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Drug Atlas · B12 Steroids / ステロイド · 必修

トリアムシノロン

triamcinolone

分類
Steroids / ステロイド
商品名(日本)
ケナコルト-A
商品名(EU)
Kenalog
科目
Pharmacology
トピック
B12: Glucocorticoids for oral and parenteral use
承認適応
若年性特発性関節炎円形脱毛症扁平苔癬
副作用
筋力低下
影響検査値
高血糖
対象疾患
うっ滞性皮膚炎ケロイドリポイド類壊死症貨幣状湿疹環状肉芽腫間質性膀胱炎結節性痒疹口腔粘膜下線維症脂肪皮膚硬化症手湿疹声門下狭窄接触皮膚炎前頭部線維化性脱毛症苔癬型薬疹中心遠心性瘢痕性脱毛症虫刺され妊娠性痒疹性蕁麻疹様丘疹・プラーク皮膚T細胞リンパ腫包茎・傍包茎慢性単純性苔癬扁平苔癬性類天疱瘡痒疹腱板断裂
原因となる疾患
Nicolau症候群酒皶・口囲皮膚炎薬疹(SJS・TENを含む)

🧠 全体像:は薬理学的にはとほぼ同格(・抗炎症力はの約1.25倍・MC作用なし)の全身性グルココルチコイド(GC)だが、実際の臨床では全身投与よりも局所(関節内・病変内・皮膚)で使われる薬という別の道を歩んでいる。同じ「MC作用ゼロ」の性質を、は全身パルスの拡大に、は局所としての長期滞留に活かしている。

薬効群の中での位置づけ

全身性GCのスペクトラムの上ではと同じに位置するが、臨床的な役割はに大きく偏る点が独自性になる。

薬剤 抗炎症力(PSL比) MC作用 主な立ち位置
中間 ×1 弱い 経口の標準
中間 ×1.25 ほぼなし 高用量IVパルス(全身投与)
中間 ×1.25 なし 関節内・・皮膚外用()
長時間 ×6〜7 ほぼゼロ 脳浮腫・・抑制試験

⭐ 構造が「局所での長期滞留」という別の使い道を生む。 アセトニドは水にほとんど溶けない懸濁製剤として・病変内に注入すると、その場に留まって数週間かけてゆっくり放出される。これはの強さではなく局所デポ効果の設計であり、の「全身に速く高用量を届ける」という設計とは真逆の方向性である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triamcinolone'>トリアムシノロン</span>アセトニド(懸濁製剤)を関節内・病変内に注入"] --> B["注入部位で結晶がゆっくり溶解"]
    B --> C["局所で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucocorticoid receptor (GR)'>グルココルチコイド受容体</span>(GR)に持続的に結合"]
    C --> D["局所の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>産生↓"]
    C --> E["局所の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular permeability'>血管透過性</span>↓"]
    D --> F["関節炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tenosynovitis'>腱鞘炎</span>・瘢痕(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keloid'>ケロイド</span>)の炎症が数週間かけて鎮まる"]
    E --> F
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic circulation'>全身循環</span>への漏出はごく少量"] -.->|"全身性副作用を抑えつつ効果が持続"| F

💡 ・へのは「線維芽細胞の増殖抑制」という別の効果を利用している。 GRを介して・線維芽細胞増殖を直接抑えるため、抗炎症作用というよりとしての側面が前面に出る適応である。

薬物動態

項目 値・特徴
後の血中移行 少量にとどまる(懸濁製剤からの)
後の局所持続 数週間(結晶がゆっくり溶解)
代謝 に入った分は肝でにより代謝
経口製剤 存在するが日本での使用頻度は低い。海外では慢性炎症性疾患の維持療法に用いられることがある

適応

領域 使いどころ
整形外科 ・・への
・、、などへの、湿疹への外用
泌尿器科 への(4〜8週間の外用と愛護的なを組み合わせ、を回避する目的で行う。のに先立って塗る薬ではない)
〃 /のへの下の注入(麻酔下。と並ぶ選択肢。日本のではない)
アレルギー などへの筋注(頻用は減っている)

⭐ 日本の電子添文は「効能又は効果」をごとに区切って書いている。 同じ薬剤でも〈内注射〉と〈局所皮内注射〉では認められている疾患が別で、皮内注射の各項目には「を用いても効果が不十分な場合あるいは十分な効果を期待し得ないと推定される場合にのみ用いること」を示す印が付く。領域では・痒疹群が「重症例に限る」、が「悪性型に限る」と限定されており、上の表の使いどころとの範囲は一致しない(へのはである)1。

Hunner型間質性膀胱炎への膀胱鏡下粘膜下注入

⭐ 関節内・皮内とは別に、膀胱へ注入するというがある。 /のうちを有する型に対して、麻酔下ので病変のへを注入する手技である。米国AUAの2022年ガイドラインは推奨19で、逐語に If Hunner lesions are present, then fulguration (with electrocautery) and/or injection of triamcinolone should be performed.(があれば、および/またはの注入を行うべきである)と述べ、Recommendation・Grade C を与えている2。

⚠️ この格付けの重みは、同ガイドラインの他の治療と並べて初めて分かる。 同ガイドラインは治療推奨の大半を Option(行うかどうかを臨床医と患者の判断に委ねるな格付け)に置いており、行うことを勧める側で指示的な格付けを受けているのは2つだけ——骨盤底に圧痛がある患者への(推奨12、Standard・Grade A)と、このへの/注入(推奨19、Recommendation・Grade C)である2。

💡 なぜと同じ薬がここで効くのか。 は膀胱粘膜に限局したであり、病変のない型(を主体とする慢性疼痛症候群に近い)とは病態が別である。が内視鏡で見えて針の届く場所にあるため、局所という本剤の設計がそのまま活きる。ガイドラインが記載する手技は、アセトニド 40 mg/mL を計10 mL、内視鏡用針で0.5 mLずつ潰瘍の中心と辺縁のへ分割注入するもので、この報告では70%の患者が改善し、改善期間は平均7〜12か月だった2。

⚠️ 単回で終わる治療ではなく、用量も定まっていない。 ガイドラインは「症状が再発したときに定期的なが必要になる可能性が高いことを患者に説明すべき」としている。2022年の改訂で採用された4件ののうち2件は病変部に60 mg、2件は40 mgを用いており、用量は研究間で揃っていない。後に再発した病変へ注入した別のでは、35例中26例(74%)が反復注入を受け、注入回数の中央値は1.5回、注入間隔の中央値は8か月だった2。⚠️ これらはいずれも後ろ向き観察研究で、の比較ではない(Grade C はこの点を反映している)。

⚠️ 日本のではない。 ケナコルト-Aの電子添文が定める効能又は効果はごとに列挙されており、内・軟組織内・内・囊内・局所皮内・・・副鼻腔内・内・内・・内・耳管内・食道の14経路で、膀胱内および膀胱の投与は含まれない(電子添文の全文に「膀胱」の語は現れない)1。

用法・用量

日本の電子添文ではごとに用量が分かれている1。

用法・用量
内・軟組織内・内注射、囊内注入 通常成人1回2〜40 mg。原則としてを2週間以上あける
局所皮内注射 通常成人1回0.2〜1 mg宛、10 mgまでを週1回
、・副鼻腔内・・内・耳管内注入 通常成人1回2〜10 mgを1日1〜3回
内注射、内注射 通常成人1回2〜40 mg
食道注入 通常成人1回2 mg

外用:1日1〜2回患部に塗布。いずれも年齢・症状により適宜増減するため、実際の用量・注射間隔は施設のプロトコル・電子添文で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌は4項目だけである(日本の電子添文)1
    • 本剤の成分に対する過敏症の既往
    • 感染症のある内・囊内・内または腱周囲(抑制作用で感染症が増悪しうる)
    • 関節の内(状が増悪しうる)
    • ⚠️ 酢酸塩物(男性におけるによる)を投与中——で、が発現するおそれがある(機序不明)
  • ⚠️ 「全身の真菌症」「有効な抗菌剤の存在しない感染症」は禁忌欄ではない。 消化性潰瘍・精神病・結核性疾患・単純疱疹性角膜炎・後囊・緑内障・高血圧症・電解質異常・血栓症などとともに、9.1.1「治療上やむを得ないと判断される場合を除き投与しないこと」に置かれている。禁忌と同列に並べると、必要な症例で使えない方向にも、逆に禁忌の重みを薄める方向にも誤る1
  • ⚠️ の頻回反復は・のリスクを高める。 同一関節への注射回数・間隔には上限の目安がある
  • 糖尿病患者では局所注射後も一過性に血糖が上昇しうる
  • 皮膚外用では長期使用で・が生じる

副作用

頻度 内容
高頻度 注射部位の一過性の疼痛・(局所)
注意 高血糖(一過性)、(皮膚が浅黒い患者で目立ちやすい)、(。外用・いずれでも生じうる)3
重篤・まれ (頻回の腱周囲注射)、(注射手技関連)、(高用量・頻回投与時)

まとめ

  • 薬理学的にはとほぼ同格のGC(抗炎症力はの約1.25倍、比では約5倍・MC作用なし)。
  • ただし実際の臨床的な役割は全身投与ではなく関節内・病変内・皮膚外用というに偏る。
  • 懸濁製剤としての局所デポ効果が数週間持続する設計で、への漏出は少ない。
  • ・では抗炎症というより線維芽細胞増殖抑制()としての効果を利用する。
  • 同一関節へのは・のリスクがあるため間隔を空ける。
  • /では、のへの下注入という第3の経路を持つ。AUA 2022 は推奨19でこれを Recommendation・Grade C とし、行うことを勧める側で Option より強い格付けを受けた2つのうちの1つである。ただしのみが根拠で、を要することが多く、日本のには含まれない。
  • 「・MCゼロ」というを全身パルスに活かすとの対比で位置づけを覚える。

出典

  1. 1.ケナコルト-A皮内用関節腔内用水懸注50mg/5mL 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)2026年3月改訂(第3版)。有効成分は1mL中トリアムシノロンアセトニド10mg。効能又は効果は投与経路ごとに規定され、〈関節腔内注射〉に関節リウマチ・若年性関節リウマチ(スチル病を含む)・変形性関節症(炎症症状がはっきり認められる場合)等、〈局所皮内注射〉に湿疹・皮膚炎群、痒疹群(重症例に限る)、尋常性乾癬、扁平苔癬(重症例に限る)、限局性強皮症、円形脱毛症(悪性型に限る)、早期ケロイド及びケロイド防止等が挙げられ、皮内注射の各項目には「外用剤を用いても効果が不十分な場合あるいは十分な効果を期待し得ないと推定される場合にのみ用いること」を示す★印が付されていること。禁忌は4項目のみで、(1)成分過敏症、(2)感染症のある関節腔内・滑液囊内・腱鞘内又は腱周囲、(3)動揺関節の関節腔内、(4)デスモプレシン酢酸塩水和物(男性における夜間多尿による夜間頻尿)投与中——であり、全身の真菌症・有効な抗菌剤の存在しない感染症は禁忌ではなく9.1.1「治療上やむを得ないと判断される場合を除き投与しないこと」に置かれていること。10.1併用禁忌のデスモプレシンは低ナトリウム血症が発現するおそれ(機序不明)が理由であること。用法及び用量は〈関節腔内注射・軟組織内注射・腱鞘内注射・滑液囊内注入〉が通常成人1回2〜40 mgで原則2週間以上の投与間隔、〈局所皮内注射〉が通常成人1回0.2〜1 mg宛10 mgまでを週1回であること。2026-09-14に電子添文の全文(第3版)を再取得し、効能又は効果に列挙された投与経路が関節腔内・軟組織内・腱鞘内・滑液囊内・局所皮内・ネブライザー・鼻腔内・副鼻腔内・鼻甲介内・鼻茸内・喉頭気管・中耳腔内・耳管内・食道の14経路であること、〈鼻甲介内注射・鼻茸内注射〉が1回2〜40 mg、〈食道注入〉が1回2 mgであること、および文書全文に「膀胱」の語が0回であることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Diagnosis and Treatment of Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome(American Urological Association・2022)ガイドライン本文(表示は「Published 2011; Amended 2014, 2022」、誌上版は J Urol 2022;208(1):34-42)を自分で取得して逐語確認した。推奨19が「If Hunner lesions are present, then fulguration (with electrocautery) and/or injection of triamcinolone should be performed.」で格付けが Recommendation(Evidence Strength: Grade C)であること。本文が「Most treatments are designated as Options, except for physical therapy in the setting of pelvic floor tenderness (Standard) and triamcinolone injection and/or fulguration of Hunner lesions (Recommendation).」と述べ、実施を勧める側で Option より強い格付けを受けているのが推奨12(Standard・Grade A)と推奨19の2つだけであること。推奨19の本文が、症状再発時に定期的な再治療が必要になる可能性が高いことを患者に説明すべきとしていること。粘膜下注入の手技が「10 mL of triamcinolone acetonide, 40 mg/mL, injected in 0.5 mL aliquots into the submucosal space of the center and periphery of ulcers using an endoscopic needle」で、この報告では70%の患者が改善し改善期間は平均7〜12か月だったこと。2022年の更新で採用されたトリアムシノロン注入の後ろ向き研究4件のうち2件が病変部に60 mg、2件が40 mgを用いていること。焼灼と注入を比較した後ろ向き研究で35例中26例(74%)が反復注入を受け、注入回数の中央値1.5回・注入間隔の中央値8か月であったこと。これらがいずれも後ろ向き観察研究であること閲覧 2026-09-14
  3. 3.Triamcinolone(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)長期使用の副作用としてざ瘡様皮疹(ステロイド痤瘡)を挙げている閲覧 2026-08-02