しうる 接触部に比較的鋭く限局する
頻度 の一部 最多の主因の一つ)

の方が頻度は高く、水仕事・・手指消毒の反復曝露によるの中心的原因になる。

診断:パッチテストの位置づけ

の確定診断はである。標準アレルゲンパネル(金属、ゴム、香料、など)を含む試験片を背部に48時間貼付し、除去後48〜96時間の判定で遅延性の紅斑・浸潤・水疱を陽性とする。

⚠️ や血清アレルゲンはI型(即時型)過敏反応用の検査であり、目的が異なるためIV型が主体のの診断には使えない。 を確定できず、曝露歴と分布の一致から臨床診断する。

判定は紅斑のみの疑陽性から浸潤・小水疱・水疱を伴う陽性まで段階づけて評価する。境界明瞭な紅斑のみで数日以内に急速に消退する刺激反応と、判定後もむしろ増強しうる真のアレルギー反応を混同しないよう、必要に応じて曝露後7日目前後の遅延判定を追加する。

代表的抗原と部位からの推定

・クロム・香料・・ゴムなどが代表的アレルゲンである。皮疹の分布は曝露源を推定する重要な手がかりになる。

部位 想定される抗原・曝露源
耳朶・へそ周囲・ (ピアス、ベルトバックル、腕時計)
・足底 クロム・ゴム加硫(革靴、ゴム靴)
露出部(顔・など) (ツルシなど植物由来)
頭皮辺縁・頭髪部
頸部・体幹(衣類接触部) 香料・(化粧品、香水、柔軟剤)
眼瞼 化粧品成分だけでなく、マニキュアなど手指に付着した抗原が触れることで生じることが多い(原因が眼周囲の製品とは限らない)
びらん・潰瘍周囲、術後創部 局所抗菌薬(など)

⚠️ 「治療のために塗った外用薬」自体がの原因になることがある。は外用抗菌薬の中でもの頻度が特に高い代表的アレルゲンである。

特殊な病型

  • :抗原(薬剤・化粧品・植物由来の光物質)と紫外線曝露が重なったにのみ生じる。顔・頸部・前腕・に好発し、で確認する。
  • :既に皮膚感作が成立している抗原(例:)に全身(経口摂取など)で再曝露すると、初回の感作部位に限らず全身へ皮疹が広がる病型。
  • :手指の反復する湿潤・洗浄・ゴム手袋・作業用薬剤への曝露が背景となり、刺激性・アレルギー性のいずれも生じうる。医療従事者・美容師・調理従事者などで頻度が高く、業務内容と皮疹の分布・(休日に軽快するかなど)の対応を確認する。

は、同一部位に刺激性(尿便・摩擦。皮膚のひだは比較的保たれる)とアレルギー性(ケア製品成分)の両方が生じうる好例である。

治療

治療の本体は原因抗原・刺激物の同定と回避であり、薬物治療はこれを補うものと位置づける。

  1. 曝露歴(職業、化粧品、装身具、外用薬、手袋、洗浄剤など)と皮疹分布を照合し、を推定・除去する。付着直後であれば速やかに洗い流す。
  2. 保湿剤でバリアを補い、部位・重症度に応じた強さのなど)を用いる。
  3. 顔面やなど長期の強力なステロイド外用を避けたい部位・反復例では、ステロイド代替として)を検討する。
  4. 広範囲・重症例(顔面腫脹を伴う例など)では、短期間のなど)を専門医管理下で用いる。

⚠️ 全身ステロイドを漫然と反復・長期使用しない。あくまで急性期の短期間であり、根治するのは抗原・刺激物の回避である。皮膚炎のような水疱を伴う広範囲の急性で、全身ステロイドを短期間のまま急に終了するとリバウンド増悪を来しやすい。中用量からしながら2〜3週間かけて終了するのが実際的である。

予防と患者指導

  • 原因アレルゲンが判明したら、含有製品の成分表示を確認する習慣づけと、代替製品の情報提供を行う。
  • では防護手袋の素材選択、保護、作業手順の見直しを産業医・職場と連携して行う。
  • ゴム手袋自体がアレルゲン(チウラム系加硫など)になりうるため、手袋着用下でも症状が続く場合は素材変更を検討する。
  • 一度成立した感作は生涯にわたり持続しうるため、長期管理の中心は再曝露の回避であり、外用薬はあくまで対症的な補助である。

⭐ 実臨床のは刺激性とアレルギー性が併存することが多い。保湿・刺激回避に反応しない反復例では、背景にが隠れていないかをで確認する価値がある。

鑑別診断

疾患 鑑別点
乾燥・年齢別の特徴的分布・を伴う慢性・再発性湿疹で、特定の外的接触に限局しない
頭皮・間・などの多い部位に黄白色鱗屑を伴う紅斑。接触歴との対応がない
(白癬) 辺縁が堤防状に隆起する環状皮疹で片側優位。で菌要素を確認する
・蜂窩織炎 急速に拡大する熱感・腫脹を伴う紅斑で、発熱など全身症状を伴いうる。通常片側性で境界は接触部と一致しない

手掌の水疱型では、も鑑別に挙がる。

まとめ

  • はアレルギー性(IV型過敏、感作必須)と刺激性(非免疫性、感作不要)に大別され、機序・発症時間・分布・症状の質で区別する。
  • の確定診断はであり、I型検査であるは目的が異なり代用できない。
  • 皮疹の分布から抗原を推定する(耳朶・へそ→、頭髪部→など)。
  • という特殊な病型がある。
  • 治療の本体は抗原・刺激物の同定と回避で、、重症例の全身ステロイド、は補助的に用いる。
  • 、白癬、蜂窩織炎との鑑別を要する。