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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

妊娠性痒疹性蕁麻疹様丘疹・プラーク

Polymorphic eruption of pregnancy

別名
PUPPPPEP多形妊娠疹
臓器系
皮膚生殖・産婦人科
科目
Obstetrics and Gynecology (Obstetrics)
トピック
産科学 05:妊娠の徴候と症状産科学 10:妊娠と消化器疾患
鑑別疾患
アトピー性妊娠疹妊娠性肝内胆汁うっ滞症妊娠性膿疱性乾癬妊娠性類天疱瘡
治療薬
トリアムシノロンヒドロキシジン
症状
掻痒丘疹皮疹

🧠 全体像:(PEP、いわゆるPUPPP)は、妊娠に特有の皮膚疾患のなかでもとくに遭遇しやすい疾患である。学習の軸はただ1つ、「どこから始まり、どこを避けるか」という分布に尽きる——腹部の内から始まり、臍周囲だけは侵さないという分布パターンが、この疾患を見分ける最大の手がかりであり、同時に胎児リスクを伴うとの鑑別点そのものでもある。母児ともに予後は良好で、分娩後数週で自然に消えていく。

疫学・危険因子

PEPは妊娠に特有の皮膚疾患のなかでに次いで頻度が高く、1/160〜300妊娠に生じる1。

  • に多い。
  • 、過剰な体重増加が危険因子として知られる1。
  • 帝王切開との関連も報告されている1。
  • 好発時期は()だが、に初発する例もある1。

病因:腹壁の過伸展という仮説

病因は分かっていない。ただし危険因子が「腹壁が急激に大きく伸ばされる状況」——、、過剰な体重増加——に揃って集まること、そして病変がという伸展でできた皮膚の傷跡から始まることから、急激な腹壁の伸展によって結合組織が損傷し、それが炎症の引き金になるという機序が想定されている1。はPEP患者の11.7%を占めるという報告がある1。

💡 「なぜから始まり、伸びていない臍周囲は避けるのか」——この分布そのものが、仮説を支持する所見として読める。危険因子・初発部位・免れる部位が1本の説明でつながるため、丸暗記せずに済む。

⚠️ 男児胎児との関連を指摘したもあるが、これを支持しない観察研究もあり、一定していない1。

臨床像:分布パターンが診断の核心

⚠️ 腹部のに沿って病変が始まり、臍周囲だけは避けるという分布が最重要点である1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='third trimester'>妊娠第3三半期</span>"] --> B["腹部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='striae gravidarum'>妊娠線</span>内に<br>強い掻痒を伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythematous papule'>紅斑性丘疹</span>が出現"]
    B --> C["臍周囲だけは病変を免れる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gluteal region'>殿部</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal thigh'>大腿近位部</span>へ拡大"]
    D --> E["体幹・四肢へさらに拡大しうる"]
    B --> F["顔面・手掌・足底は常に病変を免れる"]
部位 PEPでの所見
腹部 病変の初発部位
臍周囲 免れる
・ 拡大先として典型的
体幹・四肢 進行すると生じうる
顔面・手掌・足底 常に病変を免れる

病変は紅斑性の丘疹・のとして現れ、経過中に・環状のなどさまざまな形をとることがある。この「」が病名の由来である。強い掻痒を伴うが、水疱は形成しない2。

診断:臨床診断であり、生検は必須ではない

⭐ PEPの診断は病歴と身体所見だけで成立する。 皮膚生検は必須ではなく、血算・生化学検査もすべて正常範囲にとどまるため、確定に寄与するは無い1。診断名は「またはのに、腹部内から始まり臍周囲を避ける強い掻痒を伴うが出た」という組み合わせで付く。

⚠️ 例外はが否定できないときである。 の初期(の時期)はPEPと臨床像が重なるため、診断が不確かならためらわずに皮膚生検とへ進む1。

他の妊娠性皮膚疾患との鑑別

疾患 区別の決め手
臍周囲から発症しを作る。でにIgG・C3の2
の既往・家族歴があり、妊娠前半に発症することが多い1
が無い全身の掻痒。が上昇1
全身症状(発熱・感)が強く、掻痒はむしろ乏しい1
・・ 妊娠に特異的でない皮膚疾患も鑑別に挙げる1

⚠️ 妊娠性類天疱瘡との鑑別が最も重要

PEPの臨床像で最初に除外すべき疾患はである。両者は分布との有無で区別でき、区別の重要性は胎児リスクの有無にかかっている。

項目 PEP
発症部位 腹部の内から 臍周囲から(最多)
病変の性状 ・。水疱を形成しない 進行するとを形成
陰性 にIgG・C3の
胎児・新生児リスク なし 早産・のリスク。母体IgGのにより新生児の約1割に一過性皮疹

2

💡 診断に迷う場合、この表の分布(臍周囲を避けるか、臍周囲から始まるか)と水疱の有無を確認するだけでも大半は鑑別できる。判断がつかない場合は皮膚生検・を追加する。

妊娠性肝内胆汁うっ滞症との役割分担

(ICP)もに強い掻痒を来す点でPEPと紛らわしいが、皮疹の有無が最初の分かれ目になる。ICPは皮疹を伴わない掻痒(のみ)が特徴で、診断はの上昇による。一方PEPは腹部内・臍周囲を避けるという明確な皮疹を呈し、胆汁酸値は正常にとどまる。掻痒があっても、皮疹の分布と胆汁酸値の両方を確認して区別するという点は、ICP側のノートでも強調されている。

治療

治療の中心はと保湿・による対症療法であり、重症例に限り全身性ステロイドを検討する1。

治療 位置づけ
保湿・ 全例の基本治療
などの 治療の中心
などの 掻痒の対症療法
全身性ステロイド 難治性の重症例に限定

予後

母児ともに予後は良好で、多くは分娩後4〜6週間で自然消退し、再発も稀である1。胎児への悪影響は報告されておらず、この点がと対照的である2。

まとめ

  • PEPは妊娠特有の皮膚疾患のなかでに次いで頻度が高く、・・過剰な体重増加が危険因子である。
  • 腹部の内から始まり臍周囲を避ける分布が最大の診断的手がかりである。
  • との鑑別が最重要:あちらは臍周囲から始まり水疱を形成し、が陽性で、早産・などの胎児リスクを伴う。
  • とは皮疹の有無(PEPは皮疹あり、ICPは皮疹なしの掻痒)と胆汁酸値で区別する。
  • 治療は・保湿・が中心で、母児ともに予後良好、分娩後数週で自然消退する。

出典

  1. 1.Polymorphic eruption of pregnancy(Dermatology Reports・2022)妊娠性痒疹性蕁麻疹様丘疹・プラーク(PEP)が妊娠皮膚疾患の中でアトピー性妊娠疹に次いで頻度が高く1/160〜300妊娠に生じること、初産婦・多胎妊娠・過剰な体重増加が危険因子であること、妊娠第3三半期に腹部の妊娠線内から発症し臍周囲を避けて四肢・殿部・体幹へ拡大しうること、顔面・手掌足底・臍周囲は病変を免れること、分娩後4〜6週間で自然消退し再発が稀な良好な経過をたどること、治療の中心が外用ステロイド・保湿・経口抗ヒスタミン薬であり重症例のみ全身性ステロイドを検討することを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Dermatological Diseases Associated with Pregnancy: Pemphigoid Gestationis, Polymorphic Eruption of Pregnancy, Intrahepatic Cholestasis of Pregnancy, and Atopic Eruption of Pregnancy(Dermatology Research and Practice・2015)妊娠性類天疱瘡(pemphigoid gestationis)が臍周囲から発症し緊満性水疱を形成するのに対しPEPは腹部妊娠線から発症し臍周囲を免れ水疱を形成しないこと、蛍光抗体直接法で妊娠性類天疱瘡は基底膜部にIgG・C3の線状沈着を認めPEPは陰性となること、妊娠性類天疱瘡が早産・在胎不当過小児のリスクや新生児への受動免疫伝達による一過性皮疹と関連する一方PEPには胎児への悪影響がなく母体予後も良好であることを確認した。閲覧 2026-08-19